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ギャンブル依存症のカウンセリング・治療

勝って負ける

ここではギャンブル依存についての原因、定義、診断、症状、問題、治療などについて解説します。ギャンブル依存症は酷いと日常生活や社会生活に大きな支障をきたしてしまいます。なぜなら、それは性格や意思の問題ではなく、病気や障害であるからです。

そのため、専門的な知識を知り、専門家の治療を受ける必要があります。

1.ギャンブル依存症とは

駅のホームで泣く女性ギャンブル依存症とは、ギャンブルに対する異常な執着や衝動的な行動が繰り返され、生活や人間関係に支障が出る状態のことです。ギャンブル依存症は、脳の報酬系が変化し、自己制御が困難になることで発生します。治療には、専門家による認知行動療法やギャンブル回復プログラム、カウンセリングがあります。早期の治療が重要です

1997年に行われた研究では、ギャンブル依存症の生涯有病率は5.4%で、過去1年間の有病率は3.9%です。そして、何らかの物質乱用の既往があると、ギャンブル依存症に対する脆弱性が高くなることも研究で示されています(Shaffer et al,1997)。

性別による比較では、女性よりも男性の方がギャンブル依存症になりやすいようです(Shaffer et al,1999)。また、婚姻関係の要因では別居や離婚をしているとギャンブル依存症になりやすいようです(Cunningham-Williams et al,1998)。そして、結婚している人はなりにくく、かつ治療を求める率が高かいようです(Petry&Oncken,2002)。さらに15件の調査で、教育水準と収入が低いほど、ギャンブル依存症になる傾向を示していました。

ギャンブル依存症の有病率はギャンブルの利用のしやすさに伴って増加するという研究があります(National Reseach Council,1999 ; Petry,2003)。しかし、ギャンブルの利用のしやすさとギャンブル依存症の関係を理解することはたやすいことではなく、予測することもできません。ギャンブルにさらされることはギャンブル依存症になる上での必要条件ですが、利用のしやすさはギャンブル依存症の数ある問題のなかの一つにすぎないようです(Whelan,2007)。

ギャンブラーズ・アノニマスのメンバーを対象にした調査研究では、ギャンブルの為、30%が仕事を失い、37%が雇い主から窃盗をし、50%が5000ドル以上の盗みをし、その他の違法行為もよく見られました(Potenza et al,2000)。

予後においては、過去1年間の有病率と生涯有病率の比較から、少なくとも1/3がギャンブル依存症を解決していることが示唆されています(Hodgins et al,1999)。ギャンブル依存症を解決した人の10%ほどが専門家の治療を受けていました(National Reseach Council,1999 ; Gerstein et al,1999)。ギャンブル依存症を解決した人の少なくとも20%は専門家の手助け無しに改善していました(Hodgins et al,1999 ; Slutske,2006)。

こうした研究から分かることは、ギャンブル依存症はそのままでは治ることは少なく、しかし、専門家の治療や支援を受けることで回復する可能性が高い障害であることが分かります

また、ギャンブル依存症を単一の理論か説明することはできません。多くの要因や影響下において起こっているからであす。そうしたことを統合的なモデルにしたものが下の図です(Whelan,2007)。

問題ギャンブルの統合モデル
問題ギャンブルの統合モデル

ギャンブル依存症を含めた依存症についての全般的な解説は以下のページをご覧ください。

2.ギャンブル依存症の診断

男性と診察をする医師ICD-10(国際疾病分類)ではF63.0とコードされ、診断基準は以下のとおりです。

  1. 持続的に繰り返される賭博。
  2. 貧困になる、家族関係が損なわれる、そして個人的生活が崩壊するなどの、不利な社会的結果を招くにもかかわらず、持続し、しばしば増強する。

DSM-5におけるギャンブル依存症には、ギャンブルによる興奮があり、ギャンブルがないと落ち着かなくなり、辞めることをしばしば失敗していたり、ギャンブルについて嘘をつくなどをして社会的な支障が生じていたり、等といった基準を4つ以上該当すると診断基準を満たすとしています

また、そうしたことは躁病などでは説明がつかないことも条件として挙げられています。

3.ギャンブル依存症の評価尺度

笑っている二人の女性ギャンブル依存症の診断と見立てのため、以下のような評価尺度があります。

  • ギャンブル依存症の重症度を測るための診断面接(DIGS)
  • 南オークスギャンブルスクリーンテスト(SOGS)
  • Lie/Bet質問紙
  • ギャンブル行為時間記録振り返り表(G-TLFB)
  • 依存重症度指数-ギャンブル下位尺度(ASI-G)
  • ギャンブラー信念質問票(GBQ)
  • ギャンブル自己効力感質問票(GSEQ)

4.ギャンブル依存症の治療とカウンセリング

カウンセリングをする男女ギャンブル依存症とその他の疾患との鑑別診断を行い、合併症の査定をし、重症度の評価をすることが当面の作業です

そして、心理的要因であり、治療結果を左右する3つの要因を評定する必要があります。ギャンブルに関連する認知の歪み、ギャンブル行為を制御することに対する自己効力感、変化に向けての準備状態です。さらに、対人関係、家族関係、職場環境といったギャンブル依存症を取り巻く環境から利用可能なリソースは同定すべきです

ギャンブル依存症に効果があるとされている治療方法は以下の3つが挙げられます。

  • 認知行動療法
  • 動機づけ面接法
  • 薬物療法

認知行動療法の観点では、Ladouceur(2002)は、教育的取り組み、認知の歪みの修正、問題解決技能訓練、社会技能訓練、再発予防の5つを含んだ治療介入モデルを構築しました。一方、Petry(2006)は、ギャンブル行為の機能分析、引き金の同定、代替行動分化強化、衝動コントロール技法、対人関係の葛藤処理、長期的展望からの決断を含めた、やや行動療法に比重を置いた治療介入を行い、その他に自助グループへの参加も推奨しています。

認知行動療法についての詳細は下記に記載しています。

これら2つの治療介入モデルは、自助グループへの参加やワークブックでの自習に比べると治療効果は大きいことが示されています。ただ、コストがかかり、身近にそうした治療を受ける環境にない場合には、自助グループへの参加やワークブックでの自習によって少なからずの改善も見込めるとしています。

動機づけ面接法では、指示的でありつつも患者中心的に進めなければなりません。そして、患者は自らが工夫し、自ら解決に向けて動くリソースを持っており、それを掘り起こすことに苦心する必要があります。良くなりたいという動機がない患者はおらず、小さいものであっても良くなりたいという動機は必ず存在します

適切な照らし返しや振り返り、介入により、潜在的にある動機を賦活するために特化した心理療法が動機づけ面接です。患者の抵抗をうまく活用しながら、両価性を意識化させながら、行動変化に導くように手助けすることがカウンセラーの役割となります。

薬物療法では、SSRI、オピオイド受容体拮抗薬、気分安定薬の効果が見込まれていますが、まだ実証されているとは言い難い状況です。

5.ギャンブル依存症のカウンセリングを受ける

パソコンを見ている男女ここではギャンブル依存症についての診断や評価方法、治療方法について概観してきました。日本社会では、比較的身近にギャンブルがあり、ギャンブル依存症になる刺激にあふれています。我々カウンセラーのところに日々来られるクライエントの中にもギャンブル依存症の方はいるでしょう。ギャンブル依存症を主訴としていなくても、併存していたり、背景にあったりすることは多いと思われます。そうした中で、ある程度ギャンブル依存症についてのスタンダードな理解と治療方法を知っていることは日々の臨床をしていく上で価値があると思います。

しかし、それは決してスタンダードな治療しかしてはダメであるということではありません。教育分析や個人分析、スーパービジョンを受けているカウンセラーでも、その力量や技術によってはできないことも多いでしょう。できないことをできないと認識し、適切な機関にリファーすることも我々の仕事であるし、できないものを過度に背負い込むことは倫理的ではありません

さらに、患者のおかれた状況や、内的要因によってスタンダード以外のことをする方が功を奏することも珍しくはありません。なぜなら、カウンセリングはカウンセラーと患者が双方で織りなす対話であり、関係そのものに治療要因があるからです

いずれにせよ、ギャンブル依存症はなかなか一人では回復しにくい障害の一つです。そのため、臨床心理士や公認心理師などの専門家のカウンセリングを受けると良いでしょう。

当オフィスでもギャンブル依存症に対するカウンセリングを行っています。希望があるからはご連絡ください。

6.文献

この記事は以下の文献を参考にして執筆いたしました。