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WAIS-Ⅳ(ウェクスラー式成人知能検査)

知能をはかる

WAIS-Ⅳとは知能を総合的に、分析的に、詳細に検査をする知能検査の一つです。言語理解、知覚統合、ワーキングメモリー、処理速度といった4つの領域の知能を測定します。そのWAIS-Ⅳに関する歴史、理論、妥当性、信頼性、構成、内容、実施方法、結果の見方、解釈などについてまとめています。

WAIS-4の器具セット図1 WAIS-Ⅳの検査器具

ウェクスラー式知能検査の理論

勉強する二人の子どもウェクスラーは当初は言語理解、抽象的推理、知覚統合、量的推理、記憶、処理速度を重視した下位検査を作成し、これが現在のウェクスラー式知能検査の元となっています。また、これらをさらにまとめて、言語性検査と動作性検査に分けましたが、現在ではこの分け方には妥当性がないということで採用はされていません。

デビッド・ウェクスラーの写真

図4 デビッド・ウェクスラーの写真

また、ウェクスラー式知能検査で測定できることは知能の全体ではなく、認知的な部分であると限定されています。知能を構成する別の要因としてプランニング、目標意識、熱意、場依存と場独立、衝動性、不安、固執などがありますが、これらはウェクスラー式知能検査には含めていません。そのため、ウェクスラー式知能検査で検出される数値だけで判断するのではなく、こうした別の要因を推測したり、別の検査で測定し、知能全体を理解する必要があります

さらにウェクスラー式知能検査の下位検査のそれぞれは知能だけではなく、神経学的な側面の測定にも寄与していることが最近の研究では分かっています。そのため、知能検査というだけではなく、神経心理学的検査という側面もあるようです。

WAIS-Ⅳの妥当性と信頼性と有用性

勉強する少女

(1)WAIS-Ⅳの妥当性

妥当性にはいくつかの種類がありますが、WAIS-Ⅳでは内容的妥当性、基準関連妥当性、構成概念妥当性の3つから検証されています。まず、検証的因子分析によってモデルとの適合度から妥当性を見ていますが、概ね満足できる結果となっています。

また、基準関連妥当性では、WAIS-Ⅲ、DN-CAS、K-ABC-2といった別の検査との相関を検証し、これについても高い相関を示しています。さらに、臨床群(知的ギフテッド、知的障害、学習障害、ADHD、外傷性脳損傷、自閉スペクトラム症、アスペルガー、うつ病、認知症、アルツハイマー)への実施し、これについても概ね良好な結果が得られています

(2)WAIS-Ⅳの信頼性

信頼性とは検査についての正確性、一貫性、安定性のことを指します。これが高いと測定誤差は少なく、低いと誤差が多くなります。WAIS-Ⅳでは内的整合性、再検査信頼性、採点者間一致から検証され、高い信頼性があることが示されています

(3)WAIS-Ⅳの有用性

有用性とは実際の現場での使いやすさや利便性、弁別性などを指します。WAIS-Ⅳでは中止条件が短縮されたり、下位検査の取捨選択により、検査時間が短くなっています。また、デザインも一新され、分かりやすく、ミスを減らす工夫もされています。また、臨床群の弁別に関する検証もされており、実際の臨床現場での診断の補助としての機能も増しています

WAIS-Ⅳの問題と内容

授業を受ける少年

(1)WAIS-Ⅳの問題と構成

WAIS-Ⅳには10つの基本検査と5つの補助検査があります。また、それらは4つの群指数によってまとめられています。表にすると以下になります。そして、群指数の合計から全検査IQが算出されます。

基本検査 補助検査
言語理解(VCI) 類似、単語、知識 理解
知覚推理(PRI) 積木模様、行列推理、パズル バランス、絵の完成
ワーキングメモリー(WMI) 数唱、算数 語音整列
処理速度(PSI) 記号探し、符号 絵の抹消

(2)WAIS-Ⅳの内容

群指数や下位検査がどういったもので、それはどういう能力を測定しているのかを以下の表にまとめました。

項目 内容
全検査IQ 4つの群指数の合計

群指数

言語理解(VCI) 類似と単語と知識(と理解)の合計
知覚推理(PRI) 積木模様と行列推理とパズル(とバランスと絵の完成)の合計
ワーキングメモリー(WMI) 数唱と算数(と語音整列)の合計
処理速度(PSI) 記号探しと符合(と絵の抹消)の合計

言語理解

類似 2つの言葉の共通点や類似点を答える
単語 単語の意味を答える
知識 一般的な知識に関する質問に答える
理解 一般原則や社会的状況についての質問に答える

知覚推理

積木模様 モデルと同じ模様を積木を使って作成する
行列推理 不完全な行列を完成させるのにもっとも適切なものを選ぶ
パズル 組み合わせると見本と同じになるものを選ぶ
バランス 天秤が釣り合うために適切な重りを選ぶ
絵の完成 提示された絵の中で欠けているものを答える

ワーキングメモリー

数唱 耳で聞いた数字を復唱する
算数 算数の文章題を暗算で答える
語音整列 かなと数字を順番に並べる

処理速度

記号探し 刺激となる記号があるかどうかを探す
符号 見本となる記号を書き写す
絵の抹消 さまざまな図形の中から特定の図形を探す

WAIS-Ⅳの実施

本を読む少女対象年齢:16歳0ヶ月~90歳11ヶ月

全部の検査時間はおおよそ2時間程度です。回答時間や実施する下位検査によって前後はします。また、長時間になる場合には、途中でトイレ休憩をはさんだり、別の日に残りを実施したりすることもあります。

検査環境はできるだけ静かで検査に集中できるような落ち着いた部屋となります。周りが騒がしいと検査に集中できませんから。

また検査はすぐに実施するのではなく、ちょっとした雑談をしたり、検査の説明をしたり、分からないことに応えたりしながら、検査を受ける人がモチベーションを持って、取り組めるように信頼関係を築き、協力体制を作ります。安心できる雰囲気で最大限の能力が発揮できるようにします。

下位検査の実施順序は決まっています。最初は積木模様から始まります。比較的取り組みやすく、時には楽しめるような課題を最初にすることで検査に対するモチベーションを高めてくれる役割もあるのでしょう

おのおのの下位検査の問題数は決まっており、正解し続けている限り最後まで問題が提示されます。しかし、間違いが既定の回数続くとそこでその下位検査は終了となり、次にうつります。最後の問題になればなるほど難しくなります。

また、下位検査によってはストップウォッチで時間を計測する問題もあります。時間を測られていると焦ることもありますが、それも課題の要素の一つと思って取り組むと良いでしょう。

WAIS-Ⅳの結果の見方

虫眼鏡を覗く子ども

(1)数値

全検査IQと4つの群指数(言語理解、知覚推理、ワーキングメモリー、処理速度)はそれぞれ100を平均として、数値化されます。その平均からどれぐらい離れると、どういう分類・意味になるのかについては以下の表をご参照ください。

得点 分類 全体の中の割合(%)
130以上 非常に高い 5
120~129 高い 2
110~119 平均の上 16.6
90~109 平均 49.5
80~89 平均の下 15.6
70~79 低い 5
69以下 非常に低い 1

この表からするとIQが90~109に入る人は全体の49.5%となります。つまり、全人口の約半分の人がIQ90~109になります。さらに広げて、IQ80~119の中に入る人は16.6+49.5+15.6=81.6%ですから、約8割の人が該当します。

その次に見るのが、右上の下位検査の評価点プロフィールです。ここでそれぞれの下位検査の得点の分布を見ます。

(2)バラツキ

4つの群指数、15つの下位検査の数値が高いところと低いところの差が大きいと、いわゆる「バラツキがある」「バラツキが大きい」となります。バラツキがあるとその個人の得意なところと苦手なところの差が激しいということで、時にはそれが生活上の支障となる場合もあります

(3)WAIS-Ⅳの項目の意味や解釈

群指数や下位検査の得点にはどういった意味があり、そこから何が解釈できるのかの一覧を下記に示しました。

項目 解釈
全検査IQ 全般的な知的水準

群指数

言語理解(VCI) 言語的なことに対する理解や把握の能力
知覚推理(PRI) 目で見て物事を理解したり操作したりする能力
ワーキングメモリー(WMI) 記憶や注意集中力に関する能力
処理速度(PSI) 手先の器用さやスピードに関する能力

言語理解

類似 概念を理解し、推理する能力
単語 単語の知識や言語概念の形成について
知識 一般的な事実に関する知識の量や学習について
理解 社会性や一般常識を理解する能力

知覚推理

積木模様 抽象的な視覚刺激を分析して統合する能力
行列推理 流動性知能や視覚性知能、空間に関する能力
パズル 視覚刺激の分析に関する能力
バランス 量的な推理、類比的な推理の能力
絵の完成 重要なところとそうではないところの見分けの能力

ワーキングメモリー

数唱 記憶力や注意力に関する能力
算数 計算能力や記憶力に関する能力
語音整列 記憶力、継次処理、注意力に関する能力

処理速度

記号探し 作業効率や集中力に関する能力
符号 視覚的な認知やスピードに関する能力
絵の抹消 選択的な注意や運動に関する能力

(4)WAIS-Ⅳの解釈

WAIS-Ⅳも知能検査の一つにすぎないので、それだけで評価や解釈はできません。その他の検査結果や行動観察、日頃の行動、性格特性、生育歴などといった情報を総合して、判断をしていかねばなりません

また、WAIS-Ⅳの結果で何らかの疾患や病気を判定することはできません。単に知能を測定しているに過ぎないのですから。

WAIS-Ⅳなどの知能検査に関する誤解

ビジネスマン

(1)WAIS-Ⅳと社会適応

知能と社会適応とはそこまで関連性はありません。知能が高い人でも社会的に立ち行かなくなる人はいます。知能が比較的低くても、それなりに社会生活や仕事をこなしている人は多くいます。おそらく社会適応には知能以外の要因が強く働いているということなのでしょう。

(2)WAIS-Ⅳと発達障害

よくある誤解としてWAIS-Ⅳやその他の知能検査で発達障害が診断できると思われてしまっていることが多々あります。WAIS-Ⅳなどの知能検査は知能を測定することを目的とした検査であり、発達障害の鑑別を目的とした検査ではありません

いくつかの研究で、発達障害に特徴的な検査結果を調べるものがありますし、おおまなか傾向はみられるとはいえ、そこまで鑑別する性能はよくないようです。同じ発達障害でも、個々人によって相当特徴が違うからなのでしょう。

発達障害についての詳しいことは下記のページをご参照ください。

(3)WAIS-Ⅳと学力

知能と学力に関係についてはややあるようです。ただ、完全に一致するものではありません。学力、つまり学校の勉強やそれに関する試験では知能以外にも練習効果や興味関心の有無、学習環境などによって相当変わってきます。知能が高くても勉強しなければ学力は伸びませんし、知能が比較的低くても勉強次第では伸びていきます。

WAIS-Ⅳについてのよくある質問


WAIS-Ⅳ(ウェクスラー成人知能検査第4版)は、成人の知能を測定するための標準的な心理検査です。主に4つの指標、すなわち「言語理解」「知覚推理」「ワーキングメモリー」「処理速度」を基に知的能力を評価します。これらの各指標は、さらに複数の下位検査に分かれており、総合的な知能指数(IQ)を算出することができます。これにより、個々の知的特性や認知機能を詳細に把握することが可能になります。WAIS-Ⅳは、精神的な健康状態や学習能力、職業適性の評価など、さまざまな場面で活用されています。


WAIS-Ⅳは16歳0ヶ月から90歳11ヶ月までの成人を対象としており、特に成人期における知能の測定を目的としています。この検査は、若年層から高齢者まで幅広い年齢層に対応しています。対象年齢の範囲が広いことで、成人期における知的能力や認知機能を包括的に評価することができ、特に職場環境や学習環境での適応能力や成長を把握するのに役立ちます。対象者の年齢によっては、認知的な特徴や強み、弱点が異なるため、年齢ごとの分析結果が有益です。


WAIS-Ⅳは、4つの主要な指標で構成されています。それぞれの指標は複数の下位検査に分かれており、全体的な知能を多角的に評価します。1つ目は「言語理解」で、語彙や言語能力を測定します。2つ目は「知覚推理」で、視覚的な問題解決能力を評価します。3つ目は「ワーキングメモリー」で、短期的な記憶と注意力を測ります。そして4つ目は「処理速度」で、迅速かつ正確にタスクを処理する能力を評価します。これら4つの指標を統合的に理解することで、被験者の知能構造を全体的に把握することが可能です。


WAIS-Ⅳの検査は通常90分から120分程度かかりますが、検査内容や被験者の状況によっては、もう少し時間がかかる場合もあります。検査は4つの主要指標に分かれており、それぞれの検査を一つ一つ丁寧に行う必要があるため、時間的には少し長くなります。しかし、十分な時間をかけて検査を実施することで、正確な知能評価を得ることができます。被験者がリラックスした状態で臨むことができるよう、検査前に簡単な説明が行われることが多いです。


WAIS-Ⅳの結果は、各指標ごとの得点と総合的な知能指数(IQ)によって示されます。知能指数(IQ)は、平均的な成人を基準に100を中心に計算され、標準偏差は15です。得点が平均よりも高い場合は、被験者が特定の認知機能において強みを持っていることを示し、逆に低い場合は、その分野において改善が必要であることを意味します。特に言語理解や知覚推理など、個々の指標ごとの得点が高いか低いかを分析することで、特定の認知的課題や学習上の問題を明らかにすることができます。また、全体の知能指数と個別の指標スコアを併せて総合的に解釈することが重要です。


WAIS-Ⅳの結果は、さまざまな分野で活用されます。特に心理学的な評価や臨床的な診断において重要な役割を果たします。例えば、発達障害や学習障害、ADHDなどの診断において、知能の特性を明確に把握することができます。また、職業適性や職場でのパフォーマンス、学業やキャリアの選択においても、WAIS-Ⅳの結果は重要な指標となります。知能のバランスを測ることで、個々の強みや課題を発見し、今後の支援や対策に繋げることができます。特に、学習や仕事の場面で特定の課題が見られる場合、その克服のために専門的な支援を行う際の参考にもなります。


WAIS-Ⅳを受ける際の注意点としては、事前の十分な休息をとり、リラックスして検査に臨むことが大切です。また、検査中は問題に対して正直に答えることが求められます。検査は知能を多角的に測定するものであり、緊張や焦りが結果に影響を与えることもありますので、余裕を持って取り組むことが重要です。検査を受ける際には、あらかじめ検査に関する簡単な説明が行われることが多いため、疑問点があれば事前に相談することも有益です。


WAIS-Ⅳの結果は、一般的に2〜3年程度の有効期限とされています。知能は成人期を通じて安定していることが多いため、短期間で大きな変化がない限り、結果は一定期間信頼できるものと見なされます。ただし、特に認知機能に急激な変化が生じた場合(例えば、脳の疾患や重大な心理的変化があった場合)は、再検査が必要となることがあります。そのため、定期的な評価が推奨されることもあります。


WAIS-Ⅳの検査を受ける際に特別な準備は必要ありませんが、リラックスした状態で臨むことが重要です。事前に十分な睡眠をとること、食事に気をつけること、検査前に過度なストレスを避けることが推奨されます。また、検査は所要時間が長くなることがあるため、集中力を持続させるために途中で休憩を取る場合もありますが、検査員の指示に従って進めることが大切です。


WAIS-Ⅳは、心理学的な評価を行っている医療機関や専門機関、カウンセリングルームなどで受けることができます。多くの場合、心理士や臨床心理士、精神科医が実施し、検査結果に基づいた詳細な評価やアドバイスが提供されます。検査の実施場所については、事前に確認することが重要で、いくつかの施設では予約が必要な場合もあります。

WAIS-Ⅳを受けるには

当オフィスでWAIS-Ⅳを受けることが可能です。実施+レポート+結果報告の面接(30分)のセットで18,000円となります。最近ではMENSAの入会のために受検したいという人もいます。今のところはそうした目的の方でも受け付けはしています

WAIS-Ⅳの受検の申し込みや問い合せは以下のフォームからお願いします。

文献

この記事は以下の文献を参考にして執筆いたしました。