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シゾイドパーソナリティ障害のカウンセリングと治療

孤独を愛す

シゾイドパーソナリティ障害(スキゾイドパーソナリティ障害)は、数あるパーソナリティ障害の中の一つです。人との関係を回避し、孤独を好む特徴があります。この記事ではこうしたシゾイドパーソナリティ障害について解説します。

1.シゾイドパーソナリティ障害とは

座って悲しんでいる女性

シゾイドパーソナリティ障害(スキゾイドパーソナリティ障害)とは、感情の欠如や社交的な関心の低下が見られ、一人でいることを好み、他者との親密な関係を築きにくい傾向があるパーソナリティ障害です。日常生活において、興味や感情の表現が少なく、冷淡な印象を与えることがあります。しかし、幻覚や妄想は見られないため、統合失調症とは異なります。治療には、認知行動療法や対人関係療法、精神分析的アプローチ、カウンセリングなどが行われる場合があります。

シゾイドパーソナリティ障害の人は、対人接触を求めず、非社交的で孤独な環境を好むことを特徴とし、それによって社会生活に支障をきたしたり、本人が苦痛を感じてしまいます。回避性パーソナリティ障害や自己愛性パーソナリティ障害でも対人接触を避ける引きこもりが見られることがありますが、この2つが本当は対人接触を求めているのに対して、シゾイドパーソナリティ障害は対人接触よりも孤独な環境の方を好むという違いがあります。この性格傾向を持つ人の中には、自然科学や芸術などの他の人間との密な関わりを必要としない領域での活動に専念して、大きな業績を挙げる人もいます。

シゾイドパーソナリティ障害の有病率は明確にされていませんが、米国では一般人口の約3-5%に見られるとされています。いくつかの調査で、男女比は約2:1で男性に多いとする報告があります。この患者は他人とほとんど接触せずに一人で行う仕事を好む傾向があります。また日中の仕事よりも夜間に行う仕事を好みますが、それは多くの人との接触が不要だからであると考えられています。

シゾイドパーソナリティ障害は通常幼児期または青年期に始まると言われています。シゾイドパーソナリティ障害は他のパーソナリティ障害よりも長期間続き変化に乏しいですが、必ずしも生涯にわたるというわけではありません。経過中に統合失調症を発症する患者の割合は知られていません。患者の約半数は生涯に一回以上のうつ病のエピソードを経験し、しばしば他のパーソナリティ障害(統合失調型や妄想性、境界性、回避性など)を合併することがあります。

シゾイドパーソナリティ障害は上位カテゴリーのパーソナリティ障害の中の一つです。そのパーソナリティ障害については以下のページをご覧ください。

2.シゾイドパーソナリティ障害の原因

ふさぎこむ母親と寝転ぶ子どもシゾイドパーソナリティ障害の原因は特定されていませんが、遺伝的素因が関わっていると考えられています。かつては統合失調症の病前性格とみなされていましたが、現在は否定されています。小児期に養育者が感情的に冷たかったり、よそよそしい人であったりすることがシゾイドパーソナリティ障害の発症に関わっていると指摘する人もいます。

イギリスの精神分析家のフェアベーンによると、親に無視もしくは独占されることによって部分対象の扱いを受け、被剥奪感と劣等感によって母親に固着し、それと同時に自己愛的態度と内的世界の過大評価を発達させたことが原因としています。そして、この親の二側面は「拒絶対象」と「刺激対象」とし、後の精神構造論に組み込まれていくことにより、シゾイドパーソナリティ障害となってしまうとしました。

また、フェアベーンはシゾイドパーソナリティ障害には以下の3つの悲劇があると指摘しています。

  • 自分の愛は愛するものを破壊してしまう
  • 憎み・憎まれることへの強迫的な衝動によって駆り立てられながら、奥底では愛し、愛されることへの願望を常に持っている
  • 愛によって破壊してしまうことよりも、憎しみによって破壊してしまう方がましである

このことからシゾイドパーソナリティ障害は「愛によって破壊することなしに、いかに対象を愛するか」という根本的な苦難を抱えてしまうようです。

3.シゾイドパーソナリティ障害の特徴

森の中の線路を歩く女性シゾイドパーソナリティ障害の人は冷たくてよそよそしい人と見られることがあります。距離を取った人間関係を好み、日常的な事柄への愛着や他人への関心を見せません。また静かで引きこもりがちで、非社交的に見えます。彼らは感情的な絆への要求や憧れをほとんど持たずに人生を送り、世間の流行にも鈍い傾向があります。患者は他者が自分のことをどのように考えているかについて、あまり悩みません。社会的交流においてごく普通の合図にも気が付きにくいため、社会的には不器用で無関心、または自分のことに没頭しているように見られることがあります。

出世欲や名誉欲はあまりなく、むしろ俗世の欲にまみれた生存競争の世界から距離を置きたいと考えています。静かで淡々とした生活を好み、贅沢や華美に走ることを嫌います。生活は質素で、例えお金があっても食事や衣服、住居にあまりお金をかけない傾向があります。物質的なものよりも、精神的で内面的な価値に重きを置きます。

他の人には耐えられないと思えるほどの孤独な生活を送り、やりがいや独自の興味を感じて生きている人もいます。他者との交流が必要ない活動や趣味(コンピューターゲームなど)を好む人が多いです。

性生活や恋愛関係にはあまり興味を示さず、性的な話題を避ける人も多いです。他人と親しい仲になることが難しいために、男性は生涯結婚しない人も多く、女性では結婚を望む積極的な男性と受動的に結婚する人もいます。

通常自分の怒りを直接表明することは生涯にわたってなく、例え挑発されても怒りを示すことはあまりありません。

シゾイドパーソナリティ障害の人は、自分のエネルギーを人間関係が絡まない分野(例えば数学や天文学など)に注ぎ込むことができる場合には、偉大な業績を残す人もいます。余計な人間関係に時間やエネルギーを割かないために自分の仕事に集中することができます。また気分の起伏やムラが少なく、何年にもわたって同じ生活を続けられるという能力があります。そして大自然の中で生きたり、孤独に旅をすることを好む人も多く、人間よりも動物と親しい関係を築くことができる人もいます。無口ですがとても思索的で、宗教や芸術的な感性に優れている人もいます。

4.シゾイドパーソナリティ障害の診断

医師と話す男性シゾイドパーソナリティ障害の診断基準として、国際的に広く用いられているものの一つは、米国精神医学会が発行している精神疾患の診断統計マニュアル第五版(Diagnositic and Statistical manual of Mental disorder, 5th edition: DSM-5と略されます)です。その内容を簡単にまとめるとは下記のようになります。

DSM-5によるシゾイドパーソナリティ障害の診断基準

  1. 「社会的関係から距離を置き、対人関係においての感情表現に乏しい等の特徴を持つパーソナリティが成人期早期までに始まり、それが持続する。さらに以下のうち4つ(またはそれ以上)が当てはまる場合にシゾイドパーソナリティ障害と診断する。」
    1. 家族の一員であることを含めて、親密な対人関係を持ちたいと思わない、またはそれを楽しいと思わない。
    2. ほとんどいつも孤立した行動を選ぶ。
    3. 他人と性体験を持つことに対する興味が、もしあったとしても少ししかない。
    4. 喜びを感じられるような活動が、もしあったとしても少ししかない。
    5. 第一度親族(親、兄弟、子)以外には親しい友人または信頼できる友人がいない。
    6. 他人の賞賛や批判に対して無関心に見える。
    7. 感情的な冷淡さ、超然とした態度、起伏のない感情を示す。
  2. なお、この診断がなされるためには、これらの考えや行動が他の精神疾患やパーソナリティ障害によるものではないことを確認する必要があります。鑑別を要する疾患として、統合失調症および関連障害群、自閉スペクトラム症、統合失調型パーソナリティ障害、回避性パーソナリティ障害などがあります。

引用:DSM-5

5.シゾイドパーソナリティ障害の治療

家族のカウンセリングシゾイドパーソナリティ障害の治療には精神療法と薬物療法が用いられますが、その方法や効果についての知見は限られています。治療に当たっては、他のパーソナリティ障害と同様に症状が患者のパーソナリティそのものなので、患者に症状を自覚してもらうという作業を重視しなくてはなりません。

(1)薬物療法

薬物療法としては一部の患者の精神症状に対して、抗精神病薬、抗うつ薬、精神刺激薬などが有益である場合があります。セロトニン系薬物によって患者の拒絶的反応が減弱する可能性があります。対人関係の不安を減少させるためにベンゾジアゼピン系抗不安薬が使用されることがあります。

(2)カウンセリング

カウンセリングとしては社会的技能に焦点を合わせた認知行動療法が行われることがあります。集団カウンセリングにおいては、患者は沈黙しがちで非社交的な態度を示すことがありますが、時間が経過するにつれて集団の構成員が患者にとって重要な存在になり、他の方法では孤立しがちな患者にとって唯一の社会的交流の機会をもたらす可能性があります。また患者との関係を築き、治療的交流を促進するために、趣味や収集物等について興味を共有することが有効な場合があります。一方でシゾイドパーソナリティ障害の患者は他者に対する関心が薄いため、変化するよう動機付けすることが難しい場合もあります。

しかし、シゾイドパーソナリティ障害の愛情にまつわる葛藤や、幼少期の外傷体験に触れていくことにより、強い混乱を示すことがありますが、そこをカウンセリングで話し合いながら、取り組み続けることにより、カウンセリングの進展がみられることがあります

6.シゾイドパーソナリティ障害について相談する

慰めるシゾイドパーソナリティ障害の概要、原因、診断、特徴、治療、カウンセリングについて解説しました。シゾイドパーソナリティ障害は一見すると飄々としており、人との関係が希薄で、時には人を避けるような行動を見せます。しかし、心の中では愛情にまつわる強い葛藤があり、時には幼少期の外傷体験によって傷ついていたりします。そこをカウンセリングで解決していくことは困難ではありますが、不可能なことではありません

(株)心理オフィスKではこうしたシゾイドパーソナリティ障害についての相談やカウンセリングを行っています。カウンセリングをご希望される方は以下の申し込みフォームからご連絡ください。

参考文献

この記事は以下の文献を参考にして執筆いたしました。