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日本型雇用の特殊性におけるメンタルヘルスとキャリア支援

「働く」ということは多かれ少なかれ、しんどいことがあるでしょう。賃金に不満を持ったり、将来のキャリアに悩んだりもあります。ここには、日本特有のちょっと特殊な働くことに関する事情があります。

この記事ではその時給制や人事異動といった日本の特殊な雇用制度について説明し、それによるキャリアやメンタルヘルスの問題について解説します。

1.日本型雇用の特殊性について

電話をする男性

ここでは日本に特有の雇用の歴史と状況について説明します。

(1)賃金が時給制

労働基準法は戦後、昭和22年に施行されました。この法律が最も重視したのは働く人の奴隷労働からの解放です(労働基準法第5条)。戦前はそれほどまでに日本の労働者を取り巻く環境は過酷だったということになります。

参考:第五条 使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない(労働基準法第5条

そのため、働くための最低の基準を設ける必要がありました。これが労働者の働く最低の基準を決めた法律「労働基準法」(通称・労基法)です。この基準を下回れば、使用者すなわち会社に罰則などがあります。

労働に関する法律は工場法(大正5年9月1日施行)を元にしました。しかし、まず、賃金において困った事が起きました。賃金の決め方です。工場ですので、製品をつくればその個数で賃金をお支払い、とできればいいのですが、時代は昭和20年代です。昔の工場ですので機械が壊れる、製品をつくるための材料が粗悪、ということがよく起こりました。

よって、与えられた材料やたまたま担当した機械によっては一つも製品が作れず、賃金がゼロになってしまう人もいました。これでは不公平、ということで「時間でお支払い」ということになりました。これが今でも続く「時給制」のスタートです

(2)解雇の要件が厳しく設定された

そして、この工場法は、その後も日本の労働現場に影響を与えました。

1960年代~1970年代の高度経済成長時代の日本において会社は製品を作れば作るほど物が売れました。人口も増えていきましたので買ってくれる人も比例して増えたのです(厚労省・社会保障の検証と展望)。

例えば工場にランドセルを作る職人さんがいる会社。職人さん一人を育てるのは長い時間がかかります。高いクオリティーの製品をつくることのできる職人さんをずっと雇い続ければ、企業の利益があがります。しかし、職人さんとして向いてない人もいます。製品をつくらなければ利益は上がりません。そこで会社は「この労働者は成績が悪いから」といって解雇つまり契約途中での一方的な(契約の)解除、をしたくなります。

会社には解雇権があります。しかし、当時の裁判所は「労働者への教育と指導は会社の責任」としました。つまり、会社の成績による労働者への解雇は認めません、という判決を出し続けました。これが「解雇権濫用」の禁止です(日本食塩製造事件、昭和50年4月25日・最高裁、など)。

長く社員を雇用し続けることが企業の利益になる、とされた時代において、会社は成績による解雇が難しくなってしまったのです

(3)解雇に代わる人事異動

しかし、これでは会社としては採用してみたものの、成績がふるわない社員の解雇はできない、と八方塞がりになってしまいます。そこで、会社にはかなり広大な「人事異動」という武器が与えられました。

一方、この人事異動を行うには労働契約の最初の段階で具体的な職種を決めないことが前提です。「この仕事は向いていない」と思われる労働者を後に別の部署に異動させるためです

2.「時給制」と「解雇できない国、日本」で起こってしまうメンタルヘルスの問題

悩んでいる女性

(1)待遇の不公平感とキャリアのミスマッチによる不満

労働基準法が施行された当時は、工場(製造業)の多い時代でした。時給制とすることで職場の不公平感を緩和できたでしょう。しかし、現在の日本の会社ではサービス業が増え、事務職等に就く方も多くなっています(参考:厚生労働省・日本の人口・就業状況と 労働生産性、新技術の導入状況等について)。

時給制をとっているオフィスワークでは、時間内に仕事を終わらせる方よりも、残業した方の給料が高くなってしまうことがあり「なぜ自分は必死に仕事を終えているのに、のんびりと残業をしている同僚の給与が多いのか?」という不満が出やすくなってしまいます

また、会社が労働者を成績ではなかなか解雇できないため、大きな人事異動権を持ち、職種を限定しないで採用するということをしました。このことによって、労働者が「この仕事をやりたい」と思った希望と、会社が配属した部署などにズレが生じやすくなってしまいました

例を挙げるならば、記者職志望で新聞社に入ったものの、配属先が営業だった、ということが起こってしまいます。仕事のミスマッチが起こりやすくなり、「こんな仕事をするために就職したのではない」という不満や「これから、どう働いていけばいいのだろう」という不安を抱えやすくなってしまいます。

このように日本で労働契約を結んで働く場合、待遇面での不満やキャリアへの不安が出てしまうことがあります。

(2)社員の福利厚生の拡充

こうした状況により、社員のメンタルヘルスが低下をし、さまざまな支障が生じてしまうことがあります。そのための福利厚生として社員のサポートやケアに力を入れることになりました。労働衛生法の拡充もそれを後押ししました。またストレスチェック制度の導入などもあり、徐々にではありますが、社員のメンタルヘルスに対する対策が講じられてきました

また、キャリア支援ということでキャリアコンサルタントの国家資格などもあり、国が社員が自身のキャリアに向かい合い、考え、自ら選択していく方向になっています。ちょうど終身雇用制度の崩壊による影響もあるでしょうが、一つの会社でずっと働くのではなく、自ら力量をつけ、よりよい待遇の職場を求めることが重要視されるようになってきました。そのためにキャリア支援をうけるという手段が用意されてきました。

3.メンタルヘルス支援とキャリア支援を受けたい人へ

慰める

日本の特殊な労働環境や労働条件による待遇面の不公平感やキャリアのミスマッチによるメンタルヘルスの低下について書いてきました。自分のキャリアや、今の仕事がミスマッチでは、と悩んでいる方、もしくはそうしたことによってメンタルヘルスの問題が発生してしまっている方は当オフィスに相談をください。キャリアやメンタルヘルスに詳しいカウンセラーが在籍しています。

相談をご希望の方は以下からお申込みください。

参考文献

向井蘭 編著「教養としての「労働法」入門」日本実業出版社 2021年4月