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神奈川県横浜市港北区大豆戸町311-1
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ドメスティックバイオレンスのカウンセリング・相談

暴力という支配

ドメスティックバイオレンス(DV)とは配偶者間や恋人間で起こる身体的、心理的、経済的、性的暴力のことを指します。そのドメスティックバイオレンスについて、原因、特徴、法的支援、経済的支援、そして、ドメスティックバイオレンス被害者に対するカウンセリングについて網羅的に書いています。

1.ドメスティックバイオレンスの概要

ベッドで泣く女性

(1)ドメスティックバイオレンスとは

ドメスティックバイオレンスとは、家庭内での身体的・性的・心理的・経済的な暴力や虐待のことです。主に男性から女性に対して行われることが多く、被害者は身内やパートナーであることが多いです。ドメスティックバイオレンスは被害者に深刻な身体的・心理的なダメージを与え、長期にわたって影響を及ぼすことがあります。近年では、男性から女性だけでなく、女性から男性や同性間でも起こることが認知されています。

ドメスティックバイオレンスは家庭内暴力といわれることもありますが、配偶者でなくても親密な関係にある男女の間で発生する暴力も含まれます。つまり、婚姻関係にないカップルの間の暴力もドメスティックバイオレンスとなります。また、男性から女性にふるわれるケースが多いですが、逆の場合もドメスティックバイオレンスと呼ばれます。

ドメスティックバイオレンスにおける暴力とは身体的暴力、心理的暴力、性的強要、経済的圧迫などあらゆる形での侵害を含みます

殴る蹴るなど、直接的に身体を脅かす身体的暴力は比較的判断しやすいと思われますが、それだけではありません。被害にあわれている方の中には、自分が受けているものがドメスティックバイオレンスではないのではないかと我慢されている方も多くおられるのではないのでしょうか。

例えば、物や子どもに当たって脅すことや、過剰に監視したり、逆に無視をしたりすること(心理的暴力)もドメスティックバイオレンスになります。また、金銭面の負担をパートナーに押し付けたり、お金を返さないこと(経済的圧迫)も、性的な行為や中絶を強要したり、避妊に協力しないこと(性的強要)もドメスティックバイオレンスにふくまれます。

そして、これらの暴力の多くは家庭内などの密室で起こり、継続的、反復的に繰り返されます

(2)よくある相談の例(モデルケース)

30歳代の女性

幼少期の問題は特にありませんでした。家族関係も良好で、健康に育ちました。児童期・思春期は元気で活発で、友人は多かったようです。大学の時にアルバイト先で知り合った年上の男性と知り合い、恋愛関係になりました。恋人はやきもちを焼くこともありましたが、基本的には楽しい恋愛だったようです。その後、彼女は就職し、それからしばらくして恋人から求婚され、結婚しました。そして、結婚後しばらくしてから子どももできました。

しかし、徐々に夫は彼女を束縛するようになりました。浮気をしてないかと疑われたりしたこともありました。ある時にそのことで口論になり、夫は彼女のことを平手打ちをしました。それをきっかけに夫はしばしば暴力的になりました。そして、暴力があった後、夫は土下座で謝り、もう二度としないと約束をしました。しかし、またしばらくすると緊張が高まり、夫はイライラして、暴力を振るうのでした。そうしたことが何度も繰り返されるようになりました。そうした状況のため、子どもも原因不明の癇癪を起したり、夜に泣いて起きたり、おねしょを繰り返したりすることもありました。彼女は次第に自分が我慢すれば良いと考えるようになり、夫がイライラしないように細心の注意を払って接するようになりました。しかし、それが功を奏することはなく、しばらくすると夫は同じように暴力を振るいました。

彼女は次第に元気がなくなり、そのことを心配した友人が話を聞き、それはDV(ドメスティックバイオレンス)ではないか、と彼女に指摘しました。彼女はDVという言葉は知ってましたが、これがそれに当たるとは思っていませんでした。ネットでDVを調べると彼女自身に当てはまるところがありました。そこで彼女は迷いながらもカウンセリングルームに申し込み、相談をしました。そこで確かにDVの可能性があることや、それが彼女だけではなく、子どもにも影響が出ていることが指摘されました。その後、カウンセラーの助言に従い、自治体の配偶者暴力相談支援センターにも相談し、一時避難をすることになりました。シェルターも紹介されましたが、彼女は実家が助けてくれそうということで、一時的に子どもと一緒に実家に戻ることになりました。

実家に戻ってから両親が協力して、離婚の方向で動くことになりました。弁護士にも間に入ってもらい、結果的に協議離婚に至りました。離婚前も後も彼女はDVの影響からか、不眠や食欲低下、抑うつ気分などもありました。大きな物音があるとビクっとしてしまい、動悸もおさまりませんでした。そうしたことについて最初のカウンセリングルームのカウンセラーとカウンセリングを行いながら、気持ちの整理をしていきました。

(3)ドメスティックバイオレンスの原因

ドメスティックバイオレンスは支配性の問題があります。加害者は暴力などを用いることにより被害者を支配しようとします。また、ドメスティックバイオレンスでは緊張期、爆発期、ハネムーン期の3つが繰り返されます

モデルケースでも、夫がイライラしていき、暴力が振るわれ、その後謝罪をしてしばらくは落ち着きますが、その後イライラから暴力に発展するということが繰り返されていました。そして、こうしたことを通して夫は彼女を支配していました。

ドメスティックバイオレンスの原因の詳細は以下のページをご覧ください。

(4)ドメスティックバイオレンスの特徴

ドメスティックバイオレンスの被害者は相談することがなかなかできないようで、警視庁の調査研究でも半数は誰にも相談していないという結果も示されています。その理由として、第三者に伝わりづらく、言いにくいことや、自分が悪いと考えてしまうこと、精神疾患などを発症してしまい気力を奪われてしまうことなどが挙げられます。また、ドメスティックバイオレンスの影響は直接被害のない子どもなどにも及びます

モデルケースでも、友人に指摘されるまで、彼女は誰にも相談することができていませんでした。また、子どもが夜驚やおねしょがあったこともドメスティックバイオレンスの影響だったといえるでしょう。

ドメスティックバイオレンスの特徴についての詳細は以下のページをご覧ください。

(5)ドメスティックバイオレンス被害者への法的支援と経済的支援

都道府県や市区町村には配偶者暴力相談支援センターが設置され、ドメスティックバイオレンスの相談を受け付けています。また裁判所を通して、保護命令制度を利用することができます。これによって加害者からの接近などが禁止されます。また、経済的な支援として婚姻費用分担調停や民事法律扶助などの支援もあります。

ドメスティックバイオレンス被害者は様々な困難がありますので、こうした制度を利用することで、生活や安全が保障されます。

モデルケースでも、配偶者暴力相談支援センターを利用していました。ただ、離婚がスムーズに進んだため、保護命令制度は利用しませんでしたし、実家が助けになったため、経済的な支援も不要でした。ドメスティックバイオレンス被害者はこうしたモデルケースのような状況ばかりではないので、必要であれば利用しましょう。

ドメスティックバイオレンス被害者への法的支援と経済的支援の詳細は以下のページをご覧ください。

2.ドメスティックバイオレンス被害者へのカウンセリング

慰めるカウンセリングは心の悩みについて話をする場であり、家庭内の暴力や、経済的なことなどについて対処する場ではないのではないかと思われ、相談するか迷われる方もおられるかもしれません。

しかし、カウンセリングはただ悩みを聴くというだけのものではなく、その人が安心して居られるように調整する働きももっています。「何をどこに相談したらいいのかわからない」「そもそも、相談すべき状態なのかもわからない」「とにかく逃げ場がほしい」といった方が、適切な援助を受けられるようお話をお聴きします

ドメスティックバイオレンスがなくならず、ずっと家庭内は荒れたままなのに、カウンセリングにいってもただ内面に踏み込まれるだけで、現状何も変わらず苦しいままというようなことがあってはなりません。

具体的には以下のような流れで進みます。

(1)安全の確保

カウンセリングというと、クライエントの話を傾聴し、示唆を伝えたり、時には解釈を与えて、心の変容を促す、というイメージがあるかもしれません。そうしたことは大事なのですが、それは支援の後半・後期になってから必要になってくるものです。そうしたことよりも前に大事なことは、いかにドメスティックバイオレンス被害者が心身の安全を保てるのか、ということをまずは支援していかねばなりません

日々、傷ついている時に、カウンセリングをしても効果がないどころか、時には生命にかかわります。なので、まずは安全の確保をどうすれば良いのかをクライエントと話し合うことが求められます。この時には、よくある受動的、受身的に話を聞くよりも、積極的に話をし、指示的に対応することもあるでしょう。ドメスティックバイオレンス加害者と同居をしているのであれば、その危険度をアセスメントし、緊急的に避難をする方が良いと助言することもあるでしょう。

ドメスティックバイオレンスによる被害者の影響でも挙げたように、ドメスティックバイオレンス被害者は自罰的になっていたり、無気力、無力感に陥っていることもあります。こうした時には、単に気持ちに寄り添った傾聴だけではなく、積極的に介入し、必要な機関にリファーをしたりして繋いでいくことが必要となってきます。

どういう機関でドメスティックバイオレンス被害者と出会うのかにも寄るかとは思いますが、その機関の中だけではとどまらず、関係各機関と密に連携をはかっていくことが必要になってくるのが、この段階です。また、ドメスティックバイオレンス被害者を支援する法的手続きはたくさんあります。実際にカウンセラーがそうした手続きをすることは少ないでしょうが、どういう法的支援があるのかといった情報提供を行ったり、そうした手続きを行えるように支えたりして、安全の確保をしていくことは可能です。

(2)安心の提供

一時保護や母子支援施設、シェルターなどに入所したり、親戚や親族の家に身を寄せて、当面の危険はないとなったら、カウンセリングではこの安心の提供の段階に入ります。

多くはドメスティックバイオレンス被害のあった直後なので、クライエントによってはその恐怖心は強く、ドメスティックバイオレンス加害者が来るのではないかとビクビクしてしまったりします。もしくは全く反対に、変に冷静であったり、感情が麻痺してしまったりという解離状態になっていくこともありますし、妙に高い高揚感を持ったり、過度に活動的になったり、変に明るかったりするような躁的な状態になったりすることもあります。

こうしたことは、実はそれほど異常なことではなく、心身にダメージを負った後によく起こる心の防衛反応であると言えます。こうした状態についてのアセスメントをしつつ、徐々に落ち着いていくことを見守る必要があります。またクライエントによってはドメスティックバイオレンス加害者の元に戻ろうとする場合もあったりするので、そうならないように細心の注意を払う必要はあります。

また、ドメスティックバイオレンス被害者は今後の様々なことについても不安に思います。生活のこと、生活費のこと、仕事のこと、住まいのこと、子どものことなど。とくに経済的な不安は非常に強い場合があるので、どういった経済的な支援や就労支援、生活支援があるのか、といった情報を提供することで、その不安もいくらかは和らいでいくでしょう

こうしたことによって、一定期間が経過するごとに、徐々に大丈夫であるという安心を感じられる時間が増えていきます。何か特別なことをカウンセリングでするというよりは、許容的で、受容的で、話を否定したり、遮ったりすることなく、傾聴していることが、こうした安心感を向上させていくことでしょう。

(3)自責と自罰の軽減

ドメスティックバイオレンス被害者は被害者であるにも関わらず、ドメスティックバイオレンスが起こったことやこうした事態になってしまったことについて、自身の責任であると自罰的になったり、自分を貶めてしまったりすることは稀ではありません。本来はドメスティックバイオレンス加害者に向かうべき怒りや攻撃性が自己に向け返られているともいえますし、もしくはドメスティックバイオレンス加害者に同一化して、自己に対してドメスティックバイオレンス加害者同様に攻撃をしていると理解することもできます。

他にも、本来はドメスティックバイオレンス加害者が感じるべき罪悪感を押し付けられて、取り入れることによって自責的になっているとも考えられます。いずれにせよ、こうした自責感、自罰的な気持ちは健康なものではなく、非常に苦痛に満ちたものとなります。

こうした時、自罰的になっていることを否定したり、止めようとすることは反対に自罰感をさらに助長させてしまいます。なぜなら自罰的になっていることは悪いことであるというメッセージを与え、そうしていること自体が自己を否定することに繋がってしまいます。もちろん、かといって自責的・自罰的になっていることを単に肯定して、助長することもありません。

自罰的になっていることを否定も肯定もせず、ドメスティックバイオレンス被害者がそうした自罰的になってしまうことはある意味では自然なことであり、当然のことであるというある種の心理教育的な関わりが必要となってきます。これらをノーマライゼーションと言っても良いかもしれません。

そして、そうした関わりをしていく過程で、ドメスティックバイオレンス加害者の責任であることを話し合ったり、どうしようもない状況でドメスティックバイオレンス被害者なりに精一杯のことをしてきたことなどを振り返りつつ、徐々に自罰と自責から抜け出ることを手助けしていきます。

(4)自己効力感の回復

安全の確保をし、安心をはぐくみ、自責から抜け出してくると、次は自己効力感の回復が主題となってきます。反対にいうと、安全、安心、自罰からの抜け出しがないと、なかなかこの自己効力感は回復していきません。

ドメスティックバイオレンス被害を受けていることで、自分の無力さ突き付けられていたり、何もできない、やられるがままという体験を長期間にわたって受けていると、自己効力感が無くなってしまうことは容易に想像がつきます。

今だったら何ができるか、今後同じようなことが起こったら何をすれば良いか、もし当時に戻ったとするなら何をしていたら良かったのか、など想像の中であったとしても、さまざまな対応策、対処策を作り上げていくことができると良いでしょう。それはなかなかできないようなハードルの高いものから、ちょっとした工夫まで様々なレベルでアイデアを出していけると良いと思います。たくさん出たアイデアから、実施可能性や実施コスト、困難さなどから徐々に絞っていけたら良いと思います。

また現在の日々の日常で、できることを増やしたり、生活力をつけていったり、時には物理的な筋力・体力をつけることで、さらには困った時の相談先のレパートリーを増やすことで、何もできない無力な自分から、なんとかできる頑張れる自分に自己認知が変化していくでしょう

(5)トラウマやPTSDの解消

ドメスティックバイオレンス被害を受けることによって侵入体験、回避行動、感情の麻痺、否定的認知、過覚醒などのいわゆるPTSDのような症状を呈することもあります。それ以外にも、不安、抑うつ、不眠、解離、自傷、妄想幻覚、性的逸脱、身体症状などの様々な症状が出現することもあります

トラウマやPTSDについての詳細は以下のページをご覧ください。

こうした時、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠導入剤、時には抗精神病薬などの薬物療法をしていくことが必要な場合もあるので、医学的な治療を勧めたり、リファーしたりすることになります。そして、薬物療法によって症状が軽減することで、カウンセリングをとおして、トラウマに取り組みやすくなります。

トラウマやPTSDへの取り組み方は様々です。ランダム化比較試験などで有効性があるとされているのは、PE(持続的エクスポージャー)、EMDR(眼球運動による脱感作と再処理療法)、認知処理療法などです。その他にも一部エビデンスが認められているのは、TF-CBT(トラウマに焦点づけた認知行動療法)やリラクゼーション法、力動的心理療法などがあります。

上記に挙げたカウンセリングのいくつかの技法ですが、様々な治療条件やカウンセラーの技能、タイミング、相性などによって、どういう治療方針で、どういう治療方法を行うのかはかわってきます。必ずしも研究結果や研究データだけから治療方法が選択されるわけではありません。

(6)ドメスティックバイオレンスと再発予防

問題が落ち着き、平穏な生活になっていったとしても、精神症状の再発や悪化などが今後起こることもあります。また、対人関係はパターン化しており、ドメスティックバイオレンス加害者と同様なパートナーと再び付き合いだしたり、結婚したりすることもあります。

もしくは、ドメスティックバイオレンス加害者の元に戻ってしまうというケースもあります。フロイトは反復強迫という人間には悪いことを何度も同じように繰り返す傾向があると述べました。そして、そうした行動を支えるのが死の欲動であるとしました。そこまでではなくても、同じような恋愛対象を選び、同じような失敗を恋愛の中で行ってしまう、というのは身近に見聞きすることです。

こうした時、自身の行動が振る舞いを振り返り、また人生や生い立ちの観点から整理していくことも必要になってきます。人生の棚卸といっても良いかもしれません。こうした自分自身について振り返る、自分自身の問題を整理するということが今後の問題を予防します。こうしたことを扱うカウンセリングの技法としては精神分析的心理療法などが適しています。

3.ドメスティックバイオレンスについてのトピック

ドメスティックバイオレンスについてのいくつかのトピックのページです。さらに詳しく知りたい方は以下をご覧ください。

4.当オフィスでのカウンセリングや対応

家族のカウンセリングドメスティックバイオレンスについての原因、特徴、支援、カウンセリングなどについて解説しました。ドメスティックバイオレンスを受けると非常に深刻な心身のダメージを被ってしまいます。

当オフィスではこうしたドメスティックバイオレンス被害者に対するカウンセリングを行っております。カウンセリングをご希望される方はご連絡ください。

文献

この記事は以下の文献を参考にして執筆いたしました。