燃え尽き症候群(バーンアウト)とは?原因、症状、治し方について解説
「精力的に仕事に取り組んでいた人が、燃え尽きてしまったかある日突然仕事に身が入らなくなる」。このような状態を見聞きしたことはありませんか。これは「燃え尽き症候群」という状態です。
本記事では、燃え尽き症候群の原因や症状、対処法について解説します。
目次
1.燃え尽き症候群とは
燃え尽き症候群(バーンアウト)とは、人間関係や仕事などで過度なストレスに晒され続けた結果、心身の疲労を感じたり意欲を失ってしまったりする状態を指します。
アメリカの心理学者であるハーバート・フロイデンバーガーが1970年代にバーンアウトシンドロームとして提唱しました。これまで燃え尽き症候群は、精神症状が生じるものの医学用語としては使用されていませんでした。しかし、2018年にはWHOのICD-11(国際疾病分類)に追加され、精神疾患の診断名ではありませんが、仕事の過度なストレスによる不調として正式に認定されました。
燃え尽き症候群は心身の疲労感や意欲低下などが見られるため、うつ病とも共通点があります。しかし、燃え尽き症候群は主に仕事に関するストレス反応であり、うつ病は多くの要因が絡み合って生じる気分障害という点で異なります。
2.燃え尽き症候群の原因
燃え尽き症候群の原因は、職場での過度なストレスもありますが、個人要因と環境要因が挙げられます。
(1)個人要因(年齢、性格、特性など)
- 仕事で頑張りすぎてしまう
- 他者と深く関わろうと努力できる
- 完璧主義
- 繊細で神経質
- 若く(経験が浅く)、現実離れの期待をしてしまう など
(2)環境要因(精神的・身体的な過剰負荷)
- 残業などの長時間勤務
- 厳しく膨大なノルマ
- 過度な肉体労働
- 仕事量に対して正当な評価を得られない環境
- 自分のペースで動けずに仕事を強いられる環境 など
いずれにしろ、ストレス耐性が低い人や抱え込みやすい人・環境、ストレスをうまく発散できない人は燃え尽き症候群に陥りやすいと思われます。
また、燃え尽き症候群は、医療従事者や教員などの人と直接関わる対人援助職に多いと言われていますが、彼らに限らず過度かつ慢性的なストレスを感じる対人関係でも生じます。
3.燃え尽き症候群の症状
燃え尽き症候群の主な症状は、意欲や体力などエネルギーの低下、仕事に対する抵抗や拒否感、仕事などで能力を十分に発揮できなくなることが挙げられます。
また、アメリカの心理学者であるマスラックらが燃え尽き症候群の症状を研究したMBI(Maslach Burnout Inventory)という尺度があり、MBIを元に日本版の尺度も作成されています。尺度によると以下3点が代表的症状と言えます。
- 情緒的消耗感
- 脱人格化
- 個人的達成感の低下
(1)情緒的消耗感
情緒的消耗感とは、主に仕事に対して熱心に取り組んだものの情緒的に疲れ切ってしまう状態を指します。「今まで楽しかった仕事が楽しめない」「1日の仕事で心が疲れ切ってしまう」など、身体の疲労だけではないことがポイントです。
(2)脱人格化
脱人格化とは、仕事先の相手や同僚、友人などに対して冷たく、思いやりのない対応をしてしまう状態を指します。「周囲への気配りが億劫になる」「人の顔を見るのが嫌で話したくなくなる」など、消耗しきった自分の情緒をセーブするような態度になります。
(3)個人的達成感の低下
個人的達成感の低下とは、仕事などで自分の能力を十分に発揮できず、達成感ややりがいが得られない状態を指します。「仕事をしても喜べない」「達成感が低く自己嫌悪してしまう」など、モチベーションが低下して離職につながる可能性もあります。
4.燃え尽き症候群の治し方や対処法
燃え尽き症候群は誰でも陥る可能性がある状態です。人間関係や仕事における過度なストレスは一つの原因ですが、私たちの生活からストレスを完全に消し去ることはできません。燃え尽き症候群に対処するには、ストレスの緩和や発散が重要になります。
(1)燃え尽き症候群の人への接し方
燃え尽き症候群は、これまで熱心に活動できていた人が突然心身の疲労感や意欲低下、仕事や人間関係への拒否感などを覚える状態です。そのため、周囲から見ると甘えや怠けに見えてしまうことがあります。
燃え尽き症候群と思われる人が身近にいる場合、まずは心身の心配を伝えて思いやりのある接し方を心がけてみてください。その人がこれまで頑張ってきたことを聞いて共感し、労う態度を示してみましょう。燃え尽き症候群であれば情緒的に疲れ切っている可能性が高いため、きつく注意するような冷たい対応は逆効果です。
また、本人が燃え尽き症候群であるという自覚がない場合もあるため、産業医や病院への相談を促す関わりも挙げられます。接する側が抱え込まないように医療機関につなげることも大切です。
(2)自分で工夫できること
燃え尽き症候群になるリスクや重症化を減らすために、個人では以下のような工夫ができるでしょう。
- 心身を休めるために食事、睡眠などの生活リズムを整える
- 仕事上のストレス軽減のために、作業の分担など周囲に助けを求めるようにする
- 抱え込まないために、ストレス発散になることを用意してみる
- 心身の消耗を防ぐために、自分と仕事上での役割をしっかり区別する など
特に、近年はリモートワークの導入が進み、プライベートと仕事の区別が曖昧になって疲弊してしまうケースも増えています。もしも今自分の心身が激しく疲れていると感じるなら、仕事を頑張りすぎるのではなく、一歩身を引いて仕事と自分を客観視してみてください。
熱心に仕事と向き合える姿勢も大切なことですが、客観視を忘れてしまうと頑張る気持ちが自分の心を追いつめるきっかけにもなってしまいます。一度自分の仕事量を見直し、上司と相談してみてもいいでしょう。
(3)医学的な対処法
燃え尽き症候群は主に仕事での過度なストレスが一要因と考えられるため、症状を緩和していくためには充分に休息をとることが必要です。頑張り屋で完璧主義な特性は燃え尽きやすい個人要因といえます。「休み方が分からない」「休むのが申し訳ない」という人もいるかもしれませんが、ストレスに感じる仕事から思い切って離れ、何もしない時間や好きなことをする時間を設けてみてください。
また、燃え尽き症候群はうつ病と似た側面もあり、併発する可能性も考えられます。精神症状が見られ、仕事への復帰困難、意欲低下により生活に支障をきたす場合はSSRIなどのような抗うつ薬による薬物療法を行うこともあります。薬物療法の効果を高めるためにも、休息をとり環境を整えることが大切です。
(4)心理学的・カウンセリング的な対処法
燃え尽き症候群は「なんとなくやる気が出ない」「仕事に行くのが億劫だ」など日常で誰もが感じやすいことが続くため、自分が今燃え尽きていると気づけないケースも多いです。カウンセリングは、自分の状態を改めて話すことで自らを客観視し、今の状態を受け入れる作業に役立ちます。
また、心の専門家と話し合うことで、精神症状への理解、希死念慮への対応、燃え尽き症候群の再発防止を考えていくことも可能です。カウンセリングで自由に話し、話を十分に聴いてもらえたという感覚がストレスの軽減につながることもあります。自分一人で頑張りすぎてしまう人は、身近な他者に頼ることが苦手かもしれません。
カウンセリングには守秘義務もあるため、周囲に助けを求めづらい場合は利用してみてください。
5.燃え尽き症候群に対するカウンセリングを受ける
仕事や人間関係に夢中になれることは素敵なことです。しかし、熱心になりすぎて自分の状態に気づけなかったり頑張りすぎたりすると、ある日心身のエネルギーが切れてしまいます。心身を健康に保つために、本記事で紹介した対処を参考にしてみてください。
(株)心理オフィスKでも燃え尽き症候群に対するカウンセリングを行っています。専門のカウンセラーが相談にのりますので、ご希望の方は以下の申し込みフォームからご連絡ください。
文献
この記事は以下の文献を参考にして執筆いたしました。