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カウンセリングからみた対話による理解し合うことの理想と現実

 人と人、国と国はどこまで理解し合うことができ、どこまで協力関係を築いていくことができるのでしょうか?その中で対話という機能が有効に働く希望はありつつ、あまりにも安易に対話という言葉を使い、万能的に持ち上げることが多いように思います。ここではその対話の理想と現実について書きました。

目次

  1. はじめに
  2. 理解できることに希望を持つ
  3. 理解することの困難さ
  4. 困難さの末に見えること
  5. 安易に理解できるということの浅はかさ

1.はじめに

対北朝鮮「対話でなく、圧力必要」安倍首相、国連演説(毎日新聞2017年9月21日11時39分)

安倍晋三首相は20日午後(日本時間21日未明)、ニューヨークで開かれている国連総会で一般討論演説をした。核・ミサイル開発を続ける北朝鮮について、首相は「脅威はかつてなく重大で、眼前に差し迫ったものだ」と強調。核・ミサイル計画の放棄へ「必要なのは対話ではない。圧力だ」と述べ、国連安全保障理事会の制裁決議の全面的な履行のために国際社会の結束を求めた。

https://mainichi.jp/articles/20170921/k00/00e/010/291000c外部リンク

 対話を通して危機を回避する、もしくは平和を勝ち取ることができたら理想的です。話し合えば分かり合えるというのは、確かに部分的にはその通りだと思います。

2.理解できることに希望を持つ

 我々のような心理臨床家はクライエントとの対話やカウンセリングを通して、理解しあいます。そして、そうした対話やカウンセリングによって、関係性が深まり、成長を目論み、創造的な何かが産み出され、よりよい生を享受できるようになります。心理臨床家はそうしたことに希望を見出し、人生と時間と労力の大部分を、つまり心理臨床家の自分自身をクライエントとの関係性に投じます。

 こうしたことが外交関係でも同様にできると期待を持つこともあるかもしれません。

3.理解することの困難さ

 しかし、一方で、対話すれば分かり合えるという楽観論だけでは済まされない現実もあります。つまり、関係性の中で分かり合えるようになるためには、相当の犠牲を払わねばならないのです。

 数回だけ会って全てが分かったとするのは幻想です。カウンセリングでは4〜5回ほどお会いして見立てをするアセスメント面接というものがあります。これは4〜5回の面接で見立てが完璧にできる、ということを意味していません。

 当面の仮説を立て、当面のカウンセリングにおける介入の道標を策定するにすぎません。アセスメント面接の後に続く連綿としたカウンセリング過程の中で、徐々に分かってきたことを付け加え、仮説を修正し、時には仮説を棄却し、より精度のある仮説を立てていきます。

 そして、そのカウンセリング作業に終わりはありません。完璧に100%把握し終えるということは概念上にはあったとしても、現実のカウンセリングの中ではフィクションにすぎません。

 さらには、それに至るための時間は非常に長くなることもあります。人によっては数年がかりになることも稀ではありません。もちろん、それにかける金銭や労力といったコストは必要となります。

 また、そのカウンセリング過程の中では、心理臨床家とクライエント双方にある種の誠実さを持つことが大切となります。ある程度、誠意をもち、率直に関係性に自身をさらけ出すことがないと、進みようがありません。

 そして、そうしたことを持ってしても、肯定的な感情や情緒を体験することばかりではありません。時には、不安や苦痛を体験し、互いに対する怒りや失望、不信を感ずることもあります。

4.困難さの末に見えること

 しかし、こうした否定的な情緒にも真実は含まれており、それを抱え続けることで、創造的な展開に至ることも多々あります。このように、人と人が分かり合えることはそう簡単なことではなく、苦難の道を孕んでいるのです。

 我々、心理臨床家は、少なくとも僕は人と人とがいつかは分かり合えることはできるだろうというロマンチズムは持っています。しかし、一方でそれは一朝一夕には達成できない、苦難と長期にわたるコストを支払わねばならない現実も知っています。

 さらには、それでも結局は分かり合えないままに終わらねばならない哀しみもまた真実の内にあります。カウンセリングと外交関係を同列に論じることの是非はあるでしょうが、対話によって解決を探る希望は部分的には理解できます。

 しかし、誠実に取り組まれるカウンセリング関係であっても、多大な労力と犠牲が必要であり、それでも理解と解決が保証されるものではありません。カウンセリング関係よりもシビアで、他者と自身に誠実さを持つことに危うさを孕む外交関係では、さらに困難であることは容易に想像できます。

5.安易に理解できるということの浅はかさ

 対話によって分かり合えるとは、文面にすると簡単にできそうですが、その困難さは非常に大きなもので、安易に使うと底の浅さが露呈してしまっているかのように思えます。希望は捨てなくても良いかもしれませんが、楽観的にもなれないことです。

 そうした苦難の道を進むよりは軍事行動を取ることの方が遥かに楽に思えます。対話を模索する人は多大な苦難を甘んじて受け、時には自分を投げ出す覚悟の基に述べなければ空虚な理想論に堕してしまうでしょう。

公開:201年9月25日 更新:2017年10月20日

論考   2017/09/25   北川 清一郎

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