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セックス依存症のカウンセリングと克服

それは愛とはいえない

セックスはありふれた心理的・生理的欲求で、それ自体は病気や障害ではありません。しかし、依存症とは、その人にとって利益をもたらしていた習慣が、時間経過と共に自己調節機能が破綻し不利益をもたらしているにも関わらず制御困難になった状態で、誰にでもその可能性のある病気です。セックスがこうした依存症になってしまうことがしばしばあります。

今回の記事ではセックス依存症の特徴やその症状や原因や対処法について解説していきます。

セックス依存症を含めた依存症についての全般的な解説は以下のページをご覧ください。

1.セックス依存症とは

足を出している男女

セックス依存症とは、性行為に対して過剰な欲求を感じ、それによって日常生活に支障をきたす精神障害のことです。自己破壊的な性行動や性的関係の強要などが現れることがあり、恋愛依存症や摂食障害などの他の精神障害とも併発することがあります。専門の治療を受けることで、改善することができます。

セックス依存症になると、セックスに強い固執することで不利益な状況に陥っているのに、それでもセックスがやめられなくなります。これは男性でも女性でも同様に起こります。

そして、それによって性感染症にかかるリスクが増えたり、風俗がやめられず多額の借金を背負う、不倫で社会的信用を失ったり離婚になっても不倫関係がやめられない、仕事や約束に遅刻覚悟で自慰行為がやめられない、など何らかのセックスに関連する「欲求で不利益を被ってもやめられない」ことが特徴です。

また、セックス依存症には、他との性交渉のみではなく、自慰行為も含まれます。

このセックス依存症に近い依存として恋愛依存症があります。時には重複したりもします。恋愛依存症の詳細は以下のページをご覧ください。

2.よくある相談の例(モデルケース)

20歳代の女性

いわゆる貧困家庭の出生しました。父親はたびたび暴力を振るっていました。母親は時折不倫をし、家庭に帰らないこともありました。保育園や小学校では一人でいることが多く、友達と遊ぶことは稀でした。また、友達にからかわれた時には非常に激怒し、その友達に大きな怪我を負わせることもありました。勉強はほとんどできず、成績は非常に悪いものでした。

中学生の時にはいわゆる不良グループに入り、学校には来ず、不登校状態になりました。そうした状況でも両親は何も言わず、ほったらかしでした。彼女は小遣い稼ぎのようにパパ活や援助交際もするようになりました。恋人のような人もいましたが、いずれも短期間で恋愛は終了しており、それが次々とくりかえされる状況でした。

中学を卒業すると、当時の恋人の家に転がり込み、アルバイトをしたり、援助交際をしたりして生活していました。知り合ったばかりの名前も知らない男性とセックスをするなどもしていました。恋人いましたが、付き合っては別れるといったことを繰り返し、半年も関係は続きませんでした。

次第に、不眠や極度の不安感、抑うつ気分などが出現し、そのため、リストカットなどもするようになりました。それを見た、その時の恋人が心配して精神科に連れて行きました。そこで薬物療法と並行して、カウンセリングを受けることを勧められ、彼女は素直にその申し出を受けました。

カウンセリングで彼女はこれまでの過酷な人生についてゆっくりと話をし、カウンセラーと一緒に整理していきました。そして、そうした過酷な環境の中で、セックスだけが苦痛から解放してくれていたことを共有しました。そのため、セックスに依存するになっていったようでした。カウンセラーはセックス依存が悪いものではなく、苦痛を和らげる役割があったのだと述べ、彼女を行いを道徳的に責めることはしませんでした。ただ、そうしたセックスは危険が伴うものであることは指摘し、セックスに代わるものを一緒に探すことと、ストレスや苦痛の少ない生活にしていく方策を見つけることをカウンセリングでは行っていきました。そうしたカウンセリングは数年ほどかかりましたが、彼女は安定した人間関係を徐々に作れるようになり、仕事も安定するようになりました。またセックスではなく、映画やスポーツをすることで発散する方法を使えるようになり、彼女のセックス依存は徐々に消失していきました。

3.セックス依存症の原因

セックス依存症の原因と考えられるものには以下のように色々とあります。

(1)苦痛な気持ちを持っている

不安や悲しさ、寂しさを過敏に感じてしまうことはセックス依存症の原因になります。セックスをすることで、こうした不安や悲しさ、寂しさを埋めることができます。しかし、不安や悲しさ、寂しさは埋めることはできますが、セックスがなくなるとまたこの苦痛な気持ちが湧き上がってくるので、何度も何度もセックスをしなくてはならなくなってしまいます。

モデルケースでも日々のストレスや不安、寂しさをまぎらわせるためにセックスを使用しており、それが依存となっていました。

(2)他者からの承認が得られていない

また、自己が確立されておらず、アイデンティティが不安定であることもセックス依存症の原因になりえます。セックスすることが他者から求められている、承認されている、必要とされていると感じ、それによって救われたと思ってしまいます。このことにより、何度もセックスをすることに繋がっていきます。

ただ、これもやはり一時の満足でしかなく、セックスによって自己やアイデンティティを確立することはできないばかりか、セックスでしか解消できないのだと自己嫌悪、自己否定になり、ますますセックスに没頭していかざるをえなくなります。

モデルケースでも、他者から褒められることはなく、反対に両親などからはほったらかしにされるような状況でした。そうした状況はモデルケースにとっては非常に苦痛だったようです。

(3)性犯罪被害

そして、性犯罪被害に合ってしまった人もセックス依存症になってしまいます。性犯罪被害に合ってしまうと、同じような状況や出来事を反復するように、自らを傷つけ、セックスを繰り返してしまいます。同じことを繰り返すことで、コントロールを取り戻し、乗り越えようとする努力なのかもしれませんが、しかし、結果的にますます傷つきが深まってしまうことになります。

モデルケースでは性犯罪被害には幸いにしてあってはいません。ただ、女性が不特定多数の男性とセックスをすることは性犯罪に巻き込まれるリスクは相当高いと言えます。

(4)児童虐待

児童虐待とは養育者から子どもに与えられる不適切な養育で、身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、ネグレクトなどの種類があります。

児童虐待を受けた子どもは大人になってからも、精神的に不安定で、自分を大切に思うことができず、危険な行動を衝動的にしてしまうようになります。この中に不特定多数の人とセックスしてしまうようなことも含まれます。

モデルケースでは父親は暴力を、母親はネグレクトをしていました。そうしたことはモデルケースの健全な発達は阻害されていたようです。

4.セックス依存症の診断

相談に乗る女医ICD-11には「強迫的性行動症」という項目があります。これはセックスなどを強迫的に求めてしまう行動症の一つです。以下の6つに該当すれば強迫的性行動症と診断されます。

  • 強くて繰り返される性的渇望
  • 性行為にのめりこみ、他の日常生活に関心をもてない
  • 性行為を止めようとしたことがあるが、何度も失敗している
  • 性行為によって望ましくない結果になっているにも拘らず止めることができない
  • こうした状態・状況が6ヶ月以上も継続している
  • 日常生活に大きな支障が生じてしまっている

この6つに該当すれば強迫的性行動症と診断されます。

モデルケースではこの6項目全てに該当していると思われます。

5.セックス依存症に対する周囲の理解や認識

「嗜好の依存症」に関して、一般に周囲からは「甘え病」や「特殊な偏見」と捉えられがちです。本人もその行動習性を意志の弱い人間だと思い込み、ネガティブに捉え問題化することを避けるため正しい理解へ遅れが生じることが少なくありません。

周囲の理解として本来、タバコやお酒や薬物と違い、恋愛やセックスは心理・生理的欲求で、そこに環境要因や遺伝要因やストレスが交絡しておこるとされており、開始を避けるという選択も他の嗜好より難しいことへの理解は必要です。

そして、それは単に甘えているだけや意思の強さの問題ではなく、病気の症状であるという理解をすることが大事です。そして、症状なので、止めるように無理強いしたり、叱責したり、脅したりするのではなく、その苦痛を受け止め、その他のことに目が向けれるように促していけたら良いでしょう。そして、悪いところを責めるのではなく、良かったところやうまくいったところに着目し、そこを褒めるようにすると良いと思います

モデルケースでも精神科を受診するまで、周りの人だけではなく本人もこれを病気であるとも思っていませんでしたし、男性好き、セックス好きぐらいにしか考えていませんでした。

6.セックス依存症の治療

カウンセラーに相談する男性日本において、セックス依存症はいまだ認知度が低いため、本人の苦悩度合のわりにサポートを受けられる医療機関が少ないのが特徴です。しかし、それが原因で犯罪や社会的な不利益があったり、クロスアディクションが認められる場合には治療すべきです。

確立した治療はないですが、以下のような他の依存症の治療がヒントになります。

(1)自己を認識し、自己肯定感を高める工夫をする。

セックス依存症においても、他の依存症同様にセックス以外で自分の存在が確認できることに取り組むことは大切です

モデルケースでは過去の過酷な自分自身の歴史を振り返り、自己を認識するようになりました。また、セックスではなく、映画やスポーツを通して、熱中して取り組むものも見つけて行きました。また、仕事ではそれなりに成果を上げ、自己肯定感を高めることができたようです。

(2)薬物治療

セックス依存症に直接有効な薬物は現在のところ、まだ開発されていません。クロスアディクションやセックス依存症以外の精神症状(例えば鬱・不眠 など)がある場合は、発達障害や人格障害などが隠れており、それらを薬物で治療すると効果的なことがあります。

モデルケースでも精神科で薬物療法を開始されました。こうしたことは精神的に安定させたようでした。

(3)カウンセリングを受けたり自助グループに参加する

セックス依存症の背景にある「認知の偏り」は思いこみの一種で自分ではなかなか修正ができないことも多いです。カウンセリングは認知の偏りを修正ができるという意味で有用です。背景に幼少期の両親との関係・特に性的な嫌がらせやいじめがあることも多く、現在のストレスも原因となることがあり、そこへの対処は繊細で時に時間を要しますが状況が深刻な場合には必要です。

また、SAA(Sex Addicts Anonymous/セックス依存症を克服するための自助グリープ)に参加し、同じ悩みを持った人と、会話することで「認知の偏りの修正」「行動の訂正」につながり楽になることが少なくありません。

モデルケースではカウンセリングの中で幼少期からの家庭環境や両親との関係などについて振り返る作業を行いました。そして、極めて過酷な状況のなかでセックスしか彼女の心を支えるものはなかったことが自覚されて行きました。こうしたことは自覚することで、反対に離れることができるようになります。そして、現在の生活や人間関係が安定していき、その結果としてセックスに過度に依存する必要がなくなっていきました。

7.セックス依存症について相談する

医者と相談セックス依存症は、他の物的・行動依存と同様に、自分では生理的欲求との境界線を認識しずらく、また、社会生活への影響の程度しないように近藤をコントロールすることが困難です。

また嗜好の依存における周囲の理解やサポートに関して、その認知とともに十分とは言えないため本人だけが苦しんでいることも少なくありません。「自助→共助→公助」は依存症脱出には必要な考え方で、まず自分の意識で実現できることに挑戦し、続いて友達や身近な人に頼り、必要に応じてカウンセリングや自助会や無記名で相談しやすいインターネットなども上手に利用しながら悩みの共有や相談する姿勢は大切といえるでしょう。

そして、最後にはやはり臨床心理士などの専門家に相談し、カウンセリングを受ける方が良いでしょう。(株)心理オフィスKでもセックス依存症のカウンセリングを行っています。希望される方は以下のボタンからお申し込みください。