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認知行動療法を受けたい人のために:理論、やり方、効果、エビデンスなどを解説

認知行動療法を当オフィスで受けることができます。
認知行動療法(CBT、Cognitive Behavioral Therapy)について歴史、やり方、理論、効果、エビデンス、実施などについてクライエント向けに分かりやすく解説しています。認知行動療法とは認知(物のとらえ方、考え方)と行動を変化させることにより、様々な問題ごとや困難、症状を改善していく技法です。どちらかというとトレーニングに近いイメージです。
目次
1.認知行動療法とは
認知行動療法の歴史は今から約100年前までさかのぼることが出来ます。1900年代ぐらいにロシアのパブロフによる古典的条件付けの実験研究がありました。簡単に述べると、イヌに対してエサとベルを同時に提示する手続きを繰り返すと、イヌは次第にエサとベルを結びつけ、ベルが鳴るだけでエサがもらえると思い、唾液を出す、と言うのが古典的条件付けです。これは学習理論と呼ばれるようになり、後々の認知行動療法の基礎の一つとなっていきます。
図1 パブロフの古典的条件づけの実験の様子
1930年代には米国のスキナーがオペラント条件付けを発見しました。これは動物の偶発的な行動に対して報酬や罰を与えることにより、その偶発的な行動を多くしたり、減らしたりできる、というものです。俗に「アメとムチ」などと称されたりします。これらは行動分析・応用行動分析というジャンルを形成し、人間の問題行動や症状を消去したり、望ましい行動を増やしたりする心理学的な技法、そして認知行動療法へと発展していきました。
さらに1950年代にはバンデューラが社会的学習理論(モデリング)を提唱しました。シンプルにいうと、これは実際に経験しなくても、モデルを見ているだけでそれを学習していく、というものです。
古典的条件付け、オペラント条件付け、社会的学習の3つがまとめられていき、行動療法という広義の位置付けとなっていきました。
一方で、1970年代にはベックが認知療法を作りました。ベックは元々、精神分析をしていましたが、精神分析の理念や実践に合わなかったようでした。ベックは精神分析で扱うような根本問題ではなく、認知(ものの捉え方)という意識的・表層的な事柄を変化させることが症状の消去に役立つとしました。さらに、エリスの論理療法やマイケンバウムの自己教示訓練なども融合していきました。
図2 アーロン・ベックの写真
さて、行動療法と認知療法がここで出揃いました。1980年代ぐらいから、これら二つの療法には似通っているところが多く、二つをあわせて認知行動療法となっていきました。ちなみに欧米では行動認知療法と言われる場合も多いようです。認知を優先するか、行動を優先するかの価値観の違いもあるのかもしれません。日本では認知行動療法と言われることが多いです。人によっては認知行動療法的カウンセリングと称することもあるようです。
ただ、認知療法と行動療法、それぞれに原理主義者はおり、お互いはお互いと全く違うと主張し、相容れないものであると頑なに区別しようとする勢力もあるようです。蛇足ですが、日本には長らく日本認知療法学会と日本行動療法学会がありました。一時期はこの二つの学会を一つにまとめ、認知行動療法学会みたいな名称にしようとする動きもあったようですが、原理主義者であろう方々の抵抗もあったのでしょうか、そうした動きは無くなってしまったようです。
さらに蛇足ですが、日本行動療法学会は名称を変更し、「日本認知・行動療法学会」になりました。そして、日本認知療法学会は現在「日本認知療法・認知行動療法学会」に変更しようとしています。こうなると我々のような専門家でもよく分からなくなってきます。ましてやユーザーにとっては混乱でしかないように思えます。
歴史の本題に戻すと、これらの認知行動療法が現在は更に発展し、瞑想や東洋思想を取り入れた第三世代認知行動療法というのが確立されつつあります。このジャンルは比較的新しく、可能性は大きいのですが、まだまだ研究途上であり、エビデンスの蓄積も充分ではなさそうです。
他には人間のカウンセラーではなく、コンピュータプログラムを用いた認知行動療法も開発されたりしています。パソコンに向かって画面に出される認知行動療法の課題をこなすことで症状改善を行います。まさに未来的なセラピーですね。また、認知行動療法はその性質からオンラインカウンセリングとの相性が良いので、よく利用されています。
そのオンラインカウンセリングについての詳細は以下のページが参考になります。

オンラインカウンセリングを受けたい人のために:種類や技法、安全性などを解説
オンラインカウンセリングを当オフィスにおいて1回50分12,000円で受けることができます。そのオンラインカウンセリングについての概要、種類、技法、メリット、デメリット、エビデンスなどについてまとめています。
2.認知行動療法の具体的な技法
認知行動療法の歴史を見ても分かるとおり、認知行動療法は様々な理論や方法が織り重なり、組み合わされ、融合され、認知行動療法として一つにまとめられてきました。そのまとめられ方の軸は「効果的かどうか」の一点に集約されます。つまり、使えるなら入れるし、使えないなら入れない、という極めて臨床的な感覚です。ですので、背景理論や理念が違っていたとしても同居を許す、というものです。そして雑多な技法を組み合わせ、ターゲットとなる症状や問題に即して認知行動療法的技法をアレンジしていきます。
以下に認知行動療法で使われる技法を列挙します。
- 認知再構成法
- エクスポージャー法
- 曝露反応妨害法
- 行動活性化療法
- 社会技能訓練
- 問題解決療法
- リラクゼーション法
- アサーショントレーニング
- アンガーコントロール
- 系統的脱感作
- トークンエコノミー
- バイオフィードバック
- スキーマ療法
- 弁証法的行動療法
- 応用行動分析
- 不安管理訓練 等々
おそらく、ここで挙げた以外にも様々な認知行動療法的技法があるでしょうが、キリがないのでこの辺りにしておきます。
3.認知行動療法の基本モデル
先に認知行動療法は様々技法が同居しており、それぞれの技法間で背景理論が違う、ということを書きました。確かにそれはそのとおりです。しかし、それだと、統一感が持てなくなり、ひいてはアレンジがしにくくなります。ですので、とりあえずの基本モデルを想定し、その中でアセスメント(見立て)を行ったり、技法の適用を行ったりします。
認知行動療法の基本モデルのひとつは個人と環境の相互作用、ふたつは個人内の要素間の相互作用です。言葉にすると分かりにくいので、下に図示します。
図3 認知行動モデル
これを見て分かるとおり、全てのことは連動しています。つまり、どこか一つが変わると、それに伴って他のところも変わっていきます。
4.認知行動療法に臨むスタンス
難しい専門用語ですが、「協同的経験主義」というものがあります。ひらたく言うと、認知行動療法では治療者とクライエントは一緒に協同して認知行動療法を行っていくものですよ、ということです。よくあるのが、治療者にお任せという依存をセラピー関係に持ち込んできます。そうせざるをえない切実な苦痛があるのは理解できるのですが、そのような関係だけでは認知行動療法で効果を期待することはできなくなります。これは認知行動療法に限らず、心理療法一般に言えることなのですが。
コーチと選手という例え話がよく使われます。コーチは選手の代わりに走ったり、投げたり、競技に参加したりすることはありません。コーチは方法論を指導したり、やり方を教えたりし、選手はそれを実践し、その実践の中からまた方法論の修正や変更をしていきます。そして基本的にはその関係は対等のものです。上下関係ではありませんし、権力関係ではありません。
認知行動療法では、課題や宿題を持ち帰り、自宅や職場、学校でそれをこなさねばならないことが多いです。問題や症状はカウンセリング室の中で起こっているのではなく、日常生活の中で起こっています。なので、日常生活の中で認知行動療法に取り組んでいかねばならないのです。そのための宿題や課題となります。
そうした宿題や課題をすることが負担だったり、嫌だったりするのであれば、認知行動療法の適用は難しいでしょう。
5.認知行動療法のアセスメント(見立て)
認知行動療法のアセスメントには大きく分けて以下の二つがあります。
- 認知行動療法が適用できるかどうかのアセスメント
- 認知行動療法を適用していく上でどう介入していくのかのアセスメント
(1)認知行動療法が適用できるかどうかのアセスメント
認知行動療法は確かにエビデンスも比較的しっかりしており、かつ対象となるターゲットの幅も広いです。なので、安易に認知行動療法をすぐに施行してしまいがちになります。しかし、認知行動療法を施行することが禁忌の時もありますし、施行前にしておかねばならない治療(薬物療法など)や環境調整もあります。もしくは認知行動療法よりも効果が期待される技法もそれなりにあります。
例えば、今まさにDVや虐待の被害が継続しているのであれば、認知行動療法よりもまずはその安全を確保すること(環境調整)が必要なのは当たり前のことでしょう。過重労働などで心身ともに疲弊しているのであれば、認知行動療法よりも休職を含めた休養をまずは取ることが先決です。妄想・幻覚・パニック・うつ状態など、精神症状が極めて強く出ているのであれば、薬物療法などでまずは当面落ち着くようにしていくことを優先することもあります。
切迫したクライエントさんによって認知行動療法に魔法的で万能的な期待を持ち、すぐにでもしてほしいと要望されることがあります。しかし、より効果的なことをしていくためには多少立ち止まり、何が必要なのかを充分に検討していくことが大切です。それが長期的にはクライエントの支援になっていきます。
そして、認知行動療法の適用だろうとアセスメントすると、次はどういった認知行動療法をしていけばよいのかのアセスメントになります。
(2)認知行動療法を適用していく上でどう介入していくのかのアセスメント
認知行動療法の基本モデルがここで使用されます。機械的に当てはめるということではありませんが、基本モデルの図式に沿って、クライエントの状況や認知、行動、感情、身体がどうなっているのかを見て行きます。もちろん相互作用ということがあるので、その関連性についても見て行きます。それを細かくしていくと、どこかで悪循環が生じていることが多々あります。例えば、パニック障害のクライエントを例にすると、
(a)電車にのる【状況】
↓
(b)またパニックが起こるかもしれない【認知】
↓
(c)不安になる【感情】
↓
(d)電車から降りる【行動】
↓
(e)不安が下がる【感情】
↓
(f)電車を避けるようになる【行動】
↓
(g)電車に乗るとパニックになるだろう【認知】を助長し、(1)(2)に戻る
となります。その他にもうつ病のクライエントの自己卑下と落ち込みの悪循環に陥っているということもあります。自己卑下するから落ち込むし、落ち込むから更に自己卑下する、という悪循環ですね。
悪循環が分かれば、どこにどう切り込みをいれ、循環を断っていくのかを認知行動療法的に検討していけます。
6.認知行動療法の誤解
認知行動療法の一般的な理解で、考え方を変えると問題が解決する(症状がなくなる)というものがあります。これはほとんど誤解といっても言いぐらいだと私は考えています。人間は複雑ですし、様々な要因が絡んでいるので、そんなにシンプルに物事は進みません。それなのに、考え方を変えても問題は解決しなかったとか、そもそも考え方が変えれないんだ、として認知行動療法の存在価値までも否定してしまうのは非常に残念なことです。
認知や考え方にターゲットを絞った技法は認知再構成法と言われるものです。そして、これは認知や考え方を矯正する技法ではありません。正しい認知、歪んだ認知があるのではなく、非機能的であったり、非合理的な認知があるだけです。さらにはそうした認知のみにとらわれてしまっていることが問題となります。もっというとそうした非機能的で非合理的な認知もそれなりの存在意義があるのです。これまでの人生で生きていくためにそれに頼らざるを得ない切実な事情があったわけですから。このことから最近では認知の歪み、などという言葉はあまり使われなくなりました。
ですので、非機能的で非合理的な認知はそのままで良いので、その他の視点や捉え方を増やしていくという観点が必要になります。認知のレパートリーを豊富にしていくことが大切なのです。多角的な視点を持ち、広い視野を獲得できることが問題解決や症状の除去には必要なのです。
7.認知行動療法のやり方
さて、認知行動療法の基本モデルに従い、アセスメントができると、いよいよ実際に認知行動療法を実施していくこととなります。「認知行動療法の具体的な技法」で色々と挙げましたが、そのいずれかを、もしくは複数のものを実施していきます。
大雑把に分類すると、認知や考え方にターゲットをあてる認知的技法と、行動にターゲットをあてる行動的技法、さらに感情や身体に直接働きかけるリラクゼーション技法があります。もちろん、これらは連動しています。行動的技法を使うことで結果的に認知が変化していくこともありますし、認知的技法を使うことで行動が変化していくこともあります。というよりも、うまく進めばほとんどの場合がそうした連動により、うまくまわっていくようになります。
また、どういった認知行動療法の技法を使うにしろ、これまで避けてきた苦痛な体験や感情に向かい合っていくということが必要になってきます。特に認知行動療法の中のエクスポージャーや曝露反応妨害法では、不安や不快感を直視し、そこから逃げずに感じ続け、徐々に慣れていくことを行います。不潔恐怖の人が不潔と思うものを慣れるまで触り続けることや、電車恐怖の人が慣れるまで電車に乗り続けるなどです。こうしたことは極めて苦痛を伴うものですが、それでも治るためには必要なことです。そうしたことに取り組むだけの動機と覚悟は必要でしょう。逃げている限り、一生逃げ続けねばならなくなります。
8.効果測定と技法の建て直し
認知行動療法的なアセスメントに基づき、認知行動療法の技法を決定し、認知行動療法を実施していきます。そうしたことを充分な回数をこなした上で、その効果を判定していきます。よくあるのは、認知行動療法を実施する前後に心理テストを行い、その得点の変動によって判定するというものです。もしくは、クライエントに改善してきているという実感や体感も重要な指標でしょう。状況の変化や適応度の変化も指標になります。
そうしたことが改善傾向を示しているのであれば、そのアセスメントや認知行動療法の技法の選択、技法の実施がうまく行っているという証拠となります。しかし、改善傾向がなかったり、充分ではなかったりする場合には、一旦立ち止まらねばなりません。認知行動療法の技法の実施が充分ではないのか、技法の選択を誤っていたのか、そもそもアセスメントが間違っていたのか、などを一緒に検討します。
そして、再検討した結果に応じて、認知行動療法の仕切り直しを行います。そして、実施後にまた効果の測定を行います。こうした実施・効果測定・仕切りなおしの連綿とした連なりを経て、治療の終わりまで進めていきます。
9.終わりに
認知行動療法は短期集中型であるといわれています。短ければ数ヶ月・数セッションで終わります。もちろん問題の所在や病歴の長さとも関連するので全てがそうであるとはいえませんが。
また、認知行動療法はエビデンスがしっかりしており、対象とターゲットと技法の選択さえ間違えなければ比較的効果があらわれやすいです。しかし、それは全ての人を100%の確率で治癒させれる、というものではありません。当たり前ですが、認知行動療法も魔法の万能薬ではありません。過度に期待しすぎると、失望も大きくなりますので、ほどほどの希望を持って認知行動療法に臨まれると良いでしょう。
さらに認知行動療法をするカウンセラーであってもスーパーヴィジョンを受けます。さらには、やはりカウンセラー自身の問題が出てくる場合もあるので教育分析や個人分析を受ける人もいます。外国などではそうした例は多いようです。
こうした認知行動療法を受けてみたいという方は当オフィスにお申し込みください。