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複雑性PTSDのカウンセリング・相談

繰り返される深い傷つき

複雑性PTSD(C-PTSD、Complex post-traumatic stress disorder)とは、長期的かつ繰り返しトラウマを受けた後に生じる身体的・精神的症状の総称です。

本記事では、複雑性PTSDの概要、診断基準、特徴、原因、疫学、経過、予後、治療、カウンセリングなどについて解説していきます。

1.概要

階段で泣く女性

複雑性PTSDとは、幼少期からの虐待経験やいじめなど長期的かつ反復的に逃れがたい状況や体験をし、身体的・精神的症状が生じることを指します。PTSDの症状に加えて、感情的なコントロールの困難さから慢性的に対人関係に支障が出ると言われています

複雑性PTSDはDSM-5(精神疾患の診断と統計のマニュアル 第5版)には記載されていない一方で、WHOが作成するICD-11(国際疾病分類の第11版)には記載されている診断です。

2.複雑性PTSDの背景

泣いている少女

元々、戦争体験や事故、レイプなどの体験から生じる心の被害はPTSDとしてDSM-Ⅲにて記載されるようになりました。その後、PTSDへの研究を進める中で、精神科医のJudith Hermanなどが、虐待やDVなどの長期間、繰り返し生じる心への被害体験を複雑性PTSDという概念として提案しました。

DSM-Ⅳ-TR(精神疾患の診断と統計のマニュアル 第4版テキスト改訂版)の時期には、精神科医のBessel van der Kolkらが、複雑性PTSDと似た概念であるDESNOS (Disorder of Extreme Stress Not Otherwise Specified) を提唱しましたが、PTSD群とDESNOSの類似性から反映が見送られたと言われています。

また、現在のDSM-5においても、複雑性PTSDを診断として採用するための科学的根拠が不十分であるために採用が見送られたと考えられています。診断としての記載はICD-11が初となりますが、近年注目を集めている概念です。

3.複雑性PTSDの診断基準

見上げる女性

複雑性PTSDの診断基準は、ICD-11によると以下のような診断基準があります。

  • 症状は、長期間に及ぶ家庭内暴力や幼少期からの虐待等の逃れがたい状況で、繰り返し顕著な脅威や恐怖を感じる出来事の体験後に現れる。
  • 診断は、PTSDにみられるトラウマの再体験、トラウマ体験の回避、持続的な過覚醒状態等の症状に加え、以下のような特徴もみられる。
  • 感情のコントロールの困難さ。
  • 持続的な対人関係の維持や、他者へ信頼を抱く困難さ。
  • トラウマ体験に関する恥や罪悪感、後悔等の感情より、否定的な自己認知や無価値観が生じる。
  • 症状は、個人の情緒や日常生活、集団生活等で重大な機能不全を引き起こす。

出典:ICD-11

複雑性PTSDの特徴とされる感情調整の困難さや対人関係への困難さ、自身への否定的自己認知の3つの主症状は、自己組織化の障害(DSO、Disturbances in Self-Organization)とも呼ばれています。

4.PTSDの診断基準

泣いている女性

複雑性PTSDと類似性があるとされるPTSDについては、ICD-11によると以下のような診断基準があります。

  • 症状は、顕著な脅威や恐怖を感じる出来事の体験後に、以下の3つの症状として現れる
    • トラウマの再体験(現実場面でトラウマ体験のフラッシュバックや、悪夢としての想起、トラウマ体験の反復的な侵入症状)
    • トラウマ体験の回避(トラウマ体験に関連する記憶や思考、感情を呼び起こす人や場所、行動、物、状況等を回避する。または回避しようと努力する)
    • 持続的な過覚醒状態(トラウマ体験後に生じる激しい怒り、無謀な自己破壊行動、過剰な警戒や驚愕反応、睡眠や集中の困難さ等)
  • 症状は少なくとも数週間は継続して見られ、日常生活に重大な支障をきたす

出典:ICD-11

PTSDはDSM-5にも診断基準が記載されており、1ヶ月未満の症状の場合は急性ストレス障害(ASD、Acute Stress Disorder)と診断される場合があります。心身への強い危機から生じる症状がある場合は、PTSDや複雑性PTSDの可能性があるかもしれません

5.複雑性PTSDのチェックリスト

複雑性PTSDはまだ研究途上の概念であり、心理尺度やチェックリストといったものはありません。しかし、一方で、PTSDについてはいくつかの心理尺度やチェックリストはあります。

いずれも著作権の関係からここでは掲載することはできませんので、リンク先のホームページや書籍を参照してもらえたらと思います。

6.複雑性PTSDとPTSDの違いと特徴

花冠をかぶる少女

複雑性PTSDとPTSDはどちらもトラウマ体験後に引き起こされる症状であり、共通する症状も多いですが、トラウマ体験の扱いに差があります。

PTSDの場合は災害や事故、レイプ等の単発的・一時的なトラウマ体験による症状を指し、複雑性PTSDの場合は幼少期からの虐待や学生時代に続いたいじめ、慢性的なDV等の何年も続くような長期的・反復的なトラウマ体験による症状と分けることが多いです

また、複雑性PTSDの診断基準にあるように、トラウマの再体験、トラウマ体験の回避、持続的な過覚醒状態等PTSDと共通する症状もありますが、複雑性PTSDには自己組織化の障害がPTSDにはない特徴となっています
自己組織化の障害の具体的な症状には以下のような例があります。

  • 感情のコントロールができず、激しい自己嫌悪や罪悪感がある。
  • 自身に対して強い羞恥心や自責を感じる。
  • 自己否定や疑心暗鬼により孤立や引きこもりの状態に陥る。
  • 希死念慮の出現。
  • 自傷行為や過食、依存等の問題行動で感情のコントロールまたは感覚麻痺を引き起こそうとする。など

また、複雑性PTSDは、PTSDの他にパーソナリティ障害や愛着障害と誤診される可能性が高い特徴もあります。

7.複雑性PTSDの原因

解離現象について

繰り返しになりますが、複雑性PTSDの症状は幼少期からの虐待やDV、いじめ等の長期的・反復的なトラウマ体験により引き起こされると言われています。

トラウマ体験は繰り返し経験され、発症は出来事の後いつであるかは問いません。つまり、トラウマ体験の直後の場合もあれば、トラウマ体験から数年後に突然発症する場合もありえます

原因となるトラウマ体験は何度も起こる出来事であるため、当事者にとっては切り離し難い特徴もあります。

またこうした体験は愛着障害とも関連してきます。愛着障害は幼少期における養育者との関係が過酷であったり、複雑であったりする場合におきる障害です。

その愛着障害については以下のページをご覧ください。

愛着障害のカウンセリング・相談
愛着障害とは養育者との間で適切な愛情や接触がないことによって、対人関係上の問題が生じている障害です。反応性愛着障害と脱抑制性対人交流障害の2種類があります。また大人の愛着障害の問題もあります。愛着障害の治療には安全基地を作ることが大切です。

8.複雑性PTSDの疫学

夜を眺める女性

複雑性PTSDはICD-11に診断基準はあるものの、PTSDやパーソナリティ障害、適応障害、発達障害等関連する精神疾患が多く、明確な区別の困難さもあるため、現時点では疫学としての情報が不十分と考えられます。

PTSDであれば生涯有病率は9%程であり、男性に比べ女性は2倍程発症しやすいと報告されています。PTSDも複雑性PTSDもトラウマ体験より発症する類似性がありますが、複雑性PTSDでは虐待やDV、いじめ、レイプ等他者には打ち明け難いトラウマ体験とされるため、複雑性PTSDはPTSDの有病率よりも実際は高いと言えるでしょう

9.複雑性PTSDの経過

憂う子ども

複雑性PTSDは、トラウマ体験を経験した誰もが発症する疾患ではありませんが、ある特定の人たちにトラウマ体験後に突然に発症します。

何度も虐待されたり、いじめられたりしてきた当事者の認知は、「私が悪いんだ」「自分の性格のせいなんだ」といった歪みが生じやすいです。そのため、生きづらさを抱え続けて疾患に気づけないパターンも考えられます。

複雑性PTSDに気づくパターンであっても、自分から簡単に切り離せないトラウマ体験に苦しみ続けることが多く、深刻な疾患と言えるでしょう

10.複雑性PTSDの予後

チェック服の女性

複雑性PTSDの予後は、自己嫌悪や疑心暗鬼等の症状により対人関係の形成や維持ができず、社会的に孤立してしまうことが考えられます。また、感情制御の困難さから自己破壊行為が目立ち、重症な場合は自殺企図が生じる可能性もあります。

複雑性PTSDによる心の傷は非常に根深いため、信頼できる他者とのつながりが重要になります

11.複雑性PTSDの治療

たたずむ女性

複雑性PTSDの治療には、激しい気分の落ち込み等の精神症状に焦点を当てた薬物療法と並行し、トラウマ体験に焦点を当てた心理療法が有効と考えられています。

薬物療法の場合は、PTSDの選択薬となりやすいSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の利用検討が多く、不安や抑うつ気分の緩和に役立ちます。過覚醒状態へのアプローチとして抗不安薬や睡眠薬の処方も考えられますが、耐性ができやすく、依存傾向もみられるため、これらの利用は医師とよく相談することをおすすめします。

表1 複雑性PTSDに使用されやすい薬剤例

系統製品名商品名
SSRIパロキセチンパキシル
エスシタロプラムレクサプロ
フルボキサミンルボックス/デプロメール
セルトラリンジェイゾロフト

心理療法の詳細は後述しますが、心の深い傷を癒すためには信頼できるカウンセラーや医師との関係性が重要となってきます。複雑性PTSDは長期的に形成された症状であるため、改善にも時間を要すると考えることが妥当でしょう。

12.複雑性PTSDのカウンセリング・相談

花を眺める女の子

複雑性PTSDは、PTSDのカウンセリング同様に認知行動療法やEMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing、眼球運動による脱感作と再処理法)のアプローチがあります。

また、認知行動療法の1種としてSTAIR(Skills Training in Affective and Interpersonal Regulation、感情調整と対人関係調整スキルトレーニング)とNST法(Narrative Story Telling、ナラティブ・ストーリー・テリング)が有効と考えられています。

(1)認知行動療法

認知行動療法は、カウンセラーとのセッションを通して自らの認知や思考、行動の歪みを理解し、より適切な状態へと修正していく作業を行います。

複雑性PTSDの人は長年のトラウマ体験から認知の偏りが生じやすいため、症状がトラウマ体験から引き起こされていることを認識できるようなサポートを目指します

認知行動療法の詳細は以下のページをご覧ください。

認知行動療法
認知行動療法を当オフィスで受けることができます。その認知行動療法について歴史、やり方、理論、効果、エビデンス、実施などについてクライエント向けに分かりやすく解説しています。認知行動療法とは認知(物のとらえ方、考え方)と行動を変化させることにより、様々な問題ごとや困難、症状を改善していく技法です。どちらかというとトレーニングに近いイメージです。

(2)EMDR

EMDRは暴露療法の1種であり、トラウマ体験を想起した状態で眼球運動を行うことで脳を刺激し、精神症状の改善を試みます。具体的なメカニズムには諸説ありますが、トラウマ体験を慣らす効果が期待できます。

EMDRの詳細は以下のページをご覧ください。

EMDR
EMDR(眼球運動による脱感作と再処理療法)を当オフィスで受けることができます。そのEMDRとは、カウンセリングや心理療法の歴史の中でも比較的、最近開発された心理学的技法です。そして、特にPTSD(心的外傷後ストレス障害)や解離性障害、トラウマ関連障害に特化しています。ここではEMDRの歴史、治療、効果、やり方、危険性、説明をしていきます。

(3)STAIR&NST法

川を眺める少女

STAIRでは感情と対人関係に焦点を当て、NSTではトラウマ体験に焦点を当て、症状改善の段階を細かく設定することで、個々人のペースで着実に改善を試みます。傾聴や共感的理解から始め、治療計画を共有し、ストレスコーピングやロールプレイ、心理教育等で時間をかけて症状と向き合うサポートをしていきます

複雑性PTSDの改善に期待できる各心理療法が可能なカウンセラーが医療機関にいるかを確認することも、大切な作業の1つでしょう。

13.複雑性PTSDのカウンセリングを申し込む

屋上でうなだれる女性

複雑性PTSDの概要、診断、原因、特徴、背景、疫学、経過、予後、治療、カウンセリングなどについて説明しました。複雑性PTSDは比較的最近に出てきた新しい概念です。もし、ご自身やご家族が複雑性PTSDかもしれないと思われた時には、当オフィスにカウンセリングや相談のお申し込みをしていただけたらと思います

希望者は以下の申し込みフォームからお申し込みください。

複雑性PTSDのカウンセリングを申し込む

【監修者情報】

  • 祖父江 ひかる 先生
  • 資格:臨床心理士、公認心理師
  • 所属:単科の精神科病院勤務
  • 学会:日本心理臨床学会、愛知県臨床心理士会
  • 経歴:国立大学院修了後、心療内科や小学校スクールカウンセラー、精神科病院などで医療現場を中心に研鑽中。臨床心理に関わるWebライティング活動もこなしている。