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発達性トラウマ障害のカウンセリング・相談

傷つきは癒されるのか

今回取り上げるのは、最近よく耳にするようになった発達性トラウマ障害というものです。この発達性トラウマ障害は一般的には「小さいころから様々なトラウマを抱えてきた人」を指して用いられることが多いような印象ですが、実際のところどのような状態を指し、どのように診断、治療されていくものなのか解説していきたいと思います。

発達性トラウマ障害とは

ヴァン・デア・コーク

発達性トラウマ障害とは、子ども期に繰り返される慢性的なストレスが原因で発症する精神障害です。虐待や家庭内暴力、性的搾取などのトラウマ体験が原因となり、注意欠陥・多動性障害(ADHD)や自閉症スペクトラム障害(ASD)などの発達障害を併発することがあります。症状には、過度の不安や恐怖、感情の不安定さ、社会的交流に対する障害などがあります。早期の診断と治療が大切です。

トラウマといえば、PTSDという疾患があります。フラッシュバックや過覚醒、回避行動などを特徴としており、多くの場合、PTSDには原因となる出来事が明確にあるとされてきました(自然災害や戦争、事故など)。これは現在では単純性PTSDと呼ばれています。原因が1個だからです。

しかし、次第に「PTSDはそんな単純なものではないのではないか」と考えられるようになりました。PTSD症状を呈す人の中には、「あの時のあの体験」というよりは、「ずっと虐待を受けていたし、いろんなことをされた」などと数々の体験からPTSDを発症している人も存在したからです。そういったケースは複雑性PTSDと呼ばれるようになりました。

発達性トラウマ障害はこの複雑性PTSDととても近い概念です。なぜなら、同じように「幼少期から続くトラウマ体験の積み重ね」が中核にあるとされているからです。では、なぜ複雑性PTSDという言葉があるのにも関わらず、新しい発達性トラウマ障害というものが提唱されたのでしょうか。

それは、幼少期から長く劣悪な環境に晒された人には複雑性PTSDの症状に加えて、対人関係や情緒面、行動面の問題も多くみられたからです。PTSDの症状に愛着障害の影響が付随しているような状態といえるでしょう。逆に、愛着障害の状態が癒えることなく続いた結果PTSDの症状をも呈し始めたような状態ともいえるかもしれません。このような人たちを発達性トラウマ障害と言います

ヴァン・デア・コークは、このような人がしっかりと治療を受けられるようにと、発達性トラウマ障害という概念を提唱したとされています。

トラウマ、PTSD、複雑性PTSD、愛着障害については以下のページをご覧ください。

発達性トラウマ障害の特徴・症状

机で泣いている女性発達性トラウマ障害の特徴と症状には以下のようなものがあります。

  • 過去のトラウマ体験を思い出すと身体的、心理的にネガティブな影響がでる
  • 自己嫌悪が強くある
  • 傷つきやすい
  • 対人関係が不安定
  • 親に不信感がある
  • 誰かの助けを得ようとしない
  • 人にうまく頼れない
  • 悲観的
  • 自分のせいにしてしまう

ここから分かる通り、これは発達性トラウマ障害特有の症状というよりは、PTSDの症状と愛着障害の人の特徴をまとめたような項目といえます。あくまで発達性トラウマ障害というものは包括的な概念であり、こうであれば発達性トラウマ障害だといえる明確な症状は未だ確立していません。

発達性トラウマ障害の原因

ふさぎこむ母親と寝転ぶ子どもまず、養育者などからの継続的な虐待が原因として考えられます。具体的には、身体的な暴力や性的な暴行、精神的に追い詰める言動などです。また、虐待とまでいかなくとも、マルトリートメント(不適切な養育)が原因となることもあるでしょう。これはトラウマの原因というよりは、どちらかというと愛着障害の原因となります。

愛着に問題を抱えると、人との関係に摩擦が生じやすくなったり、精神的に不安定になったりします。つまり、余計に傷つきやすい性質になってしまうということです。そういった間にも虐待がおこなわれ続けると、その傷つきやすくなった心に更に追い打ちをかける形となります。より不安定になり、最終的にはPTSDの症状を呈してしまいます。

ここで挙げた児童虐待については以下のページに詳しく書いています。

発達性トラウマ障害の診断

医者と相談発達性トラウマ障害についての診断について述べていきます。

(1)発達性トラウマ障害は診断名ではない

注意しなければならないのは、発達性トラウマ障害という診断名は存在しないという点です。今のところ、発達性トラウマ障害という言葉は、ある状態を指した概念にすぎません。それゆえ、「自分は発達性トラウマ障害なのではないか」と病院に行ったとしても、そういった診断をもらうことはできません

最近、このように診断名でないものが診断名として流布してしまっているケースが増えています。アダルトチルドレンや共依存、HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)などよく耳にされると思いますが、これらはすべて存在しない診断名です。同じく、発達性トラウマ障害も診断名ではありません。この点を抑えておかなければ、問題の本質がわからなくなり、ちゃんとした治療に結び付かない可能性がありますので注意しましょう。

(2)発達性トラウマ障害の診断方法

発達性トラウマ障害の特徴に当てはまる人が精神科に訪れた場合、その人はどう診断されるのでしょうか。考えられるケースを少し挙げたいと思います。

先にも述べたように、発達性トラウマ障害はPTSDと愛着の問題などをまとめたような包括的な概念です。ですので、もちろんPTSDの症状が強くあれば、PTSDと診断されることになりますし、社会生活でストレス状況に対処できず抑うつ的になっていたりすれば適応障害やうつ病などと診断されるでしょう。また他に考えられるケースとしては、虐待を受けてきた人の中には現実から自分を切り離し、記憶を失ったり、現実を生きているという感覚を失ったりしている人もおられます。そういったケースでは解離性障害という診断になるかもしれません。

このように、精神科の診断では、原因よりも現在の具体的な症状に基づいて診断される傾向にあるので、発達性トラウマ障害の特徴があったとしても、診断はその人の症状によりそれぞれ異なります

発達性トラウマ障害の治療・カウンセリング

笑っている二人の女性診断が多種多様であれば治療もその人次第ということになります。その人の症状や診断に沿った薬物治療やカウンセリングなどが行われることになるでしょう。ここで大切なのは、治療には「現在の症状の治療」と「過去のトラウマの治療」の2つのアプローチがあるという点です。

(1)現在の症状の治療

病院やカウンセリングルームを訪れた際、最初は前者の「現在の症状」からアプローチされることが多いと思われます。例えば、うつ状態にある人には抗うつ薬が処方されるでしょうし、夜寝られない人には睡眠薬が処方されるでしょう。

フラッシュバックがあるのにも関わらず、いきなり原因となった過去を振り返るのはとてもつらいことですし、PTSDを悪化させることにもなりかねません。まずは現在が落ち着いたものとなるように、薬物療法やカウンセリングが導入されます

(2)過去のトラウマの治療

トラウマ治療には、トラウマ治療に特化した療法があり、そのひとつにEMDRというものがあります

これは、過去の体験を思い浮かべながら治療者の指を目で追い、眼球を動かすというものです。「そんなことで治るのか」と思われる人も多いですが、WHOが効果を認めている治療法となっています。発達性トラウマ障害やPTSDの症状に困っておられる方は、このEMDRを専門としている医師やカウンセラーを探されるのも一つだと思います。

EMDRの詳細については以下のページをご覧ください。

この他に、持続的暴露療法やトラウマに焦点を当てた認知行動療法などもあります。

発達性トラウマ障害についてのよくある質問


発達性トラウマ障害(Developmental Trauma Disorder:DTD)は、幼少期に虐待やネグレクトなどの逆境的な体験を繰り返し経験することで、発達や心理に深刻な影響を受ける障害です。これにより、感情のコントロールが難しくなったり、注意力や行動の調節が困難になることがあります。さらに、対人関係や自己認識にも問題が生じることが多く、日常生活に支障をきたすことがあります。


発達性トラウマ障害の主な症状には、以下のようなものがあります:

– 感情の調節が難しく、突然怒り出したり、悲しみに沈むことがある。
– 注意力の欠如や過度の警戒心が見られる。
– 他者との関係構築が難しく、信頼関係を築くのに困難を感じる。
– 自己評価が低く、自分に価値がないと感じることが多い。
– フラッシュバックや悪夢など、過去のトラウマを再体験することがある。


発達性トラウマ障害の主な原因は、幼少期における継続的な虐待やネグレクト、家庭内暴力の目撃、養育者の頻繁な変更などの逆境的小児期体験です。これらの経験が子どもの脳や心理的発達に影響を与え、感情や行動の調節に問題を引き起こすことがあります。


発達性トラウマ障害の診断は、専門の医師や心理士による詳細な面接や評価を通じて行われます。具体的には、幼少期の経験、現在の症状、行動パターン、感情の調節能力、対人関係の状況などを総合的に評価し、他の精神疾患との鑑別も考慮しながら診断が下されます。


発達性トラウマ障害の治療には、主に心理療法が用いられます。具体的には、トラウマに焦点を当てたカウンセリングや、感情の調節を学ぶためのセラピー、対人関係のスキルを向上させるための訓練などが行われます。必要に応じて、薬物療法が併用されることもあります。


発達性トラウマ障害は、幼少期の経験が原因で発症しますが、その影響は成人期まで持続することがあります。したがって、大人になってからも症状に悩まされることがあり、適切な治療やサポートが必要です。


発達性トラウマ障害と心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、どちらもトラウマ体験に関連する障害ですが、異なる点があります。PTSDは、単一または短期間の強いトラウマ体験によって引き起こされることが多いのに対し、発達性トラウマ障害は、幼少期の継続的な虐待やネグレクトなどの複数の逆境的体験が原因となります。また、発達性トラウマ障害では、感情や行動の調節、対人関係の問題など、より広範な症状が見られることが特徴です。


発達性トラウマ障害は、適切な治療とサポートを受けることで、症状の改善や生活の質の向上が期待できます。心理療法やカウンセリングを通じて、感情の調節や対人関係のスキルを学ぶことが重要です。また、家族や周囲の理解と協力も回復に大きな役割を果たします。


発達性トラウマ障害の方と接する際には、以下の点に注意すると良いでしょう:

– 安全で安心できる環境を提供する。
– 感情や意見を尊重し、否定しない。
– 急な変化や強い刺激を避ける。
– 専門家のアドバイスを求めながら適切な支援を行う。
– 無理に治療を急がず、相手のペースを尊重することが大切です。


発達性トラウマ障害の予防には、幼少期の安定した家庭環境や適切な養育が重要です。虐待やネグレクトを防ぐために、家庭や社会のサポート体制を整えることが求められます。また、子どもが安心して話せる環境を作り、困難な状況があれば早期に専門家の支援を受けることが効果的です。

(株)心理オフィスKで発達性トラウマ障害のカウンセリングを受ける

カウンセリングをする男女

今回は発達性トラウマ障害というものを見てきました。以前は、トラウマというと、死に瀕するような体験を指して述べられていましたが、最近は、小さな積み重ねもトラウマとなりうるという考えが一般的になってきています。過去のつらい体験と向き合うことは簡単なことではありません。傷つきを抱えた方が、さらなる傷つきを増やしてしまわないよう、大切に体験を共有したいと考えています

(株)心理オフィスKではこうした発達性トラウマ障害に対する相談やカウンセリングを行っています。カウンセリングを受けてみたいという方は以下のボタンからお申し込み・お問い合せください。