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来談者中心療法

心の触れ合いを通して

「カール・ロジャーズ」と言う人の名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。それは、心理療法家で有名な偉人の名前をたずねると必ずといっても良いくらいカール・ロジャーズの名前が出てきます。

現在もなお、語り継がれているカール・ロジャーズのカウンセリングである来談者中心療法についてご紹介いたします。

1.来談者中心療法とは

来談者中心療法は、カール・ロジャーズが提唱した技法でクライエント中心療法とも呼ばれています。

ロジャーズは「援助する人が誠実な態度で傾聴し、クライエントと対話ができる関係性のなかでは、どのようなクライエントも成長していく可能性がある」と定義しています。また、来談者中心療法のなかでクライエントが話す体験のなかにこそ多くのことが隠されており、そのことを知っているのはクライエントのみであると考え、援助者の態度が重要視されています。日本では、1940年代後半に知られるようになってからカウンセリングの主流となりました。

2.来談者中心療法の3つの条件

来談者中心療法においてカウンセラーの態度や姿勢、心の状態は非常に重要とされています。その3つをここでは解説します。

(1)自己一致・純粋性

カウンセラーがカウンセリングで出会う人々は、不一致の状態にあると考えられています。不一致とは、自分自身とその他の人々との間で起こる体験のズレであるため、心理的に混乱が起こりやすい状態になっているということです。また、人間が抱きやすい不安とはロジャーズによると理想の自己と現実の自己との間に生まれる不一致が意識的に象徴化されつつある状態のこととされています。

不一致の状態では、自己実現が難しく自分らしさを獲得しにくくなってしまいます。その不一致のなかで苦しむクライエントは、象徴化されたものを正確に自覚できることによって理想の自己と現実の体験が一致の状態になることが目標とされます

カウンセリングのなかで、カウンセラーはクライエントに対して現実の自己を受け入れられるように接していく必要があります。そのためには、カウンセラー自身も自己一致をしていることが重要で、クライエントに対してカウンセラーの言葉や態度が一致していることを目指す必要があります。カウンセラーは、カウンセリング場面で自然と湧き上がるさまざまな感情に気づき、それらを否定せず十分に受け入れることが自己一致されている状態であり続ける必要があります。

(2)共感的理解

クライエントが体験してきたことを感情移入的に理解する姿勢を大切にし、さらにこの感覚を正確に理解することが重要で、カウンセリング内でカウンセラーは自分があたかもその人であるような感覚を得るように努めることを努力する必要があるという考え方です。また、その際に浮かび上がった感情や体験の意味を共有することが大切ですが、同情や心配という感覚とは本質が違ってきます。

カウンセラーはクライエントと違う人間であるという前提を忘れず、カウンセラーの価値観を押し付けずにクライエントを理解する立場です。このように相手の立場から感じることが必要で、共感的に接してもらうことでクライエントの安心感につながりセラピーは進められていくことが重要です。

(3)無条件の肯定的な関心

カウンセリング内で話されたクライエントの体験や体験に対する感情に対して、カウンセラー自身の価値観やそれによる評価することはせず、肯定的に受け入れて受容していく姿勢が重要です。

その姿勢を続けることによって、クライエントはカウンセリング内で安心して怒りや恐怖など、普段は見せることができない感情を吐き出すことがあります。このような、ネガティブな感情が表出されても巻き込まれることはなく。カウンセラーは治療上に必要な感情として受け入れる姿勢が必要になります。

3.来談者中心療法のやり方

カウンセリング内でクライエントが自分自身について語り始められるために必要なカウンセラーの大切な技法があります。それらを5つに分けて解説します。

(1)感情の受容

クライエントの話を聞いている際に、「なるほど」「そうですか」などの応答をおこなうことでクライエントへ安心感を与え、クライエントが語りやすい雰囲気をつくることができます。

(2)感情の反映

クライエントが体験を語る上で表出された感情をカウンセラーが受け止め、言葉にして伝え返してあげることです。伝え返すことで、クライエントは自身の抱く感情を理解してくれたと感じ安心感を抱いて更に語ることができます。

(3)繰り返し

クライエントが語った内容を、そのままの言葉で伝え返すことです。クライエントとカウンセラー間で理解のズレがないかを確認することができ、クライエントの語る内容を正確に理解することができていると示すことができます。

(4)フィードバック

語られた内容やクライエントの言動を、カウンセラーは客観的な視点からどう見えているかを伝えることです。クライエントは自分の言動について自覚しやすく必要な場合は修正することができます。フィードバックでは、カウンセラーの考えや推測を話すのではなく、目の前にある事実に向けて伝えていく必要があります。

(5)自己開示

カウンセラー自身の考えや感じたことを、クライエントへ伝えることです。カウンセリング内では信頼関係が重要で、クライエントもカウンセラーがどんな人間なのか知りたい気持ちが自然とわいてきます。そのため、カウンセラーの考えを伝えるとクライエントも安心して話しやすくなり、さらに自分自身の話をしやすくなります。

しかし、安易に自己開示をするのではなくクライエントから語られた内容についての考えを適切に、タイミングを考えておこなう必要があり、その効果についてもカウンセラーは知っておく必要があります。

(6)感情の明瞭化

クライエントが語った漠然とした感情や遠回しの表現について、カウンセラーは感情について明確にして伝え返すことです。それをすることによって、クライエントの語りをさらに促進する効果、クライエント自身の内省を深められる効果、重要なことはクライエントが語っている内容についてカウンセラーの理解が正確にできているのかを確認するためです。

4.来談者中心療法のメリットと欠点

ここでは来談者中心療法のメリットとデメリットについて解説します。

(1)メリットや効果

来談者中心療法では、カウンセラーとクライエントが会話を通してカウンセリングを進めていきます。

カウンセラーが傾聴を続けていくと互いに信頼関係が徐々に構築されるようになり、会話を続けていくことで自分自身の感情について気づきやすくなります。安心できるカウンセラーとは、自分の感情に気づいたときに否定することなく受容することができるようになってきます。そのため、不一致状態から一致状態へと移行していきクライエントの主訴が解決していけます。

(2)デメリットや欠点

その反面、言葉で話さなければならないことが負担と感じる人には向いていないかもしれません。また、カウンセリングに対して抵抗が強いクライエントには、話すことを強制的に求められていると感じて苦痛を覚える可能性があります

さらに、内省して話すことが元来難しい発達障害のクライエントや年齢の低いクライエントには難しいため来談者中心療法は向いていません。また、クライエントが求める答えを具体的に提示することができないこともデメリットの一つです。そのため、自分の考えについてアドバイスを求められることには不向きであるといえます。

5.まとめ

このように、来談者中心療法はカウンセラーの姿勢や応答の仕方が大切であり、この技法は多くの心理療法家にとっての基本につながっています。さらに、クライエントの成長を信じて向き合う姿勢はロジャーズの人間観に基づいていることがわかります。来談者中心療法は現在も発展しており、エンカウンターグループとして実践され研究されています。

当オフィスではこのようなカウンセリングを行っておりますので、ご希望の方は以下の申し込みフォームからお申し込みください。

文献

この記事は以下の文献を参考にして執筆いたしました。