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PTSD(心的外傷後ストレス障害)のカウンセリングと治療

死ぬほどの苦しみの果てに

昨今では、児童虐待や自然災害など悲惨な事件やニュースが報道番組などで連日報じられています。そのような想像を絶する経験を目の当たりにして実際に体験する、あるいは目撃することによって発症する特徴的なストレス症候群を「心的外傷後ストレス障害(略称:PTSD)」と呼称しています。

今回は「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」を中心に説明していきます。

1.PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは

窓の外を見ている白い女性PTSDとは、Post Traumatic Stress Disorderの略称であり、日本語では心的外傷後ストレス障害と呼ばれています。PTSDは、現実的に死の危険に直面したのちに、その体験記憶が自分の意志とは無関係にフラッシュバックや悪夢として思い出されて、体験後に不安や緊張が高まる、あるいは辛さのあまりに現実感がなくなったりする状態であると考えられています

一般的に、トラウマを体験した直後に気持ちがふさがって精神的に不安定になることは、誰しもが経験することですが、実体験後1ヶ月を経た段階でも十分に対処できずに生活に支障を呈している状態であれば、PTSDを発症している可能性を否定できません。PTSDによる症状は1ヶ月以上続くことが多く見受けられますが、 急性ストレス障害の持続症状として認められることもあれば、実際に体験した出来事から半年以降経過してから発症する場合もあります。

PTSDは、治療なしで時間経過とともに症状が軽快することがある一方で、症状が固定して慢性化するケースでは、日常生活において重度のハンディキャップを有する場合も想定されます

2.PTSDの原因

怪我をしている手誰でも恐ろしいことを経験すると、一定の影響が心身に生じますが、一部の人はこの影響が通常よりも強く長引くために衰弱状態に陥ると考えられています。

PTSDの主な原因としては、性的暴行、自然災害など恐怖心や無力感を引き起こすイベントですが、自動車事故などによって生命が脅かされるあらゆる体験がPTSDの原因になり得ます

また、PTSD発症例では実際に自分自身が重傷を負う、死の脅威にさらされるといった直接的にイベントを経験する、外傷的出来事を複数回経験しているケースもあれば、他人が殺される場面を目撃したなど間接的に体験して引き起こされる場合もあります。

3.PTSDの症状や特徴

悩んでいる女性PTSDでは、命を脅かすような強烈なイベントを契機として、実際の体験をしてから時間経過したあとでもフラッシュバックなどによる侵入的再体験、あるいは心的外傷体験に関連する刺激回避、否定的な思考や気分変調、些細なことで怒りっぽくなる症状が出現します

PTSDにおける代表的な症状を分かりやすく纏めると、以下の4つが挙げられます。

(1)フラッシュバック(侵入症状、再体験症状)

実際に起こった体験の記憶が、イベントが起こった後時間が経過してから当時抱いた感覚とともに、自分の意志とは無関係にフラッシュバックのように思い出されるような現実感が出現する症状を意味しています。

フラッシュバックやその対処法については以下のページに詳しく書いています。

(2)回避・麻痺症状

恐ろしい出来事を思い出させて関連付けられる対象を避ける、あるいは刺激的な出来事の記憶を振り返ることが出来ない、イベントに関して自分が経験したことでは無く他人事のように感じられるなどの症状を指しています。

(3)認知と感情の陰性の変化

物事に対して過剰に否定的な信念を抱き、あらゆることに関心や興味を示さずに幸福感が持てない、あるいはイベントが起こる前は自然に楽しめていたことが楽しめなくなる、周囲から孤立しているという感覚に苛まれるなどの症状を呈します。

(4)過覚醒症状

刺激な出来事を経験した後、いつも気持ちが張り詰めて、動悸症状を自覚する、あるいはちょっとした物音にひどく驚いて過敏になる、少しのストレスで易怒性を示すなどの兆候が認められます。

4.PTSDの診断

嘆く女性心的外傷後ストレス障害は、非日常的体験をした直後に症状が出現するだけでなく、体験してから1ヶ月以上経過しても悩ましい症状が続いて、日常生活の支障になっている場合など具体的な診断基準に基づいて医師によって評価されることで適切に診断がつけられます。

実際には、外傷的出来事を直接的、あるいは間接的に体験した事実があり、PTSDの典型的な症状が1ヶ月以上続いて重大な苦痛を引き起こしているかなどを一定の判断基準としています

また、診断する過程においては、PTSDに関連する各カテゴリーの症状自体が薬剤や他疾患に由来するものであるかどうかについても査定します。

DSM-5における心的外傷後ストレス障害の診断基準

DSM-5における心的外傷後ストレス障害の診断基準

  1. 実際にまたは危うく死ぬ、重症を負う、性的暴力を受ける出来事への、以下のいずれか1つ(またはそれ以上)の形による曝露:
    1. 心的外傷的出来事を直接経験する。
    2. 他人に起こった出来事を直に目撃する。
    3. 近親者または親しい友人に起こった心的外傷的出来事を耳にする。家族または友人が実際に死んだ出来事または危うく死にそうだった出来事の場合、それは暴力的なものまたは偶発的なものでなくてはならない。
    4. 心的外傷的出来事の強い不快感をいだく細部に、繰り返しまたは極端に曝露される体験をする。(仕事に関連するものでない限り、電子媒体、テレビ、映像、または写真による曝露には適用されない。)
  2. 心的外傷的出来事の後に始まる、その心的外傷的出来事に関連した、以下のいずれか1つ(またはそれ以上)の侵入症状の存在。
    1. 心的外傷的出来事の反復的、不随意的、および侵入的で苦痛な記憶
    2. 夢の内容と情動またはそのいずれかが心的外傷的出来事に関連している、反復的で苦痛な夢 注:子どもの場合、内容のはっきりしない恐ろしい夢のことがある。
    3. 心的外傷的出来事が再び起こっているように感じる、またはそのように行動する解離症状(例:フラッシュバック)(このような反応は1つの連続体として生じ、非常に極端な場合は現実の状況への認識を完全に喪失するという形で現れる)。 注:子どもの場合、心的外傷に特異的な再演が遊びの中で起こることがある。。
    4. 心的外傷的出来事の側面を象徴するまたはそれに類似する、内的または外的なきっかけに曝露された際の強烈なまたは遷延する心理的苦痛。
    5. 心的外傷的出来事の側面を象徴するまたはそれに類似する、内的または外的なきっかけに対する顕著な生理学的反応。
  3. 心的外傷的出来事に関連する刺激の持続的回避、心的外傷的出来事の後に始まり、以下のいずれか1つまたは両方で示される。
    1. 心的外傷的出来事についての、または密接に関連する苦痛な記憶、思考、または感情の回避、または回避しようとする努力。
    2. 心的外傷的出来事についての、または密接に関連する苦痛な記憶、思考、または感情を呼び起こすことに結びつくもの(人、場所、会話、行動、物、状況)を回避しようとする努力。
  4. 心的外傷的出来事に関連した認知と気分の陰性の変化。心的外傷的出来事の後に発現または悪化し、以下のいずれか2つ(またはそれ以上)で示される。
    1. 心的外傷的出来事の重要な側面の想起不能(通常は解離性健忘によるものであり、頭部外傷やアルコール、または薬物など他の要因によるものではない)。
    2. 自分自身や他者、世界に対する持続的で過剰に否定的な信念や予想。
    3. 自分自身や他者への非難につながる、心的外傷的出来事の原因や結果についての持続的でゆがんだ認識。
    4. 持続的な陰性の感情状態(例:恐怖、戦慄、怒り、罪悪感、または恥)。
    5. 重要な活動への関心または参加の著しい減退。
    6. 他者から孤立している、または疎遠になっている感覚。
    7. 陽性の過剰を体験することが持続的にできないこと(例:幸福や満足、愛情を感じることができないこと)。
  5. 診断ガイドラインと関連した、覚醒度と反応性の著しい変化。心的外傷的出来事の後に発現または悪化し、以下のいずれか2つ(またはそれ以上)で示される。
    1. 人や物に対する言語的または肉体的な攻撃性で通常示される、(ほとんど挑発なしでの)いらだたしさと激しい怒り。
    2. 無謀なまたは自己破壊的な行動
    3. 過度の警戒心。
    4. 過剰な驚愕反応
    5. 集中困難。
    6. 睡眠障害(例:入眠や睡眠維持の困難、または浅い眠り)
  6. 障害(基準B、C、DおよびE)の持続が1ヶ月以上。
  7. その障害は、臨床的に意味のある苦痛、または両親や同胞、仲間、他の養育者との関係や学校活動における機能の障害を引き起こしている。
  8. その障害は、物質(例:医薬品またはアルコール)または他の医学的疾患の生理学的作用によるものではない。

いずれかを特定せよ

解離症状を伴う:症状が心的外傷後ストレス障害の基準を満たし、次のいずれかの症状を持続的または反復的に体験する。

  1. 離人感:自分の精神機能や身体から離脱し、あたかも外部の傍観者であるかのように感じる持続的または反復的な体験(例:夢の中にいるような感じ、自己または身体の非現実感や、時間が進むのが遅い感覚。
  2. 現実感消失:周囲の非現実感の持続的または反復的な体験(例:まわりの世界が非現実的で、夢のようで、ぼんやりし、またはゆがんでいるように体験される)。

該当すれば特定せよ

遅延顕症型:その出来事から少なくとも6ヶ月間(いくつかの症状の発症や発現が即時であったとしても)診断基準を完全には満たしていない場合。

6歳以下の子どもの心的外傷後ストレス障害

  1. 6歳以下の子どもにおける、実際にまたは危うく死ぬ、重症を負う、性的暴力を受ける出来事への、以下のいずれか1つ(またはそれ以上)の形による曝露:
    1. 心的外傷的出来事を直接体験する。
    2. 他人、特に主な養育者に起こった出来事を直に目撃する。
    3. 親または養育者に起こった心的外傷的出来事を耳にする。
  2. 心的外傷的出来事の後に始まる、その心的外傷的出来事に関連した、以下のいずれか1つ(またはそれ以上)の侵入症状の存在:
    1. 心的外傷的出来事の反復的、不随意的、および侵入的で苦痛な記憶
    2. 夢の内容と情動またはそのいずれかが心的外傷的出来事に関連している、反復的で苦痛な夢
    3. 心的外傷的出来事が再び起こっているように感じる、またはそのように行動する解離症状(例:フラッシュバック)(このような反応は1つの連続体として生じ、非常に極端な場合は現実の状況への認識を完全に喪失するという形で現れる)。このような心的外傷に特異的な再演が遊びの中で起こることがある。
    4. 心的外傷的出来事の側面を象徴するまたはそれに類似する、内的または外的なきっかけに曝露された際の強烈なまたは遷延する心理的苦痛。
    5. 心的外傷を想起させるものへの顕著な生理学的反
  3. 心的外傷的出来事に関連する刺激の持続的回避、または心的外傷的出来事に関連した認知と気分の陰性の変化で示される、以下の症状のいずれか1つ(またはそれ以上)が存在する必要があり、それは心的外傷的出来事の後に発現または悪化している。
    1. 刺激の持続的回避
      1. 心的外傷的出来事の記憶を喚起する行為、場所、身体的に思い出させるものの回避、または回避しようとする努力。
      2. 心的外傷的出来事の記憶を喚起する人や会話、対人関係の回避、または回避しようとする努力。
    2. 認知の陰性変化
      1. 陰性の情動状態(例:恐怖、在宅感、悲しみ、恥、混乱)の大幅な増加
      2. 遊びの抑制を含め、重要な活動への関心または参加の著しい減退
      3. 社会的な引きこもり行動
      4. 陽性の情動を表出することの持続的減少
  4. 心的外傷的出来事と関連した覚醒度と反応性の著しい変化。心的外傷的出来事の後に発現または悪化しており、以下のうち2つ(またはそれ以上)によって示される。
    1. 人や物に対する(極端なかんしゃくを含む)言語的または肉体的な攻撃性で通常示される、(ほとんど挑発なしでの)いらだたしさと激しい怒り
    2. 過度の警戒心
    3. 過剰な驚愕反応
    4. 集中困難
    5. 睡眠障害(例:入眠や睡眠維持の困難、または浅い眠り)
  5. 障害の持続が1ヶ月以上
  6. その障害は、臨床的に意味のある苦痛、または両親や同胞、仲間、他の養育者との関係や学校活動における機能の障害を引き起こしている。
  7. その障害は、物質(例:医薬品またはアルコール)または他の医学的疾患の生理学的作用によるものではない。

いずれかを特定せよ

解離症状を伴う:症状が心的外傷後ストレス障害の基準を満たし、次のいずれかの症状を持続的または反復的に体験する。

  1. 離人感:自分の精神機能や身体から離脱し、あたかも外部の傍観者であるかのように感じる持続的または反復的な体験(例:夢の中にいるような感じ、自己または身体の非現実感や、時間が進むのが遅い感覚。
  2. 現実感消失:周囲の非現実感の持続的または反復的な体験(例:まわりの世界が非現実的で、夢のようで、ぼんやりし、またはゆがんでいるように体験される)。 注:この下位分類を用いるには、解離症状が物質(例:意識喪失)または他の医学的疾患(例:複雑部分発作)の生理学的作用によるものであってはならない。

該当すれば特定せよ

遅延顕症型:その出来事から少なくとも6ヶ月間(いくつかの症状の発症や発現が即時であったとしても)診断基準を完全には満たしていない場合。

5.PTSDの治療や治し方

慰めるPTSDの治療や薬物療法とカウンセリングがメインとなります。さらに家族は友人などの身近な人の支えがPTSDの治療に大きく影響します。

(1)PTSDの薬物療法

以前は、PTSDは症状が出現してから3ヶ月以内に約半数の方が自然に改善していく一方で、1年以上経過しても自然回復せずに症状が慢性化する場合もあるという見解がありました。

近年では、PTSDの薬物療法も進歩を遂げており、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(略称:SSRI)などを始めとする抗うつ薬を使用することで治療を実施することができるようになってきました。

選択的セロトニン再取り込み阻害薬やミルタザピンなどの抗うつ薬は、顕著なうつ症状を認めなくてもPTSDに対して第1選択の治療薬として推奨されています

悪夢などによって不眠を伴うケースに対しては、オランザピンやクエチアピンなどの抗精神病薬が処方されることも時にあります。

(2)PTSDのカウンセリング

PTSDに関連する症状を改善するためには、カウンセリングが治療の中心的役割を担います。

実際のカウンセリングでは、初期段階で患者本人やそのご家族などがPTSDに関する正しい知識を得るための啓蒙教育が重要なポイントとなります。

また、理想的な呼吸様式やリラクゼーションなどを通じて行うストレス管理法をカウンセリングで共有する事によって、患者さんの不安や緊張を緩和してPTSDの関連症状を改善させることが期待できます

さらに、専門的な技法として、EMDRや持続的エクスポージャー、TF-CBT(トラウマに焦点を当てた認知行動療法)などもあり、トラウマやPTSDの治療・カウンセリングは昨今では大いに向上していると言えます。

この中のEMDRや認知行動療法については以下のページをご覧ください。

(3)PTSDの人への接し方や対応

PTSDを抱えている人への接し方や対応方法として最も重要なことは、患者さん本人の心理的な安全を担保して、無理せずに周囲のサポートを活用して症状を自然回復させることです

特に、症状が固定化したPTSD例においては、トラウマとなっている過去の記憶内容が回避症状によって思い出されずに十分に整理することができず、不安感や恐怖心が悪化して必要以上に自分自身を責める、あるいは周囲の人間を信じることが出来なくなります。

これらの記憶内容は過去のことであり、たとえ思い出したとしても現在の自分が多大な被害意識を感じるわけではないことを共有して、患者本人に実感してもらうことがPTSDを抱えた人々に対応する際の要点となります。

6.PTSDに対するカウンセリングを受けるために

医者と相談PTSDは、日本の総人口の約1%に認められるありふれた病気であり、トラウマになる圧倒的な外傷的出来事などを経験後に出現する日常生活に重大な支障をきたしうる不快反応を指しています。

PTSDは、生命が脅かされるイベントなどを目撃、あるいは体験することによって、毎晩のように悪夢を見る、あるいは出来事を思い出させる関連事項を避けるなど激しい精神的苦痛が長期間継続されることがあります。

最近では、PTSDに対する治療法は確立されてきており、カウンセリングや抗うつ薬などによる薬物療法が主要な治療策として挙げられますので、心配な方は精神科医、臨床心理士、公認心理師などに相談されることをお勧めします。心理オフィスKではPTSDに対するカウンセリングを行っています。希望される方は以下の申し込みフォームからご連絡ください。

文献