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心理的安全性とは

心理的安全性の保たれた環境では、誰もが率直な思いを口にでき、多様なメンバー同士がそれぞれ能力を発揮し合える風土を培います。

この記事では、心理的安全性について、定義や注目された背景、心理的安全性を損なう不安やメリット、心理的安全性の高め方を説明します。心理的安全性にまつわる不安や悩みの相談には、カウンセリングもご検討ください。

1.心理的安全性とは

笑っている二人の男性

「心理的安全性」という言葉が近年、注目されています。まず、心理的安全性とは何か、その概念と注目を集めた背景について説明します。

(1)心理的安全性とは

心理的安全性(Psychological Safety)とは、組織や職場において誰もが気がねなく自分の考えを述べられる文化のことです。心理的安全性の高い組織やチームでは、誰もが自分の意見を大切にされていると感じることができます。意見を言ったら恥ずかしい思いをするのではないか、非難されるのではないかといった対人関係の不安が湧きにくいため、誰もがアイデアや疑問、懸念や誤りなどを率直に口にできます。

「自分が口にしたことによってメンバー間の人間関係は悪化しない」という安心感がメンバー内で共有されていることが重要です。また、現状への批判や空気を読まない発言をしても、否定されずに受け止められるという確信は、多様なアイデアが生まれる土台にもなります。複雑かつ絶えず変化する世界で、多様な人材がともに活動する組織や職場が価値を創造する源としても、心理的安全性は注目されているのです

ちなみに、この概念がリーダーシップや組織学習の研究者のエイミー・C・エドモンドソン氏(Amy C. Edmondson)により提唱されたものです。

(2)心理的安全性への注目の背景

心理的安全性への注目が高まった背景には、2016年に発表された、大手IT企業Googleによる取り組みがあります。

Googleは、効果的なチームや職場に必要な要素を調べる「プロジェクト・アリストテレス」を実施し、チームの効果性に影響する因子を5つ見つけました。心理的安全性、相互信頼、構造と明確さ、仕事の意味、インパクトと名付けられたこの5つの因子のうち、圧倒的に重要であると分かったのが心理的安全性です

心理的安全性の高いチームでは、収益性が高く、チームメンバーからの多様なアイデアを活かすことができ、「効果的に働く」とマネジャーから評価される機会が多く、離職率が低いということが示されました。

こうしたGoogleによる発表がきっかけとなり、心理的安全性は近年、注目を集めるようになったのです。

2.心理的安全性を損なう4つの因子

ビジネスマン

エドモンドソン氏は、心理的安全性を損なう要因として4つの不安を挙げています。組織やチームので発言しにくいと感じている人は、無意識にこのような不安を抱いているのかもしれません。

(1)無知だと思われる不安(Ignorant)

「そんなことも分からないのか」と思われるのではと、不安に思うことです。無知だと思われる不安を抱えていると、気になることがあっても、率直に質問したり相談したりすることをためらってしまいます。

(2)無能だと思われる不安(Incompetent)

ミスをしたり、失敗したりしたときに「そんなこともできないなんて」と思われるのではと、不安に思うことです。無能だと思われる不安を抱えていると、ミスを報告することや弱さを見せることを避けてしまいがちになります。

(3)邪魔をしていると思われる不安(Intrusive)

「ミーティングや議論を邪魔しているのではないか」と不安に思うことです。邪魔をしていると思われる不安を抱えていると、自分が口にしたことで話が本題からそれる、議論が長引く、といったことを恐れて、提案や意見を述べることを控えてしまいます。

(4)ネガティブだと思われる不安(Negative)

「他人を批判していると否定的に捉えられるのでは」「後ろ向きだと思われるのでは」などと不安に思うことです。ネガティブだと思われる不安を抱えていると、現状を否定したり、他者の意見を否定したりしたと捉えられかねない発言しなくなってします。

3.心理的安全性のメリットや効果

ミーティングする男女

組織やチームでの心理的安全性を高めることには、さまざまなメリットや効果があります。ここでは、心理的安全性を高めることがもたらすメリットや効果について、個人と、組織・チームに分けてそれぞれ説明します。

(1)個人のメリット

心理的安全性の高いチームや組織にいることは、属するメンバーにとってメリットがあります。

自分の口にすることが人間関係を悪くしないという確信があれば、不安に脅かされることなく、率直な意見を口にできます。そのため、メンバー間でのコミュニケーションが活発になり、情報交換もスムーズになるでしょう。また、意見を口にすることへのさまざまな不安を抱えることによる心理的負担も軽くなり、落ち着いた心理状態で活動できるようになります。そのうえ、自分の意見は尊重されるという安心感から、課題や業務へのやりがいや責任感は自然と高まっていきます。

すると、安心感をベースに一人ひとりの持つ能力が十分に発揮されるようになるため、パフォーマンスや業績の向上にもつながっていくでしょう

(2)組織・チームのメリット

心理的安全性の高さは、組織やチーム全体にもさまざまなメリットをもたらします。

心理的安全性の高い組織では、異なる意見を持つ人同士が自由に話し合えるため、多様な異なる価値観を持った人たちが集まりやすくなります。さまざまな属性を持つ人同士でのコミュニケーションが活発になると、新しいアイデアや独自の意見が生み出されやすくなり、結果として組織のイノベーションにつながりやすいといわれます

また、発言することへの不安を呼び起こしにくく、メンバー一人ひとりがリラックスして能力を発揮できる環境からは、人が離れにくくなるため、人材が定着しやすくなるのです。

4.心理的安全性の作り方

妄想する女性

心理的安全性を作るためには、どのようにすればよいのでしょうか。

ここでは、心理的安全性について、現状を知る方法と個人や組織にできることをそれぞれポイントを挙げて紹介します。

(1)心理的安全性を測定する

心理的安全性を作るためには、まず組織やチームの現状を知ることが大切です。

エドモンドソン氏は、心理的安全性を測定するための方法を2つ紹介しています。組織やチームの心理的安全性の度合いを知る手がかりとして、参考までに活用してください。

a.7つの質問

以下の7つの質問に、強くそう思う / そう思う / どちらとも言えない / あまりそう思わない / そう思わない で回答します。

質問項目

強くそう思う

そう思う

どちらとも言えない

あまりそう思わない

そう思わない

1.チームの中でミスをすると、たいてい非難される。
2.チームのメンバーは、課題や難しい問題を指摘し合える。
3.チームのメンバーは、自分と異なるということを理由に他者を拒絶することがある。
4.チームに対してリスクのある行動をしても安全である。
5.チームの他のメンバーに助けを求めることは難しい。
6.チームメンバーは誰も自分の仕事を意図的におとしめるような行動をしない。
7.チームメンバーと仕事をするときに、自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる。
合計得点:
22~28点心理的安全性が確保されている
15~21点やや心理的安全性が確保されている
8~14点やや心理的安全性が脅かされている
0~7点心理的安全性が脅かされている

得点はいかがでしたでしょうか?28点満点で、点数が高いほど心理的安全性が確保されていることを示しています。反対に点数が低いほど心理的安全性が脅かされていることを示しています

b.3つのサイン

エドモンドソン氏によると、心理的安全性の高いチームや組織には3つのサインが見られるといいます。これらのサインがあるかどうかも、心理的安全性の高さの大まかなチェックになります。

  • チームメンバーがポジティブな発言をすることが多い
  • チームメンバーが、成功だけでなく問題やミスについても話をする
  • 場に笑いとユーモアがある

(2)個人ができる取り組み

組織の心理的安全性を高めるために個人、特にリーダーにできる取り組みの例として、エドモンドソン氏は以下のポイントを挙げています。

a.仕事を、実行の機会ではなく、学習の機会と捉える

不確実性が高くさまざまな要素がからむ活動の中では、何が起こるか分からないからこそ、みんなの意見が必要であるということを示せるとよいでしょう。その上で、課題を、単に作業をする場ではなく、学習する場であると捉えることが重要です。

b.自分が間違うことを認める

自分が失敗し得ると認め、チームメンバーに示すことで、メンバーが安心して発言できるようになります。たとえば「私が見落としてるかもしれないから、気付いたら教えてください」などと伝えるのもひとつの手です。

c.好奇心をあらわし、積極的に質問する

チームメンバーに積極的に質問するかたちで好奇心を示すことで、メンバーには声を上げる必要が生まれるため、発言を引き出すことができます。それは、メンバー同士で気になる点を率直に聞き合うという風土づくりにも役立ちます。

(3)組織や職場ができる取り組み

心理的安全性を高めるためには、やはり組織や職場による仕組みづくりが重要です。組織にできる取り組みのポイントをいくつか紹介します。

a.発言機会を平等にする

一部の人ばかりに発言機会が偏っている場合、「邪魔をしている不安」が生じやすくなるおそれがあります。年齢や役職、性別などの属性にかかわらず、誰もが自由に発言できるような意識づけや環境づくりが大切です

b.メンバー同士が協力し合える環境づくり

組織のメンバー同士がそれぞれ承認し、尊重し、助け合える風土づくりも大切です。意見や行動、課題に対して、頭ごなしに否定するよりも、傾聴などを通した受容的な態度を示す、感謝を伝える、といったポジティブな態度を心がけるとよいでしょう。

c.評価方法を見直す

減点法から加点法に変える、個人ではなくチームの成果を評価するといった評価方法の見直しも、チームメンバーに不安を呼び起こしにくい環境づくりに役立ちます。

d.メンバーの交流機会をつくる

年齢や役職などの組織構造を超え、リラックスして対話できる機会をつくることも、メンバー同士の信頼関係づくりに役立ちます。食事会や飲み会でざっくばらんに会話できる場を設ける、職場に交流が生まれやすいスペースをつくる、といった方法があります。

5.まとめ

パソコンを見ている男女

心理的安全性について、その概念や注目された背景、心理的安全性を損なう不安やメリット、そして、心理的安全性の高め方について説明しました。

誰もが率直な思いを口にできる心理的安全性の高い環境は、個人が安心して持てる力を発揮できるだけでなく、価値観や属性の異なるメンバー同士がそれぞれの能力を発揮し合ってイノベーションを生む組織風土も培うといわれています。組織づくりを担うマネジャーや、チームの一員として働く方など、組織の心理的安全性にまつわる不安や悩みについて相談したい場合は、ぜひカウンセリングもご検討ください。

(株)心理オフィスKでは心理的安全性の観点からのアドバイスやカウンセリングを行っています。そうしたことを希望される方は以下の申し込みフォームからご連絡ください。

文献


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