共依存とは人間関係に依存することです。さらにいえば相手から依存されることに依存してしまっている状態です。依存の一つなので、そればかりになってしまい、他のことに関心を向けることができなかったり、より成長することに意欲を向けることができなかったりします。
ここではそうした共依存のことについて解説をしていきます。
目次
1.共依存とは
共依存とは、アルコール依存症や薬物依存症などの家族やパートナーが、依存症者の行動によって自分自身の生活を犠牲にすることを指します。共依存者は、依存症者の問題を隠すために嘘をついたり、責任を負いすぎたりする傾向があります。共依存者の治療には、個人カウンセリングやグループカウンセリングが効果的です。また、依存症者と共に治療を受けることが望ましい場合があります。
共依存という言葉は、精神医学や心理学の専門用語というよりは、日常的に使われる言葉になっています。共依存という名前の特定の疾患や病気があるわけではありません。なので、共依存と診断されることはありませんし、こうであれば共依存だ、という明確な基準も確立されているわけではありません。
共依存は、アルコール依存症の家庭問題からアメリカで生まれた言葉とされています。依存症は関係性の病といわれることもあるように、周りの多くの人巻き込んでいきます。それでは、なぜ共依存は問題視されるのでしょうか。それは、共依存が特定の疾患を指すものではなく、あらゆる精神疾患や人間関係上の問題の背景にあるものだからです。
ある夫婦がいるとします。夫は毎日、昼夜問わず酒を飲み、一人で歩くことができないほどに酔ってしまいます。空き瓶や空き缶の片づけ、身の回りのこと、家事、仕事すべてを妻が担い、夫は居間で飲み続けているような状況です。妻は、自分がやらないと、家庭が崩壊すると思い全てをサポートしようとします。そうすればそうするほどに、夫の飲酒はエスカレートしていきます。
誰がどう見ても悪循環な状況なのですが、そんな毎日を過ごしていると、妻は、そこに自分の役割を見出すようになってしまいます。献身的にふるまい、家庭を守る自分という役割に落ち着いてしまうのです。そうしてでも自分の価値を認識していなければ、依存症の夫とやっていくことはとても苦しいことなのだということです。
アルコール依存症の家庭にはこのような依存関係が多々見受けられます。そして、この関係性こそが問題なのではないかとささやかれ、共依存と呼ばれるようになったといわれています。そして、現在では、アルコール依存症にかかわらず、もっと広範囲で論じられるものになっています。
共依存を含めた依存症についての全般的な解説は以下のページをご覧ください。
2.共依存のチェックリスト
共依存のチェックリストです。作者はピア・メロディという恋愛依存の研究者です。
「あてはまる」から「あてはまらない」の5つの選択肢にチェックを入れてください。
合計得点が37点以上の場合には共依存である傾向が見られます。
3.共依存の原因
共依存の人の多くは機能不全家族で育ったとされています。また、虐待との関連もあるとされています。親からの愛を感じられず育った人、あるいは、自分の望みや意見などが抑え込まれ育った人たちは、大人になってからも他者と健全な関係性を結ぶことが困難になりやすいといわれています。一種の愛着障害的な状態といえるかもしれません。
このような状態に陥った人は、人と関わるときどうすれば良好な関係を継続させていけるか過度に不安になってしまいます。何か不満があったとしても、相手を優先してしまいます。そして最終的には人に尽くすことでしか自分というものを見出せなくなるというメカニズムです。
機能不全家族や虐待についての詳細は以下のページをご覧ください。
4.共依存の特徴
ここでは共依存によくみられる特徴について解説します。
(1)共依存の一般的な特徴
共依存という診断は無いとはいえ、共依存の特徴は挙げることができます。次のような項目に心当たりがあれば、共依存的な傾向がある、あるいは共依存的な関係性を生みやすい人ということです。
- 他者を支配する
- 自分と他者との境界線があいまいである
- いい人であるように演じる
- 自己中心的
- 自己肯定感が低い
- 自分がない
どうでしょうか。いろんな人にも当てはまる項目にも思えます。
ここで、気をつけなければならないことがひとつあります。それは、ある人を指して共依存症者と明確に呼ぶことはできないということです。なぜなら、その人がすべての人間関係において共依存的であるとは限らないからです。恋愛関係では共依存的であっても、家庭や社会生活においては違うかもしれません。共依存というものは、とても流動的なものといえます。
(2)ピア・メロディによる共依存の特徴
恋愛依存の研究者であるピア・メロディは共依存の特徴を自己の観点から5つに分けています。
- ナルシシズムの障害(適切に自己評価できない)
- 自己保護の障害(人との距離を取ることができずに、人に侵入しすぎたり、人から侵入されたりしてしまう)
- 自己同一性の障害(自分を適切に確立できていない)
- 自己ケアの障害(自分をケアし、いたわることができない)
- 自己表現の障害(自分を適切に表現することができない)
これを見ると、単に依存だけが問題ではなく、自分自身の自信や自尊心の低さがあり、それゆえに共依存に陥っていることが分かります。
5.共依存の治療
共依存が問題になり、支障が生じている時には治療を受ける必要があります。ここでは共依存の治療について解説します。
(1)共依存の2つの治療法
共依存関係にある人が、自分たちの関係性を共依存と自覚し、客観的にみられることは少ないように思います。そう客観視できるのであれば、共依存的な関係性は深まっていかないと考えられます。それゆえ「共依存を治したい」という悩みをもってカウンセリングに訪れる人は少ないと思います。
多くの場合は、「親との関係がうまくいかなくてしんどい」「夫婦関係が悪い」「彼氏、彼女ともめていて辛い」そういった悩みとして語られるでしょう。これら悩みについて考えていく中で、背景に隠れている「共依存」的な関係があらわになるかもしれません。
そもそも共依存を治療するとはどういうことなのでしょうか。共依存の治療には2つの道があります。ひとつめは「共依存的な関係性自体を修正すること」です。ふたつめは「共依存的な自分の在り方を変えること」です。この2つのどちらに焦点を当て取り組むかによって、カウンセリングのスタイルや進み方は違ってくるでしょう。
(2)共依存の関係性を変化させる治療法
ひとつめの「関係性自体を修正する」というアプローチは、家族療法やカップルカウンセリングのようなものになるでしょう。これらのアプローチの特徴は、人間関係をシステムととらえている点です。誰かに負荷がかかっているなら、そうならないような別のシステムに変えていくということです。
共依存は、誰か一人の問題ではありません。共依存の問題に直接アプローチするには、ひとりではなく家族やカップルで相談室を訪れることが有効的であると考えられます。
しかしながら、このアプローチには問題があります。そうできない状況にある人がほとんどだということです。「仲良く相談室に来られるのであれば、そうしている」と思われることでしょう。
(3)共依存的な自分を変える治療法
ふたつめの「共依存的な自分を変える」というアプローチは、共依存を自分自身の問題としてとらえるものです。
共依存の根本的な問題は、「人に依存されることに依存している」という点でした。そのような自分自身の在り方を、個別のカウンセリングの中でみていくことになります。この点を見つめなおさなければ、仮に今の共依存関係にある人との問題が解決したとしても、別の場面で同じような共依存関係を生み出してしまうかもしれません。
6.共依存のカウンセリング
共依存に限らず、人間関係で悩んでおられる方は、その人間関係とは全く関係のない人と話をすること自体がとても重要なことです。
「友人や恋人の相談に乗っていたら、自分自身も巻き込まれてしまって、余計に複雑なことになった」というような経験は誰しもあるのではないでしょうか。特に「共依存」の問題を扱っていると、新たな依存関係を生み、問題が膨れ上がる場合があります。
「自分のことを知りもしない人に悩みを話しても」とカウンセリングに抵抗をもっておられる方もいらっしゃるかもしれませんが、あなたのことを何も知らない、ある種の無知で完全に第三者であるカウンセラーと話をすることこそ、意味があるケースがあります。
もし、共依存やその他人間関係で悩まれている方は、一度何も知らない人に話してみられてはいかがでしょうか。
7.共依存について相談する
共依存についての概要、原因、特徴、治療についてまとめました。共依存は医学的な診断名ではありませんが、それによる問題は非常に根深いといえます。また、共依存はなかなか自覚しずらい状態ですが、そこを自覚するところから治療やカウンセリングは出発します。
共依存についての相談をしたり、カウンセリングを受けたいという方は当オフィスでも行っておりますので、希望者は以下のページからお問い合せしてください。