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家庭内暴力のカウンセリング・相談

暴力の裏にある苦しみ

家庭内暴力は、子どもが小さいうちは受け流すことができても、大きくなるにつれ暴言・暴力への対処に困り、問題であると認識できないケースが多いです。

今回は家庭内暴力の概要と原因、法的及び心理学的な対応を解説します。適切に認識するためには、具体的な知識を得ることが重要です。

1.家庭内暴力とは

ベッドの上で暴れる2人の子ども

家庭内暴力とは、家庭内で配偶者、子ども、両親、祖父母など、身近な人から暴力を受けることを指します。身体的、精神的、性的、経済的な暴力があり、被害者はしばしば恐怖や孤立感に苦しんでいます。広義の意味では家族から家族へ向ける行為ですが、主には子どもから親に向ける暴力暴言などを意味します。法律で禁止されており、被害者は警察や支援団体に相談することができます。

なお、パートナーからパートナー、またはパートナーであった人への行為はドメスティックバイオレンス(DV)、親から子どもへの行為は児童虐待と区別可能です。家庭内暴力の内容の一例は以下の通りで、物を壊すなどの破壊行為も含まれています。

  • 身体的な暴力(殴る、蹴る、押し倒す、髪を引っ張る、凶器を向けるなど)
  • 暴言(罵る、大声で怒鳴りつける、命令的・威圧的な態度をとるなど)
  • 破壊行為(物を壊す、壁に穴をあける、物を投げてくるなど)

法務省の令和3年版犯罪白書が把握しているだけでも、家庭内暴力の件数は平成23年頃から年々増加しており、現在では家庭内の問題として深刻化してきています。

加害者としてもっとも多いのは中学生ですが、近年では小学生による家庭内暴力が急増しており、高校生以下の子どもによるケースが大半を占めています。暴力などは家庭内でのみで行われて外部には分かりにくいケースも多いため、実際のケースはさらに多いことが予想されます。

少年による家庭内暴力

図1 少年による家庭内暴力 認知件数の推移

2.家庭内暴力の原因

見つめてくる子ども家庭内暴力の原因の特定は難しく、親を取り巻く環境要因、学校などの社会的要因、子ども個人の特性要因などが絡み合っていると考えられます

たとえば、親を含む環境要因であれば、親からの過干渉や、暴力・暴言・ネグレクトなどの児童虐待経験によって不満が募り、反発的に行動化する場合があります。社会的要因であれば、「友だち関係がうまくいかない」「周りの子みたいに勉強ができない」「いじめに遭った」など、友人や集団など子ども社会への不適応感からくる強いストレスが引き金となり行動化することもあります。子ども個人の要因であれば、不満を溜め込みやすい、キレやすく衝動性を抑えきれない、暴力や癇癪で周囲をコントロールしようとする幼さなどが挙げられます。また、子どもが発達障害であり、その特性から怒りのコントロールができない場合もあるため、必ずしも親の関わりが原因というわけではありません。

多くの要因の背景には、内・外部からのストレスにより抑圧された感情や不全感を爆発させる共通点が見られます。近年では毒親やスクールカースト、発達障害といった言葉も広がり、子どもがストレスを抱えやすい風潮となっているのも原因の1つかもしれません。

3.家庭内暴力の対策と解決策

水遊びをする子ども家庭内暴力は限局的な環境下で行われるため周囲に気づかれにくく、家庭の問題であるため外部に相談しづらいといった特徴があります。しかし、過度で継続的な暴力や暴言は、時に他者の心身を深く傷つけてしまうため対策は必須です。

ここでは、法律的な対応と心理学的な対応を紹介します。

(1)家庭内暴力に対する法律的な対応

「家庭内暴力があるけど何処に相談すればいいか分からない」という場合、精神保健福祉センターや児童相談所、警察などに相談することで解決につなげることができます

精神保健福祉センターは、精神保健福祉法の第6条により各都道府県または政令指定都市に設置されており、地域全般のメンタルヘルスに対応する相談機関です。家庭内暴力での不安を話したり、子どもへの接し方を相談したりすることができます。子どもの発達障害の傾向や被害者に心身の不調が見られる場合は、地域の医療機関とつなぐ役割も期待できるため、心強い味方となるでしょう。

児童相談所は、児童福祉法の第12条により各都道府県及び政令指定都市に設置されており、18歳未満の子どもに関する相談機関で、児童虐待や育児の相談が可能です。特に、児童虐待であれば、被虐待児を発見した場合は児童相談所や警察に通告する必要があると児童虐待防止法で定められています。また、家庭内暴力によっては原則2カ月以内の一時保護が適応され、親子間の距離をとる対応が挙げられます。親子間の暴力や暴言が著しく家庭内での解決が困難な場合の助けになるでしょう。

家庭内暴力の程度が深刻で身の危険を感じる場合は、警察への相談も重要な対応です。行為によっては以下のような罪名が適応されます。

  • 暴行罪(刑法第208条):殴る、蹴る、髪を引っ張るなど
  • 傷害罪(刑法第204条):暴行により相手にケガや精神障害を負わせるなど
  • 脅迫罪(刑法第222条):「殺してやる」と生命を脅かす暴言など

また、DVであれば2001年に「配偶者暴力防止法(DV防止法)」が公布されています。裁判所に申し立てることで6ヶ月の接近禁止命令や2ヶ月の退去命令によりパートナーもしくはパートナーであった人から離れることも可能で、違反者には1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。

なんとなく警察への相談を躊躇う人もいますが、心身の危険を感じる場合は速やかに相談して介入してもらうことも重要です

(2)家庭内暴力に対する心理学的な対応

家庭内暴力は家庭の問題であるがゆえに外部へ相談しづらく、被害者が1人で抱え込んでしまうケースが起こりえます。また、「子どもの反抗期かも」「家庭内暴力っていうほど大袈裟じゃないと思う」など状況を適切に認識することが難しい場合もあり、被害者が心理的に孤立したりストレスを抱え込んだりしやすいリスクがあります。

第一に、被害者が少しでも悩む場合は身近な他者やカウンセラーに相談することが大切です。第三者に話を聴いてもらうことで気持ちの整理や心理的な安心感の獲得につながり、専門家からアドバイスを受けることで子どもへの対応を学ぶこともできます。

第二に、子どもの暴言・暴力は社会への不適応感や不適切な感情表現、発達特性などが挙げられます。家庭内暴力に対して無視や「止めなさい!」と怒鳴る対応は子どもの問題行動を助長する可能性があります。子どもが落ち着くまでは距離をとり、落ち着いてからは子どもを心配する気持ちや暴力を振るわれると痛いことを伝えてみましょう。勉強の悩みや友人関係のストレス、親への反抗、発散方法の分からなさなど見守る中で問題行動の原因を探り、子どもの問題解決に寄り添う姿勢も大切です。子ども自身どうすればいいか分からず暴れてしまうこともあるため、子どもの環境を整える対処や、暴言や暴力の代替行動を一緒に探すようにしましょう。そのためには、子どもを腫れもの扱いせずに見守る関わりが重要になります。

子どものストレス耐性が非常に低く、衝動的にカッとなり交流できない状態であれば、発達障害の傾向も考えられるため、医療機関に相談する対応も必要です

4.家庭内暴力に対するカウンセリングを受ける

ボール遊びをする4人の子ども家庭内暴力は被害者側にとって辛い問題ですが、加害者側も何かしらの要因に苦しんでいることが多いです。身の危険を感じる場合は相手から距離をとり心身の安全を守ることが大切ですが、相手が落ち着いたときには向き合う姿勢をとりましょう。些細でも悩む場合は外部に相談することが問題解決につながります。

(株)心理オフィスKでは家庭内暴力に困っている人の相談にものっています。相談やカウンセリングをご希望の方は以下の申し込みフォームからご連絡ください。

文献

この記事は以下の文献を参考にして執筆いたしました。