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発達性協調運動障害のカウンセリングと心理支援

不器用さの病理

皆さんの周りに、例えば「靴ひもがうまく結べない」、「キャッチボールが苦手である」、「消しゴムを使うと毎回のように紙が破れる」など、人並み外れて不器用であり、極端に運動が苦手な子どもはいませんか。

そうした症状を繰り返して認める際には、「発達性協調運動障害」の可能性があり、本疾患は手と手、目と手、足と手など複数の身体部位を協調させて実行する運動など日常生活において様々な操作が著しく困難になる状態を指しています。

今回は、「発達性協調運動障害」について説明していきます。

1.発達性協調運動障害とは

勉強する二人の子ども発達性協調運動障害とは、運動やスポーツなどの協調運動が苦手で、体の動きがぎこちなく、遅れてしまう状態を指します。手を使ったり、足を使ったりする運動や、バランス感覚の調整などが難しく、日常生活に支障が出ることもあります。多くの場合、小児期から現れ、成長するにつれて改善することがありますが、中には持続するケースもあります。診断は、専門家による運動能力の評価や、関連する病気や疾患の排除などによって行われます。

統計学的には、5歳から11歳の小児期から学童期にかけての子ども事例においては、約5%程度が本疾患を発症していると考えられており、主に女児より男児のほうがその罹患率が高いことが知られています。

基本的に、簡単な運動をする際にも、それらの動作をスムーズに行うためには、誰しもが目で空間的な位置を確認し、自分自身と対象との距離を評価して、身体のあらゆる部位を連動してバランスを取ることが必要です。ところが、発達性協調運動障害の場合には、様々な場面で全身の力の入れ具合を調節する、あるいは身体を動かすタイミングを上手に調整するなどの情報統合ができずに、人並みに順調に運動することや作業動作することが難しくなります。

2.発達性協調運動障害の原因

風船を飛ばす少女発達性協調運動障害を発症する明確な原因は、いまだに判明していませんが、これまでの研究知見からいくつかの要素が関連していると指摘されています。

例えば、妊娠中に母親が過度のアルコールを摂取したことが影響して、早産、あるいは低出生体重児で出産した際には、その子どもが発達性協調運動障害を罹患する割合が上昇するという見解が存在します。

また、発達性協調運動障害は注意欠陥多動性障害、学習障害、アスペルガー症候群、自閉スペクトラム症などを始めとする発達障害との併発が多いと言われているため、共通する遺伝的要因が関与していると疑われています。

そうした発達障害についての詳細は以下のページをご覧ください。

3.発達性協調運動障害の症状や特徴

憂う子ども発達性協調運動障害を抱えている乳児は、ミルクを飲むときにいつもむせやすい、寝返りやハイハイなどの動きがうまく実行できない、転倒した際に速やかに手が出ないなどの兆候が認められます。また、保育所や幼稚園に通う幼児期になると、麻痺などの顕著な運動障害がないにもかかわらず、階段の昇降動作が苦手であり、はさみなどの工具がうまく使えない、あるいはひとりでスムーズに着替える動作が出来ないなど多様な症状が出現します。

学童期になれば、定型発達の小児であれば誰でも順調に実行できるような簡単な運動動作でも、その特徴的な不器用さは現れて、「床にボールを弾ませて蹴る」、「片足でバランスを取る」、「字を書く」などの簡単な協調運動においても困難さが認められます。

発達性協調運動障害の場合は、運動のぎこちなさがあり、年齢相応の身辺自立課題の遂行が難しく、手先の不器用さの代表例として箸がうまく使えないことも挙げられています

これらの発達性協調運動障害に関連する症状そのものは、成長して大人になれば少しずつ目立たなくなっていきますが、ほとんどの場合には根底にある不器用さは成人になっても継続するとも考えられています。

知的能力が平均以上のケースでは、成人して不器用さを他の方法でサポートできることも想定されますが、上手に身体を動かせないという理由から、他者と比べて自尊心が低い、あるいは学業や業務上の問題を有する場合も多いと考えられます

4.発達性協調運動障害の検査や診断

虫眼鏡を覗く子ども発達性協調運動障害の有無を判断するためには、日常的に行われる協調運動が本人の年齢や知能レベルによって予想されるよりも明らかに不正確で困難であるかどうかを見極めることが重要な観点となります

ただし、年齢が低ければ低くなるほど、得意な運動や困難な動作は個々によってもともと大きく違いがありますので、発達性協調運動障害の有無は慎重に評価されなければなりません。

はさみなどの文房具を使用する、書字を行う、自転車に乗るなどの協調運動を遂行することが、生活年齢などの条件に応じて期待されるよりも明らかに劣って学業や就労活動に支障を呈している場合には、本疾患を疑うことになります。

また、これらの運動技能障害が、脳性麻痺、筋ジストロフィーなど知的能力障害や運動動作を支配している神経系の異常疾患によるものではないことも、適切な診断を付けるうえで確認しておくべき事項となります。

発達性協調運動障害のDSM-5における診断基準

以下の4つ全てに該当した時には発達性協調運動障害と診断される。

  1. 協調運動技能の獲得や遂行が、その人の生活年齢や技能の学習および使用の機会に応じて期待されているものよりも明らかに劣っている。その困難さは、不器用(例:物を落とす、または物にぶつかる)、運動技能(例:物を掴む、はさみや刃物を使う、書字、自転車に乗る、スポーツに参加する)の遂行における遅さと不正確さによって明らかになる。
  2. 診断基準Aにおける運動技能の欠如は、生活年齢にふさわしい日常生活動作(例:自己管理、自己保全)を著明および持続的に妨げており、学業または学校での生産性、就労前および就労後の活動、余暇、および遊びに影響を与えている。
  3. この症状の始まりは発達段階早期である。
  4. この運動技能の欠如は、知的能力障害(知的発達症)や視力障害によってはうまく説明されず、運動に影響を与える神経疾患(例:脳性麻痺、筋ジストロフィー、変性疾患)によるものではない。

引用:DSM-5

5.発達性協調運動障害の支援と療育

3人の子ども発達性協調運動障害の療育、リハビリ、心理支援、カウンセリングについて解説します。また、身近な人が発達性協調運動障害だった場合の接し方のポイントについても触れていきます。

(1)発達性協調運動障害の療育やリハビリ

発達性協調運動障害によってどんなに運動や日常動作が上手にできなくても、体を動かすことがもともと嫌いな子どもはほとんどいないことを忘れてはいけません

発達性協調運動障害を患っている人にとっては、他者と比較されずに安心して運動などに挑戦できる目標を達成した喜びや嬉しい感情は患者さんを前向きな気持ちにさせることができます。特に、発達性協調運動障害を抱えている子どもたちは、定型発達児のように自然にあらゆる運動動作が上達していくことは期待できないので、療育やリハビリを実践するうえで大人が積極的に介入していく必要性が高いと考えられます。

基本的には、障害を有する子ども本人がやりたいことや出来るようになりたい目標を尊重して、周囲の方々は具体的なアドバイスやサポートを与えることで当該本人が自然に動作を改善できるように手助けすることが勧められます。近年では、運動プログラムを多く取り入れた療育リハビリも盛んに実施されており、例えば休日に家族で公園のアスレチックなどで色々な体の動きを経験する、あるいは共同して粘土遊びやブロックの組み立てなどを楽しみながら実践することも推奨されています

(2)発達性協調運動障害の心理的支援やカウンセリング

発達性協調運動障害を抱えている子どもたちは、そもそも病識の理解不足などによって周囲からの支援を受けにくく、日常生活の学習場面などにおいても、本人の心に大きな負担がかかっていると言われています。

例えば、他の子どもたちのように縄跳びがうまく飛べない小児に対して、「十分に練習が足りない」、「態度がだらしない」などと誤って認識して、反復練習を強いる指導方法を行うとさらに事態を悪化させて本人の自尊心を傷つけるなど悪循環を呈する恐れがあります。

発達性協調運動障害が発達障害のひとつであることを十分に理解したうえで、本人には挫折感や屈辱感を必要以上に与えないように、その都度丁寧にサポートを行うなど合理的な心理的支援を実行することが重要な観点となります。最悪のケースでは、自尊心が傷つけられた子供は、虐待やいじめなどのターゲットになることで二次的な精神障害まで発展することが懸念されますので、適切な心理的サポートを実践することを心がけましょう。

(3)発達性協調運動障害の人への接し方

家族や友人が発達性協調運動障害だった時の接し方として重要なポイントは、運動動作において上手や下手にこだわらずに苦手なことを非難的に評価しないことです

例えば、発達性協調運動障害を有する子どもが一生懸命運動をやっているが身体が上手くついていかない状況を保護者が見て、「ふざけないできちんとやりなさい」など高圧的に批判してしまうと、子どもは積極的に身体を動かしたいと思えなくなります。「はりきって運動しているね」などと応援して頑張っていることを認めてあげれば、子どもは楽しく運動を続けられて、他の色々な遊びや動作に挑戦しようという感情が芽生えます。

6.(株)心理オフィスKで発達性協調運動障害に対するカウンセリングを受ける

子どもと母親発達性協調運動障害は、筋力や神経、視覚や聴覚など感覚器官に明らかな異常所見がないにもかかわらず、縄跳びやボールのドリブルなど年齢相応の協調運動を遂行できない、あるいは靴紐を結べない、箸を使えないなど動作技能を獲得することが困難である状態です。

運動発達レベルは個人差が大きい分野ですが、年齢や動作内容に関係なく、個々のペースに合わせて、無理なく患者さん自身が楽しめる経験を沢山させてあげることが重要であり、繰り返して様々な経験を通じて少しずつ運動能力などが向上していくこともあります

さらに、発達性協調運動障害の方は心理的な苦痛や自信の喪失、対人不安を抱えてしまいやすい傾向にあります。その点についてはカウンセリングなどが効果があるでしょう。

(株)心理オフィスKではこうした発達性協調運動障害の方やそのご家族に対するカウンセリングや心理支援を行っています。ご希望の方は以下の申し込みフォームからご連絡ください。

文献


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