HSP(The Highly Sensitive Person)とは、日本語では繊細な人、過敏な人、敏感な人という意味です。最近では繊細さんと呼ばれることもあります。ここではHSPの原因、特徴、診断テスト、改善方法、カウンセリング、問題点などについてまとめています。
目次
1.HSPとは
(1)HSPの概要
HSPとは、Highly Sensitive Person(繊細な人)の略で、感受性が高い人のことを指します。周囲の刺激に過敏に反応し、情報処理能力が高いという特徴があります。HSPは、適切な環境や自己管理の方法を知ることで、ストレスを軽減することができます。また、多くの場合、創造性や洞察力に優れ、人間関係を大切にする傾向があります。周囲の理解やサポートが重要です。HSPは、疲れやすかったり、不安定になったりすることがありますが、自分を受け入れ、自分に合った生き方を見つけることが大切です。
HSPは、ちょっとした物音や出来事などに強く反応してしまい、それによって苦痛や問題が生じてしまう人たちを指します。
例えば、救急車や消防車などがサイレンを鳴らして道を走っているとしましょう。普通の人であれば、そういった音については聞こえているな、ぐらいの認識でしょう。しかし、HSPの場合には、そのサイレンの音が非常に大きく聞こえたり、針で突き刺されるような苦痛として体験されたりします。
または、服の素材がザラザラしていたり、ベタベタしていたりすると、それだけでHSPは不快になり、そうした服を着ることができなくなってしまいます。
その他にも、味や臭いに非常に鋭く、普通の人であれば、分からないぐらいの味や臭いを敏感に感じ取ったりもします。
こうした五感(聴覚、触覚、味覚、嗅覚、視覚)が非常に鋭いのが特徴で、その鋭さゆえに苦しんでしまい、悩んでしまい、ストレスになってしまっている人です。そして、それが高じて生きづらさになってしまうこともあります。
(2)よくある相談の例(モデルケース)
20歳代の女性
幼少期の彼女は臆病で、引っ込み思案で、よく泣いていました。また、こだわりも強く、決まった布地の服しか着ることができませんでした。ただ、友達付き合いは悪くなく、仲の良い友達もそれなりにいました。小学校、中学校、高校、大学と特に大きな問題は無く、成績も中ぐらいで、トラブルもほとんどありませんでした。ただ、大きな音やギシギシときしむ音が苦手だったり、人から強く当たられたりなど、過度な刺激に対して非常に敏感でした。
大学卒業後に就職をしましたが、その職場は非常に忙しく、また従業員も多く、大声が飛び交うような環境でした。そうした環境でも彼女は我慢して、業務をおこなっていましたが、数ヶ月すると頭痛やめまい、吐き気、パニックなどの症状が出現するようになりました。医療機関を受診すると適応障害と診断され、薬を処方されましたが、効果はあまりありませんでした。
そのため、医師から紹介され、カウンセリングを希望し、来談されました。カウンセラーと話し合う中で、HSPではないかということが話題に上がりました。そして、職場と相談し、刺激が少ない部署への異動が実現するとともに、日常生活の中で刺激を遮断するような工夫をするようにしました。そうすると、徐々に症状もおさまっていきました。また、彼女の繊細さは他者への気遣いやお世話という形で発揮するようになり、職場の人間関係も非常によくなっていきました。
(3)HSPの原因
HSPの原因についてはまだ解明されていませんが、生物学的な素質、遺伝、元々の生まれ等によるものといわれています。そして、HSPの特徴である感覚過敏や感受性が強いのは偏桃体に原因があるといわれています。
偏桃体とはアーモンドの形をした神経細胞の集まりで、感情の処理の機能があります。HSPはこの偏桃体の働きが一般人よりも強いようです。これが感受性の強さや感覚過敏の原因ではないかといわれています。
モデルケースでは、幼少期から過敏だったことを考えると、気質的、素質的にHSP的な部分を持っていたと考えられるでしょう。
(4)HSPのチェックリスト
HSPかどうかを推定する3項目のチェックリストがあります。「他人の気分に左右される」といったような質問項目に「はい」か「いいえ」でお答えていくと結果がでます。
HSPのチェックリストは以下のページにあります。
(5)HSPのサブタイプ
HSPには3つのサブタイプがあります。一つ目はHSS型HSPで、刺激を求めるタイプです。二つ目はエンパスで、他者への共感性が高いタイプです。三つ目はHSCで、HSPの子どものことです。
モデルケースでは、エンパスに近いタイプであると言えるかもしれません。
HSPのサブタイプ詳細は以下のページをご覧ください。
(6)HSPの特徴
HSPには大きく分けて4つの気質的な、性格的な特徴や傾向があるといわれています。4つの特徴とは以下の通りで、それぞれの頭文字をとって「DOES」といいます。
- 処理の深さ
- 刺激の受けやすさ
- 情緒的な反応と高い共感性
- 些細な刺激に対する感受性
モデルケースでは、職場では生真面目に取り組んでおり、環境からの刺激をそのまま受けてしまい、感情的にも動揺しやすいところがあり、これらのHSPの特徴がそのまま出ていました。
4つの特徴の詳細は以下のページをご覧ください。
(7)HSPと混同しやすい他の障害
HSPと混同しやすい精神障害や精神疾患がいくつかあります。HSPのように見えて、実は別の精神障害であるということは比較的よくあります。
モデルケースでは最初は医療機関で適応障害と診断されていました。それは頭痛や吐き気などの身体症状が出ており、それは職場ストレスからであったため、部分的には正しいと言えます。しかし、その元々の素質であるHSPという部分が見落とされていたのです。
HSPと間違われやすい精神障害や精神疾患については以下のページをご覧ください。
(8)HSPの克服方法
HSPを克服する方法はいくつかあります。HSPの本人ができることとして以下の4つがあります。
- 活動することと慣れること
- 睡眠をとる
- 安全基地を持つ
- 距離をたもつ
また家族は友人など身近な人ができることは以下です。
- HSPの特徴を知る
- HSPの良いところを褒める
- HSPをそっと見守る
- HSPとの穏やかなコミュニケーション
モデルケースでは、仕事を休みしっかりと睡眠をとり、また刺激から距離を取りました。またモデルケースの家族は本人を責めることなくそっと見守りつづけました。そうしたところが改善に至った理由でしょう。
HSPの克服方法の詳細は以下のページをご覧ください。
2.HSPの治療とカウンセリング
HSPの傷つき、対人関係、生きづらさ、アイデンティティの4つに対するそれぞれのカウンセリングについて解説します。
(1)HSPの傷つきに対するカウンセリング
HSPは過敏性や繊細さがあるため、普通であれば傷つかないことでも傷ついてしまいます。例えば、人から言われた些細な言葉がHSPの人の心に突き刺さり、哀しい思いをしたり、悔しい思いをしたりしてしまいます。
また、他の人は気にせず、普通にできるのにも関わらず、HSPの人にはハードルが高いことは多いです。そのため、HSPは自信を無くしたり、自尊心が傷つけられたりします。
そして、こうしたことは時にはトラウマとなってしまうこともありますし、PTSDを発症することもあります。
トラウマとなってしまうと、その出来事を急にありありと思い出してしまうようなフラッシュバックが起こったりします。もしくは出来事があった場所や人を過度に避けてしまい、日常生活が制限されることもあります。また常にびくびくしたり、不安が高くなり、落ち着くことができなくなってしまいます。
こうしたことが起こると、カウンセリングなどを受ける方が良いでしょう。
当オフィスでのカウンセリングでは、傷ついた出来事を些細なことであると過小評価せず、大きな出来事であったと共有し、その苦痛に共感していくことは基本的な事柄として大切にあつかっていきます。
その上で、トラウマやPTSDの治療に準じた専門的な方法(EMDRや認知行動療法など)を提案しますが、HSPの特徴を加えた方法になります。HSPの過敏性があるので、強い作用を素早く加えるような技法はさらに苦痛が増してしまうリスクがあります。ですので、当オフィスでは、HSPの傷つき繊細さを改善していく時には、少しゆっくり目のペースで技法を実施し、過敏性を刺激しないように細心の注意を払いながら進めていきます。
(2)HSPの対人関係に対するカウンセリング
HSPは過敏さのため、対人関係においてトラブルが生じます。特に家族などの近親者との間でもトラブルになってしまいます。それはHSPが人の言動や感情に巻き込まれ、振り回されてしまいがちであることからすると、当然のように起こります。
例えば、HSPは感覚過敏によって、普通の人には感じない苦痛を感じます。そのことを家族などの周りの人に分かってもらえないとさらに辛くなります。それが時には爆発し、周りの人をHSPは責めてしまったり、怒りをぶつけてしまったりするかもしれません。
そこで、当オフィスのカウンセリングを受けていただき、根本的な部分を改善することにより、対人関係を良好に結べるように治療いたします。その中で、人間関係に関するHSPの悩みでは対人関係におけるスキルが必要になってきます。
当オフィスではSST(社会技能訓練)のようなスキルを自然と身につけさせ、それを実生活に活かせるようにカウンセラーが対応いたします。またアンガーマネジメントのように怒りをコントロールし、適切に関わっていくスキルを、その人の悩みに合わせてお教えいたします。さらにはアサーショントレーニングをご提案することもできます。当オフィスでのアサーショントレーニングでは、自然な自己主張をできるように、カウンセラーと一緒に練習します。
(3)HSPの生きづらさに対するカウンセリング
HSPによって、生きることや生活することに絶望し、自身の人生を否定してしまっている場合もあります。もしくは、スムーズに生きることができないことのやるせなさを強く感じてしまうこともあるでしょう。周りの人は楽しく生活できているのに、HSPだからこそ、一つ一つにこだわってしまって、それが楽しさを半減させてしまいます。
そのため、生きづらさを感じ、全てが嫌になってしまっているかもしれません。これまでの人生を振り返れば、理解できます。しかし、過去の人生をすべて否定してしまうと、生きる希望もなくなります。
人生に絶望し、楽しみもなく、気分が落ちて、意欲もなくなってしまっているのであれば、専門家に相談し、カウンセリングを受けると良いでしょう。
当オフィスが実施しているカウンセリングでは、これまでの過去の人生を振り返り、あらたに見直し、別の見方がなかったのかをカウンセラーと一緒に探すことができます。HSPの問題だったのか、それとも関係なく個人の問題だったのかをカウンセラーと一緒に検討して、区分けしていくことも有効でしょう。これは悪かった部分を否定するわけではありません。良い面も悪い面も両方取り上げ、自身の人生をあらたに捉えなおしていく作業です。
こうした作業は時には大変苦しい思いをすることもあるかもしれません。ですので、当オフィスのカウンセラーはHSPの立場に立ち、苦しみを一緒に背負い、HSPのペースに合わせて、カウンセリングをしていきます。
また、当オフィスでは精神分析的心理療法を実施することもできます。HSPの生きづらさを改善するために、この精神分析的心理療法が役立つこともあります。精神分析的心理療法について詳しく知りたい方は下記のリンク先をご参照ください。
(4)HSPのアイデンティティに対するカウンセリング
アイデンティティとは自己同一性のことで、自分が自分である、ということを示す事柄をさします。例えば、学生である私、主婦である私、教師である私など何らかの属性に自分をくっつけて、自分を表すこともあります。
そして、HSPは、HSPである私、という形のアイデンティティを作ることがあります。人によってはHSPであると診断されることで安心するようです。なぜなら、これまでの苦痛や困難が説明され、理由がわかり、自分の責任ではないと思うからでしょう。それらは部分的には必要かもしれません。
しかし、HSPという診断に安心し、全ての問題をHSPの責任にし、努力と行動を放棄してしまう人もいます。そうなるとHSPという診断が、その人の成長を妨げてしまいます。HSPである私に落ち着いてしまい、そこから努力したり、工夫したり、頑張ろうとできない時には当オフィスのカウンセラーに相談してみたり、カウンセリングを受けたりしてみてください。
当オフィスのカウンセリングでは、HSPのアイデンティティを否定することはありません。しかし、そこにこだわりをもってしまい、成長を阻害してしまっているのであれば、カウンセラーははっきりと指摘することもあるかもしれません。それはHSPの方を攻撃しているのではありません。
「HSPである私」といった限定的で、否定的なアイデンティティではなく、「私は私」という健康なアイデンティティを作ることが大事です。当オフィスのカウンセラーは、HSPとは関係なく、その人らしい生き方ができるようにカウンセリングでは支援していきます。
3.HSPについてのトピック
HSPについてのいくつかのトピックです。HSPについてさらに詳細に知りたい方は以下をご覧ください。
4.HSPについてのカウンセリングを受ける
HSPについての概要やチェックテスト、特徴、克服方法、カウンセリングなどについてまとめました。
HSPを改善したい、克服したい、HSPのカウンセリングを受けたいという人は、以下のフォームから当オフィスにご連絡ください。