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分離不安症のカウンセリングと治療

離れることも愛情

「親から離れるのが不安」という気持ちは誰もが感じてきた反応でしょう。しかし、不安の強さから学校や仕事に行けないなど社会生活に支障をきたす場合は分離不安症の可能性があります。

本記事では分離不安症の概要や原因、改善について解説します。心配性な人や過剰に不安を感じやすい人は特に参考にご覧ください。

1.分離不安症とは

泣いている二人の子ども分離不安症とは、母親など愛着対象の人や物から離れることで持続的に過度な不安、恐怖を感じる状態を指し、これまでは分離不安障害とも呼ばれていました。

そもそも分離不安は乳児の発達段階で見られる正常な反応であり、自然に消失するものです。乳児の発達では、生後6ヶ月頃に母親(養育者)との情緒的な結びつきが形成され始めます。アメリカの精神分析学者のスピッツ(Spitz, R.A)によると、生後8ヶ月頃には母親(養育者)から分離することに不安を感じ、知らない人へ不安を感じる8ヶ月不安といっていわゆる「人見知り」が始まります。この不安は、自分の中で母親像(養育者像)をもつことで愛着対象と分離しても心理的に安心し、成長と共に薄れるものです。

しかし、分離不安が過剰であったり継続したりしてしまうと日常生活に支障が出てしまいます。分離不安症は子どもに多く見られますが大人でも見られる状態で、以下のような特徴が見られます。

■子どもの分離不安症の場合

  • 親と離れて保育園や学校で長時間過ごすことが難しい
  • 1人では寝られない
  • 親が離れられないほどに泣いてしまう
  • 分離場面で頭痛や腹痛などを訴える
  • お友だちと一緒に遊びに行けない など

■大人の分離不安症の場合

  • 仕事に行けなくなる
  • 遠方での就職や結婚など実家を離れることが難しい
  • 親やパートナーと常に一緒に行動しようとする
  • 大切な人に依存して束縛行為をとってしまう
  • 「親に見捨てられないか」「恋人が事故に遭っていないか」と不安で何も手がつかなくなる など

子どもも大人も愛着対象の親やパートナーから離れることが不安で登園・登校、出勤などを拒否してしまうことが多いです。そのため、引きこもりや行動の制限など周囲に負担がかかる場合もあり得ます。分離不安症は、愛着対象の人や物、場所から離れなければ比較的落ち着いていることが多いため、困り感を見抜きにくい点も特徴の1つです。発症は児童期や青年期に見られやすく、女性に多い傾向があります。

2.分離不安症の原因

泣いている赤ん坊分離不安症の原因は環境要因からの影響が大きいと考えられています。親や友人、ペットなど大切な存在から離れる機会、転居や両親の離婚など愛着のある人や場所から離れる強いストレスをきっかけに発症することがあります

分離不安は、親の過保護で母子分離がうまくいかない場合や、仕事や病気など養育者の家庭問題で愛着形成がうまくいかなかった場合に生じやすいです。幼少期の段階で「母親(養育者)と離れても大丈夫」という安心感を得られないと、分離不安は残りやすいと言えます。

また、分離不安症では不安を感じやすい遺伝要因も考えられます。その他、本人の臆病で心配性な気質なども原因の1つと言えるでしょう。

3.分離不安症の診断

泣いている少女分離不安症の診断は、症状と実際の分離場面の確認がポイントです。診断のポイントとなる特徴には以下が挙げられます。

  • 愛着対象から離れたり、失うかもしれないと感じたりして過剰に不安や苦痛を感じる
  • 学校や仕事など1人での外出を拒否する
  • 1人で眠れなかったり、分離に関する悪夢にうなされたりする
  • 分離に対して腹痛、吐き気、頭痛など身体症状が見られる など

このような症状が子どもの場合は4週間以上、18歳以上の大人の場合は6ヶ月以上続くことが診断目安になります。

ただし、大切な人から離れることを渋り、傍にいようとするからといって分離不安症と診断されるわけではありません。年齢的、社会的に考えて適さず過剰な状態なのかが重要になります。

また、初めての登園・登校、出勤など一時的に不安や抵抗が見られる場合もありますが、ある程度の不安は生活上感じて当然の反応です。分離不安症は子どもに多い状態で年齢と共に不安は薄れやすいですが、大人になってから発症することもあります。「子離れができない」「パートナーの行動を監視や制限してしまう」など人間関係上でも問題が生じかねません。

さらに、他の不安障害や発達障害などが合併している可能性もあります。分離不安症の心当たりがある人は、精神科や小児精神科、心療内科などへ受診してみてください。

分離不安症のDSM-5における診断基準

  1. 愛着をもっている人物からの分離に対する、発達的に不適切で、過剰な恐怖または不安で、以下のうち少なくとも3つの証拠がある。
    1. 家または愛着をもっている重要な人物からの分離が、予測される、または経験される時の反復的で過剰な苦痛
    2. 愛着をもっている重要な人物を失うかもしれない、または、その人に病気、負傷、災害、または死など、危険が及ぶかもしれない、という持続的で過剰な心配
    3. 愛着をもっている人物から分離される、運の悪い出来事(例:迷子になる、融解される、事故に遭う、病気になる)を経験するという持続的で過剰な心配
    4. 分離への恐怖のために、家から離れ、学校、仕事、または、その他の場所へ出掛けることについての、持続的な抵抗または拒否
    5. 1人でいること、または愛着をもっている重要な人物がいないで、家または他の状況で過ごすことへの、持続的な抵抗または拒否
    6. 家を離れて寝る、または、愛着をもっている重要な人物の近くにいないで就寝することへの持続的な抵抗または拒否
    7. 分離を主題とした悪夢の反復
    8. 愛着をもっている重要な人物から分離される、または、予期される時の、反復する身体症状の訴え(例:頭痛、腹痛、嘔気、嘔吐)
  2. その恐怖、不安、または回避は、子どもや青年では少なくとも4週間、成人では典型的に6カ月以上持続する。
  3. その障害は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、学業的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。
  4. その障害は、例えば、自閉スペクトラム症における変化への過剰な抵抗のために家を離れることの拒否;精神病性障害における分離に関する妄想または幻覚;広場恐怖症における信頼する仲間なしで外出することの拒否;全般不安症における不健康または他の害が重要な他者にふりかかる心配;または、病気不安症における疾病に罹患することへの懸念のように、他の精神疾患によってはうまく説明されない。

注:この診断は、反復性の衝動的・攻撃的爆発が、以下の障害において通常みられる程度を超えており、臨床的関与が必要なである場合は、注意欠如・多動症、素行症、反復挑発症、自閉スペクトラム症に追加することができる。

引用:DSM-5

4.分離不安症の治療と治し方

サポートする分離不安症の改善方法には、薬物療法や環境調整、カウンセリングなどのアプローチが考えられます。対象は症状のある本人だけでなく、必要に応じて愛着対象の親などへの心理教育も行います。分離不安症の改善には本人の工夫だけでなく、保護者側の理解や関わり方も必要でしょう。

(1)医学的治療や薬物療法

分離不安症は、愛着対象から離れることに対して過剰な不安や恐怖を感じる状態です。この苦痛が強く、気分の落ち込みや不眠など精神的な症状が見られる場合は薬物療法を行うことがあります。

代表的な薬物として、抗不安薬や抗うつ剤のSSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)が利用されることが多いです。ただし、これらの薬物療法には胃の不調などの副作用が見られることがあるため、医療機関への定期的な受診と経過観察は必要になります

また、主に薬物療法は分離不安そのものを軽減するというより、不安や恐怖の緩和に利用されることが多いです。分離不安症の症状が重いと感じるのであれば、苦痛を減らすために検討してみてもいいかもしれません。

(2)環境調整やマネジメント

分離不安と向き合うには、本人を取り巻く環境を調整することも重要な方法です。愛着対象と離れられないからと言って叱ったり無視したりはせず、本人が安心できる環境へと慣らしていきましょう

子どもであれば、登園・登校できない場合は励ましつつ保護者も付き添うことから始めてみたり、学校で過ごす時間を少しずつ長くしてみたりすることができるでしょう。大人であっても安心できる環境に慣らすために、信頼できる同僚などからサポートを得ることが助けにもなります。愛着対象と離れる瞬間は、癇癪や身体化で分離不安が表現されることもありますが、別れはなるべく手短にかつ冷静に対応することが望ましいです。

(3)カウンセリングや心理療法

分離不安症は母親などから離れる際に強い不安や恐怖を感じるという心理的な問題が大きいため、カウンセリングや心理療法でのアプローチも有効と考えられます。

分離に対する捉え方の修正を試みる認知行動療法や、分離不安を家族全体の問題と捉えて症状への理解や関わり方を探る家族療法で不安や恐怖の軽減を目指す方法があります

また、まだうまく自分の気持ちを言語化できない子どもの場合は、遊戯療法(プレイセラピー)も選択肢の1つです。安全に守られたプレイルームで、遊びを通して分離不安への葛藤が表現されていくこともあります。

4.分離不安症のカウンセリングを受ける

4人の家族不安は誰にでも生じるもので、分離不安も正常な発達過程には見られる症状です。しかし、度を過ぎた不安や行動は本人の成長を阻害し周囲をも巻き込んでしまいます。近年のコロナ禍では外部との関わりが減り「これって普通なの?」と悩む機会が多いかもしれませんが、分離不安が長引き、学校に行けないなど支障が出る場合は医療機関やカウンセラーに相談してみてください。

心理オフィスKでも分離不安症についての相談を受け付けています。ご希望の方は以下のメールフォームからご連絡ください。

文献