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限局性恐怖症のカウンセリングと治し方

私を脅かすものとは

高所や閉所が苦手など特定の物事に対する恐怖症と言われる人々はかなり多くいて、そのような症状は「限局性恐怖症」という不安障害の一つのタイプであると考えられています。

今回は、そのような「限局性恐怖症」について説明していきます。

1.限局性恐怖症とは

限局性恐怖症とは高所や尖端、動物、閉所など特定の場所や物に対して過剰に恐怖心を感じてしまい、それによって平静さを失ったり、過度に回避してしまったりして、日常生活や社会生活に支障をきたしてしまう不安障害の一種です。

恐怖症は馴染みがあって身近なものであり、有病率も高いというイメージがありますが、DSM-5の診断基準では限局性恐怖症の有病率は思っている以上に非常に高くはありません。

アメリカでは、一般市民の限局性恐怖症の12ヶ月有病率は8%前後であり、欧州諸国での有病率は、米国の有病率とおおむね同様ですが、アジア、アフリカ、南米諸国の地域では2~4%とされています。また、限局性恐怖症の子どもにおける有病率は約5%であり、13~17歳においてはおよそ15%程度と小児に比べてやや高くなっています。

恐怖刺激の特徴によって多少変動しますが、一般的には男性よりも女性のほうが1:2の比率で高頻度に限局性恐怖症を発症するとされていて、特に動物や自然環境などに関する限局性恐怖症は圧倒的に女性に多く見受けられます。

限局性恐怖症は、別名で個別的恐怖症や特異的恐怖症とも呼ばれていて、特定の状況下や対象物に対して強い恐怖や不安が生じてしまう状態であり、幼少期から発症して以降慢性的に経過しやすいことが挙げられます。

また、限局性恐怖症にパニック障害、不安障害を含めて他の精神疾患を合併しやすいこともあります。

ちなみに限局性恐怖症の上位カテゴリーである不安障害については以下のページをご覧ください。

2.限局性恐怖症の原因

限局性恐怖症の発症原因として、他の不安障害と同じように、本人の性格的な特質が原因となる気質的な要因、あるいは環境要因や遺伝要因も関連していると言われています。

気質要因については、特定の物事に対する否定的感情や見知らぬ人物や新しい環境を回避しようとする特性である行動抑制などの気質的特性が関係しています。

また、環境要因としては、親の過保護や過干渉などを背景に自分から新しい環境を経験してこなかった場合、あるいは親からの分離体験、身体的虐待などを持つ場合には、限局性恐怖症を発症するリスク因子となります。例えば、犬に近づいたら引っかかれて怪我をしたら犬恐怖症に発展するなど、恐怖の対象や状況に関連して、心的外傷をもたらす出会いや経験も限局性恐怖症の発症に先行して認められることも往々にしてあります。

そして、遺伝的な要因とは、例えば猫恐怖症の家族や親友がいるケースでは、他者より優位に猫に対する限局性恐怖症が高率に認められる傾向があると考えられています。

3.限局性恐怖症の特徴や症状

限局性恐怖症とは、恐怖症の中でも特定の状況や物、場所で強い恐怖を感じてしまう病気であり、強い恐怖や不安をもつ為に、パニック発作を呈してパニック障害に陥る、あるいはうつ病や不安障害を合併することも時に見受けられます。

限局性恐怖症の多くは、動物に襲われる、エレベーターに閉じ込められるなど心的外傷的な出来事を経験している、あるいは誰かが溺れているのを目撃する、電車の中での予期しないパニック発作に襲われるなどの体験を有している可能性があります。

そして、閉所恐怖症を持っている場合には、いつもエレベーターに乗ると「閉じ込められてしまう」という恐怖心で足がすくみ、どんなに高い建物でも階段を使うなどの行動を自ら取るようになります。

通常では、特定の対象または状況において、即時恐怖や不安を感じる限局性恐怖症の予兆は小児期早期から始まり、多くは10歳前後で発症し、成人期まで慢性的に経過する恐怖症の場合には多くの人で自然寛解しないことがあります。

4.限局性恐怖症の診断

DSM-5によると、限局性恐怖症の診断基準のひとつは、まず高所、動物などの特定の対象や状況に対する異常な恐怖と不安を即時的に感じることが挙げられます。

そして、恐怖の対象や状況を積極的に避けて、強い恐怖や不安を感じながらも耐え忍ばれている特徴があるとともに、恐怖心が特定の対象や状況によって引き起こされる実際の危険性に釣り合わない場合も限局性恐怖症の診断の手助けとなります。

限局性恐怖症では、恐怖や不安、または回避症状が典型的には6ヶ月以上持続的に認められていて、社会的かつ生活面において顕著な機能障害を引き起こしていることも考えられます。

そして、そうした一連の限局性恐怖症に伴うパニック様症状や強迫観念症状などの障害が、うつ病や統合失調症など他の精神疾患の症状ではうまく説明されないことが診断基準の一つとなります。

5.限局性恐怖症の治療と治し方

(1)薬物療法

薬物療法は限局性恐怖症に対して根治的にはあまり効果がありませんが、例外的かつ限定的にベンゾジアゼピン系薬剤(抗不安薬)またはβ遮断薬を使用することがあります。

特に、ロラゼパムなどベンゾジアゼピン系薬剤やプロプラノロールなどβ遮断薬を使用する薬物治療は、飛行恐怖症の患者が急用で飛行機に乗らざるをえなくなった場合など特定の対象や状況への曝露が避けられない場合に有用であると考えられています。

(2)家族に対する支援と対応

限局性恐怖症を抱える人の家族も少なからずストレスを感じて体調不良に陥ることも想定されるので、真っ向から否定せずに家庭での話を聞いて症状の辛さを周囲が理解して支援することが重要です。

不安や恐怖などの症状には、どのような特徴があり、どれくらい本人や家族が辛いのか、じっくりと慎重にヒアリングすることが大切なポイントとなります。本人やその家族が心療内科や精神科を受診するには抵抗がある場合もあるため、強要はせずに適切なタイミングを見計らって相談するように促しましょう。

また、家族が限局性恐怖症を患う本人に対して干渉しすぎることは、お互いにとってデメリットが大きくなることが想定されていて、限局性恐怖症の症状を改善するために熱心に家族が関わろうとすると、かえって過干渉になり、本人が負担に思う恐れがあります。

病気と関わっている家族も、なかなか本人の症状が改善しないことに対してストレスを感じてしまう可能性もありますので、患者本人と適切な距離を置くことで、お互いにストレスを軽減し、本人のペースを尊重しながら、適度に関与していきましょう。

家族に対するカウンセリングや支援についての一般的なことについては以下のページが参考になります。

(3)カウンセリング

限局性恐怖症という病気は、扁桃体の過活動や脳皮質の機能不全などが影響して発症しているのではないかと考えられています。

症状が大げさでわざとらしいというわけではなく、病状の為に特定の事象に対して恐怖や不安感が強く体験されていることを周囲の人から理解してもらい、定期的な通院に対するサポート体制を構築することも重要です。

限局性恐怖症の治療のひとつとして、カウンセリングが有効的に働く場合があり、患者さん自身が、自分の症状や置かれている状況に対して十分に理解し、取り組むべき課題が明確にされていることがとても重要なポイントとなります。

(4)認知行動療法

一般に、限局性恐怖症の治療にはエクスポージャー療法などを含む認知行動療法が用いられます。

曝露療法は、模擬画や被写体などを用いて対象者をパニック発作の引き金となっているものに徐々に向き合わせて、一番恐怖が少ないものから順に慣れていき、恐怖心や不安感を誘発する状況に置かれても安心していられるようになるまで繰り返して実施します。

時に、抗不安薬などをうまく併用しながら不安や恐怖を克服できる実体験や実績を積み重ねて、認知面の修正を目的とした曝露療法は、忠実に行った人の約9割以上で一定の治療効果が見られます

認知行動療法やエクスポージャー療法の詳細は以下をご覧ください。

6.まとめ

限局性恐怖症とは,特定の状況または対象に対して,実際の危険やリスクとは釣り合わない強い恐怖や不安を覚える状態であり、例えば怖くてエレベーターに乗れない、毎日の通勤で通る道が渡れないなど日常生活に影響が出ている場合は前向きに治療を受けましょう。

また、家族の方は、病気のことを理解して限局性恐怖症が治療によって改善する疾患であることを本人に伝えてあげて、本人が少しでも安心して生活を過ごせるようにサポートしてあげましょう。

当オフィスでも限局性恐怖症の相談、カウンセリング、認知行動療法をおこなっております。希望の方は以下の申し込みフォームからお問い合せしてください。

文献

この記事は以下の文献を参考にして執筆いたしました。