発達障害(自閉スペクトラム障害、ADHD、学習障害、知的障害)のカウンセリング

1.発達障害とは

心と身体の成長や発達がうまく作動しなかったり、アンバランスになったりすることを指します。近年注目されています。

人間は生まれてから死ぬまでこころとからだが発達し続けます。しかし、人によってはその発達のスピードが違いますし、ばらつきも違います。例えば、からだは発達していてもこころの発達がのんびりした方もいます。思考はどんどんと発達しているにもかかわらず、感情の発達が遅い方もいます。

これらは主に遺伝的要因、器質的要因、先天的要因によって起こりますが、環境的要因や後天的要因がしばしば関係してきます。そして、この発達に偏り、もしくは遅滞がある方を発達障害と言います。この発達障害にはいくつかのタイプがあります。

2.自閉症・自閉スペクトラム障害(ASD)

発達障害といえばこの自閉を思い浮かべる人が多いでしょう。昔は一風変わった人、奇異な人と見られることがありましたが。

(1)自閉症・自閉スペクトラム障害(ASD)の主な3つの特徴

以下に特徴的な3つの特性を挙げます。

  1. コミュニケーションの障害
  2. 社会性の障害
  3. 想像力の障害

コミュニケーションの障害とは言葉を用いて人と会話をしたり、考えや思いを伝達することに困難があることをさします。その他に書き言葉で話をしたり、過度に堅苦しい表現を用いた話をするなどがよく見られる特徴です。社会性の障害は、コミュニケーションの障害とも多少は関係してきますが、人と良好な関係を築くことが苦手で、相手の気持ちや状況を推測したり把握したりすることができないことです。そのため時として一方的な人間関係になってしまい、学級や社会の中で孤立してしまいがちになります。想像力の障害とは、柔軟性やこだわりの問題と言い換えても良いものです。例えば、些細なことに強い関心やこだわりをもったり、突発的な出来事に上手く対処できなかったり、無意味とも思える行動を何度も繰り返したりします。

この3つの特徴以外にも、ちょっとした物音や出来事に過度に反応してしまい、時にはパニック様になってしまう過敏性、味覚や触覚が適切に作動しない感覚異常、落ち着きのなさや立ち歩きなどの多動、などが見られることもあります。

このような特徴は多くは小児期・児童期に現れ始めますし、時には乳幼児期にも見られたりします。乳幼児のころでは、視線があわない、抱っこしにくい、変に育てやすい、痛みに鈍感、などの特徴があったりします。

(2)成人後の発症?

また子どものころはそこまで問題がなかったにも関わらず、社会人になり、就職したり、昇格した時期を境に問題が突然出現し、自閉スペクトラムがあらわになることもしばしば起こります。これは成人期に発症したということではありません。もともとそうした特性があったが、比較的症状は軽かったので、目立たなかったし、問題としてあらわれなかっただけと言えるでしょう。それが仕事をはじめたり、昇格するなど様々なストレスや柔軟性が求められるようになることで、問題が顕在化したということです。

3.注意欠陥多動性障害(ADHD)

これも発達障害の一つのタイプです。落ち着きがなかったり、ソワソワしたり、何もないのに立ち歩いたりすることが特徴で、しばしば社会適応が困難になってしまったりします。もう少し明確に言うと、以下の3つの特徴が揃うとADHDとなります。

(1)注意欠陥多動性障害(ADHD)の3つの特徴

注意欠陥多動性障害(ADHD)にも特徴的な3つの特性があります。それが以下の通りです。

  1. 注意困難
  2. 衝動性
  3. 多動

不注意とは、必要なところに注意や意識を向けにくい、細かいところに気がつかない、注意の切り替えができない、などです。最後の注意の切り替えの問題については、変に一つのことに集中してしまい周りが見えなくなる、ということです。ADHD=集中できない、というのは誤った認識です。衝動性とは、言葉からして暴力的であるとか粗暴であるとかがイメージされますが、実際にはそういうものではありません。後先を考えずに反応してしまう、ちょっとしたことに気が逸れてしまう、パッと行動してしまう、などのことです。多動とは、一ヶ所でじっとしていられない、無意味に立ち歩く、そわそわして常に身体を動かしている、などです。ちなみに、成人になるとこの多動は比較的落ち着いていくことが多いようです。

(2)注意欠陥多動性障害(ADHD)への対応

こうしたADHDに対する対応ですが、まずは薬物療法と環境調整があります。最近ではADHDに著効する薬剤がありますので、そうしたものを服用することは生活の質を向上させるでしょう。ただし、ADHDそのものを治すものではなく、症状対処になりますので、継続的に服用し続けることが必要です。

環境調整とは、本人の能力が出来るだけ引き出され、かつ能力を阻害するようなものを取り除くように周囲の状況を変えていくことです。例えば、注意が逸れがちであれば、部屋にある興味をひくおもちゃなどを見えないように隠したりします。学級の中であれば、席が後ろの方だと他の子が目に入るので、そうならないように教室の一番前の席にするなどもあります。最近ではiPadなどのタブレットを利用して、視覚的に理解しやすいように教材を提示するような工夫もなされており、これも環境調整の一種といえるでしょう。

その上で、ADHDの方が不得意とされる順序だてるスキルや注意を切り替えるスキル、整理スキルなどを認知行動療法などを通して学んでいきます。または、ADHDの特性によって自尊心が傷ついていたり、卑屈になってしまっていたり、対人関係でトラウマを抱えてしまったりすることが少なからずあります。特に親子関係の確執を生んでしまっている場合も多いでしょう。そうした時、彼らのこれまでの生き方を振り返り、失われた自尊心を回復するためのカウンセリングや精神分析的心理療法も選択肢の一つとなってきます。

4.学習障害(LD)

学習障害(Learning Disabilities)とは、基本的な知的能力は問題がないにも関わらず、特定の科目や課題に著しい困難を示す障害です。

(1)学習障害(LD)のタイプ

学習障害(LD)が困難となる能力は以下に挙げたとおりです。

  1. 聞く
  2. 話す
  3. 読む
  4. 書く
  5. 計算する
  6. 推論する

上記の6つの能力のうちの1〜2の能力に困難が生じるのが学習障害(LD)です。そして、その結果として、児童であればある特定の教科や、もしくは勉学そのものに支障をきたしてしまいます。

(2)学習障害(LD)の特徴

学習障害(LD)のある人は、基本的な能力や理解力はあるので、ある分野が著しく出来ないと、周囲からは怠けている、ふざけている、手を抜いている、やる気がない、というような無理解につながってしまいます。そして、本人自身もそのように受け取ってしまい、その結果として、自責感を募らせたり、自罰的になったり、どうせできないからと諦めが早くなったり、暴力的になったり、時には学校そのものが嫌になり、不登校や非行になってしまったりする場合もあります。

また、時として、学習障害(LD)の子どもは注意欠陥多動障害(ADHD)や自閉スペクトラム障害(ASD)に近いような不注意や衝動性、こだわり、非社会性を示すこともあります。

(3)学習障害(LD)への対応

ですので、学習障害(LD)は早期発見ができると良いでしょう。学習が出来ないことによって自尊心は後になればなるほど傷付いていきます。まずは正確な判別をし、本人や保護者、学校関係者に理解してもらうだけでも非常に落ち着きます。そのためにも、ウェクスラーのような知能検査や発達検査、PRS(LD児・ADHD児診断のためのスクリーニング・テスト)などを用いて、客観的に判定します。

その上で、周囲の人や関係者には学習障害(LD)であることの理解をうながし、不必要なプレッシャーや難易度の高い課題をむやみに出さないような配慮をしてもらえると良いでしょう。

また、その子・その人の特徴と水準に合わせた課題を個別に組み合わせ、ややスローペースで着実に積み重ねていけるような学習機会を提供していきます。補足ですが、苦手分野のみを向上させていくだけではなく、その子・その人の得意分野を伸ばしていくことも同時にしていけると良いでしょう。そうすることが自尊心や自信、プライドを取り戻し、前向きな気持ちになっていくことが期待できます。

さらには、学習障害(LD)によって過剰なストレスや葛藤をこうむっているケースも少なくはありません。プレイセラピーやカウンセリングなどでそうした気持ちや考えを整理していく機会があれば非常に良いでしょう。

5.知的障害

知的な能力が低く、学習や社会適応に困難が出てしまう障害です。

(1)知的障害の水準

知的能力の水準によって以下の分け方をすることが多いです。

  1. 境界域 IQ85〜70
  2. 軽度 IQ70〜50
  3. 中度 IQ50〜35
  4. 重度 IQ35〜20
  5. 最重度 IQ20以下

この分類は制度上、概念上の便宜的なものです。実施する知能検査の種類や、その時の状態、時期、年齢などによって、数値はかなり変動しますので、目安ていどにしておく方が良いでしょう。そうはいっても、療育手帳や障害者手帳などの取得には相当影響してきますが。

(2)知的障害の特徴

知的能力の水準がかなり低く、中度〜最重度になってくると当初から困難や問題があらわれるので、早期発見されることが多いでしょう。しかし、問題は軽度〜境界域の水準の知的能力の場合、一見すると分からないことがあります。学習障害の項目で書いたことと重複しますが、軽度〜境界域の知的障害の場合には、周囲から怠けている、たるんでいる、サボっている、やる気がない、などと評価されてしまうことが多いです。そして、そのために自尊心が傷付き、ますます意欲が失われてしまいます。そして、これらも飛行や不登校のリスク要因となってしまいます。非行少年の中のかなりの割合で軽度〜境界域の水準の知的障害がいると言われています。

(3)知的障害への対応

その子・その人の年齢や状況にもよりますが、本人の特性や水準に応じた学習環境、行政サービスを提供することが必要となるでしょう。療育手帳や障害者手帳を取得し、公共機関のサービスを受けられるようにしておくことは非常に助けになります。学齢期の児童であれば、普通学級ではなく、通級学級や固定学級、特別支援学校などの学習環境にうつしてあげることも良いでしょう。そして、社会人になる年齢であれば、デイケア、作業所、障害者枠での雇用などで、自立や社会との接点を持ち続けるようにします。

また、知的障害の人の社会適応能力やストレス対処能力の低さから、問題行動や精神症状を出してしまうケースもそれなりにあります。気分障害や不安障害などはよく見かけますし、パーソナリティ障害のような激しい行動をしてしまうような人も中にはいます。そうしたとき、症状を薬物療法などで抑えることも一時的には必要でしょうが、それ以上に鑑別診断をし、適切な環境を提供し、本人に見合った課題に設定しなおすことにより、急速に落ち着いていくことは稀ならずあります。そうしたことをカウンセリングをとおして援助していくことは効果的です。言葉でのカウンセリングが難しい場合には芸術療法・表現アートセラピーなどを行うこともあります。

6.発達障害の診断の問題点

WISC-4やWAIS-4といった知能検査のプロフィール結果にバラツキがあるだけで発達障害であるとか、発達障害のグレーゾーンとしてしまう専門家もいたりします。そもそも発達障害と言っても、上記に書いた通り自閉スペクトラム障害や注意欠陥多動性障害など様々あり、どれを指しているのか不明確でもあります。時には自閉スペクトラム障害と注意欠陥多動性障害の両方の特性を持っている、というような何でもありのような診断まがいが出されたりもします。

自閉スペクトラム障害や注意欠陥多動性障害といった発達障害は、健常者との質的な違いはなく、スペクトラム構造となっています。そのため、どんな人にも多少は発達障害的な特性をもっています。ですので、発達障害の疑いとか発達障害のグレーゾーンと言っておけば8〜9割は該当してしまいます。

なので、大切なことは、診断にとらわれず、どういう特性を持っており、その特性がどの程度重篤であり、それによって社会生活がどのように支障をきたしているのかをこまかく見ていく必要があります。そして、特性を持っていても、社会生活上でそれほど支障が出ていないのであれば、診断を下す必要はありません。DSM-5やICD-11などでも、症状があるだけではなく、それによる生活の障害が顕著になることが診断基準の1つとなっています。

こうした発達障害の診断に振り回されない方が良いでしょうし、専門家が振り回されるのであればスーパービジョンなどを受ける方が良いでしょう。

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