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エクスポージャー療法

飛び込む勇気

本ページでは、エクスポージャー療法について、その歴史から特徴、方法まで詳しく解説しています。エクスポージャー療法は特に、不安、恐怖症、PTSDなどに効果があるとされていますので、特にそのような症状で悩まれておられる方のお役に立つことができれば幸いです。

1.エクスポージャー療法とは

布団に入る女性エクスポージャー療法とは行動療法の技法で、曝露療法ともいわれています。その名の通り、あえて不安や恐怖を感じる場面や対象に曝露させることによって、結果的に不安や恐怖を減少させることを目的としたカウンセリングの技法の一つです。曝露というと、さらされるという意味で使われるので、少し過激な言葉にも聴こえるかもしれませんが、無理矢理怖いことをさせるわけではなく、心理的な安全性を伴ってセッションを行っていきます。

エクスポージャー療法は、行動療法の先駆者といわれる精神科医ウォルピが考案した系統的脱感作法が元になっています。ウォルピは軍医として戦争神経症患者と向き合い、その経験から系統的脱感作法を編み出したといわれており、その成り立ちからも恐怖やストレス、PTSDに効果がある治療法であるということがうかがえます。系統的脱感作法についての詳細は後に記しています。

2.エクスポージャー療法の対象となる疾患・症状

窓の外を見ている白い女性ここではエクスポージャー療法の対象となる精神疾患や精神症状、精神障害について簡単に取り上げます。

(1)不安症

不安症の中には、社交不安障害、パニック障害、恐怖症(広場恐怖、対人恐怖、先端恐怖、高所恐怖、醜形恐怖など)があります。不安症は、心理的な不安、恐怖だけでなく、めまい、吐き気、腹痛や動悸などの身体的な症状も伴うことが多く、そういった症状にもエクスポージャー療法は効果的です。

(2)強迫症

「こうしなければならない」「鍵が閉まっていないのではないか」「汚いのではないか」などと過剰な強迫観念をもち、それによって特定の行為を繰り返してしまう状態を指します。「○○しなければおちつかない」といった強迫観念を鎮めるために何度も繰り返している行動をあえて我慢してもらい、強迫観念を抱く場面でも落ち着いていられるようにする曝露反応妨害法が効果的とされています。

(3)PTSD

重傷を負うなどの事故や虐待、性的暴力、いじめなどの外傷体験がきっかけとなり、フラッシュバックや回避行動、過覚醒(不眠、警戒心)などが症状としてあらわれている状態を指します。PTSDのクライエントに、当時の状況をむやみに聴くことはカウンセリングにおいて危険視されることもありますが、エクスポージャー療法は当時の記憶を掘り起こすのではなく、現在の恐怖心に焦点を当てて徐々に慣れていけるようにするというアプローチなので安全性が高いといわれています。持続性エクスポージャー療法という名称で確立されています。

3.エクスポージャー療法の効果

抱き合う男女行動療法の技法であり、不安や恐怖という得点化しやすいものを扱っているという特徴があるのでエクスポージャー療法の効果研究は多くされています。特に先ほど挙げたような症状・疾患には効果的な治療法として認められています。

ただし、それはエクスポージャー療法を正しく専門性をもって安全におこなうことを前提としているので、そうでない場合はエクスポージャー療法が危険なものになってしまう場合もあります。実際「エクスポージャー療法」と検索をかけると「危険」「リスク」という言葉が検索候補にあがってくることがあります。それだけをみると「エクスポージャー療法は危ないものなのか」「怖いことさせられるのか」と思われるかもしれません。

不安、恐怖症の方にとっては、「なぜわざわざ自分から恐怖にさらされる治療を受けに行かなければならないんだ」という感覚になることは自然なこころの動きだと思います。ただ、専門性をもったカウンセラーがしっかりと付き添った状態で共に恐怖に向き合うという、エクスポージャー療法は決して「危険」なものではありません

4.エクスポージャー療法の使い方

ベランダでうなだれる女性どのように不安や恐怖に曝露するかによってエクスポージャー療法は主に系統的脱感作法とフラッティングに分類されます。

(1)系統的脱感作法(systematic desensitization)

系統的脱感作法は徐々に不安や恐怖が小さいものから曝露していくというものです。原理としては、「不安」と「リラックス」は共に感じることができないという仕組みを利用しています。人間にとって、ある瞬間、怖いと思いながらも同時に安らかな気持ちでいるということは不可能です。

まず、怖いものや場面について不安階層表を作成するところがスタートです。不安階層表とは、不安を感じる場面ごとに100点満点で不安の強さ得点をつけ順に並べたものです。この不安階層表は、カウンセラーが作成するのではなく、クライエント自身の感覚で得点を振り分けてもらいます。「自分が何にどれくらい恐怖を感じているかを見える化すること」自体が治療的に働くこともあります。

ここでは、ひとつの例として対人恐怖の方のエクスポージャー療法の例を出したいと思います。まず、対人恐怖症といっても、どのような状況にどれだけの恐怖を感じているかはひとそれぞれなので、そこをクライエントに聴いていきます。その結果、以下のような表ができあがったとします。

  • 100点:営業先で話をする
  • 80点:上司のいる場面で企画を発表をする
  • 70点:会議で意見を求められたときに発言をする
  • 30点:会社で朝あいさつをする
  • 50点:同じ部署の人と事務的な会話をする
  • 10点:仲のいい人と1対1で話す
  • 3点:外出

系統的脱感作法では得点の低いものから実施し、不安を感じたところでリラクゼーションを行い、「本来なら不安を感じる場面でリラックスしている」という状況をつくりだします。ここでいうリラクゼーションとは、呼吸法であったり筋弛緩法(肩に力をいれてストンと落とす方法)、自律訓練法であることが多いです。これを繰り返すなかで、不安得点の高い場面でも強い不安を感じずにいられるようになることを目指していきます

(2)フラッティング

不安、恐怖を感じる場面に直面してもらうという点は系統的脱感作法と共通していますが、はじめから最大の恐怖から向き合うという点で異なっています。先ほどの対人恐怖症の人の場合、「3点:外出する」ところから始める方法が系統的脱感作法で、「100点:営業先で話をする」ところから始める方法がフラッティングといえます。

フラッティングの場合、失敗体験が生じやすいというデメリットがありますが、系統的脱感作法で徐々に怖い場面が待っていると考える方が怖いと思う人にとってはフラッティングの方が向いている場合もあります。

(3)使用上の注意点と補足

系統的脱感作法でも、フラッティングを用いる場合でも大切なことは、まずは「リラクゼーション法」をマスターするということです。不安を感じたときにそれを自分で鎮めることができるようになるには、ある程度の練習が必要です。その練習を積み、どのような場面でもリラクゼーションが行えるという自信をもった後に、不安に向き合っていきます。この練習をおろそかにすると、ただ怖い場面にさらされるだけの体験となり、より不安、恐怖症を進行させてしまうことになります。

また、系統的脱感作法には、イメージで恐怖場面を想像してリラクゼーションを行うパターンと、実際の場面で行う場合があります。先ほど例でいうと「100点:営業先で話をする」という練習しにくいシチュエーションの場合は、イメージによる系統的脱感作法でカバーすることができます。

  1. 不安階層表の作成
  2. リラクゼーション法の習得
  3. イメージによる系統的脱感作法
  4. 現実場面での系統的脱感作法

上記のような順番でエクスポージャー療法を行うことが最も安全で効果を実感しやすいでしょう

5.まとめ

カウンセリングをする男女今回は、エクスポージャー療法について、定義や効果、方法について紹介しました。エクスポージャー療法は不安、恐怖症に焦点の当てられた治療法となっていますが、特定の疾患に限らず日々の不安軽減にも援用できるカウンセリング、リラクゼーション法でもあります。カウンセリングを受ける際のひとつの選択肢として考えていただければ幸いです。

(株)心理オフィスKではエクスポージャー療法をふくむ認知行動療法も行っています。希望者は下記の申し込みフォームからご連絡ください。

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