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性別違和(性同一性障害)のカウンセリングと支援

愛に垣根は無い

性別違和(Gender Dysphoria、性同一性障害、GID、Gender Identity Disorder)は、個人が体験している性別と出生時に決められた性別が不一致である状態を指します。

本記事では、性別違和の原因、疫学、特徴、種類、診断、経過、予後、治療、カウンセリングなどについて解説していきます。

1.性別違和とは

白黒の泣いている女性性別違和とは、個人が自覚する性別(性自認:こころの性)と、出生時に身体的特徴により決められた性別(生物学的な性:からだの性)が異なり、その性差に違和感を覚えることで顕著な苦痛や日常生活に支障をきたす疾患です。人の性は生物学的観点から男と女の2種類に分けられ、身体の構造や性役割などが性別により異なります。

大半の人は「自分がどの性に属するか、自分がどんな性であるか」という性自認とからだの性が一致しますが、性分化疾患等も存在し、現在では必ずしも性を二分化できるとは言い難いと言えます。

性別違和は、元々は性同一性障害と呼ばれていましたが、近年の性の多様化が進むにつれ、より幅広い概念を包括する名称に変更された背景があります。

性別違和の発症率や正確な割合は不明ですが、からだの性が男性である場合は5~14/1000人ほど、からだの性が女性である場合は2~3/1000人で発症すると報告されています。研究により具体的な割合に変動は見られますが、女性より男性に多く発症するといえます。また、欧米の調査によると男性の場合は約3万人に1人、女性の場合は約10万人に1人と言われています。

(1)経過と予後

性別違和は、子どもの場合は身体的性とは異なる性同一性を強く示しますが、第二次性徴を機に性の不一致が悪化し、外科的な治療を求める傾向があります。成人の場合でも、外見を変える等自らの性自認に沿った生き方を叶える傾向があります。性別違和による苦しみを抱え続けることは非常に生きづらいため、自分らしく生きるための行動に出る人が多いです

性別違和の予後は、家族やその人が属する社会等の理解によって大きく変わると言えます。性の不一致に関する苦痛を受け入れてもらえない場合や、性自認に沿った生き方を誤解されてしまう場合、自身と周囲の齟齬や大きなストレスからうつ病を合併することがあります。また、性の不一致の苦しみや周囲から理解を得られない状態から自殺行動も見られやすいため、支持的な関わりが必要と言えます

(2)性別違和とトランスジェンダーの違い

性の多様化が進む中で、身体的な性別(sex)とは別に社会的・文化的な性別であるジェンダー(gender)と言う概念が生まれました。ジェンダーの考え方が生まれたことによって、性自認として中性、無性といった男女二分化に囚われない性自認をXジェンダーとも呼びます。

また、多様な性の考え方より、からだの性と性自認が一致しない状態をトランスジェンダーと言い、以下のように考えます。そして、そうした状態を受け入れて生活をしています

タイプ 説明
FtM(エフティーエム:Female-to-Male) からだの性は女性で、性自認は男性
MtF(エムティーエフ:Male-to-Female) からだの性は男性で、性自認は女性
FtX(エフティーエックス:Female-to-X) からだの性は女性で、性自認は中性等
MtX(エムティーエックス:Male-to-X) からだの性は男性で、性自認は中性等

トランスジェンダーは障害ではなく、からだの性と性自認が一致しないことで個人が著しく苦しみ、生活に支障をきたす性別違和とは異なる概念です。

(3)性別違和とLGBTQとの違い

LGBTQは以下の頭文字をとって作られた用語です。

  • Lesbian(レズビアン)・・・女性同性愛者のことで、女性が恋愛対象である女性。
  • Gay(ゲイ)・・・男性同性愛者のことで、男性が恋愛対象である男性。
  • Bisexual(バイセクシュアル)・・・両性愛者のことで、恋愛対象が男性であることも、女性であることもある人。
  • Transgender(トランスジェンダー)・・・からだの性とこころの性が不一致で、こころの性に従って生きている人。
  • Questioning(クエスチョニング)・・・性自認や性指向がまだ定まってない人、もしくは決めたくない人。

からだの性と性自認と性指向(恋愛対象)について表にまとめました。

からだの性

性自認

性指向

レズビアン 女性 女性 女性
ゲイ 男性 男性 男性
バイセクシャル 女性 女性 両性
バイセクシャル 男性 男性 両性
トランスジェンダー 女性 男性 女性
トランスジェンダー 男性 女性 男性
クエスチョニング 女性 未決定 未決定
クエスチョニング 男性 未決定 未決定

性別違和はからだの性と性自認が不一致になっており、そのための苦痛が強く、日常生活に支障をきたす状態のことを指します。一方でLGBTQは性自認や性指向などが不一致になっていたとしても、それをアイデンティティとし、そうした事について受け入れて生きている人を指します

2.性別違和の症状

泣いている男性性別違和の具体的な症状の種類には、以下のような例が挙げられます。

からだの性とは反対の性への同一感

  • 男性は自分を女性、女性は自分を男性と思いたがる
  • 自身が望む性に合った服装や髪形、化粧をする
  • 異性の集団に入りたがる など

元々の身体的性への不満感

  • 自分の性器に嫌悪感を抱く
  • ペニスや乳房を切除したい、または身につけたいと感じる など

からだの性とは反対の性役割を行う

  • 男性は女性らしいとされる遊びを、女性は男性らしいとされる遊びを行う
  • 幼少期であれば、ごっこ遊びで男児が母親役、女児が父親役等異性の役割を選ぶ など

これらの症状で周囲から仲間外れにされたり、気分の落ち込み等生活に支障が出る場合は、トランスジェンダーではなく性別違和の可能性があるかもしれません。

3.性別違和の原因

母と乳児性別違和の原因は解明されていませんが、胎児期の脳の未発達や、身体的な性とは異なる性へと脳が性分化してしまうことが原因と考えられています。

また、二卵性双生児よりも一卵性双生児の方が性別違和の一致率が高いという報告もあり、遺伝要因が性同一性の一致に関係しているとも考えられます。

からだの性は胎児期の影響や遺伝的要因が関わると言われていますが、自らの性役割の把握や性自認は、親子関係や集団生活などの社会的要因の影響が大きいと言えるでしょう。

4.性別違和の特徴

電話を掛ける男性性別違和の最大の特徴は、性への違和感を他者に打ち明けるカミングアウトの難しさにあります。本来、性別違和の人は性の不一致に苦しみ生活のしづらさを感じるため、カミングアウトすることで自分らしく生きていく人が多いです。しかし、性の多様化が認知されてきている現代でも、大多数はからだの性と性自認が一致しており、中には「男らしさ」や「女らしさ」を社会に持ち込む人もいます。

カミングアウトのために傷つけられる可能性も考慮すると、当事者にとっては慎重にならざるを得ない行為と言えます。また、重度の性別違和は性転換症者(トランスセクシャル)と言い、自身の性同一性を保つために外科的手術を行う場合もあります。

5.性別違和の診断

女性医師性別違和はDSM-5によると、子どもの場合と青年・成人の場合で以下のような診断基準があります。

(1)性別違和の診断基準

子どもの場合

  1. 個人が体験したり表現したりする性とジェンダーが不一致であり、少なくとも6ヶ月以上、以下の6つ以上の症状を示す
    1. 生物学的性とは反対のジェンダーになりたい強い欲求または、自分は違うジェンダーであるという主張(この症状は必須)
    2. 男児の場合は女児服を身に着けたり、女装を真似ることを強く好む。女児の場合は男児服を強く好み、典型的な女児服へ強い抵抗を示す
    3. ごっこ遊び等では反対の性役割を好む
    4. 生物学的性とは反対のジェンダーに使用されたり行われたりする玩具やゲームを強く好む
    5. 生物学的性とは反対のジェンダーの友だちを強く求める
    6. 男児の場合は男児らしいとされるゲームや活動を強く拒み、乱暴で荒々しい遊びを強く避ける。女児の場合は女児らしいとされるゲームや活動を強く拒む。
    7. 自分の性器構造を強く嫌悪する
    8. 自身のジェンダーに合う第一次・第二次性徴を強く望む
  2. 症状によって苦痛を感じたり、社会や学校生活における機能障害と関連がある

出典:DSM-5

青年・成人の場合

  1. 個人が体験したり表現したりする性とジェンダーが不一致であり、少なくとも6ヶ月以上、以下の2つ以上の症状を示す
    1. 個人が体験する性と、第一次・第二次性徴との間に著しい不一致がある
    2. 個人が体験する性と性自認の不一致のため、第一次・第二次性徴から解放されたいと強く望む
    3. 生物学的性とは反対のジェンダーの第一次・第二次性徴を強く望む
    4. 生物学的性とは反対のジェンダーになりたいと強く望む
    5. 生物学的性とは反対のジェンダーとして扱われたいと強く望む
    6. 生物学的性とは反対のジェンダーに定型的な感情や反応をもっていると強く確信している
  2. 症状によって苦痛を感じたり、社会や学校生活における機能障害と関連がある

出典:DSM-5

性別違和は発症する年齢によって症状の現れ方も異なる疾患です。

子どもの場合はからだの性と性自認の不一致に苦しみ、異なるジェンダーを取り入れる様子が目立ちます

一方で、青年・成人の場合はからだの性と性自認の不一致だけでなく、周囲から決められた性として扱われることにも苦痛を感じ、自らが自認する性として生きることを望む特徴があります

(2)性別違和の鑑別診断

性別違和としばしば誤解されやすい精神疾患や概念について紹介します。

a.精神病

性別違和は性未分化の身体的・遺伝的障害の可能性が高いと考えられています。その他の精神疾患とは関係がない場合に性別違和と診断されるため、妄想等がないかも鑑別が必要です

b.異性装

性別違和とは異なる概念に、異性の服装を楽しんだり性的興奮を覚えたりする異性装(女装や男装)があります。性別違和の場合は、異性装により楽しみや興奮を感じる訳ではなく、自身の性自認に見合った格好をすることで日常での苦痛を軽減し、自己表現をします。

6.性別違和の治療

二人の女性が打ち合わせ性別違和の治療は、性同一性の不一致による苦痛や生きづらさへのカウンセリングと、身体的特徴を自身が望むジェンダーに近づけるための身体的治療の2つです。

性別違和を否定するのではなく、本人の生きやすさへの手助けが治療の基本になります。

(1)ホルモン療法

ホルモン療法は身体的治療の1つで、一定の年齢以上(およそ18歳以上)で治療への同意が得られる場合に可能です。

からだの性が男性の場合はエストロゲンを投与し、からだの性が女性の場合はアンドロゲンを投与することで、第二次性徴を抑え、望む性へと身体つきを変化させられます

ホルモン療法には定期的な通院が必要です。

(2)性別適合手術

ホルモン療法で生きやすさを獲得できる人は多いですが、重度の性別違和の場合は合意の上で性別適合手術を行うことも可能です。外科的手術には子宮卵巣・精巣の摘出や陰茎形成・切除などがあります

いずれも元の性器の能力は失われ、後戻りができないリスクや、獲得した性器が十分に機能しないリスク等があるため、手術の適応は本人はもちろん、家族や属する社会などと慎重な判断が求められます。

(3)カウンセリング

身体的治療と並行または事前にカウンセリングを行う場合が多いです。カウンセリングでは本人が今までに社会で感じてきた性に関する生きづらさを整理します。本人が過ごしやすくなるための性表現や性決定への支援を行う場合もあります。

性別違和の場合、性の不一致から生じる生きづらさや、二次的に生じるうつ病などの精神疾患への支援においてカウンセリングは有効とされます。性の苦痛から自己評価が低下する人は多く、自己肯定感の回復や社会適応に向けた認知の獲得を目指すことができます

性別違和を専門とするクリニックやカウンセラーも少数ですが存在するため、医療機関受診の際は事前に確認しておくことをおすすめします。性別違和の専門ではなくても、受容的な関わりで性別違和の苦しみに寄り添い、生きづらさを改善するためのカウンセリングは可能でしょう。

7.性別違和についてのカウンセリングを受ける

肩を抱く女性性別違和についての概要、原因、特徴、予後、経過、カウンセリングなどについて解説しました。また間違えやすいトランスジェンダーやLGBTQとの違いについても記載しました。

昔はからだの性に合わせるようにこころの性を変化させるような治療もあったようです。しかし、現在では、性自認=こころの性を重視し、その人のからだの性と性自認が一致していなくても、より良く生きていくことを支援することが重要であると言われています。そのために社会的なバリアを少しずつ無くし、不要なストレスや負担、苦痛を取り除いていく必要があるでしょう。また、カウンセリングなどを通して、ストレスに対処でき、より自分らしい生き方ができるようにサポートする必要もあります。

心理オフィスKでは性別違和の方だけではなく、トランスジェンダーやLGBTQの方の支援やカウンセリングを行っています。希望者は以下のボタンからお申し込みください。