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発達性トラウマ障害のカウンセリング・相談

傷つきは癒されるのか

今回取り上げるのは、最近よく耳にするようになった発達性トラウマ障害というものです。この発達性トラウマ障害は一般的には「小さいころから様々なトラウマを抱えてきた人」を指して用いられることが多いような印象ですが、実際のところどのような状態を指し、どのように診断、治療されていくものなのか解説していきたいと思います。

1.発達性トラウマ障害とは

ヴァン・デア・コーク

発達性トラウマ障害とは、子ども期に繰り返される慢性的なストレスが原因で発症する精神障害です。虐待や家庭内暴力、性的搾取などのトラウマ体験が原因となり、注意欠陥・多動性障害(ADHD)や自閉症スペクトラム障害(ASD)などの発達障害を併発することがあります。症状には、過度の不安や恐怖、感情の不安定さ、社会的交流に対する障害などがあります。早期の診断と治療が大切です。

トラウマといえば、PTSDという疾患があります。フラッシュバックや過覚醒、回避行動などを特徴としており、多くの場合、PTSDには原因となる出来事が明確にあるとされてきました(自然災害や戦争、事故など)。これは現在では単純性PTSDと呼ばれています。原因が1個だからです。

しかし、次第に「PTSDはそんな単純なものではないのではないか」と考えられるようになりました。PTSD症状を呈す人の中には、「あの時のあの体験」というよりは、「ずっと虐待を受けていたし、いろんなことをされた」などと数々の体験からPTSDを発症している人も存在したからです。そういったケースは複雑性PTSDと呼ばれるようになりました。

発達性トラウマ障害はこの複雑性PTSDととても近い概念です。なぜなら、同じように「幼少期から続くトラウマ体験の積み重ね」が中核にあるとされているからです。では、なぜ複雑性PTSDという言葉があるのにも関わらず、新しい発達性トラウマ障害というものが提唱されたのでしょうか。

それは、幼少期から長く劣悪な環境に晒された人には複雑性PTSDの症状に加えて、対人関係や情緒面、行動面の問題も多くみられたからです。PTSDの症状に愛着障害の影響が付随しているような状態といえるでしょう。逆に、愛着障害の状態が癒えることなく続いた結果PTSDの症状をも呈し始めたような状態ともいえるかもしれません。このような人たちを発達性トラウマ障害と言います

ヴァン・デア・コークは、このような人がしっかりと治療を受けられるようにと、発達性トラウマ障害という概念を提唱したとされています。

トラウマ、PTSD、複雑性PTSD、愛着障害については以下のページをご覧ください。

2.発達性トラウマ障害の特徴・症状

机で泣いている女性発達性トラウマ障害の特徴と症状には以下のようなものがあります。

  • 過去のトラウマ体験を思い出すと身体的、心理的にネガティブな影響がでる
  • 自己嫌悪が強くある
  • 傷つきやすい
  • 対人関係が不安定
  • 親に不信感がある
  • 誰かの助けを得ようとしない
  • 人にうまく頼れない
  • 悲観的
  • 自分のせいにしてしまう

ここから分かる通り、これは発達性トラウマ障害特有の症状というよりは、PTSDの症状と愛着障害の人の特徴をまとめたような項目といえます。あくまで発達性トラウマ障害というものは包括的な概念であり、こうであれば発達性トラウマ障害だといえる明確な症状は未だ確立していません。

3.発達性トラウマ障害の原因

ふさぎこむ母親と寝転ぶ子どもまず、養育者などからの継続的な虐待が原因として考えられます。具体的には、身体的な暴力や性的な暴行、精神的に追い詰める言動などです。また、虐待とまでいかなくとも、マルトリートメント(不適切な養育)が原因となることもあるでしょう。これはトラウマの原因というよりは、どちらかというと愛着障害の原因となります。

愛着に問題を抱えると、人との関係に摩擦が生じやすくなったり、精神的に不安定になったりします。つまり、余計に傷つきやすい性質になってしまうということです。そういった間にも虐待がおこなわれ続けると、その傷つきやすくなった心に更に追い打ちをかける形となります。より不安定になり、最終的にはPTSDの症状を呈してしまいます。

ここで挙げた児童虐待については以下のページに詳しく書いています。

4.発達性トラウマ障害の診断

医者と相談発達性トラウマ障害についての診断について述べていきます。

(1)発達性トラウマ障害は診断名ではない

注意しなければならないのは、発達性トラウマ障害という診断名は存在しないという点です。今のところ、発達性トラウマ障害という言葉は、ある状態を指した概念にすぎません。それゆえ、「自分は発達性トラウマ障害なのではないか」と病院に行ったとしても、そういった診断をもらうことはできません

最近、このように診断名でないものが診断名として流布してしまっているケースが増えています。アダルトチルドレンや共依存、HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)などよく耳にされると思いますが、これらはすべて存在しない診断名です。同じく、発達性トラウマ障害も診断名ではありません。この点を抑えておかなければ、問題の本質がわからなくなり、ちゃんとした治療に結び付かない可能性がありますので注意しましょう。

(2)発達性トラウマ障害の診断方法

発達性トラウマ障害の特徴に当てはまる人が精神科に訪れた場合、その人はどう診断されるのでしょうか。考えられるケースを少し挙げたいと思います。

先にも述べたように、発達性トラウマ障害はPTSDと愛着の問題などをまとめたような包括的な概念です。ですので、もちろんPTSDの症状が強くあれば、PTSDと診断されることになりますし、社会生活でストレス状況に対処できず抑うつ的になっていたりすれば適応障害やうつ病などと診断されるでしょう。また他に考えられるケースとしては、虐待を受けてきた人の中には現実から自分を切り離し、記憶を失ったり、現実を生きているという感覚を失ったりしている人もおられます。そういったケースでは解離性障害という診断になるかもしれません。

このように、精神科の診断では、原因よりも現在の具体的な症状に基づいて診断される傾向にあるので、発達性トラウマ障害の特徴があったとしても、診断はその人の症状によりそれぞれ異なります

5.発達性トラウマ障害の治療・カウンセリング

笑っている二人の女性診断が多種多様であれば治療もその人次第ということになります。その人の症状や診断に沿った薬物治療やカウンセリングなどが行われることになるでしょう。ここで大切なのは、治療には「現在の症状の治療」と「過去のトラウマの治療」の2つのアプローチがあるという点です。

(1)現在の症状の治療

病院やカウンセリングルームを訪れた際、最初は前者の「現在の症状」からアプローチされることが多いと思われます。例えば、うつ状態にある人には抗うつ薬が処方されるでしょうし、夜寝られない人には睡眠薬が処方されるでしょう。

フラッシュバックがあるのにも関わらず、いきなり原因となった過去を振り返るのはとてもつらいことですし、PTSDを悪化させることにもなりかねません。まずは現在が落ち着いたものとなるように、薬物療法やカウンセリングが導入されます

(2)過去のトラウマの治療

トラウマ治療には、トラウマ治療に特化した療法があり、そのひとつにEMDRというものがあります

これは、過去の体験を思い浮かべながら治療者の指を目で追い、眼球を動かすというものです。「そんなことで治るのか」と思われる人も多いですが、WHOが効果を認めている治療法となっています。発達性トラウマ障害やPTSDの症状に困っておられる方は、このEMDRを専門としている医師やカウンセラーを探されるのも一つだと思います。

EMDRの詳細については以下のページをご覧ください。

この他に、持続的暴露療法やトラウマに焦点を当てた認知行動療法などもあります。

6.(株)心理オフィスKで発達性トラウマ障害のカウンセリングを受ける

カウンセリングをする男女

今回は発達性トラウマ障害というものを見てきました。以前は、トラウマというと、死に瀕するような体験を指して述べられていましたが、最近は、小さな積み重ねもトラウマとなりうるという考えが一般的になってきています。過去のつらい体験と向き合うことは簡単なことではありません。傷つきを抱えた方が、さらなる傷つきを増やしてしまわないよう、大切に体験を共有したいと考えています

(株)心理オフィスKではこうした発達性トラウマ障害に対する相談やカウンセリングを行っています。カウンセリングを受けてみたいという方は以下のボタンからお申し込み・お問い合せください。


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