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ワークスルー

元々は精神分析療法の創始者であるフロイト(1914/鈴木,2014)が導入した概念です。フロイトは、蓋をされ、忘れられていた記憶が困っている問題や症状に関連していると考えました。そして、精神分析を通じて、被分析者が蓋の奥にあるものを思い起こすことを目指しました。

しかし、精神分析では、催眠下で蓋をされた記憶を思い起こすようには事が運ばず、意識化していく作業に反する力が働きます。また、このような力がある程度弱まっても同じ問題やパターンが繰り返されたりします。被分析者は、このような体験をしながらも、蓋をしていた意味ある内的なものを意識化する作業をやり通していくことになります。このやり通していく作業を、フロイトはワークスルーと言ったようです。なお、「言ったようです」と少々曖昧に述べるのは、フロイトの著作を通してワークスルーの定義は曖昧なままであるからです(Gabbard,G.O.,2010/狩野他,2012)。

セラピーの中で、被分析者・分析者とも、課題や繰り返すパターンを理解するようになっても、なかなかそれらを手放せず繰り返す期間が大抵あります。繰り返しながらも、どこかで洞察や変化に至る可能性があるのですが、ワークスルーは、それまでの取り組み、あるいは、洞察や変化に繋がる取り組みをさしています。そして、それはとても重要な作業です。

<引用文献>

Freud,S.(1914) ‘Weitere Ratschläge zur Technik der Psychoanalyse: Ⅱ. Erinnem, Wiederholen und Durcharbeiten’ G.W., 10, 126. [‘Remembering, Repeating and Working Through(Further Recommendations on the Technique of Psycho Analysis,Ⅱ)’, S.E., 12, 147.] / 鈴木菜実子(2014) ‘想起すること, 反復すること, ワークスルーすること(精神分析技法に関するさらなる勧めⅡ)’. フロイト技法論文集. 岩崎学術出版社, 63-74.

Gabbard,G.O.(2010) Long-term Psychodynamic Psychotherapy: A Basic Text, Second Edition. American Psychiatric Publishing, Washington D.C. and London UK. / 狩野力八郎(監訳)・池田暁史(訳)(2012) 精神力動的精神療法―基本テキスト―. 岩崎学術出版社.

<参考文献>

馬場禮子(1999) 精神分析的心理療法の実践―クライエントに出会う前に―. 岩崎学術出版社.

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