ナルシシズムとは:その原因と特徴と脱却する方法
ナルシシズム(自己愛)とは、「自分の価値を他人に認められたい」という誰しもがもつ生理的な感情の極端なもので、しばしば自分や他人を苦しめ、人間関係のトラブルに発展することが少なくありません。何が原因や社会で具体的にどのようなことが問題なのか、克服するにはどうすればよいのかなどまとめました。
格好をつけずに、自分のありのままの姿で荒野をいきぬける行動力と精神力を鍛えるヒントになり、少しでも楽にいきれる標となるべく拝読いただけたらと思います。
目次
1.ナルシシズムとは
ナルシシズムとは、承認欲求を満たし自己肯定感を保つために、自己破壊的なふるまいを強迫的にとってしまうことです。ナルシシズムのいきすぎで行動に歪みが生じ、結果として他者とのトラブルを招き「自己陶酔」ともよばれますが、そのことで自分も苦しんでしまっていることが多いです。
ナルシシズムは適度にある方が、自信に繋がったり、チャレンジ精神を持ったり、頑張ろうとできたりすることができる大切なものです。しかし、一方でそれが過度になりすぎると、傲慢で、陶酔的で、人から嫌がられてしまうような性格になってしまいます。
このナルシシズムは元々は精神分析からきた用語です。その精神分析については以下をご覧ください。
2.ナルシシズムの分類と特徴
ナルシシズムに繋がり悪化しやすい、思考と行動パターンを6つ分類しました。それらのメンタリティーは、共通した特徴として過剰なコンプレックスと常に破壊的で自分に自信が持てない故、誇大な自己イメージで覆いたいという、不釣り合いな感覚を持ち合わせることです。
これらの人は、不安で常に誉めてもらうことを必要としています。
分類 | 説明 |
---|---|
恥知らず | 恥の処理の健全な方法をよく知らないので小手先でごまかそうとします。 |
自己陶酔 | 自分は完璧だと思い込ませ、それがいつしか無意識にそう思うようになる。 |
傲慢 | 他人の衰退や墜落などをみて、自己評価を相対的に高める。 |
権利意識 | 自分はあくまで特別に承認されるべきであるという偏屈な価値観をもつこと。 |
搾取 | 他人のものを奪ってまで自己の目的を達成しようとする不健全な精神をもつこと。 |
自と他の境界の不明瞭 | 己のニーズを満たさない他人を無価値なものと断定する。自分にネガティブな意見をいう人を遠ざけたり排除しようとしたりする発想やふるまいをする。 |
3.ナルシシズムによって生じる問題
ナルシシズムと攻撃性が凄惨な事件に繋がり、社会問題になっています。自己肯定感が一般的に低く、自己顕示を意識無意識問わず求め、行動する傾向があります。その一つが攻撃性や衝動性が問題となり、しばしば人間関係のトラブルを引き起こします。
(1)ナルシシズムと人間関係・恋愛関係
ナルシシズムの人間関係の特徴として、利己的で特別扱いをうける資格が自分にあると感じていることが多く、他者とは敵対関係であったりぎくしゃくした関係性であることが多いです。人の批判を過剰にする人には少なからずその傾向があるといっても過言ではありません。
自分に尊厳をもちつづけられる尊厳型のナルシシズムの人も、自己肯定感が低く不安が強くノイローゼ気味の脆弱型のナルシシズムの人も自己評価分析が適切でないため、他者との人間関係でトラブルを起こすことが多いです。自分のことを正しく評価できない人は他人とは必然的に難しくなります。短期的には人間関係がうまく運んでも、自己の気持ちが充足できず、他人にあたったりすることも多く、長期的な安定した人間関係の構築には不向きです。
恋愛関係においても同じようなことがいえます。ナルシシズムの人は自己への賞賛欲求が強く神経が過敏で繊細な状態にあります。相手のことを思いやる余裕がなく自分の状況が優先される結果、自尊心を傷つけられたり賞賛の度合いが低く、不安感情を強く持ったりうつ状態に陥りやすいです。継続することで、嫉妬心や攻撃性に転じたりすることもありトラブルを招くことが多いとされています。後述する共依存の関係性になることもしばしばあり自分達の状況を苦しくする悪いループから抜けられなくなることも特徴です。
(2)ナルシシズムと親子関係
健常な発想と心を持つ人の成長や発達において、親は社会化を促す最初の要素となります。つまり自立した自我の形成に役立つ働きかけを果たします。しかし、ナルシシズムな親を持つことは子どもにとって不幸なことが多いです。
具体的に子どもの成功を自分の手柄にしようとしたり、子どもが自分達の体裁を汚すような言動や発言をすることに神経過敏になり自尊心を傷つけてしまう傾向があります。大抵の場合両親は、対外的で社交的で公共の場では家の中とは全く別の顔をします。子どもにとって親は選べませんし、それらのふるまいを修正することは不可能です。子どもは親のもつ二面性の顔を受け入れできず環境要因でぐれてしまったり、素直に育たず急にきれてしまったりしてもそれでも尚気づかないことすらあります。
親は自分の卑屈やコンプレックスの解消の道具に子どもを利用していることがあり、他人同士と違いコントロールが難しくしばしば親離れ、子離れできない共依存の関係を形成し、近年社会問題として注目されてきています。親離れできない子どもには、子どもが生理的にもつナルシシズムから脱却できない環境要因のせいとも考えられています。
4.ナルシシズムと精神疾患
ナルシシズムは、サイコパスやマキャベリズムなどと同様「悪のパーソナリティ気質」であることが知られています。一般に協調性が低く、他者と大きなトラブルを招き、自己肯定感が低く種々の精神疾患や症状と関連が報告されています。その気質が行動として自分自身の内に向かうか、他者に向かうか、またその程度によって社会適応性が異なってきます。
内に向かっても他者に向かっても完全に満たされることがないため、抑うつ気分や不安などの症状の訴えで来院される方が多いです。性差として女性に多いのも特徴です。年齢を重ねることで、自然に良くなることも多いのですが、心療内科や精神科などを早めに受診し気質や特性として理解しながら生活をすすめるほうが生きづらさの解消には有利です。発達障害との関連も近年注目を集めています。
(1)共依存と依存症
ナルシシズムと共依存の関係は、隠された自己中心性と支配性が存在します。相手から感謝を引き出し自己肯定感を保ちたい願望があり奉仕の見返りを期待しているという点で共通しています。感謝や慈悲とは真逆の不健全な精神状態で、メンタリティーの発達過程で未熟と説明できます。
ナルシシズムの人は自己肯定感が低く、満たされない部分を物質や薬物の依存などで解決しようと依存症のリスクが高いとされています。依存症自体は自己破壊的な自傷行為でありますが、満たされないものと直面することの疲弊の結果とも説明できます。
(2)自己愛性パーソナリティ障害
自己愛性パーソナリティ障害は、自己愛が極端に行きすぎた結果周囲を巻き込んだりトラブルを連続しておこしてしまう人格障害のことをさします。
自己愛は誰もがもつ生理的な価値観ですが、それのゆきすぎで「思考」「感情」「他者との交流」「衝動行為の抑制」の面で継続的に傷害されてしまうことを意味します。人は誰しも他人に承認されたいですが、その思考や感情のゆきすぎは種々のトラブルの要因につながってしまいます。
自己愛性パーソナリティ障害のさらに詳しいことは以下のページをご覧ください。
(3)引きこもり
引きこもりとは他者や社会との関係から回避し、自宅や自室に閉じこもる人たちを指します。なぜ引きこもるのかというと、引きこもりの人は意外と過度に強いナルシシズムを抱えています。しかし、一方でそれは傷つきやすさと紙一重です。
社会に出て、他者と関わると嫌なことに遭遇したり、辛い体験をしてしまったりするリスクがあります。ナルシシズムの強い引きこもりの人はそうしたことに耐えることができないため、他者や社会を回避し、引きこもってしまうのです。
引きこもりのさらに詳しいことは以下のページをご覧ください。
5.ナルシシズムからの脱却と克服とカウンセリング
ナルシシズムは、思考の特性であり病気ではありません。しかし、しばしば残忍な事件に関連することことから近年注目を集めています。脱却や克服については、まず自分をよく知ることです。自分の限界を知ることで、謙虚になり他者との協調性を大切にするようになります。人間誰しも子どもの時は、ナルシシズムですが加齢とともにその気質は薄れてきます。
ナルシシズムからの脱却と克服には自己理解が必要であり、そのためにカウンセリングなどを利用することが非常に有用です。臨床心理士などの専門資格を持つカウンセラーとのカウンセリングを通して、自己理解を深めていきます。もしかしたら、そこには自身の見たくない部分などがあるかもしれません。しかし、カウンセラーと話し合いを深めながら、そうした自分自身をも受け入れていくことが非常に大切になってきます。
そのため、カウンセリングでは良い体験ばかりではなく、苦しいプロセスが続くこともあります。だからこそ、辞めたくなったり、回避したくなったり、誤魔化したくなったり、虚勢を張りたくなったりすることもあるでしょうが、それを潜り抜けた時に、新たな自分自身に出会うことができるのではないかと思います。
6.精神分析についてのトピック
7.まとめ
ナルシシズムはエゴイズムと同義で根底には、「自分さえ良ければ良い」という考えがあります。自分を愛して心が充足した時、「自己への執着」が解かれ、人間性を尊重し様々な抑圧や束縛から解放した考えである「ヒューマニズム」へと進化を遂げます。個々の発想の集まりが集団や国家を作ります。
生まれた時は誰もがもつ生理的発想ではありますが、そのゆきすぎはトラブルになることを自認しながら個々でバランスをとることが肝要です。
ナルシシズムからの脱却と克服にはカウンセリングは非常に有効です。当オフィスでもカウンセリングを行っておりますので、是非ご活用ください。
文献
この記事は以下の文献を参考にして執筆いたしました。