私達は日常生活の中で様々なストレスにさらされ、それに適応しながら過ごしています。しかし、強いストレスに長期間さらされると適応できなくなり、心理的・身体的に様々な障害が現れ、ひどい場合はうつ病を発症して休職や退職に追い込まれるケースもあります。
ここではそのストレスに対してどのようなことができるのかを解説していきます。
目次
1.ストレスマネジメントとは
ストレスの原因となる刺激を「ストレッサー」と呼び、人間関係や環境の変化、災害や事故などのイベントなどが含まれます。ストレッサーに対し、心理面、身体面、行動面の反応として現れる生体の反応を「ストレス反応」と呼び、不安やイライラ、緊張などの心理的反応や、動悸、頭痛、腹痛など身体的な反応など様々な変化が現れます。ストレス反応自体は私達の体に備わった適応手段ですが、ストレッサーによる刺激が長期間に渡ったり、程度が強かったりすると、望ましくないストレス反応が生じ、心理的・身体的に様々な障害が現れ、うつ病や神経症、心身症の発症につながっていきます。
そこで、ストレスにうまく対処し、適応するために必要な考え方が「ストレスマネジメント」です。ストレスマネジメントは、ストレスに対する対処法である「ストレスコーピング」と、ストレスを評価し管理していく「セルフモニタリング」とに大きく分けて考えることが出来ます。
ストレスコーピングとは、ストレスの原因となるストレッサーにうまく対処することを指します。これにはいくつかの方法があり、ストレッサーをなくしたり軽くしたりしようとする方法や、本人のストレッサーに立ち向かう力を強めたり、変容したりする方法があります。
セルフモニタリングは、自分の行動がどのような頻度で、そのような状況で生じているのかを観察・記録・評価することによって自分の振る舞いに対する気付きを深める方法です。セルフモニタリングにより、個人に応じたストレスコーピングの方法を見つけることができるようになります。
ちなみにストレスマネジメントは認知行動療法の技法の一つです。認知行動療法については以下のページをご覧ください。
2.ストレスマネジメントの効果
ストレスマネジメントを行うことの大きな効果は、自分自身のストレスの状態に気づくようになることです。望ましくないストレス反応を受け続けていると、うつ病を始めとするメンタルヘルスの不調に発展して仕事が続けられなくなったり、日常生活にも支障が出てくる可能性があります。自分のストレス状態を早い段階で把握できれば、このようなリスクを事前に防ぐことができるでしょう。
また、家庭や職場においては、ストレスマネジメントにより心身の状態が安定することにより、家事や仕事のパフォーマンスが安定したり、家族、職場の同僚たちに穏やかに接することができるようになるため、ハラスメントが減って家庭や職場の環境が改善することも期待できます。
3.ストレスマネジメントの方法
前述したように、「ストレスマネジメント」には大きく分けて「ストレスコーピング」と「ストレスマネジメント」の2つの要素がありますが、それぞれの具体的な方法について解説していきます。
(1)ストレスコーピング
ストレスコーピングの方法にはいくつかの種類があり、主なものに問題焦点コーピングや、情動焦点コーピングがあります。
- 問題焦点コーピングは、ストレッサーそのものに働きかけて解決を図ろうとするもので、例えば対人関係がストレッサーである場合、相手の人に働きかけて嫌な行動をやめてもらうようにすることが当てはまります。
- 情動焦点コーピングは、ストレッサーに対する考え方や感じ方を本人が変えようとするもので、仕事で落ち込むことが多い場合に仕事のことをあまり考えないようにしてポジティブに過ごすようなやり方です。
ストレスコーピングの詳細は以下のページをご覧ください。
(2)セルフモニタリング
セルフモニタリングでは、「どのようなストレッサーに対してどの程度のストレス反応が生じているのか」、「そこでどのようなストレスコーピングの方法を用いたのか」、「それによりどの程度ストレス反応が軽くなったのか」など、を具体的に記録していきます。
その記録を支援者とともに整理し、評価することによって自らのコーピングに対する気付きを深めることができ、個人個人に応じた検討ができるようになります。最近ではセルフモニタリングの記録を行うためのスマートフォン用のアプリも開発されており、利便性も向上しています。
4.ストレスマネジメントの教育や研修
ストレスマネジメントは、職場や教育でのパフォーマンス向上やコミュニケーションの円滑化による環境の改善といった様々な効果をもたらすことが期待できるため、最近では企業の社内研修や学校の授業でも採用されています。
企業ではストレスマネジメントにより、休職や退職を防いだり、仕事のパフォーマンスの向上やハラスメントが起こりにくい職場環境を作るなど効果が期待できます。以下に企業で実施可能な具体的なストレスマネジメント方法を説明します。
(1)従業員自身のストレスマネジメントスキルを高める
社内研修により、ストレスコーピングやセルフモニタリングの方法について教育を行い、従業員のストレスマネジメントスキルを高めることが大切です。
また、リフレッシュ休暇の利用などの福利厚生によってストレスマネジメントを行いやすい環境を企業側が提供したりすることも効果的です。
(2)従業員のストレス状態を把握する(ストレスチェック)
従業員のストレスチェックを行い、個人のストレスがどのような状態にあるのかを調べることも重要です。
ストレスチェックはストレスに関する質問表を記入することで行われ、従業員が個人のストレスレベルを把握し適切にストレスに対処するよう促すことができます。従業員が50人以上いる事業所では年に一回実施することが義務付けられています。
(3)管理職によるストレスマネジメントのサポート
管理職は部下のストレス状態にいち早く気付いて対応することで、早期発見・ケアにつなげることができます。
定期的にコミュニケーションを取って部下のストレスによる変化に早く気付いたり、部下のストレスコーピングをサポートするような環境づくりを行うことが重要です。
5.認知行動療法についてのトピック
6.まとめ
ストレスにうまく対処して、適応するために必要な考え方であるストレスマネジメントは、ストレスによる個人のメンタルヘルスの不調を未然に防ぎ、仕事のパフォーマンスを向上させて、職場環境を改善させる効果が期待できます。
ストレスマネジメントは、ストレスの原因となるストレッサーに対処するための方法であるストレスコーピングと、ストレスに対する自分自身の行動を評価するセルフモニタリングに大きく分けることができ、最近では企業や学校でも積極的に取り入れられ実践されています。
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文献
この記事は以下の文献を参考にして執筆いたしました。