家族や友人など親しい人が、元気がなく落ち込んでる日が続くとともに、幻覚や妄想といった症状が現れる際には「統合失調感情障害」と呼ばれる病気の可能性が考慮されるため、専門施設による適切な診断と治療が必要です。
今回は、「統合失調感情障害」について説明していきます。
目次
1.統合失調感情障害とは
統合失調感情障害とは、統合失調症と気分障害が併発した病気です。幻覚や妄想、混乱などの症状がある一方、情動のコントロールが難しく、抑うつ症状や興奮症状も現れます。治療には、抗精神病薬や抗うつ薬などの薬物療法、認知行動療法、家族療法などがあります。早期の治療が重要で、治療が遅れると回復に時間がかかる場合があります。
本邦では若年層において罹患率が高い精神疾患であると言われています。統合失調感情障害は、自分の思考がうまくまとまらずに、認知機能低下が認められる以外にも、病状が進行すると幻覚や幻聴、被害妄想などを呈する精神疾患です。
また、長期に及んで悲嘆で過度に気持ちがふさぎ込む状態、あるいは喜びで過剰に気持ちが興奮して高揚する状態、またはその両方を示す感情的な障害を双極性障害と呼んでいます。
統合失調感情障害は、統合失調症と双極性障害が組み合わさった状態であると考えられ、様々な心理的症状が多彩に出現することが知られています。
統合失調感情障害と関連ある統合失調症については以下のページをご覧ください。
2.統合失調感情障害の原因
統合失調感情障害が発症する原因は、統合失調症と同様に現代の医学領域ではいまだに解明されていませんが、神経伝達物質のバランスの乱れなど脳機能の低下が発症に大きく関連していると考えられています。
それ以外にも、様々な精神疾患と同様に慢性的に続くストレス、突発的に引き起こされるイベント、遺伝的要因なども発症に影響していると伝えられています。
3.統合失調感情障害の症状や特徴
統合失調症感情障害の主な症状は、統合失調症と双極性障害で認められる特徴に準じて、幻覚、幻聴、被害妄想、支離滅裂な言動、抑うつ、過剰な興奮などが挙げられます。
特に、死神など実在しない存在を指摘する、「殴るぞ」といった暴言が聞こえる、自分が隠されたカメラで監視されているように感じる、命を狙われているなどの幻覚や幻聴、被害妄想を認め、時にそういった症状が出現するため他者に暴力を振るう場合もあります。
また、統合失調感情障害の人は、頭の中で自分の考えを上手く整理することが難しく、言動が支離滅裂になるという症状が特徴のひとつとして認められます。行動が支離滅裂になると、周囲とのコミュニケーションが順調にできなくなり、気分が塞ぎ込んで、病状が発展すれば引きこもりに陥るケースも少なくありません。
統合失調感情障害は、幻覚、幻想、妄想など統合失調症と病状が類似していますが、「双極性障害」も併せて認められる点が両疾患の若干の違いと言えます。
統合失調感情障害では、双極性障害の症状の一つと知られている抑うつ症状も併せて認められ、具体的には「気分が落ち込んで何もやる気が起きない」、あるいは「思考力や集中力が低下する」などが挙げられます。
また、本疾患においては抑うつ症状とは逆に、「根拠のない自信に満ち溢れて口数が多くなる」など過度な興奮状態が認められることがあり、幻覚や幻聴、妄想を伴う場合が多いと言われています。
双極性障害の躁状態は、統合失調感情障害の興奮症状によく類似していますが、双極性障害では基本的に一連の症状を「気分」に関連して変動するように認める点が、「思考」の障害を伴う統合失調感情障害との違いであると考えられています。
統合失調感情障害の症状予後は統合失調症よりも比較的良好であることが知られているため、長期的に症状を観察して病状の進行有無を評価することが必要です。
特に躁病型のケースは、完全に寛解する割合が高い一方で、うつ病型の予後は完全寛解には至らない場合があると考えられています。
4.統合失調感情障害の診断
基本的には、病気の経過のなかで、明確な統合失調症状と明らかな感情症状の両者が数日以上のずれなく認められる場合に統合失調感情障害と診断されます。
ただし、症状のエピソードが統合失調症の診断基準、あるいはうつ病や躁病エピソードの診断基準も満たさない条件の下で診断が付けられることは認識しておきましょう。
通常では、病気の症状に関して、統合失調症状のみである、あるいは感情障害症状だけを呈する場合には本疾患の診断には結びつかないと言われています。
DSM-5における統合失調感情障害の診断基準
- 中断されない一続きの疾病期間中に、気分エピソード(抑うつエピソードもしくは躁病エピソード)が統合失調症の基準Aと同時期に存在する。 彼らは上記の性質を持った以上に親密な関係にある。注:抑うつエピソードは、基準A1の抑うつ気分を含んでいなければならない。
- 疾病の生涯持続期間中に、気分エピソード(抑うつエピソードもしくは躁病エピソード)を伴わない2週間以上の妄想や幻覚が存在する。
- 気分エピソードの基準を満たす症状は、疾病の活動期と残遺期を合わせた期間のうちの半分以上の期間に存在する。
- その障害は、物質(例:乱用薬物、医薬品)または医学的疾患の作用によるものではない。
いずれかを特定せよ
- 双極型:この下位分類は、躁病エピソードが病像の一部である場合に適用される。抑うつエピソードも生じることがある。
- 抑うつ型:この下位分類は、抑うつエピソードだけが病像の一部である場合に適用される。
引用:DSM-5
5.統合失調感情障害の治療と克服
統合失調感情障害の治療として薬物療法とカウンセリングがありますので、それを解説します。また、統合失調感情障害の人への接し方のコツなども記載します。
(1)統合失調感情障害の薬物療法
統合失調感情障害に対する薬物療法では幻覚や幻聴だけでなく、抑うつや興奮などの症状を抑制するために、非常に様々な種類の薬剤服用が行われます。
一般的に、薬物療法は本質的で根本的な治療というよりも症状緩和のために実施される治療と認識されており、過剰な使用は薬物依存や薬剤の副作用リスクの増大に繋がるため、精神療法にも同時に取り組んで実践することが重要なポイントです。
躁病型の場合には、リスペリドン(リスパダール)、オランザピン(ジプレキサ)、クエチアピン(セロクエル)によって症状を緩和させることが可能です。また気分の安定のために、炭酸リチウムなどの気分調整薬も効果があります。
(2)統合失調感情障害のカウンセリング
統合失調感情障害におけるカウンセリングを含めた精神療法には、非常に様々な種類があり、それぞれで異なるアプローチが実践されます。
例えば、行動療法では適切な行動を患者自身が選択できるかどうかを確認しながら、専門職によって行動の矯正を実施します。
認知療法においてはストレスに繋がる問題点や思考過程について共有して、それらに関する問題を解決するための治療的アプローチを実行しますし、作業療法では作業療法士の指示のもとで、作業内容を通じて精神的な治療を進めていきます。
家族療法では、患者様のご家族に対して、カウンセラーとの対話などカウンセリングを行って、家族全体で患者の症状理解や発症要因の解決を図り精神的安定化を図ります。
これらのカウンセリングは根本的な治療に結び付き、薬物療法と並行して実践することで、確実に症状は改善傾向に向かっていくことが期待できます。
(3)統合失調感情障害の人への接し方
統合失調感情障害では、本来であれば見えないものや聞こえない声が実在すると錯覚して、患者本人は妄想と現実の境目が曖昧になってしまうため、周囲の人が異変に気づいて、精神科など専門医療機関を受診して相談することが重要です。
また、統合失調感情障害における抑うつ症状などを放置すれば、抑うつ状態が重くなって、長期化することで統合失調症やうつ病が併発することも懸念されるため、双極性障害を認めた際には、速やかに適切な治療に結び付けることが大切です。
統合失調感情障害は、適切な治療を実施すればコントロールできる病気です。
ご家族や友人が統合失調感情障害に罹患している場合には、周囲の方は、本疾患について正しく理解し、患者さんに寄り添いながら、上手にこの病気とつき合っていくことが重要な観点となります。
特に統合失調感情障害患者は入院などの治療期間が長期にわたることによって、日常生活技能が著明に低下することが知られており、急性期治療を脱した後は速やかに地域社会へ移行することが重要なポイントと認識されています2)。
患者さん本人にとって、一番の理解者であり支援者はご家族であり、信頼している人からの適切な励ましや手助けが重要なサポートとなります。
病気そのものへの理解のみならず、病気に伴う様々な症状のために患者自身が心理的あるいは生活行動面で抱いている辛い気持ちを共感して、温かく寄り添ってあげましょう。
6.(株)心理オフィスKで統合失調感情障害のカウンセリングを受ける
統合失調感情障害の概要や典型的な症状、原因、治療法などを解説してきました。
統合失調感情障害は、統合失調状と感情障害症状の症状があわせて認められる障害であり、対人関係など日常生活に大きな支障をもたらす疾患ですので、早期の段階で精神科など専門施設を受診して適切な治療を行うことが大切です。
統合失調感情障害に有効とされる治療法に「薬物療法」と「カウンセリング」が挙げられ、両者を計画的に確実に実践することが、統合失調感情障害の治療には重要な観点となります。
今回の記事情報が少しでも参考になれば幸いです。
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