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精神分析における「集団心理学と自我の分析」の位置づけ

 「集団心理学と自我の分析(1921)」を読み終えました。あらためて読むと非常に刺激的な論文でした。この論文はフロイト精神分析理論の中期と後期の橋渡し的な位置づけにあるように思えます。その点について解説します。

目次

  1. 同一化という観点から
  2. 超自我論
  3. 分裂:様々な自分
  4. 不安理論について
  5. 結語

1 同一化という観点から

 まず集団、他者からの取り入れ同一化により、自我理想や審級を獲得するというアイデアは、「喪とメランコリー(1917)」の延長にあたるでしょう。フロイトによるとメランコリーの自責感は自分に取り入れられた他者に対する怒りや攻撃性であるとしています。

 「対象の影が自我に落ちる」という詩的で美しい表現に端的に示されています。そうしたアイデアが集団論文でも取り入れられています。これは精神分析的対象関係論としての発展を意味します。

2 超自我論

 また、集団論文に登場する自我理想や審級は、2年後の論文「自我とエス(1923)」で詳しく論じられている超自我に連なる概念です。集団論文ではまだ超自我と死の欲動の密接な結びつきが不十分ですが、それでもその萌芽を見て取れます。

 こうした概念はもちろん構造論として確立されていきます。意識、前意識、無意識という局所論から構造論への進化、もしくは拡充は今後の精神分析的自我心理学に発展していきます。

3 分裂:様々な自分

 心の中に様々な自分がいるという観点は「分裂」という現代精神分析では欠くことのできない論点であり、精神分析臨床的にも有用な概念です。つまり、自分には理解できず、思うように統制できない自分がおり、その乖離が強いと病的になります。

 フロイトの有名な「エスあるところに自我あらしめよ」という格言の端緒になります。ただ、これらはその後のラカン心理学からの批判もあります。つまり、主体の問題です。自我は自分の機能1つであり、主体ではないということです。

 では、主体とは何か、主体とはどこにあるのか、は現代にまで続く論点であるでしょう。この点に関してはウィニコットはニードの問題として理解し、ビオンはO(オー)の問題として吟味していったようにも思えます。

4 不安理論について

 そして、集団論文には不安理論の今後の改訂に先立つ点も垣間見れます。これまで欲動の抑圧の結果、不安が現れるとフロイトは考えていました。しかし、5年後の論文「制止、症状、不安(1926)」では、不安信号説に取ってかわりました。

 超自我(審級、自我理想)とエスと外界から脅かされる事態に対して生じるのが不安であり、そうした不安の対処として自我が防衛機制を発動します。その不安理論の改訂のための準備は集団論文で既に出来つつあります。

5 結語

 このように集団論文は精神分析における、取り入れ同一化の発展、超自我への発展、不安理論の改訂の前駆期、自我機能と分裂と主体の問題、といった論点が交差するところにあります。そうした意味でのフロイト精神分析理論の中期と後期を繋ぐ論文と言えます。

読書   2017/05/24   北川 清一郎

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