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精神疾患による労災の認定

精神疾患による労災が昨今では増加傾向にあります。この記事では労災であると認定される精神疾患について書いていきます。さらに、メンタルヘルスの問題の予防やケアにも触れます。

1.労災とは

伏せる男性

労災は正しくは「労働者災害補償保険法」といいます。制定は昭和22年です。当時はまだ炭鉱での事故などが多い時代で、労働者がケガや病気をして働けない時期を補償する保険として制定されました。労災が支給されるには以下の2つの条件が必要となります。

  • 必要業務起因性(業務に原因があった)
  • 業務遂行性(業務中であった)

例えば、建設現場で作業中に足場から落ちて足の骨を骨折したとします。このケースでは「足場から落ちた」という業務起因性(業務に原因があった)とがあったと考えられます。さらに、「作業中である」という業務遂行性(業務中であった)が満たされるので、労災が支給される可能性が高いでしょう。

ちなみに、労災の種類は、療養等補償、休業等補償、障がい等補償、遺族補償などに加え2次健康診断等給付があります。

では、業務に関係のないけがや病気の場合はどのような補償があるのでしょうか?組合健保や協会健保といった健康保険です。風邪をひいた、花粉症、などで病院に行くことあるかと思います。風邪を労働が原因、と結びつけるのはなかなか難しいです。病院への支払いは健康保険証を使い、3割負担などとなっています。

2.労災に対するよくある2つの勘違い

ハテナ

(1)労災の申請をするのは誰か?

相談としてよくあるケースです。会社の作業でケガをしましたが、「会社が自分たちの責任はないと言っています。労災を申請してくれません」という訴えです。ここでよくある勘違いは「労災は会社が申請するものだ」ということです。実は労災は本来、労働者本人の申請なのです

しかし、ケガ、病気をした本人、また看病をする家族が申請をできないことは多々あります。労働者本人は動けませんし、家族らも看病などで忙しくなります。このため、会社が申請の代行をしているのが実際、ということです。勤務する会社がある場所の労働基準監督署に行けば、労災課があり労働者本人であっても書類の書き方、申請の方法などを教えてくれます。労災が出ないかもしれない、と焦っていた労働者はここでかなりほっとします。

(2)労災はいつ支給されるのか?

もう一つの勘違いは、「労災は申請した後、すぐに支給される」ということです。

労災は支給決定までおおむね6ヵ月はかかります。支給の決定をするのは労働基準監督署長であり、会社ではありません。いずれにしても、申請をした後、かなり長い間、待たされると認識しておくとよいでしょう

3.増える精神疾患による労災事案

医師と話す男性

(1)労災認定される基準

労災の請求件数で伸びているカテゴリーが精神疾患です。令和2年の精神障害に関する労災の請求件数は2051件、認定件数は608件です。統計を取り始めた平成9年の請求件数は41件、そのうち認定件数は2件(自殺は30件の請求に対して2件の認定)でした。わずか25年ほどで比較にならないほど請求件数が伸びています。請求件数に対して認定件数はいずれの年もおおむね3割となっています。

このように増える精神疾患の労災に対応するために、厚労省は平成23年「精神障害の労災認定」の基準を発表しました。

この中では以下の3つの基準を満たすことが必要です。

  • 労災認定の対象となりうる精神疾患であること
  • 発病前の約6か月間に業務による「強い」心理的負荷が認められること
  • 個人的な問題で発病したと認められないこと

例えば「普段はうつ病などではない、治療も受けていないにも関わらず、工場で大きな事故が起き、同僚が目の前で亡くなる、という精神的なダメージを受け、事故の次の週からうつ病の症状が出始めた」というケースがあったとします。

  • 労災認定の対象=業務をしていたとき(業務遂行性)、工場の事故という原因(業務起因性)
  • 発病前の6か月間=事故から1週間(6か月以内)
  • 個人的な問題で発病していない=普段はうつ病などにはなっていない、治療もしていない

上記のように3つが該当するので、労災と認定される可能性があります。

(2)強い心理的負荷とは

この中の3つの基準の中で悩ましいのは何をもって「強い心理的負荷」とするかです。令和2年には、精神障害の認定基準にパワーハラスメントを明示しました。厚労省のリーフレットによると、強い心理的負荷の例として身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けたことを挙げています。以下はその例です。

【「強」である例】

  • 上司等から、治療を要する程度の暴行等の身体的攻撃を受けた場合
  • 上司等から、暴行等の身体的攻撃を執拗に受けた場合
  • 上司等による次のような精神的攻撃が執拗に行われた場合

厚労省・精神障害の労災認定基準に「パワーハラスメント」を明示

ですので、例えば、上司等による治療を要さない程度の暴行による身体的攻撃や、人格や人間性を否定するような、 業務上明らかに必要性がない又は業務の目的を逸脱した精神的攻撃であり、行為が反復・継続していない場合などでは、心理的負荷の総合評価の視点を踏まえて「弱」又は「中」と評価される場合があります。

「強い」と判断される、すなわち労災と認定されるにはこのような基準をクリアしなくてはいけないのです。

4.精神疾患による労災に対する誤解

喧嘩をする男女

企業からよくある相談は「労働者が診断書を人事に提出した。上司のパワハラによって適応障害、と書かれていた」というケースです。

ここで労働者は「診断書さえ出せば、労災が出るだろう」「裁判などになっても有利になるだろう」と考えがちです。また、使用者は「労働者に非があるのだから、絶対に労災と認めてはいけない」「これで裁判にでもなれば会社が負けるのでは」と考えがちです。

しかし、労働者、使用者、共に知っておかなければならないのは、「診断書がパワハラの証拠には必ずしもならない」ということです。診断書は労働者の一方の主張で、診断書を書いた医師が会社の意見を聞いたわけではありません。

労災の支給は労基署の署長が総合的に判断します。また、裁判は双方から出された証拠をもって、どちらが合理的な主張をしているか、とジャッジする場所ですから、一方の主張のみで判決を出す、といことは考えにくいのです。

よって、労働者は「診断書さえ出せば有利になる」と考えない方が良いでしょう。また、会社は診断書に振り回されることなく、冷静にパワハラ加害者、被害者双方の意見を聞き、事実を調べることが大切です。そして調査の上、パワハラがなかったとしても労働者から訴えがあったのは事実なので、今後に向けた対応策を決めて実行することが大切です。無論、労働者の適応障害の原因が明らかに上司のパワハラにも関わらず、労災を隠すことは論外です。

5.精神疾患の労災の出ない職場に向けて

白い少女

労災は労基署、すなわち役所の決定ですので、裁判の判決とは違います。しかし、労基署(行政)が労災を認めた、というのは裁判になった場合、裁判官に一定の心証を与える、と予想しておいたほうがよいでしょう。

また、外国人を雇用する企業も増えていますが、「外国人だからわからないだろう」と労災を隠しても、情報がSNSなどで一斉に拡散され、外国にもすぐに送られてしまいます。そして、その会社の評判がひどく落ちることになります。ただでさえ、人手不足の日本です。労災を隠した会社がその後、労働者を集めるのはとても難しくなってしまいます。

労災は戦後、現場での労働者とその家族の生活を守るためにスタートしました。そして、今、メンタル労災の問題がクローズアップされています。仕事には人が必ず関わります。人には感情があります。労働問題は感情問題、といわれる所以です。仕事において、メンタル問題は避けて通れないのです

6.労災や精神疾患についての相談をする

医者と相談

精神疾患による労災認定について書きました。

職場でメンタルの労災を出すことのないよう、当オフィスで気持ちを整理し、これからの仕事について一緒に考えませんか?

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