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カウンセリングにおけるカウンセラーの守秘義務

 カウンセリングの時にカウンセラーに話したことは原則的には他者に漏らされることはありません。そうすることによって、クライエントが安心して自分の話をカウンセラーにすることができます。そうしたことを守秘義務と言います。ここではその守秘義務のことについて少し説明したいと思います。

 この守秘義務のことを考えるために一つの判例があります。カウンセリングをしている人には非常に有名ですので、知らないカウンセラーはいないでしょう。以下に簡略に書きます。

タラソフ事件
 あるクライエントがカウンセリングの中で、殺人実行の話をしました。カウンセラーは関係機関に通報はしましたが、殺意の対象となったタラソフ氏には通告しませんでした。そうしたら、そのクライエントは本当にタラソフ氏を殺してしまいました。そして、被害者家族からカウンセラーは訴えられました。

 この事例を掘り返せば、色々な要因や状況があり、すべてを一括するのは問題があると思いますが、カウンセラーの守秘義務と通告義務について一つの判断が下された一例であると思います。

 カウンセラーがプライバシーを守ることは前提としていますが、そのことによって著しい不利益になる場合には、例外もありうるということでしょうか。たとえば、カウンセラーがカウンセリングの中で、「人を殺したいと思っている」や「今、子どもを虐待している」など聞いた場合にはどのようなカウンセラーも判断に迷ってしまうことはあると思います。そこに絶対唯一の正しい判断があるわけではなく、ケースバイケースで考えていかなければいけないと思います。

 特に最近はDVや児童虐待のケースが増えており、どのように専門機関でフォローしていくのかということが問題となっています。そして、その発見が遅れると、死に至る事例も稀ではありません。そのようなときに、カウンセラーとして、どのように守秘義務を守り・放棄し、関連機関に通告するのかを考えていかねばなりません。

 もしかしたら、「この情報は間違いかもしれない」や「この通告で関係が壊れてしまうのではないか」など頭によぎることもあるかもしれません。このようなときに頼れるのは、専門的な知識ではなく、自身の倫理観や経験、直感ではないかと思います。

 私も、もちろんカウンセラーとしてカウンセリングで話されたことや聞いたことは誰にもばらさないし、洩らさないという守秘義務を持っています。しかし、時と場合に応じて、特に誰かの生命や財産に危険が及ぼされる可能性があるときには、守秘義務を超えて、関係機関と連携します。その際にもできる範囲内でクライエントさんの承諾をもらって情報開示をするようにはしていますし、可能ならその方がスムーズです。

 ただ、今のところ、そうした守秘義務を放棄しなければならない事態はそう多くはないのが幸いなことです。

論考   2017/01/26   北川 清一郎

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