パーソナリティ障害についての原因、診断、種類、治療、カウンセリングなどを解説しています。カウンセリングのプロセスが非常に困難になることが多いですが、それなりの対応をすることも改善も見られます。
目次
1.パーソナリティ障害とは
パーソナリティ障害とは、長期間にわたって強い個性的特徴を持ち、社会生活に支障がある精神疾患のことです。性格障害とも呼ばれ、10種類のタイプがあります。自分自身や他者との関係において問題が生じ、社会的な信頼感や愛着、自己のアイデンティティ形成などに影響を与えます。治療には心理療法が主流で、治療期間は長期にわたる場合があります。
困った人?トラブルメーカー?として、今現場で特に大きなトピックとして注目されています。自傷行為、過食嘔吐、情緒不安定、対人トラブル、犯罪、児童虐待、DVなどの関連で見られることがあります。
とくに有名なのが境界性パーソナリティ障害です。境界性パーソナリティ障害についての詳細は以下をご覧ください。
2.パーソナリティ障害の歴史
パーソナリティ障害は以下の経歴をたどり、現代に至っています。
- ライヒの衝動性格。
- シュナイダーの精神病質人格。
- 1953年Knigt,Rが初めて境界状態として記述。
- 神経症だと思って心理療法をしていくと徐々に破綻していく。
- 神経症と精神病との間としての境界例。
- 一つの疾患単位としての境界例。
3.パーソナリティ障害の原因
パーソナリティ障害の原因には複数の仮説があり、その主が以下の3つです。
- 母子関係
- 脳機能障害
- 外傷性トラウマ
4.パーソナリティ障害の精神病理
精神分析の領域では以下の4つがパーソナリティ障害の精神病理として取り上げられています。
- カーンバーグ:境界人格構造。同一性の障害、現実検討力、原始的な防衛機制(分裂、否認、投影同一化)
- ジェラルド=アドラー:欠損感覚、記憶障害
- マスターソン:見捨てられ不安
- グリンカー:怒りや抑うつといった感情障害、情緒的対人関係の欠如、自己同一性の欠如
5.パーソナリティ障害の鑑別
パーソナリティ障害との鑑別が問題になるのは以下が挙げられます。
- 統合失調症
- ADHD
- 自己愛人格障害
- 演技性人格障害
- 反社会性人格障害
6.パーソナリティ障害の問題
パーソナリティ障害が背景に潜んでいる可能性のある病気や問題を以下に列挙しました。詳細は以下のそれぞれのリンク先をご参照ください。
7.パーソナリティ障害の種類
境界性パーソナリティ障害
自己イメージや感情が不安定で、対人関係に問題が生じるパーソナリティ障害の一種です。自分自身や他者との関係に強い不安を感じ、しばしば過剰な依存や自己傷害などの問題行動を起こすことがあります。極度に不安定な感情や気分、行動、人間関係、恋愛関係を特徴としており、それによって社会生活に支障をきたしたり、本人が苦痛を感じたりします。
自己愛性パーソナリティ障害
自己愛(ナルシシズム)が著しく強く、他人を利用する傾向や、自己中心的な思考や行動が見られるパーソナリティ障害のことです。自己評価が過剰であり、他人からの評価を常に求めることが特徴で、批判や否定に敏感です。また、人を支配することを好み、エキセントリックな外見や振る舞いがある場合もあります。
妄想性パーソナリティ障害
妄想性パーソナリティ障害とは、他人から自分が迫害されていると信じ込み、疑い深く不信感を抱く傾向があるパーソナリティ障害の一つです。具体的には、周囲の人々が自分を監視している、妨害している、または自分に悪意を持っているという思い込みが常にある状態が特徴的です。これにより、社交性が低下し、人とのつながりを避けるために孤立することがあります。治療には、認知行動療法や対人関係療法が有効な場合があります。
シゾイドパーソナリティ障害
感情の欠如や社交的な関心の低下が見られ、一人でいることを好み、他者との親密な関係を築きにくい傾向があるパーソナリティ障害です。日常生活において、興味や感情の表現が少なく、冷淡な印象を与えることがあります。しかし、幻覚や妄想は見られないため、統合失調症とは異なります。また、対人接触を求めず、非社交的で孤独な環境を好むことを特徴とし、それによって社会生活に支障をきたしたり、本人が苦痛を感じてしまいます。
回避性パーソナリティ障害
人との接触を避けたがる、自己評価が低い、自己否定的な思考があるなど、自己表現が苦手な傾向があるパーソナリティ障害の一つです。自分を守るために他人から距離を取り、孤立してしまうことがあります。また、内気で臆病な性格の方が、他者からの批判や非難に対する強い恐怖心を有するために、対人と接触する活動を避けて社会的、あるいは職業的に問題を抱えがちです。主に、成人期早期までに症状が開始されて、他人から好かれていると本人が確信できなければ他者と関係を持ちたがらないタイプもあります。
演技性パーソナリティ障害
人前で注目されることや承認を得ることを強く求め、自己顕示欲が高く、演技的な行動を取る傾向があるパーソナリティ障害の一つです。人との関係を上手く調整するために、自分自身を都合よく演じることがあります。また、自分が特別な存在であると信じ込んでいることがあります。また、他者からの注目や称賛、注意を引くことを強く求め、日常生活においてはまるで自分が役者のような過度に演技的な振る舞いをすることが多いです。
依存性パーソナリティ障害
他人に対する強い依存心や自己肯定感の低さが特徴的なパーソナリティ障害の一つです。自分一人では何もできないと感じ、他人に頼ることが多く、自己主張が弱いことがあります。また、過度に承認欲求があるため、他人の意見や期待に合わせようとすることがあります。また、他人から世話をしてもらいたいという要求を強く持ち、過度に服従的であり、他者にまとわりついて依存する言動を特徴を持っています。
8.パーソナリティ障害の治療
パーソナリティ障害の治療は生物、社会、心理の各側面から総合的に行う必要があります。それらを以下に列挙します。
- 全般的マネジメント(アドバイザー、調整役、現実的観点からの指導)
- 社会的サポート(病院、作業所、デイケア、ハローワーク、生活費援助、家族援助)
- 薬物療法(抗うつ薬、抗不安薬、抗精神病薬、睡眠薬)
- 心理査定(知能検査と投影法)
- 心理療法とカウンセリング(信頼関係と依存関係、限界設定、行動化への対処、転移と逆転移、病理の明確化、傷つきに対する共感、育てなおし、抱えること)
- カウンセラー自身が教育分析や個人分析、スーパービジョンを受ける必要性。
9.パーソナリティ障害の予後
包括的な研究はありませんが、経験的に40歳をすぎると徐々に落ち着いてくるといわれています。
10.パーソナリティ障害のカウンセリングを受ける
パーソナリティ障害は、ややもするとカウンセリングが大変、問題行動が多いなどと議論されがちです。そのため、「パーソナリティ障害には関わりたくない」という気持ちを抱いてしまうことも多いかもしれません。
しかし、パーソナリティ障害の苦しさやしんどさにどのようなまなざしをに目を向けるのか、パーソナリティ障害の情緒をどのように取り扱うのだとか、といったそういう内面的な苦痛に着目することが非常に重要となってきます。
パーソナリティ障害は大変な部分もありますが、専門家によるカウンセリングで随分と変わってくる面もあります。当オフィスでもカウンセリングを行っております。希望者はご連絡ください。