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自己愛性パーソナリティ障害のカウンセリングと治療

傷ついたから傷つけたくなる

現代は自己愛の時代であると言われてから久しくなりました。現代人は多かれ少なかれ自己愛の問題を抱えています。しかし、自己愛は適度にある方が健康であるとも言われています。その一方で、自己愛が過度になり、他者との関係でトラブルになるようであれば、それは自己愛性パーソナリティ障害となってしまうでしょう。

ここでは自己愛性パーソナリティ障害について解説しています。

1.自己愛性パーソナリティ障害とは

偉そうにしている男性自己愛性パーソナリティ障害(自己愛性人格障害、Narcissistic Personality Disorder: NPD)とは、歪んだ「自己愛」が形成されたことにより自尊心の調節が困難で、「自分は特別で重要な存在である」と誇大な感覚を持つパーソナリティ障害(人格障害)の一つです。そうした特徴から対人関係や恋愛関係ではトラブルになったりすることも多く、家庭や職場における「モラハラ」の加害者となっているケースもしばしば見られます

親や家族から十分な愛情が得られないような不適切な養育環境が歪んだ自己愛の形成に大きく影響していると考えられています。主に個人カウンセリングや集団カウンセリングによって治療を行っていきますが、いまだに有効な治療法は確立されておらず治療が困難なケースも多いです。

自己愛性パーソナリティ障害の推定生涯有病率は、報告によって差はあるもののアメリカでは増加傾向にあり最大で6.2%にも及ぶ可能性があるという研究結果が出ています。また、女性より男性に多い傾向があることが知られています。うつ病や強迫性障害、パニック障害などの他の精神科疾患と併存していることもあり、特に神経性無食欲症(拒食症)などの摂食障害と関連が深いと報告されています。

過去には小説家の三島由紀夫、画家のサルバドール・ダリ、指揮者のヘルベルト・フォン・カラヤンといった有名人も自己愛性パーソナリティ障害であったと考えられています。

2.自己愛性パーソナリティ障害の特徴

鏡に映る女性 鏡に映る女性人間は誰でも、自分自身を対象とした愛である「自己愛」を持っています。「自己愛」と聞くと、「ナルシスト」のようにネガティブな印象を抱くかもしれませんが、ここで言う「自己愛」とは、自尊心に近い考え方であり、ありのままの自分を価値があるものと考えて大切に思うことであり、私達人間が生きていく上で普遍的かつ必要不可欠なものです。この「自己愛」に対する捉え方が歪んでしまい、ありのままの自分を愛することができず、「自分は優れていて素晴らしく、特別で偉大な存在である」と思い込んでしまうのが自己愛性パーソナリティ障害です

このような思考により、自己愛性パーソナリティ障害の人物は傲慢さを示して、周囲に優越性を誇示して、権力を求め続ける傾向があります。周囲の人に称賛を求め、時に人を利用して手柄を横取りしようとすることもあり、他者に対する共感能力にかけているため、多くの人間関係においてトラブルを抱えています。

逆に、歪んだ「自己愛」により正常な自己像が確立されていないため、臆病で非常に傷つきやすい側面も持っています。損得や利害関係に神経質で周囲からの評価を常に気にしており、時に抑うつ状態や引きこもりになったりすることも自己愛性パーソナリティ障害の特徴の一つです。

家庭や職場で他者を精神的に傷つけて支配する「モラハラ」が近年社会問題となっていますが、自己愛性パーソナリティ障害と深い関連があると考えられています。自己愛性パーソナリティ障害の人物が歪んだ自尊心を保つため、家族や職場の同僚、恋人を貶め、見下して優越感を得ることで、「モラハラ」が引き起こされるケースが多くなっています

3.自己愛性パーソナリティ障害の原因

泣いている二人の子ども自己愛性パーソナリティ障害が起こる原因はまだ明らかになっていない部分も多いですが、遺伝的な要因と環境的な要因の組み合わせによって引き起こされると考えられています。

環境的な要因としては、幼少期に親や家族から過度に批判的に扱われたり、心理的虐待を受けたり、逆に甘やかされたりするなど、成長の過程で適切に扱われないことが大きく影響しています。特に両親から十分な愛情を受けられないような不適切な養育環境で育ち、自分の価値が認められない状態が続くと、正常な「自己愛」の発達が阻害され、歪んだ「自己愛」が形成されてしまうのです。

4.自己愛性パーソナリティ障害の診断

医師と患者診断は精神科の専門医による詳細な問診により行われます。アメリカの精神疾患の分類と診断の手引として、日本でも幅広く用いられているDSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)では、パーソナリティ障害の中でも演技的、感情的で移り気なクラスターBに分類され、境界性パーソナリティ障害や反社会性パーソナリティ障害と同じグループに属します

DSM-5で示されている具体的な自己愛性パーソナリティ障害の診断基準は以下のとおりです。

自己愛性パーソナリティ障害の診断基準

誇大性(空想または行動における)、賛美されたい欲求、共感の欠如の広範な様式で、成人期早期までに始まり、種々の状況で明らかになります。以下のうち5つ(またはそれ以上)によって示されます。

  1. 自分が重要であるという誇大な感覚
    • 例:業績や才能を誇張したり、十分な業績がないにもかかわらず優れていると思い込んだりします。
  2. 限りない成功、権力、才気、美しさ、あるいは理想的な愛の空想にとらわれている。
  3. 自分が “特別” であり、独特であり、他の特別なまたは地位の高い人達(または団体)だけが理解しうる、または関係があるべきだ、と信じている。
    • 例:一流の人物でないと、特別である自分は理解できないと考えています。
  4. 過剰な賛美を求める。
    例:自分は常に褒められて当然と思っていて、他者に褒めることを期待したり要求したりします。賛美が得られないときにはショックを受けます。
  5. 特権意識
    • 例:自分が特別有利な取り計らいを受けることを期待しています。
  6. 対人関係で相手を不当に利用する
    • 例:他人の業績や部下の手柄を独り占めしたり、タダ働きさせたりして相手を不当に利用します。
  7. 共感の欠如
    • 例:他者の気持ちを理解して共感することができず、他者の痛みがわかりません。
  8. 他者への嫉妬および他者が自分を嫉妬していると信じている
    • 例:他者を妬んだり、実際には妬んでいなくても妬まれているという妄想に取りつかれたりします。
  9. 尊大で傲慢な行動、または態度
    • 例:ふんぞり返るなどの偉そうな行動や態度を取ったり、人を見下した発言をしたりします。

引用:DSM-5

診断には、これらの特徴が成人期早期までに明らかになっており、薬物やストレスなどの一時的に起こる状態ではないことを確認する必要があります。
自己愛性パーソナリティ障害と鑑別を必要とする主な疾患としては、双極性障害や他のパーソナリティ障害(境界性パーソナリティ障害、反社会性パーソナリティ障害など)があり、しばしば診断に苦慮するケースもあります。

5.自己愛性パーソナリティ障害との接し方と対処法

肩を抱き合う二人自己愛性パーソナリティ障害は非常に尊大で、他者の傷つきに無頓着で、自身の都合の良いように他者を振り回してしまいます。そこには支配-被支配という関係がつくられてしまいます。そのため、家族、パートナー、恋人、彼氏、彼女、同僚、上司、部下など身近な人がいわゆるモラハラやパワハラの被害者となってしまうことがあります。そして、それが長期がすると、モラハラやパワハラを受けている人はうつ病や不安障害などの精神障害になってしまうリスクがあります。

そうならないために自己愛性パーソナリティ障害との接し方を工夫し、対処法を検討すると良いでしょう。

(1)自己愛性パーソナリティ障害かどうかの見極め

まず、その人が自己愛性パーソナリティ障害かどうかを見極める必要があります。もちろん、医師や臨床心理士ではない人にはなかなか見極めるのが難しいかと思います。

ある程度のところでは、「自己愛性パーソナリティ障害の診断」で記載したいくつかの項目に該当するかどうかを確認はできるかもしれません。

(2)自己愛性パーソナリティ障害と適度な距離を取る

そして、自己愛性パーソナリティ障害の人を尊重しつつも、適切な距離を取ると良いでしょう。自己愛性パーソナリティ障害に巻き込まれず、嫌なことは嫌という、NOをきちんと言うことは大変重要です。また、できないことや不可能なことを明確にし、ダメなことはダメという線引きをしましょう。これは専門的にいうとリミット・セッティング(限界設定)と言います。

(3)専門家に相談する

その上で、自己愛性パーソナリティ障害が変わりたいという思いや考えがあるのであれば、医療機関やカウンセリング機関を紹介したり、連れていったりすることも良いかもしれません。

もしくは、自己愛性パーソナリティ障害に困っている家族や恋人がカウンセリング機関などに相談に行き、自己愛性パーソナリティ障害との接し方について相談することも良いでしょう。そこで自己愛性パーソナリティ障害に対する対処法なども身に着けることができます。

(4)自己愛性パーソナリティ障害と関係を切る

しかし、それでも改善がなかったり、お互いに疲弊したり、身近な人がうつ病などの精神障害になったりするようであれば、自己愛性パーソナリティ障害との関係を切ることも選択肢の内の一つになってきます。結婚しているパートナーであれば離婚になるかもしれませんし、恋愛関係にある恋人であればお別れということになるかもしれません。

より良く生きていくための最後の選択肢とも言えるでしょう。

6.自己愛性パーソナリティ障害の治療と治し方

医師のカウンセリングを受ける患者自己愛性パーソナリティ障害の治療はまだ有効な方法論が確立されておらず、一般的に難しいとされています。現在試みられている治療法として、他のパーソナリティ障害と同様に薬物療法やカウンセリングがあります。

(1)薬物療法

自己愛性パーソナリティ障害そのものを治療する薬物療法はありませんが、いくつかの症状にターゲットをあてた薬物療法はあります

まず、自己愛性パーソナリティ障害の衝動性や易怒性に対してはリーマスなどの気分調整薬が著効することがあります。また、合併している抑うつや不安に対してはSSRIなどの抗うつ薬が効果があります。ただ、ベンゾジアゼピン系などの抗不安薬などは依存を引き起こす可能性が高いので、使用する際には注意が必要です。

いずれの薬物療法も長期的に使用せず、一時的な期間の使用にとどめることが必要です。

(2)カウンセリング

具体的な方法論としては、精神分析理論を背景に治療的な面接を行っていく力動的なカウンセリングや、自己や他者の複雑な心的状態について考えることができる能力であるメンタライゼーションを促進するアプローチ、治療者との面接により歪められた自己像を変容させていく転移焦点化心理療法などが行われています。

実際の臨床では、自己愛性パーソナリティ障害の繊細な傷つきに対しては共感を向けることが必要です。それは自己愛性パーソナリティ障害を甘やかしたり、依存させたりすることではありません。自己愛性パーソナリティ障害の深い傷つきに対する温かく、受容的で、共感的な態度を向けることで、治療関係が構築されるからです。

しかし、一方でそれだけでは自己愛性パーソナリティ障害の成長や変化は少ないでしょう。自己愛性パーソナリティ障害の言動が他者を傷つけていると同時に、自分自身もそれによってさまざまな社会的な損失を被ってしまっていることについて直面化したり、解釈したりする必要があります。そして、他者を見下したり、傷つけたりする背景にある自己愛性パーソナリティ障害の課題について目を向けてもらい、修正したり、変容したりすることを目指します。

こうした両方の関わりをとおして、自己愛性パーソナリティ障害の内省する力を養い、メンタライゼーションが促進されるのです。

また、その他にも、認知行動論をベースにした治療法として、スキーマ療法や弁証法的行動療法により、不快な感情や対人行動に関するスキルトレーニングを行うこともあります。

7.自己愛性パーソナリティ障害についてカウンセリングを受ける

申し込みをする女性自己愛性パーソナリティ障害の概要、特徴、原因、診断、接し方、対処法、治療、カウンセリングなどについて解説しました。

自己愛性パーソナリティ障害は他者を巻き込み、トラブルになりがちな非常に困った側面を持っています。しかし、一方では実は自己愛が脆弱で、そのために傷つきやすいという側面もあります。そこにはおそらく遺伝的な要因と幼少期の家庭内での傷つき体験もあるのではないかと言われています。そうすると、自己愛性パーソナリティ障害の人自身も大変な苦痛を背負っていると言えます

そうすると、自己愛性パーソナリティ障害がより良い人生になるように、他者とそれなりの適度な接し方ができるようにサポートすることはとても大切なことだとも言えます。サポートには色々とありますが、その主なものはやはり臨床心理士や公認心理師によるカウンセリングになります。

当オフィスでも自己愛性パーソナリティ障害に対するカウンセリングを行っています。希望される方は以下のボタンからお申し込みいただければと思います。

参考文献