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催眠療法

決して不思議な現象ではなく

催眠療法は、身体的にも精神的にもリラックスして、潜在的な意識が顕在化している意識レベルよりも優位な催眠状態で実施する心理療法の一つです。

患者さんの潜在的な意識に働きかけて、潜在意識からメッセージを受け取ることで必要な情報に気づきながら課題の解決や自己成長につなげることで、今までと異なる視点や角度で現実生活を前向きに進めることができると考えられています。

今回は、そのような「催眠療法」について説明していきます。

催眠療法とは

催眠療法とは、催眠を用いる補完的な代替医療の一種です。患者さんの被暗示性の状態亢進を中心に、催眠現象が持ついろいろな生理的、あるいは心理的な特性を活用して、多様なアプローチを駆使して治療が実施されます。

欧米諸国などにおいては正当な医療行為として、医師、看護師、心理療法士など様々な職種の人たちが催眠療法を有効な治療手段として利用しているという歴史的背景が存在します。

催眠療法には、主に課題の根本的な原因となっている過去の出来事にさかのぼる「退行催眠療法」、あるいは過去を振り返らずに退行行為を行わない「暗示療法」があります。

特に、退行催眠療法の場合には、振り返る時期によって分類されていて、幼少期など古い昔の時代に戻る場合は「幼少時退行療法」、過去世に戻るパターンは「前世退行療法」と呼称されています。

催眠療法が上手く適応できれば、多くの方はリラクゼーション状態に入って、自律神経の副交感神経が優位になるため、心臓の拍動や呼吸がゆっくりと安定的になるとともに、心も平穏に落ち着きます。

また、催眠状態に入ると次第に意識的な努力が減って、いろいろな体験が起こるに任せて、考えたことが意図せずに運動、感覚、感情などの形で表現される現象である「観念力動反応」が認められることがあります。観念情動反応とは、自分の手が空中に浮遊していくとの暗示に反応し、手が上がると考えただけで自分が意図せずに手が上がっていくなどのリアクションを示唆しています。また、手を冷水につけたという暗示にかかって実際に手が冷たいと感じられる場合、何かの体験を想像した場合に自然に感情が芽生えるなどの反応も含まれています。

よくある相談の例(モデルケース)

20歳代 男性

Aさんは20代の男性で、大学卒業後に営業職として勤務していました。入社当初は順調でしたが、数か月後から通勤中に強い腹痛や下痢が起こるようになり、医療機関で過敏性腸症候群(IBS)と診断されました。薬物治療を受けても症状が改善せず、外出への不安が強まっていきました。Aさんは「またトイレに行きたくなったらどうしよう」という思考にとらわれ、出社前から腹部の緊張や動悸を感じるようになり、心身ともに追い詰められていきました。

紹介を受けて当オフィスを訪れ、初回の面接では、症状がストレスと深く関係していること、思考や身体反応が悪循環を形成していることを共有しました。カウンセリングでは、認知行動的な視点に加え、催眠療法(ヒプノセラピー)を取り入れることにしました。催眠状態の誘導では、呼吸と筋弛緩を基盤とし、Aさん自身が安全で穏やかなイメージを描けるようサポートしました。

催眠下では、腸の動きや腹部の感覚をコントロールするイメージトレーニングや、「落ち着き」「安心」「ゆとり」といった暗示を繰り返し導入しました。Aさんは、セッションのたびに身体の緊張がゆるみ、腹部の違和感が軽減する感覚を実感しました。日常でもリラクゼーション法やイメージ法を練習し、通勤時の不安に対処できるようになっていきました。

中期以降は、症状そのものよりも「不安が不安を呼ぶ構造」への洞察を深め、ストレス状況に柔軟に対応する方法を学びました。仕事上のプレッシャーや対人緊張が再燃した際も、催眠的なセルフリラクゼーションを用いて心身の安定を保てるようになりました。

1年半後には、腹部症状は大幅に軽減し、外出や出張にも支障がなくなりました。Aさんは「身体の反応を敵視するのではなく、対話できるようになった」と語り、自己理解が深まっていました。3年目にはメンテナンス面接を行いながら終結し、症状の再発も見られませんでした。催眠療法は、身体症状と心のつながりを再構築する治療的手段として、Aさんの回復を支えました。

催眠療法の効果とは何か

催眠療法においては、その効果として心身の回復、同化の促進、緊張の解放、不安感情の低下などが期待されています。心理的興奮やストレスが関わる心身症や身体疾患に対しても利用されていますし、自己洞察や行動変容の促進目的にも用いられています。

患者さんと催眠療法を実施する側との信頼関係は、催眠療法を遂行する上で必要不可欠な要素であり、実施者と患者間で良好な関係性を築くことで、安心して催眠療法に集中して良好な結果を得ることが期待できます。

Aさんの場合、催眠状態を通して心身の緊張をゆるめることで、自律神経のバランスが整い、腹部の不快感が軽減しました。
また、身体の反応を敵視するのではなく、落ち着いて受け止める感覚を体得したことが、症状の改善を持続させる助けになりました。

催眠療法が有効な症状や疾患

催眠療法は、過敏性腸症候群や状態不安(手術前など)、更年期障害に伴うホットフラッシュ(ほてり)、慢性頭痛や心的外傷後ストレス障害など、さまざまな症状や疾患を対象として、多くの研究が行われてきました

近年では、過敏性腸症候群に対して腸管に焦点を当てた催眠療法(gut-directed hypnotherapy:GDH)の有効性が、欧米を中心に数多く報告されています。一部の研究では、催眠療法が過敏性腸症候群の患者における消化器症状、不安、抑うつ、身体的不調に関連する生活の質の改善に寄与する可能性が示されています。

また、人前に出ると極端に緊張してしまう場合や、ダイエットや禁煙などの自己目標を達成したい場合には、暗示催眠が有効です。暗示催眠による催眠状態では潜在意識につながりやすく、悪習慣を断ち切る暗示や理想の自己イメージを受け入れやすくなるため、問題解決のサポート効果が期待できます。

一方、過去のつらい経験の真相を知りたい、特定の人との関係性に悩んでおり前世での関わりを探りたい、自分の使命を理解したいといった場合には、退行催眠が用いられます。退行催眠では、催眠状態で潜在意識内の記憶を探索し、幼少期や過去世に退行して体験を再構成します。これにより、過去のトラウマや恐怖心からの解放を促し、心理的変化をもたらすことが期待されます。

さらに、慢性疾患に悩み、健康を取り戻したい場合や、さまざまな治療を試しても改善が見られない場合には、ソマティック療法が有効です。ソマティック療法とは、「病気や症状は体からのメッセージである」という考えに基づき、催眠状態で潜在意識に働きかけながら、そのメッセージの意味や体が求めていることを探り、原因や解決法を見出して症状の改善を図る方法です。

一般的には、パニック障害、身体表現性障害、外傷後ストレス障害などの不安障害、解離性健忘や解離性同一性障害を含む解離性障害などが催眠療法の適応とされています。さらに、身体疾患に基づく疼痛のコントロール、夫婦関係の問題、アスリートの心身的パフォーマンス調整、受験生の集中力向上、禁煙や体重コントロールなどにも応用されています。

Aさんは、過敏性腸症候群による腹痛や下痢に長年悩まされていました。催眠療法を通じてリラクゼーションやイメージ誘導を行うことで、ストレス反応に関わる身体症状が緩和され、心と体のつながりを再び感じ取ることができるようになりました。

催眠療法の流れとやり方

まずは、問診で話を聞いて、催眠療法を通じて何を求めているのか、そのテーマや目標を明確にします。

催眠療法の実施日を決めて、催眠療法の実施日当日は出来るだけリラックスできる締め付けの少ない楽な服装で臨みます。

実際の催眠療法では2~3時間程度の時間を要して、催眠にスムーズに入るために、身体の力が徐々に抜けていくイメージを持って寝る前の状態のようにリラックスできるように誘導していきます。

信頼できない治療者の催眠では、安心して催眠状態にも入れませんので、催眠療法が患者さんにとって安全で安心なものとなるために、事前に患者治療者間に絶大な信頼関係が築かれている必要があることを認識しておきましょう。

Aさんの場合、初めに安全で落ち着けるイメージを設定し、呼吸と身体の緊張を整える誘導から始めました。
その後、「安心」「ゆるみ」「整う」といった暗示を繰り返し、セッションを重ねるごとにリラックスの感覚が定着していきました。

催眠療法に関する注意

(1)催眠療法を受ける前に知っておくべき注意事項とデメリット

原則として、統合失調症や双極性感情障害(いわゆる躁うつ病)などに罹患して精神科や心療内科に通院治療中の場合は、催眠療法を受けることができません。

また、患者さんが催眠療法を希望する目的、あるいはその内容によっては、催眠療法をお勧めしないケースがあります。

催眠療法には数時間程度の時間が必要となりますが、人によってはそれ以上の時間がかかることがありますので、催眠療法の後には、スケジュールを入れずにゆっくりリラックスできる時間を確保しておく必要があります。

催眠療法を実施する前日には飲酒は控えて、しっかりと睡眠をとるようにしてください。

当日は、眠気を催す作用のある薬は服用しない、あるいはコンタクトレンズを着用している際には治療中に外すこともありますので、レンズケースを持参しましょう。

Aさんは催眠を魔法のような即効療法ではなく、心身の調整を促す方法として理解していました。過度な期待や依存を避け、自らのペースで練習を続けることが、安定した成果につながりました。

(2)催眠療法を活用したい人へのアドバイス

催眠療法では、患者さん自身が治療内容やその目的、流れや効果について十分に理解しておくことが重要なポイントです。

催眠とはどのような状態になることなのか、危険な要素や合併症など想定されるかなど催眠療法について、実施担当者に時間をかけて質問して納得しておくことが必要です。

催眠療法を実施する医師と患者どうしがお互いに課題を共有して、同じ目標や方向性をもって催眠療法に臨むために、催眠療法を受けようと思った動機、催眠療法を通じてどんなことを解決したいのかを明確にしておくことが大切です。

Aさんの場合、日常でもリラクゼーションやセルフ催眠を継続することで、安心感を維持できました。催眠療法を受けたい人は、信頼できる専門家のもとで丁寧に進めることが大切です。

催眠療法についてのよくある質問


催眠療法は、深いリラクゼーション状態にある「催眠状態」を利用して心の深層にアクセスし、過去のトラウマや習慣的な行動パターンを改善することを目的とした治療法です。催眠状態は、注意が極度に集中し、通常の意識状態では気づかない感情や記憶にアクセスしやすくなります。この状態を利用することで、クライアントは無意識のうちに心の中で自分の問題を解決する手助けを受けることができます。催眠療法は、過去の感情的な傷を癒すだけでなく、ストレスの軽減、自己改善、行動修正にも効果があります。特に不安や恐怖症、ストレスや睡眠障害、さらには痛みの管理にも有効な方法とされています。


催眠療法は非常に幅広い症状に効果があるとされています。最も一般的に効果が見られるのは、心的ストレス、過食症、喫煙、依存症、不安、恐怖症、自己肯定感の向上、さらには慢性的な痛みや不眠症に関する問題です。催眠状態に入ると、無意識的な思考や感情にアクセスしやすくなるため、普段意識していない自分の思考パターンや行動の背後にある原因に触れることができます。これにより、潜在的なストレス源や感情的な障害を根本から改善する手助けとなります。さらに、催眠療法は自己改善や新しい習慣の定着にも有効で、行動パターンの改善や習慣的な行動の見直しをサポートすることができます。


催眠療法は、適切な訓練を受けた資格ある専門家が行う限り、安全な治療法とされています。催眠状態は深いリラクゼーションを促進し、体と心をリラックスさせるため、通常は非常に安全です。薬物を使用せず、自然な状態で心を深く掘り下げていくため、副作用の心配はほとんどありません。しかし、催眠療法が適さない場合もあります。特に精神疾患や薬物依存症の方、また催眠状態に入りにくい人や過度の不安を感じる方には、事前に医師と相談することが推奨されます。専門家は、クライアントの状態を慎重に評価し、安全にセッションを進める方法を選びます。したがって、信頼できる専門家によって行われる場合、催眠療法は非常に安全で効果的な治療法となります。


催眠療法は、通常リラックスできる環境で行われます。クライアントはリラックスした状態で横になったり座ったりし、セラピストの指示に従いながら深いリラクゼーションを経験します。セラピストは、誘導を行い、クライアントを催眠状態へと導きます。この状態に入ることで、普段意識しにくい思考や感情にアクセスすることができます。その後、セラピストはクライアントの具体的な問題や目標に合わせて暗示やイメージを用い、治療が行われます。治療の過程で、クライアントは自己肯定感を高めたり、過去のトラウマを解放したり、行動パターンを見直したりします。セッションの長さは通常1時間程度で、個人の状態や問題に応じて、数回のセッションを行うことが一般的です。


催眠療法の効果は個人差がありますが、軽度の問題や一過性のストレスには、一回のセッションで改善が見られる場合もあります。しかし、深刻な問題や長期間続いている症状には、複数回のセッションが必要となることが多いです。例えば、慢性的な痛みや長年の恐怖症、不安障害などの場合、継続的に催眠療法を行うことが推奨されます。回数を重ねるごとに、心の深層にある問題にアクセスし、改善を促進することができます。治療の進行状況や効果を確認しながら、必要に応じてセッションの間隔を調整します。個別のニーズに応じた治療計画を立てることが大切です。


催眠療法中、クライアントは深いリラックス状態にありますが、完全に意識を失うわけではありません。催眠状態は、通常の意識状態とは異なりますが、クライアントはセラピストの指示に従い、感情や思考を感じながら、セッションを進めていきます。この状態では、普段気づかない深層の感情や記憶にアクセスしやすくなり、それに基づいて治療を行うことが可能になります。催眠状態にあるときでも、クライアントは自分の感覚や思考に気づきながら、セラピストとの対話が可能です。もし不安を感じたり、不快な状態があれば、すぐにセラピストに伝えることができます。


催眠療法は、多くの人々が受けることができますが、すべての人に適しているわけではありません。特に、重度の精神疾患を抱えている方や、薬物依存症の方、強い不安や恐怖を持つ方は、催眠療法が適さない場合があります。また、催眠状態に入りにくい場合もあるため、事前に医師や専門家と相談し、自分の状態に合った治療法を選ぶことが重要です。信頼できる専門家と相談し、催眠療法が自分に合っているかどうかを確認することが大切です。


催眠療法の頻度は、個々の状況や治療の内容に応じて異なります。初期段階では、週に1回程度のセッションが推奨されることが一般的です。その後、症状が改善するにつれて、セッションの間隔を開けていきます。治療が進んでいくうちに、クライアントは自己改善を実感し、セッションの頻度を減らすことができるようになります。専門家と協力し、定期的に進行状況を確認することで、最適な治療計画を立てることができます。


催眠療法を行う専門家は、心理学や精神医学などの関連分野で適切な資格を持ち、催眠療法に関する専門的な訓練を受けた人です。資格には、臨床心理士、精神科医、または催眠療法士としての認定資格があります。これらの資格を持つ専門家は、クライアントの状態を正確に評価し、適切な治療を提供するための知識と技術を備えています。セラピストの経験や技術により、治療の効果が大きく異なるため、信頼できる専門家を選ぶことが非常に重要です。


催眠療法の効果は多岐にわたります。最もよく見られる効果としては、不安や恐怖症、習慣的な行動パターンの改善、慢性的な痛みの緩和、睡眠の質の向上などがあります。また、自己改善やモチベーションの向上、ストレスの軽減にも効果が期待できます。催眠療法は、過去の感情的な傷を癒すための強力な手段でもあり、クライアントが自分の潜在的な力に気づき、自己肯定感を高める手助けをします。個人差はありますが、継続的なセッションによって、心身の健康が改善されることが多く、長期的な効果が期待できます。

催眠療法を受けたい


催眠療法は、患者さんが持っている被暗示性を高めることでいつも以上にリラックス状態に導くことを活用して実施する心理療法のことを指しています。

催眠療法においては、暗示によりさまざまなイメージが活性化されることを応用することで心の問題や潜在的な課題に対処して自己解決を助けることができます。

催眠療法を体験することによって、心の自然治癒力と呼べる内的なエネルギーの回復が見込まれ、過去のトラウマを癒して、日々の生活において徐々に前向きな気持ちになって諸々の自己促進を図ることが期待できます。

当オフィスでは催眠療法を行っております。ご希望の方は以下の申し込みフォームからご連絡ください。

文献

この記事は以下の文献を参考にして執筆いたしました。