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ギャンブル依存のカウンセリングについて

 特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案、いわゆるカジノ法案が平成28年12月15日に成立し、同月26日に施行された。それによりギャンブル依存を増加させるという指摘もある。それが本当かどうかはともかく、日本社会にはパチンコ、競馬、競輪、宝くじ、ロトなど比較的身近にギャンブルがあり、一部の人はそれを病的に行い、日常生活や経済面に支障をきたしている人は少なくない。そうしたギャンブル依存とはどういうもので、それに対する支援やカウンセリングには何があるのかを書いていく。

目次

(1)ギャンブル依存の定義と診断基準

 DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル)におけるギャンブル依存の診断基準は以下のとおりである。

A.臨床的に意味のある機能障害または苦痛を引き起こすに至る持続的かつ反復性の問題賭博行為で、その人が過去12 カ月間に以下のうち4 つ(またはそれ以上)を示している。

  1. 興奮を得たいがために、掛け金の額を増やし賭博をする欲求。
  2. 賭博をするのを中断したり、または中止したりすると落ち着かなくなる。またはいらだつ。
  3. 賭博をするのを制限する、減らす、または中止したりするなどの努力を繰り返し成功しなかったことがある。
  4. しばしば賭博に心を奪われている(例: 過去の賭博体験を再体験すること、ハンディをつけること、または次の賭けの計画を立てること、賭博をするための金銭を得る方法を考えること、を絶えず考えている)。
  5. 苦痛の気分(例: 無気力、罪悪感、不安、抑うつ)のときに、賭博をすることが多い。
  6. 賭博で金をすった後、別の日にそれを取り戻しに帰ってくることが多い(失った金を“深追いする”)。
  7. 賭博へののめり込みを隠すために、嘘をつく。
  8. 賭博のために、重要な人間関係、仕事、教育、または職業上の機会を危険にさらし、または失ったことがある。
  9. 賭博によって引き起こされた絶望的な経済状態を免れるために、他人に金を出してくれるよう頼む。

B.その賭博行為は、躁病エピソードではうまく説明されない。

●ギャンブル障害の程度
軽度: 4〜5 項目の基準に当てはまる。
中等度: 6〜7 項目の基準に当てはまる。
重度: 8〜9 項目の基準に当てはまる

そして、ICD-10(国際疾病分類)ではF63.0とコードされ、診断基準は以下のとおりである。

  1. 持続的に繰り返される賭博。
  2. 貧困になる、家族関係が損なわれる、そして個人的生活が崩壊するなどの、不利な社会的結果を招くにもかかわらず、持続し、しばしば増強する。

(2)ギャンブル依存の疫学

 1997年に行われた研究では、ギャンブル依存の生涯有病率は5.4%で、過去1年間の有病率は3.9%であった。そして、何らかの物質乱用の既往があると、ギャンブル依存に対する脆弱性が高くなることも研究で示されている(Shaffer et al,1997)。

 性別による比較では、女性よりも男性の方がギャンブル依存になりやすい(Shaffer et al,1999)。また、婚姻関係の要因では別居や離婚をしているとギャンブル依存になりやすいようである(Cunningham-Williams et al,1998)。そして、結婚している人はなりにくく、かつ治療を求める率が高かった(Petry&Oncken,2002)。さらに15件の調査で、教育水準と収入が低いほど、ギャンブル依存になる傾向を示していた。

 ギャンブル依存の有病率はギャンブルの利用のしやすさに伴って増加するという研究がある(National Reseach Council,1999 ; Petry,2003)。しかし、ギャンブルの利用のしやすさとギャンブル依存の関係を理解することはたやすいことではなく、予測することもできない。ギャンブルにさらされることはギャンブル依存になる上での必要条件ではあるが、利用のしやすさはギャンブル依存の数ある問題のなかの一つにすぎないようである(Whelan,2007)。

 ギャンブラーズ・アノニマスのメンバーを対象にした調査研究では、ギャンブルの為、30%が仕事を失い、37%が雇い主から窃盗をし、50%が5000ドル以上の盗みをし、その他の違法行為もよく見られた(Potenza et al,2000)。

 予後においては、過去1年間の有病率と生涯有病率の比較から、少なくとも1/3がギャンブル依存を解決していることが示唆されている(Hodgins et al,1999)。ギャンブル依存を解決した人の10%ほどが専門家の治療を受けていた(National Reseach Council,1999 ; Gerstein et al,1999)。ギャンブル依存を解決した人の少なくとも20%は専門家の手助け無しに改善していた(Hodgins et al,1999 ; Slutske,2006)。

(3)ギャンブル依存の評価尺度

 ギャンブル依存の診断と見立てのため、以下のような評価尺度がある。

(4)ギャンブル依存の理論モデル

 ギャンブル依存を単一の理論か説明することはできない。多くの要因や影響下において起こっているからである。そうしたことを統合的なモデルにしたものが下の図である(Whelan,2007)。

ギャンブル依存の統合モデル

(5)ギャンブル依存の診断と治療、カウンセリング

 ギャンブル依存とその他の疾患との鑑別診断を行い、合併症の査定をし、重症度の評価をすることは当面の作業である。そして、心理的要因であり、治療結果を左右する3つの要因を評定する必要がある。ギャンブルに関連する認知の歪み、ギャンブル行為を制御することに対する自己効力感、変化に向けての準備状態である。さらに、対人関係、家族関係、職場環境といったギャンブル依存を取り巻く環境から利用可能なリソースは同定すべきである。

 ギャンブル依存に効果があるとされている治療方法は認知行動療法、動機づけ面接法といったカウンセリングと、薬物療法である。

 認知行動療法の観点では、Ladouceur(2002)は、教育的取り組み、認知の歪みの修正、問題解決技能訓練、社会技能訓練、再発予防の5つを含んだ治療介入モデルを構築した。一方、Petry(2006)は、ギャンブル行為の機能分析、引き金の同定、代替行動分化強化、衝動コントロール技法、対人関係の葛藤処理、長期的展望からの決断を含めた、やや行動療法に比重を置いた治療介入を行い、その他に自助グループへの参加も推奨している。これら2つの治療介入モデルは、自助グループへの参加やワークブックでの自習に比べると治療効果は大きいことが示されている。ただ、コストがかかり、身近にそうした治療を受ける環境にない場合には、自助グループへの参加やワークブックでの自習によって少なからずの改善も見込めるとしている。

 動機づけ面接法では、指示的でありつつも患者中心的に進めなければならない。そして、患者は自らが工夫し、自ら解決に向けて動くリソースを持っており、それを掘り起こすことに苦心する必要がある。良くなりたいという動機がない患者はおらず、小さいものであっても良くなりたいという動機は必ず存在する。適切な照らし返しや振り返り、介入により、潜在的にある動機を賦活するために特化した心理療法が動機づけ面接である。患者の抵抗をうまく活用しながら、両価性を意識化させながら、行動変化に導くように手助けすることがカウンセラーの役割となる。

 薬物療法では、SSRI、オピオイド受容体拮抗薬、気分安定薬の効果が見込まれているが、まだ実証されているとは言い難い状況である。

(6)おわりに

 ここではギャンブル依存についての診断や評価方法、治療方法について概観してきた。日本社会では、比較的身近にギャンブルがあり、ギャンブル依存になる刺激にあふれている。我々カウンセラーのところに日々来られるクライエントの中にもギャンブル依存の方はいるだろう。ギャンブル依存を主訴としていなくても、併存していたり、背景にあったりすることは多いと思われる。そうした中で、ある程度ギャンブル依存についてのスタンダードな理解と治療方法を知っていることは日々の臨床をしていく上で価値があると思われる。

 しかし、それは決してスタンダードな治療しかしてはダメであるということではない。カウンセラーの力量や技術によってはできないことも多いだろう。できないことをできないと認識し、適切な機関にリファーすることも我々の仕事であるし、できないものを過度に背負い込むことは倫理的でない。さらに、患者のおかれた状況や、内的要因によってスタンダード以外のことをする方が功を奏することも珍しくはない。なぜなら、カウンセリングはカウンセラーと患者が双方で織りなす対話であり、関係そのものに治療要因があるからである。

(7)文献

ジェイムス・ウェラン 他(著)「ギャンブル依存-エビデンス・ベイスト心理療法シリーズ6-」金剛出版 2007年/2015年


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