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思春期妄想症のカウンセリングと治療

思春期の不安定さ故に

思春期妄想症とは思春期や青年期に起こることが多い病気で、その中には「自己臭妄想」「自己視線恐怖」「醜形恐怖」の3つが含まれます。この記事ではこの思春期妄想症について解説していきます。

思春期妄想症とは

鏡に映る女性 鏡に映る女性

思春期妄想症は、思春期の若者によく見られる精神疾患で、現実的でない妄想を持ち、現実と区別がつかない場合があります。幻聴や幻覚も起こることがあり、学校や家庭での人間関係や学業に支障をきたすことがあります。思春期妄想症では「妄想」を主体とする症状が主であり、「自己臭妄想」「自己視線恐怖」「醜形恐怖」の3つのタイプがあります。妄想なので、現実的にはありえないことを確信をもって信じており、誰かから指摘されてもその考えを訂正することが困難です。そして、大人になっていくごとに自然寛解することもしばしばあります。

思春期妄想症の誘因はありふれた状況であることが特徴です。たとえば、「誰かが自分の方を見ていて目をそらした」などの、思春期の学校生活の中ではありふれた状況です。また、思春期妄想症のために対外的には「逃げ」の態度を取ることが多く、集団の参加も避けることが多いです。

この年齢の妄想といえば統合失調症も鑑別に上がりますが、幻聴があるようにいうことはあっても、内容は妄想に関するものであり、実際に聞こえているかは疑わしい状況です。また、カウンセラーや医師との関係は基本的に良好で、それも統合失調症とは違うところです

しかし、「自分が病気である」という認識は薄く、カウンセラーや医師との関係が良好であるところとはアンビバレンスがあります。

また、以前は稀な病態と言われていましたが、大規模な疫学調査を行ったところ、3〜13%という高い有病率が示されました。発症として多いのは、10代中ごろ〜後半で、男性の方が女性よりも若干多いと言われています。

しかし、思春期妄想症の中の自己臭妄想に関していえば、その後に妄想が確信的になっていき、統合失調症を発症するケースもあるので、自己視線恐怖や醜形恐怖よりは注意が必要な疾患となっています。同じ思春期妄想症の中に含まれる自己視線恐怖・醜形恐怖と自己臭妄想の唯一の違いは、「妄想の確信度が高まっていき、統合失調症に至る症例がある」ということです。また、統合失調症を発症すると、本当は臭いなんて存在しないのに、本人は臭いを感じてしまう「幻臭」という症状をきたすことがあります。これは本人は臭いを感じているので、確信度が上がり、より統合失調症の症状らしくなります。

思春期妄想症と関連ある統合失調症については以下のページをご覧ください。

思春期妄想症のタイプ

顔に手を当てて嘆く男性思春期妄想症には「自己臭妄想」「自己視線恐怖」「醜形恐怖」の3つのタイプがあります。ここではそれらについて解説します。

それぞれタイプは違いますが、共通点としては、こうした不安や妄想により、対人関係から引きこもり、孤立化してしまうことです

(1)自己臭妄想

自己臭妄想とは、自身の体臭や口臭が酷く、それが他者にまで臭いが届き、それによって他者から嫌がられたり、離れられたりしてしまうのではないか、といった妄想的な不安におびえるタイプです

統合失調症にいたらない自己臭妄想については、対人恐怖の系列に属すると言われています。「自分の中から何かが漏れ出ている」という意味では、自分と他人の境界線が曖昧になる統合失調症と繋がる症状ではあるのですが、純粋な自己臭妄想の場合は、本人も、「他人に嫌がれるのはこの臭いのせいだ」と説明し、相手に対して攻撃性が出ることは全くなく、「相手に申し訳ない」と自分を責めることが特徴です。

(2)自己視線恐怖

自己視線恐怖とは、自身の目や視線が他者を不快にさせたり、嫌がられたりするため、目を合わせて話が出来なかったり、目線がおどおどして、落ち着かなくなるタイプです

対人恐怖や社交不安障害と症状としては似ていますが、大きな違いとしては他者を不快にさせている、嫌がられている考えが実際にそうであると確信をもっているのが自己視線恐怖です。対人恐怖や社交不安障害では、そうかもしれないと思いつつも、実際には違うだろうと現実検討が維持されているのが特徴です。

(3)醜形恐怖

醜形恐怖とは、自身の容姿や見た目が非常に醜いため、人から嫌われてしまったり、不快にさせてしまったりしてしまうタイプです。中には身体的な小さな特徴を大きく捉えてしまい、それが他者に影響を及ぼしてしまうということを妄想的に考えてしまうこともあります。

そのため、過剰に衣服にこだわったり、体型を良くしようと過度に頑張ったり、時には顔や身体の整形をしようとすることもあります。

思春期妄想症・自己臭妄想の診断基準・症状

似ている6人の女性自己臭妄想には、「これ」と決まった診断基準はありません。しかし、特徴的な症状を並べていくことで、「ひょっとしたら自己臭妄想なのではないか」と考えることは可能です。以下に、代表的な症状をあげていきます。

  • 自分のどこからか特有のにおいが漏れ出ており
  • それが周囲にいる他者たちに不快感を与え
  • その結果、他者たちにさげすまれ、忌避されると確信し、
  • これは私の体のどこそこに一定の障害があるからだと説明する

というのが代表的な症状です。臭いの発生源はどこでも構いませんが、代表的なのは「口臭」や「おなら」です。また少しワキガの傾向のある人はその臭いが人を不快にしていると過剰評価してしまうことがあります。

その臭いが非常に他人を不快にしているため、自分の匂いを抑えようと、気になる部位を1日に何度も洗い続けたり、消臭剤を過剰使用したり、下着を変えたり、何度もお風呂位入ると言った行動も見られます。

自己臭妄想では、本人が意識し得ない、あるいはむしろ否定するような対人接触の困難を「臭い」という具体的な症状に作り替え(転換し)、局在化しているといえます。臭い自体は目に見えないことから、「みんなに避けられる」という意味でマイナスの価値を帯びています。究極に言うと「本人=臭い」なのです。この「本人=臭い」といった概念が成立するところが「妄想」と呼ばれる理由です。本人は「本当は臭いなんてしていないのにそう思うなんてバカバカしい」と言ったような強迫観念ではなく、「絶対に臭いがしていて人に迷惑をかけている」といった確信を持っています。不合理性がないことから、これは「妄想」といえます。

また、他人に迷惑をかけていると言った考えから、他人が手を鼻に当てる、鼻をすするといった行動にも敏感に反応し、本来は自分に関係ない行動であるにも関わらず、これは自分の臭いのせいだ、という関連づけをしてしまいます。これを、精神科では「関係念慮」と呼びます

また、臭いは密室でこもりがちなことから、飛行機やエレベーターの中、ドアの締め切られた部屋などでは過大な恐怖を抱き、そういった場所を避ける傾向があります。こう言った面も、対人恐怖と言われるゆえんではあります。

思春期妄想症の治療と治し方

男性医師思春期妄想症の治療には薬物療法とカウンセリングがあります。ここではそれらについて解説します。

(1)薬物療法

思春期妄想症に対しては、ごくわずかの抗精神病薬を使うことがあります。本人が症状のために日常生活に困ったり、対人関係に支障が出ていたりする場合です。

では、薬物療法を行わないと症状は楽にならないのか、と言うと「思春期」妄想症と名のつくように、多くは思春期を過ぎれば自然と回復していきます。自己臭妄想についても、同様に薬物療法に反応する例もあり、不登校などに至っている例では病院を受診することも一つの手ではあると考えます。

(2)カウンセリング

思春期妄想症では、対人恐怖や社交不安障害などで使われる認知行動療法などが、効果があると考えられます。思春期のお子さんに薬物投与はなるべくしたくない、と言った場合には、カウンセリングルームを訪れてカウンセリングを行ってもらうのも一つの手として考えられます。思春期はいろいろなことで悩み、苦しみ、葛藤する時期でもあるので、カウンセリングの有用性は非常に高いのではないでしょうか。ただし、思春期妄想症が統合失調症に変わってしまった場合はカウンセリングルームではなく病院での対応が望まれます。

まだ日本でオープンに受けることができない心理療法の中で、「オープンダイアログ」と言うものがあり、オープンダイアログでは幻聴や妄想も癒すと言われています。カウンセリングが今後発展していく中で、オープンダイアログが望めば誰でも受けられるようになった場合には、カウンセリングで思春期妄想症や統合失調症を癒すことができるようになるのかもしれません。思春期妄想症や統合失調症治療に、新たな選択肢が増えることは望ましいと思っていますので、今後のオープンダイアログには期待をしています。

(3)思春期妄想症への接し方

思春期妄想症の妄想が正しいか間違っているか、現実か非現実的か、などの論争や言い争いは避けましょう。妄想であることを分からせようと説教したり、論理的に説明しても、むしろ妄想を助長させてしまうことになります。それよりも、思春期妄想症の人と良い関係を保ち、妄想とは関係のない日常的なことや趣味のことなどを色々と話をして、お互いに気心が知れるようになる方が良いでしょう。また、悩み事についても、妄想には触れず、日頃のストレスや困り事など、現実的な大変さやしんどさに共感し、それを解決するためにお手伝いをすることが求められます。

妄想の背後には孤独感やストレス、思春期特有の悩みがあります。ですので、そうした大変さを共有し、解決していくことで、結果的に妄想が和らいだり、妄想に囚われずに済むようになったりしていきます

思春期妄想症に対するカウンセリングを受ける

カウンセリングをする男女思春期妄想症と、そのいくつかのタイプである「自己臭妄想」「自己視線恐怖」「醜形恐怖」について、概要、特徴、診断、症状、治療、カウンセリングなどについて解説してきました。一部では統合失調症に移行する可能性もありますが、思春期の一過性の症状として終わることもあります。いずれにせよ、適切な治療やカウンセリングを受けることで、重篤な状態になることを防ぐことができます

(株)心理オフィスKでは思春期妄想症や自己臭妄想、自己視線恐怖、醜形恐怖に対するカウンセリングを行っています。希望される方は以下の申し込みフォームからご連絡ください。

思春期妄想症についてのよくある質問


思春期妄想症は、思春期の若者に特有の妄想症状を指します。特に現実に基づかない疑念や偏った解釈を抱くことが多く、自己中心的な考えや被害妄想が現れることがあります。思春期特有の心理的要因が関与しており、ストレスや不安が引き金となることが少なくありません。適切なカウンセリングや治療を受けることで症状が軽減することが一般的です。

思春期妄想症の原因はさまざまですが、主に心理的、環境的要因が影響を与えます。脳の発達が未成熟である思春期は、ストレスや不安が強く影響を与える時期です。また、親子関係や学校生活での対人関係のストレスも要因となり得ます。遺伝的要素も一部影響を与えることがありますが、複合的な要因が絡み合い、症状を引き起こすとされています。

思春期妄想症の診断は、心理専門家によるカウンセリングや精神科での評価を通じて行われます。患者の症状や心理状態について詳細に調査し、家族や学校での状況も含めた情報を基に診断が行われます。また、精神疾患の他の可能性も排除するために、検査や問診が行われることがあります。

思春期妄想症と統合失調症は異なる精神疾患です。思春期妄想症は、思春期特有の心理的要因によって引き起こされる症状であり、短期間で改善することが多いです。対して、統合失調症は成人に多く見られ、長期的な症状や障害が持続することがあります。また、妄想の質やその頻度にも違いがあります。

思春期妄想症の治療には、心理療法やカウンセリングが中心です。認知行動療法が有効とされ、思考の偏りを修正し、現実とのつながりを回復する手助けをします。また、必要に応じて薬物療法が併用されることもありますが、心理療法が基本となることが多いです。早期の発見と適切なサポートが治療の鍵です。

思春期妄想症は、適切な治療を受けることで多くの場合、症状が軽減し、長期化することは少ないとされています。しかし、症状が重篤であったり、家族や環境のサポートが十分でない場合には、症状が持続する可能性もあります。早期に発見し、適切な支援を行うことで改善が見込まれます。

思春期妄想症は、特定の偏った思考や妄想が特徴であり、自己中心的な疑念が強調されます。一方、パニック障害は突然の激しい不安感や恐怖を伴う発作が特徴で、心臓の動悸や呼吸困難など身体的な症状が現れます。両者は異なる症状の特徴を持つため、適切な診断と治療が必要です。

思春期妄想症は、家族や友人、学校生活などの人間関係に影響を与えることがあります。妄想が現実とズレているため、対人関係のトラブルやコミュニケーションの困難さが生じることがあります。家族や周囲のサポートが重要であり、適切な治療を通じて、社会的な支援や自己理解を深めることが症状の改善につながります。

思春期妄想症の予防策としては、ストレスマネジメントやコミュニケーションスキルの向上が挙げられます。適切な親子関係の構築や、学校生活でのサポートが大切です。また、早期の心理的な支援や、自己理解を深めることが予防に役立つとされています。ストレスが溜まりにくい環境づくりが症状の予防に効果的です。

思春期妄想症の治療は、症状が出始めた段階で早期に受けることが推奨されます。症状が軽度であっても、早期にカウンセリングを受けることで、症状の悪化を防ぐことができます。周囲の人が異変に気づいた時点で、専門家に相談することが重要です。

文献

この記事は以下の文献を参考にして執筆いたしました。