不安障害(不安症)には、パニック障害・強迫性障害・社交不安障害・心気症・恐怖症といった種類があります。その不安障害の原因、症状、種類、治し方、治療などを解説しています。そして、その治療には薬物療法、認知行動療法、そして精神分析的心理療法を施行します。
不安障害とは
不安障害(不安症)とは、不安が常に存在し、日常生活に支障をきたす症状のことです。パニック障害、社交不安障害、強迫性障害、全般性不安障害、分離不安症などが含まれます。不安感は誰にでもあるものですが、継続的に症状が現れ、日常生活に支障をきたす場合は、専門家に相談することが大切です。治療法としては、認知行動療法や薬物療法、リラクゼーション法があります。
不安とは非常に苦痛な感情ではありますが、人間が進化の過程で獲得した、生存のためには重要なものです。不安があるからこそ、危険なことを避け、死のリスクを下げることができます。
そうした意味でも不安は危険信号、アラームのような役割をはたしています。しかし、そのアラームが何らかの原因で誤作動を起こしてしまうことを不安障害と言います。
不安障害は不安の強さゆえに、その不安を感じさせるものを遠ざけようとしたり、避けたりしてしまい、結果的には避けることのほうが日常生活の支障となってしまいます。
たとえば、パニック障害であれば、パニックになることを恐れ、電車やバスに乗らないようにすることで、通勤や通学ができず、ひきこもってしまったりします。ひきこもっている間はパニックは起きないのですが、パニックを起こさないようにするための引きこもりのほうが社会生活の問題となってしまいます。
不安障害の種類
社交不安障害とは、人前で話すことや集団の中にいることなどの社交的な状況で、強い不安や恐怖を感じる症状です。自己評価が低く、否定的な自己イメージが強いため、人前で失敗や恥をかくことを恐れます。対人関係に問題を抱えたり、生活や仕事に支障が出ることがあります。
パニック障害とは、急に強い不安や恐怖心が発生し、呼吸困難、胸の痛み、めまいなどの身体的症状を伴う病気です。原因は不明ですが、遺伝的素因やストレスなどが関係していると考えられています。
強迫性障害とは、何度も同じ行動や思考を繰り返し、それがコントロールできなくなる精神障害です。洗う・数える・確認するなど、具体的な強迫行為が現れます。また、不安やストレスが増すと症状が悪化することがあります。
醜形恐怖症は、自分の容姿が普通以上に醜いと感じ、周りから嫌われたり恥ずかしく思われたりすることに対する異常な恐怖心を持つ症状です。鏡を見ることや人前に出ることが苦痛になり、日常生活に支障をきたすこともあります。
全般性不安障害は、緊張や心配、不安などが日常的に続く、不安障害のひとつです。何か特定の出来事に対する不安ではなく、日々の生活における多くのことに対して過剰な不安を感じる傾向があります。GADには身体症状も現れ、胃腸の不調や疲れ、頭痛などが起こることもあります。
場面緘黙症とは、公の場や人前で話すことができなくなる症状で、不安症の一種です。人前で話すことに対して異常な恐怖心や不安を感じ、声を出せなくなったり、固まってしまったりすることがあります。また、緊張や不安がピークに達すると、身体的な症状(動悸、手の震え、汗をかくなど)が現れることもあります。
分離不安症は、身近な人や大切なものから離れることに異常な不安を感じる不安症の一つです。離れることに対する不安が過剰になり、日常生活に支障をきたすことがあります。
限局性恐怖症とは高所や尖端、動物、閉所など特定の場所や物に対して過剰に恐怖心を感じてしまい、それによって平静さを失ったり、過度に回避してしまったりして、日常生活や社会生活に支障をきたしてしまう不安障害の一種です。
会食恐怖症とは、他の人と食事が出来なくなる病気です。会食恐怖症の症状は、嘔気、めまい、動悸、あるいは食べ物を飲み込めなくなる嚥下障害など多岐にわたって認められます。
不安障害の治療
ここでは不安障害の治療についての概要やポイントを解説します。不安障害に対しては大まかには3つのアプローチがあります。
(1)不安を和らげる
一つは不安を和らげる方法で、薬物療法やカウンセリングになります。抗不安薬はダイレクトに不安を和らげ、また素早く効き目があらわれます。そのためコストパフォーマンスはとても良いです。
カウンセリングでは、不安なことを話し合うことにより、不安が低下し、客観的に物事を見ていけるようになるでしょう。
(2)不安に曝露する
2つ目のアプローチは不安を和らげることとは反対のことをします。つまり、逆に不安を高め、その不安に直面し、不安に慣れて行くという方法です。エクスポージャー法や曝露法とも言われ、認知行動療法の中の一つの技法として位置づけられます。
不安なものに直面していくのは最初は非常に恐ろしいですが、繰り返すことにより徐々に慣れて行くことができます。
(3)無意識を探求する
最後の3つ目のアプローチですが、不安になる無意識的な原因やきっかけを探索し、隠されたコンプレックスや葛藤を紐解く方法です。これらは精神分析的心理療法と呼ばれます。通常、上記2つよりも時間はかかりますが、根本的な解決になっていくので、再発は上記2つよりも少ないという研究データがあります。
こうした療法を受ける時には、教育分析や個人分析、スーパービジョンを受けているような専門的なカウンセラーに依頼すると良いでしょう。
不安障害についてのよくある質問
不安障害とは、過剰な心配や恐れが長期間にわたって続き、日常生活に支障を来す状態を指します。具体的には、持続的な不安感、集中力の低下、緊張感、落ち着きのなさなどの症状が現れます。また、動悸、発汗、息切れなどの身体的な反応も見られることがあります。これらの症状は、心理的な要因だけでなく、神経伝達物質のバランスの崩れやストレスが関与していることが多いです。
不安障害の原因には、遺伝的要素、環境的要因、脳内の神経伝達物質の異常などが関係しています。特に、家族歴に不安障害を持つ人がいる場合、リスクが高まることが知られています。また、過去のストレスフルな出来事やトラウマ体験、過剰なストレスも発症を促す要因となります。脳内のセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質のバランスが崩れることで、不安感が増強されることもあります。
不安障害を予防するためには、適度な運動やリラクゼーションを行い、心身のバランスを保つことが重要です。規則正しい生活習慣を維持し、十分な睡眠をとることで、ストレス耐性を高めることができます。また、ストレスを効果的に管理するために、瞑想や深呼吸法などのリラクゼーション法を取り入れるのも効果的です。セルフケアを行うことで、不安の発生を予防することが期待できます。
不安障害は治療可能です。治療には、認知行動療法(CBT)が最も効果的とされています。CBTでは、不安を引き起こす思考や行動パターンに焦点を当て、改善を目指します。また、必要に応じて抗不安薬が処方されることもありますが、薬物療法だけに頼るのではなく、心理療法と併用することで、根本的な改善が期待できます。適切な治療を受けることで、多くの人が症状の緩和や改善を実感しています。
不安障害とパニック障害は異なる精神的な疾患です。不安障害は、持続的な心配や不安感が主な症状ですが、パニック障害は突発的に発作が起こり、急激な恐怖や動悸、息切れなどの症状が現れるのが特徴です。パニック障害の発作は一時的であり、通常は予測不可能に起こります。治療法も異なり、パニック障害では薬物療法や認知行動療法が中心となります。
不安障害の治療には、認知行動療法(CBT)が最も有効です。CBTでは、不安を引き起こす思考や行動を特定し、適切な対処法を学びます。また、薬物療法も併用されることがあります。抗不安薬や抗うつ薬が処方され、症状の緩和を図ることが一般的です。生活習慣の改善、ストレス管理、セルフケアも治療の一環として重要です。適切なアプローチを組み合わせることで、症状の改善が見込めます。
不安障害を放置すると、症状が慢性化し、日常生活に深刻な影響を及ぼすことがあります。睡眠障害、集中力の低下、対人関係の困難さ、抑うつ症状などが併発することもあります。また、社会的な孤立や職場でのパフォーマンスの低下を引き起こすリスクも高まります。早期の治療が、改善の可能性を高め、生活の質を向上させるために重要です。
不安障害のセルフケアには、規則正しい生活習慣の維持、適度な運動、バランスの取れた食事、十分な睡眠が効果的です。ストレス管理のために、瞑想や深呼吸法、趣味活動を通じてリラックスすることも有効です。セルフケアを行うことで、症状の軽減やストレス耐性の向上が期待できます。自分自身でコントロールできる部分を大切にすることが、不安障害の予防や改善につながります。
不安障害に関連する身体症状には、動悸、発汗、息切れ、筋肉の緊張、頭痛などがあります。これらの症状は、心理的なストレスが体に与える影響によって引き起こされることが多いです。身体的な症状が重なることで、不安がさらに増幅することもあります。適切な治療とリラクゼーション法を取り入れることで、症状の緩和が期待できます。
不安障害のセルフケアにおいて、食生活は非常に重要です。バランスの取れた栄養を摂ることで、神経伝達物質のバランスを整えることができます。特に、ビタミンB群やオメガ3脂肪酸を含む食品が、不安感の軽減に効果的だとされています。また、糖分やカフェインの摂りすぎは、神経を刺激して不安感を増す可能性があるため、控えることが推奨されます。
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不安障害の原因、症状、種類、治し方、治療などを解説しました。当オフィスでも不安障害に対するカウンセリングを行っています。希望者はご連絡をもらえたらと思います。
文献
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