コンテンツへ移動 サイドバーへ移動 フッターへ移動

神奈川県横浜市港北区大豆戸町311-1
アークメゾン菊名201号

心理オフィスKロゴ

演技性パーソナリティ障害への接し方とカウンセリング

私を見て

演技性パーソナリティ障害(演技性パーソナリティ)は、演劇的で性的誘惑に伴って、自己に過剰に注目を引こうとする過激な行動を実行するために、社会的に対人関係が不安定になる機能的な障害を認める状態です。

演技性パーソナリティ障害を適切に診断するためには、「本人、あるいは周囲の人々が日常生活で支障をきたして困っているかどうか」、「一時的でなくいかなる状況や場面でも認められる特徴所見があるかどうか」などの観点が重要なポイントなります。

今回は「演技性パーソナリティ障害」を中心に説明していきます。

演技性パーソナリティ障害とは

女性の顔

演技性パーソナリティ障害(演技性パーソナリティ)とは、人前で注目されることや承認を得ることを強く求め、自己顕示欲が高く、演技的な行動を取る傾向があるパーソナリティ障害の一つです。人との関係を上手く調整するために、自分自身を都合よく演じることがあります。また、自分が特別な存在であると信じ込んでいることがあります。治療には、認知行動療法や対人関係療法、心理的支援、カウンセリングが有効な場合があります。

演技性パーソナリティ障害の人は、他者からの注目や称賛、注意を引くことを強く求め、日常生活においてはまるで自分が役者のような過度に演技的な振る舞いをすることが多いです。演技性パーソナリティ障害は注目を引くために、演技的な振る舞いだけではなく、感情を強く出したり、危険な行動をしたり、時には恋愛関係や対人関係で問題を起こしたりすることもあります。また、被暗示性が高いという特徴も見られます。

演技性パーソナリティ障害では、患者さんは日常的に役者の演技のような行動をとることが多く、基本的に自分が周囲から注目の的とならない限りは過剰なストレスを抱いて自分自身を痛めつけて破壊するような言動を行う精神疾患のひとつであると認識されています。

人口の約2%程度が本疾患を罹患していると指摘されています。

演技性パーソナリティ障害は上位カテゴリーのパーソナリティ障害の中の一つです。そのパーソナリティ障害については以下のページをご覧ください。

演技性パーソナリティ障害の原因

ブランコと少女演技性パーソナリティ障害を発症する原因はいまだに明確には判明していませんが、いくつかのリスク因子が関連していると推察されています。

例えば、幼少期に保護者からの愛情を十分受けないといった母性的な愛情不足に伴う親子関係が一つの発症要因として伝えられています

また、両親や親戚などのなかに演技性の強い成人が存在する環境で発育した場合には、それらの様子を真似て手本にしてしまうことでおのずと発症する可能性も指摘されています。

それ以外にも、遺伝的な要素や個々の性格的要因、あるいは教育環境なども一定程度発症率と関連づけられて考慮されています。

演技性パーソナリティ障害の症状や特徴

笑う女性演技性パーソナリティ障害の特徴として、対人関係において他者に対して、身体的外観などを活用して過度に注意を引こうとする言動がよく認められることが挙げられます。演技性パーソナリティ障害では、全ての対象物を実際以上に重要に感じて、自分自身の考え方や感情を他者に向かって誇張する傾向があり、過度の情動性や周囲の注意力を集中させて惹きたいという強い欲求願望というパターンを特徴的としています。

具体例として、他者との人間関係が実際よりも親密だと信じ込む傾向があるために、他人を信用しやすい習慣性が認められます。

本疾患を抱えている患者さんは、他人の目をひくために自己中心的に大きな物音を立てる、突然泣き出すなど演技のような言動をすると共に、期待通りに注目されない場合には過剰にストレスとして感じて自己破壊を促進する挑発的な性行動を認めることもあります。

演技性パーソナリティ障害の症状として、基本的に自分の好感度を過大評価する傾向があり、自分を美化させるために他者を利用する、あるいは自分が気に入らないものに対しては強い敵意を抱いたりします。そのため、常日頃から際立って周囲の注目を集めたがる癖があり、肌の露出度が高い服装を着用する、まわりの場所や状況を考えずに性的なアピールを実践するなど自分の性的な魅力を強調しやすい傾向も認められます。

自分が日常のあらゆる場面において中心的存在になっていないと不快になりやすく、注目されずに抑うつ状態などの気分変調に陥ることもありますし、感情表現が表面的で大袈裟であり、言動内容に一貫性がなく主張内容が薄いのも特徴のひとつです

演技性パーソナリティ障害においては、患者さん自身の言動や考え方に特徴がある一方で、多くの場合には当該本人にはその自覚が無く病識が乏しいと言われています。

演技性パーソナリティ障害の診断

女性医師演技性パーソナリティ障害の有無を評価するためには、心療内科や精神科に受診して自分が他者にされていないと楽しくない、あるいは周囲からの関心を引くために高頻度で身体的外見を用いるなどいくつかの基準に該当することで診断に繋げます。

演技性パーソナリティ障害を正確に診断するためには,患者自身に継続的に過度の情動性、そして周りから注意を惹きたいという強い欲求パターンを認めることが重要視されます

具体的な問診内容としては、自分が注目の的になっていないと不快感やストレスを過剰に自覚する、他者との交流を図るうえで非常識な程度に性的に挑発して他者を誘惑する傾向がある、感情が急激に変化して極めて主観的で浅薄な表現を行うなどが挙げられます。

基本的には、これらの症状が成人期早期までに認められることが知られており、日常的に芝居がかった振る舞いをして、他者や周囲の状況に容易に影響を受けることも診断の一助となる所見となります。

DSM-5における演技性パーソナリティ障害の診断基準

過度な情動性と人の注意を引こうとする広範な様式で、成人期早期までに始まり、種々の状況で明らかになる。以下のうち5つ(またはそれ以上)によって示される。

  1. 自分が注目の的になっていない状況では楽しくない。
  2. 他者との交流は、しばしば不適切なほど性的に誘惑的な、または挑発的な行動によって特徴づけられる。
  3. 浅薄ですばやく変化する感情表出を示す。
  4. 自分への関心を引くために身体的外見を一貫して用いる。
  5. 過度に印象的だが内容がない話し方をする。
  6. 自己演劇化、芝居がかった態度、誇張した情緒表現を示す。
  7. 被暗示的(すなわち、他人または環境の影響を受けやすい)。
  8. 対人関係を実際以上に親密なものと思っている。

引用:DSM-5

演技性パーソナリティ障害の治療や治し方

二人の女性が打ち合わせ演技性パーソナリティ障害に対する医学的治療、薬物療法、カウンセリングなどを解説します。また、演技性パーソナリティ障害の人への接し方のポイントなども紹介します。

(1)演技性パーソナリティ障害の薬物療法

演技性パーソナリティ障害の治療法に代表例として、薬物療法が挙げられます。

薬物療法は、主に精神療法を補助する目的で使用されることが多く、抑うつ症状に対しては抗うつ剤、あるいは不安感を抱いている場合には抗不安剤が有効的に働くことが期待されています

精神療法を行っても、抑うつ感や不安症状が強く、全身のしびれ症状などを始めとする身体的症状が顕著である際には、抗うつ作用を有する薬剤や抗不安作用を発揮する薬物などを活用した薬物療法を積極的に実施することを検討します。

(2)演技性パーソナリティ障害のカウンセリング

演技性パーソナリティ障害を患っている患者本人は、自分の言動が異常であるという認識が乏しく、カウンセリングを用いて実践される精神療法では、患者の真の欲求や本人の心の根底にある考え方や課題を深く追求して明確にすることから開始されます

精神療法のなかで充実したカウンセリングを行うことによって、他者の注目を集めるために無理なやり方をせずに上手くコミュニケーションを確保できるようになることを目標にして治療に当たります。

また、自尊心を保つ上で演技的行動がいかに不適応な方法であるか、患者の言動が周りの方々に少なからず影響を与えて、時に社会的に有害になっていることを理解させて自分自身で納得できるように問題点を洗い出して共有していくことも重要なポイントとなります。

さらに、カウンセリングの中でも精神分析的心理療法が効果的であると言われています。演技性パーソナリティ障害の対人関係のパターンや幼少期の課題などをカウンセラーと一緒に探索し、演技性パーソナリティ障害のパーソナリティの核心に迫っていくことで改善が見込まれます

精神分析的心理療法についての詳細は以下のページをご覧ください。

(3)演技性パーソナリティ障害の人への接し方や対応

演技性パーソナリティ障害に伴う症状によって、周囲の人も巻き込まれて非常に困惑してしまう場面も多々見受けられます。

多くの場合には、演技性パーソナリティ障害である患者本人は自分自身のことを病的では無く正常であると認識しており、日常的に接する場合や集中的に治療を実践する際には本人を傷つけないように慎重な対応が求められます。

日常場面において、周囲の人々にとって重要な対応策は、本人の希望や考え方に巻き込まれすぎないことであり、本人が望むように周囲が動くと、かえって症状がエスカレートして悪化することが危惧されています

また、実際の治療の際には、カウンセリングの回数を重ねて、精神療法や薬物療法を上手く活用することによって心の奥底に潜む葛藤や課題を共有して整理していくことが重要です。

本疾患は、年齢を経て目立っていた症状が徐々に落ちついて改善する傾向が見受けられますので、患者本人のみならずそのご家族や親しい間柄の方も焦らずに長い目で見守ってあげると良いでしょう

演技性パーソナリティ障害についてのよくある質問


演技性パーソナリティ障害は、自己中心的な行動や感情的な過剰反応、他者の注目を集めるための行動が特徴的な精神疾患です。患者は他者の注目を集めるために劇的で誇張された表情やジェスチャーを用いることが多く、人間関係において表面的であったり、感情が不安定である傾向があります。この障害は、幼少期の環境や育ち方、または自己認識の欠如といった要因が影響を与えるとされています。

演技性パーソナリティ障害の主な症状には、過度な情動性や注意を引こうとする行動が含まれます。具体的には、不適切なほど性的に誘惑的な格好をしたり、他人を挑発したりすることがあります。また、些細な出来事をとめどなく悲しんだり、かんしゃくを起こしたりすることもありますが、これらの感情表現は非常に速く出たり消えたりするため、真実味に欠けることがあります。その他にも、感情が不安定であり、人間関係において過剰に依存したり、常に注目を求める行動が目立つことがあります。

演技性パーソナリティ障害の原因は完全には解明されていませんが、幼少期に保護者からの愛情が不十分であったことや、家族内に同様の障害を持つ人がいることが影響している可能性があります。親が感情的に冷淡であったり、過剰に干渉することで、自己のアイデンティティの確立に苦しむことが原因と考えられます。また、個人の性格的要因や、過去のトラウマ、教育環境も関与しているとされています。

演技性パーソナリティ障害の診断は、精神科医や臨床心理士による詳細な面接と評価を通じて行われます。診断基準には、注目の的になっていないことによる不快感、不適切に誘惑的または挑発的な他者との交流、劇的な行動や感情の表現などの特定の症状が含まれます。これらの症状が一貫して現れ、日常生活や対人関係において支障をきたす場合に診断が下されます。

演技性パーソナリティ障害の治療には、心理療法が主に用いられます。特に、認知行動療法や精神分析的アプローチが効果的とされています。治療の目的は、患者が自己認識を深め、対人関係のスキルを向上させることです。認知行動療法では、自らの行動パターンを見直し、対人関係の問題を解消するための具体的なスキルを身につける支援を行います。一方、精神分析的アプローチでは、過去のトラウマや家族関係の影響を理解し、それらを改善するためのアプローチが取られます。場合によっては、症状を緩和するために薬物療法が併用されることもあります。

演技性パーソナリティ障害は、適切な治療を受けることで症状の改善が期待できます。治療により、自己認識の向上や対人関係のスキルの改善が見られることがあります。ただし、治療には時間がかかる場合があり、患者の積極的な参加と長期的な取り組みが必要です。症状が完全に消失することは難しい場合もありますが、生活の質が向上し、社会生活においての適応がしやすくなることが期待されます。

演技性パーソナリティ障害と自己愛性パーソナリティ障害は、どちらも自己中心的な行動が特徴ですが、演技性パーソナリティ障害は他者の注目を集めるための過度な情動性や劇的な行動が主な特徴です。一方、自己愛性パーソナリティ障害は、自分の重要性を過大評価し、他者からの賞賛や承認を強く求める傾向があります。演技性パーソナリティ障害は、他者との感情的なつながりを求めるがゆえに、頻繁に不安定な人間関係を引き起こすことが多いのに対し、自己愛性パーソナリティ障害は自己満足感や承認欲求が強く、他者との共感が欠けることが特徴です。

演技性パーソナリティ障害の人との接し方としては、過度な演技的な振る舞いに過剰に反応せず、冷静かつ一貫性のある対応を心掛けることが重要です。相手の感情的な過剰反応に対しては、適切な境界を設定し、過度に共感しすぎないように注意することが必要です。感情の不安定さや自己中心的な行動に対して、必要に応じて専門家の助言を求めることで、より健康的な関係性を築く助けになります。また、本人が自己認識を深め、行動を改善する意欲がある場合には、治療を受けることを促すことも重要です。

演技性パーソナリティ障害の人は、注目を集めるために自殺のそぶりや脅しを行う危険性が高いとされています。これらの行動は、他者の反応を引き出すための手段として用いられることがあります。したがって、周囲の人々はその意図を慎重に評価し、適切な対応をすることが求められます。もし自殺念慮がある場合は、専門機関による迅速な支援が必要であり、周囲の人々の注意と支援が非常に重要です。

演技性パーソナリティ障害の予後は、適切な治療と支援を受けることで改善が期待されますが、症状が完全に消失することは難しい場合があります。治療を受けることで、自己認識の向上や対人関係のスキルが向上し、生活の質が改善されることがあります。しかし、症状の改善には時間がかかり、患者自身の努力と継続的な取り組みが必要です。治療を受けたとしても、自己認識や感情のコントロールに課題が残ることがありますが、支援と協力によってより良い生活を送ることが可能です。

演技性パーソナリティ障害は、特に女性に多く見られると言われています。ただし、男性にも発生することがあります。一般に、感情的で社交的な性格を持つ人に多い傾向がありますが、誰でも発症する可能性があります。この障害は、注目を集めることや他者の承認を強く求める特徴があるため、自己表現が強い人に見られやすいと言われています。

(株)心理オフィスKでカウンセリングを受ける

タブレットを操作する女性演技性パーソナリティ障害は、社会生活における人間関係の中で無意識的に自分に役柄を決めて演じ、派手な恰好やオーバーアクションを実施することで他者の注意力を引き付けるために行動するパーソナリティ障害のひとつであると認識されています。

特に、抑うつ状態や不安感に伴う自傷行為などの症状が前面に出現している際には、御家族など周囲の方は無理強いすることなく、速やかにパーソナリティ障害治療を専門としている精神科や心療内科を受診して相談するように心がけましょう。

演技性パーソナリティ障害に対しては、専門的知識を有する心理カウンセラーによるカウンセリングを含めた精神療法やそれらを補完する薬物治療を組み合わせることで症状改善を期待することができます

(株)心理オフィスKでも演技性パーソナリティ障害に対する心理療法やカウンセリングを行っています。ご希望の方は申し込みフォームからお問い合せください。

文献

この記事は以下の文献を参考にして執筆いたしました。