ロールシャッハテスト

1.ロールシャッハテストとは

ロールシャッハテストは、「インクを落としてできた模様」だとお聞きになった方は多くいらっしゃると思います。この心理テストは、偶然にできた何枚もの図版から、10枚を抽出して作成されました。10枚の図版を1枚ずつ眺めて、何に見えるか、どんな風に見えるかについて話していただきます。正答も誤答もありません。何に見えてもいいのです。また、数多く見えた方がいいということもありません。つまり、見えたまま感じたままを自由に話していただく心理検査です。無意識レベルに働きかけ、その人のパーソナリティの特性を知るのに長けた検査です。

ロールシャッハテスト図版のイメージ図

図1 ロールシャッハテスト図版のイメージ図

2.ロールシャッハテストの歴史

ロールシャッハテストはスイスの精神医学者であるヘルマン・ロールシャッハ(1884-1922)によって開発されました。彼の写真は下にあります。ブラッド・ピットに似たイケメンです。

ヘルマン・ロールシャッハの写真

図2 ヘルマン・ロールシャッハの写真

 ロールシャッハテストは1911年頃に子どもの遊びから着想を得て、左右対称のインクの染みが精神疾患の診断に用いられないかと研究をはじめました。最初はロールシャッハ図版は15枚だったそうですが、資金や出版社の事情により10枚に減らされることを余儀なくされたようでした。さらには、できあがった図版はヘルマンが作成したものよりも小さく、またインクも滲んでおり、色も明らかに誤植だったようでした。しかし、ヘルマンはそうして出来てしまった図版の方が診断には適していると直感しました。彼は研究をさらにやりなおし、この10枚の図版を用いて様々な被検者からデータを取り、1921年に「精神診断学」という書籍でロールシャッハテストを発表しました。しかし、その出版からわずか9ヶ月後に腹膜炎を伴う劇症の虫垂炎のため病死してしまいました。37歳の若さでした。

彼の死後、様々な人たちによって研究が続けられました。彼のロールシャッハテストの研究は未完だっただけに、様々な方向性から検討することができたようでした。ロールシャッハテストの解釈技法にはいくつかの方式があります。日本では、片口式、名大式、阪大式などが有名です。そして、そうした様々な方式を包括し、統合しようとしたのがエクスナー(1928-2006)です。彼はロールシャッハテストの信頼性と妥当性を高めるために研究を重ね、徹底的に数値化していくことに取り組みました。そうした研究の成果は今日ではエクスナー式として今ではよく使われています。

3.ロールシャッハテストの実施

ロールシャッハテストは約1時間半~2時間ほどかかります。長時間になる場合には途中で休憩を入れることもありますが、可能なら休憩なしで一気に最後までしてしまう方が良いでしょう。

実施にはできるだけ静かで、ほど良い室温と湿度の部屋が良いです。不快な部屋であったり、騒がしかったりするとロールシャッハテストに集中することができませんから。

実施ですが、まず検査者が実施についての説明をします。これを専門的には「教示」と言います。分からないことがあれば検査者にお尋ねください。その後に、ロールシャッハ図版を見ていき、それぞれの図版が何に見えるのかをいくつか答えていきます。学力試験などではないのに、正解や不正解はないので、自由に見えたように答えると良いでしょう。

4.ロールシャッハテストで分かること

  • 興味・関心の内容
  • 欲求や情緒の内容
  • かかえている葛藤や問題の内容
  • 新しい出来事と出会った時の反応や対応の特徴:何に対処するのが得意か、苦手か。新しい場面や出来事に対してどう適応するか、どの程度の動揺が生じるかが表れます。
  • 緊張や不安:その内容や程度が表れます。
  • 動揺からの立ち直り方と適応力:立ち直る力がどの程度備わっているか。また、これまでの対処の仕方がどのような内容であったか、またこれまでの方法では対処できなくなってきている場合にはその様子が表れます。
  • 情緒や感情:生じてくる自分の情緒や感情を否定や無視によって排除せずに、受け入れて入れられているかどうか。受け入れられないと無理が生じたり、居心地の悪さを感じたりすることがあります。
  • 現実検討力:自分自身や周囲の人たち、自分を取り巻く世界をどのように捉えているのか、その捉え方と現実にどの程度のズレがあるのか否か。それが生じている問題に影響するレベルのものかどうかが表れます。
  • 特徴的な対人関係パターン:これまでのパターンの特性が表れます。

などが挙げられます。

5.ロールシャッハテストの役立て方

上記のことを踏まえて、自分の特性を知り、かかえている問題に、その特性がどう影響しているか検討するのに役立てます。そして新規な状況と出会うことでうまく対処できなくなった時や、自分では受け入れ難い感情が生じた時に、強い不安や緊張、動揺からどのように立ち直ってきたのかを理解したうえで、その立ち直り方が今後も有効なのか、それともプラスアルファで別の方法を見出す必要が出てきているのかを検討するのに役立てます。私たちにとって重要なことは、動揺しないことや不安にならないことではありません。そこから「立ち直れるかどうか、どんな風に立ち直れるか」が最も大切なところです。

どの心理検査にも言えることですが、心理検査の結果は、カウンセリングに役立てることが望ましく、問題の解決の糸口とすることが良いでしょう。ですので、カウンセリングを受けられる方、受けられている方が必要に応じて受けられても良いでしょう。

また、ロールシャッハテストが無意識レベルに働きかける心理検査ですので、検査者によっては、意識的なレベルでの対処力や適応力を理解する別の心理検査と組み合わせ、比較検討し、参考にすることもあります。

なお、検査結果に上記のことが全て網羅して表れる訳ではありません。表れないこともあります。また、基本的な特性は大きく変わりませんが、検査を受けられたその時の状態に左右されることもあります。あくまでもご自身の特性の理解や問題解決の糸口として利用していただけると良いと思います。

6.ロールシャッハテストの信頼性と妥当性

ロールシャッハテストはこれまで様々な研究が行われ、その信頼性と妥当性が繰り返し議論されてきました。信頼性とは結果が時によってブレたりせず、一貫しているのか、安定しているのかという指標で、妥当性とは測ろうとしていることが正しく測れているのかという指標です。

信頼性についてですが、ロールシャッハテストの集計や解釈は機械的にできないところがあり、職人技が求められるところがあります。そのため、同じ検査データを別々の人が集計と解釈をした時に食い違ってしまうことがあります。このことからロールシャッハテストの信頼性は高くないという意見があります。しかし、一方でいくつかの研究知見を見ると、一定程度以上のロールシャッハテストの経験年数がある検査者であれば、集計と結果が高い一致率が示されているようです。

妥当性についてですが、様々な精神疾患・精神障害を判別できるのかという研究はヘルマン・ロールシャッハ以来、かなり行われてきました。ヘルマン・ロールシャッハは、ヒステリー、強迫神経症、統合失調症、躁うつ病、てんかん、器質性精神障害などにロールシャッハテストを実施し、その特徴を描き出しました。さらに昨今では自閉性障害やADHDといった発達障害の判別にロールシャッハテストが貢献できるのかといった研究がしばしば行われています。現在もまだ研究途上で、明確な結果は出ていませんが、いくつかの重要な指標は検出されているようです。今後の研究に期待です。

その他に、ロールシャッハテストは何らかの病理や疾患の判別に活用することよりも、その人のパーソナリティや無意識といったその人らしさを浮き彫りにすることにその重要性を見出すことができます。また、さらにはカウンセリングや心理療法の適否やプロセスを予想することにその力を発揮する、という研究があります。

7.ロールシャッハテストを受けるには

当オフィスでロールシャッハテストを受けることが可能です。実施+レポート+結果報告の面接(30分)のセットで18,000円となります。

また、専門家の方向けにロールシャッハテストについてのスーパービジョンも行っております。

ロールシャッハテストの受検の申し込みや問い合わせは、電話(045-642-5466)かメール( info@s-office-k.com )かメールフォームでご連絡ください。

【文責:鈴木眞弓、北川清一郎】

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