コンテンツへ移動 サイドバーへ移動 フッターへ移動

神奈川県横浜市港北区大豆戸町311-1
アークメゾン菊名201号

心理オフィスKロゴ

ナルシシズムとは:その原因と特徴と脱却する方法

ナルシシズム(自己愛)とは、「自分の価値を他人に認められたい」という誰しもがもつ生理的な感情の極端なもので、しばしば自分や他人を苦しめ、人間関係のトラブルに発展することが少なくありません。何が原因や社会で具体的にどのようなことが問題なのか、克服するにはどうすればよいのかなどまとめました。

格好をつけずに、自分のありのままの姿で荒野をいきぬける行動力と精神力を鍛えるヒントになり、少しでも楽にいきれる標となるべく拝読いただけたらと思います。

ナルシシズムとは

支配する男性

ナルシシズムとは、承認欲求を満たし自己肯定感を保つために、自己破壊的なふるまいを強迫的にとってしまうことです。ナルシシズムのいきすぎで行動に歪みが生じ、結果として他者とのトラブルを招き「自己陶酔」ともよばれますが、そのことで自分も苦しんでしまっていることが多いです。

ナルシシズムは適度にある方が、自信に繋がったり、チャレンジ精神を持ったり、頑張ろうとできたりすることができる大切なものです。しかし、一方でそれが過度になりすぎると、傲慢で、陶酔的で、人から嫌がられてしまうような性格になってしまいます。

このナルシシズムは元々は精神分析からきた用語です。その精神分析については以下をご覧ください。

ナルシシズムの分類と特徴

電話で怒る男性

ナルシシズムに繋がり悪化しやすい、思考と行動パターンを6つ分類しました。それらのメンタリティーは、共通した特徴として過剰なコンプレックスと常に破壊的で自分に自信が持てない故、誇大な自己イメージで覆いたいという、不釣り合いな感覚を持ち合わせることです。

これらの人は、不安で常に誉めてもらうことを必要としています。

分類 説明
恥知らず 恥の処理の健全な方法をよく知らないので小手先でごまかそうとします。
自己陶酔 自分は完璧だと思い込ませ、それがいつしか無意識にそう思うようになる。
傲慢 他人の衰退や墜落などをみて、自己評価を相対的に高める。
権利意識 自分はあくまで特別に承認されるべきであるという偏屈な価値観をもつこと。
搾取 他人のものを奪ってまで自己の目的を達成しようとする不健全な精神をもつこと。
自と他の境界の不明瞭 己のニーズを満たさない他人を無価値なものと断定する。自分にネガティブな意見をいう人を遠ざけたり排除しようとしたりする発想やふるまいをする。

ナルシシズムによって生じる問題

手を突き出す女性

ナルシシズムと攻撃性が凄惨な事件に繋がり、社会問題になっています。自己肯定感が一般的に低く、自己顕示を意識無意識問わず求め、行動する傾向があります。その一つが攻撃性や衝動性が問題となり、しばしば人間関係のトラブルを引き起こします。

(1)ナルシシズムと人間関係・恋愛関係

ナルシシズムの人間関係の特徴として、利己的で特別扱いをうける資格が自分にあると感じていることが多く、他者とは敵対関係であったりぎくしゃくした関係性であることが多いです。人の批判を過剰にする人には少なからずその傾向があるといっても過言ではありません。

自分に尊厳をもちつづけられる尊厳型のナルシシズムの人も、自己肯定感が低く不安が強くノイローゼ気味の脆弱型のナルシシズムの人も自己評価分析が適切でないため、他者との人間関係でトラブルを起こすことが多いです。自分のことを正しく評価できない人は他人とは必然的に難しくなります。短期的には人間関係がうまく運んでも、自己の気持ちが充足できず、他人にあたったりすることも多く、長期的な安定した人間関係の構築には不向きです。

恋愛関係においても同じようなことがいえます。ナルシシズムの人は自己への賞賛欲求が強く神経が過敏で繊細な状態にあります。相手のことを思いやる余裕がなく自分の状況が優先される結果、自尊心を傷つけられたり賞賛の度合いが低く、不安感情を強く持ったりうつ状態に陥りやすいです。継続することで、嫉妬心や攻撃性に転じたりすることもありトラブルを招くことが多いとされています。後述する共依存の関係性になることもしばしばあり自分達の状況を苦しくする悪いループから抜けられなくなることも特徴です。

(2)ナルシシズムと親子関係

健常な発想と心を持つ人の成長や発達において、親は社会化を促す最初の要素となります。つまり自立した自我の形成に役立つ働きかけを果たします。しかし、ナルシシズムな親を持つことは子どもにとって不幸なことが多いです。

具体的に子どもの成功を自分の手柄にしようとしたり、子どもが自分達の体裁を汚すような言動や発言をすることに神経過敏になり自尊心を傷つけてしまう傾向があります。大抵の場合両親は、対外的で社交的で公共の場では家の中とは全く別の顔をします。子どもにとって親は選べませんし、それらのふるまいを修正することは不可能です。子どもは親のもつ二面性の顔を受け入れできず環境要因でぐれてしまったり、素直に育たず急にきれてしまったりしてもそれでも尚気づかないことすらあります

親は自分の卑屈やコンプレックスの解消の道具に子どもを利用していることがあり、他人同士と違いコントロールが難しくしばしば親離れ、子離れできない共依存の関係を形成し、近年社会問題として注目されてきています。親離れできない子どもには、子どもが生理的にもつナルシシズムから脱却できない環境要因のせいとも考えられています

ナルシシズムと精神疾患

ソファで泣く女性

ナルシシズムは、サイコパスやマキャベリズムなどと同様「悪のパーソナリティ気質」であることが知られています。一般に協調性が低く、他者と大きなトラブルを招き、自己肯定感が低く種々の精神疾患や症状と関連が報告されています。その気質が行動として自分自身の内に向かうか、他者に向かうか、またその程度によって社会適応性が異なってきます。

内に向かっても他者に向かっても完全に満たされることがないため、抑うつ気分や不安などの症状の訴えで来院される方が多いです。性差として女性に多いのも特徴です。年齢を重ねることで、自然に良くなることも多いのですが、心療内科や精神科などを早めに受診し気質や特性として理解しながら生活をすすめるほうが生きづらさの解消には有利です。発達障害との関連も近年注目を集めています。

(1)共依存と依存症

ナルシシズムと共依存の関係は、隠された自己中心性と支配性が存在します。相手から感謝を引き出し自己肯定感を保ちたい願望があり奉仕の見返りを期待しているという点で共通しています。感謝や慈悲とは真逆の不健全な精神状態で、メンタリティーの発達過程で未熟と説明できます。

ナルシシズムの人は自己肯定感が低く、満たされない部分を物質や薬物の依存などで解決しようと依存症のリスクが高いとされています。依存症自体は自己破壊的な自傷行為でありますが、満たされないものと直面することの疲弊の結果とも説明できます。

(2)自己愛性パーソナリティ障害

自己愛性パーソナリティ障害は、自己愛が極端に行きすぎた結果周囲を巻き込んだりトラブルを連続しておこしてしまう人格障害のことをさします

自己愛は誰もがもつ生理的な価値観ですが、それのゆきすぎで「思考」「感情」「他者との交流」「衝動行為の抑制」の面で継続的に傷害されてしまうことを意味します。人は誰しも他人に承認されたいですが、その思考や感情のゆきすぎは種々のトラブルの要因につながってしまいます。

自己愛性パーソナリティ障害のさらに詳しいことは以下のページをご覧ください。

(3)引きこもり

引きこもりとは他者や社会との関係から回避し、自宅や自室に閉じこもる人たちを指します。なぜ引きこもるのかというと、引きこもりの人は意外と過度に強いナルシシズムを抱えています。しかし、一方でそれは傷つきやすさと紙一重です

社会に出て、他者と関わると嫌なことに遭遇したり、辛い体験をしてしまったりするリスクがあります。ナルシシズムの強い引きこもりの人はそうしたことに耐えることができないため、他者や社会を回避し、引きこもってしまうのです。

引きこもりのさらに詳しいことは以下のページをご覧ください。

ナルシシズムからの脱却と克服とカウンセリング

ナルシシズムは、思考の特性であり病気ではありません。しかし、しばしば残忍な事件に関連することことから近年注目を集めています。脱却や克服については、まず自分をよく知ることです。自分の限界を知ることで、謙虚になり他者との協調性を大切にするようになります。人間誰しも子どもの時は、ナルシシズムですが加齢とともにその気質は薄れてきます。

ナルシシズムからの脱却と克服には自己理解が必要であり、そのためにカウンセリングなどを利用することが非常に有用です。臨床心理士などの専門資格を持つカウンセラーとのカウンセリングを通して、自己理解を深めていきます。もしかしたら、そこには自身の見たくない部分などがあるかもしれません。しかし、カウンセラーと話し合いを深めながら、そうした自分自身をも受け入れていくことが非常に大切になってきます。

そのため、カウンセリングでは良い体験ばかりではなく、苦しいプロセスが続くこともあります。だからこそ、辞めたくなったり、回避したくなったり、誤魔化したくなったり、虚勢を張りたくなったりすることもあるでしょうが、それを潜り抜けた時に、新たな自分自身に出会うことができるのではないかと思います。

精神分析についてのトピック

ナルシシズムについてのよくある質問


ナルシシズムは、過度に自分自身を愛し、自己中心的な態度を持つ心理的傾向を指します。この状態は、ギリシャ神話に登場するナルキッソスに由来し、彼が水面に映る自分の姿に恋をしたことから名付けられました。ナルシシズムの特徴的な兆候は、自己評価が非常に高く、他者からの称賛や評価を強く求めることです。この傾向は自己愛性パーソナリティ障害に関係する場合もあり、心理的には、自己中心的で共感能力が低いことが特徴です。ナルシシズムは、単なる性格的な特性として現れる場合もあれば、生活全般に影響を及ぼす深刻な問題になることもあります。


ナルシシズムの主な特徴は、自己中心的で自己陶酔的な態度を持つことです。ナルシシズムを持つ人々は、他者からの賞賛を強く求め、他人の感情に対して無関心であることが多いです。彼らは自分が特別であり、他者とは異なる存在だと感じる傾向があります。自己評価が非常に高く、自己愛に基づく期待に応えるために周囲に対して要求をすることもあります。また、共感能力が低く、他者の立場や感情を理解しようとしないことがしばしば見受けられます。ナルシシズムを持つ人々は、自己評価が高い反面、他者からの評価が低ければ急激に落ち込むこともあり、自己肯定感が極端に不安定な場合があります。


ナルシシズムの原因は、幼少期の育成環境に大きく関連しているとされています。特に、過度な期待や過保護、あるいは反対に冷たく無視される育成が、自己評価の歪みを生み出すことがあります。過剰な賞賛を受け続けた場合、自己評価が実際の能力や価値に合わなくなり、過信や自己愛が強まります。逆に、親や重要な大人からの承認を得られなかった場合、自己愛が発達せず、自己防衛的な態度としてナルシシズムが表れることもあります。また、家庭環境だけでなく、社会的な影響や文化的背景も関与していると考えられています。競争が激しい社会や、外見や成功に重点を置く文化も、ナルシシズムを助長する要因となり得ます。


はい、ナルシシズムは治療可能です。治療には、心理療法が非常に効果的です。特に、精神分析的アプローチや認知行動療法が利用されます。精神分析的なアプローチでは、クライエントが自分の内面的な葛藤や感情に向き合い、無意識のうちに抱えている自己評価の歪みを理解することを目指します。認知行動療法では、現実的な自己評価を促し、非現実的な期待を調整することに焦点を当てます。治療によって、自己愛が適切に調整され、他者との健全な関係を築くためのスキルが向上します。治療過程は時間がかかることがありますが、クライエントが自分の問題を認識し、改善に向けた具体的なアクションを取ることで、生活の質を大いに向上させることができます。


ナルシシズムと自己愛性パーソナリティ障害(NPD)は密接に関連していますが、重要な違いがあります。ナルシシズムは自己愛の傾向を示す言葉であり、自己愛が強いと感じる程度が軽度から重度まで幅広いです。一方、自己愛性パーソナリティ障害は、その傾向が極端であり、日常生活に深刻な影響を与える場合に診断されます。NPDの症状には、他者に対して共感を持たないこと、自己の優越性を過度に主張すること、承認や賞賛を強く求めることなどが含まれます。NPDを持つ人々は、自己評価が過度に高いため、他者からの批判を受け入れにくく、現実的な自己認識を欠いています。ナルシシズムの度合いが軽度であれば、自己愛の表れとして正常な範囲に収まりますが、NPDではこれが社会的または職業的に問題を引き起こすレベルに達します。


ナルシシズムには遺伝的要因と環境的要因の両方が影響を与えているとされています。遺伝的に、ナルシシズム傾向を持つ親からその特性が子どもに伝わることがあります。遺伝的要因としては、自己評価や社会的態度に関連する遺伝子の影響が考えられます。しかし、環境的要因がナルシシズムの発達において重要な役割を果たします。例えば、親が子どもを過剰に甘やかす、または逆に冷たい態度を取ることで、子どもが自己評価を極端に形成することがあります。社会や文化の影響も無視できません。特に、個人主義的な社会や競争が激しい文化では、ナルシシズムの傾向が助長されることがあります。したがって、ナルシシズムの発症には遺伝と育成環境が複雑に絡み合っています。


ナルシシズムは社会生活にさまざまな影響を与える可能性があります。ナルシシズムを持つ人々は、他者からの承認を強く求め、他人の感情やニーズに無関心であるため、人間関係において摩擦が生じやすいです。例えば、仕事の場面では、他者との協力が必要な場面で対立が起こりやすく、自己中心的な態度が職場の雰囲気を悪化させることがあります。また、家庭や友人関係でも、相手の感情や立場を理解せず、自分の利益や欲求を優先することが問題となることがあります。ナルシシズムが強いと、人間関係が浅くなることが多く、社会的孤立を招くこともあります。最終的に、自己愛に依存することが社会的なつながりを断絶させる原因となり、生活の質を低下させる可能性があります。


ナルシシズムは年齢とともに変化することがあります。特に思春期から成人期にかけて、自己認識が成熟し、他者との関係性が変化するため、ナルシシズムの度合いが変動することがあります。若いころは自己愛が強く現れることが多いですが、成人になると現実的な自己評価を学び、自己愛の表れ方が穏やかになることがあります。しかし、年齢を重ねてもナルシシズムが治らない場合もあり、自己愛が強く依然として人間関係に障害をもたらすことがあります。特に社会経験が乏しい場合や、環境が変化しない場合、ナルシシズムが持続し続ける可能性があります。そのため、年齢を重ねることで変化する場合もあれば、改善が難しい場合もあります。


治療を受けない場合、ナルシシズムの特徴が強化され、周囲の人々との関係が悪化することがあります。ナルシシズムが強いと、他者の感情や立場を理解することが難しく、自己中心的な行動が原因で誤解や対立が生じやすくなります。社会的なつながりが浅くなり、孤立感が強まることもあります。長期的には、職場や家庭での問題が深刻化し、精神的なストレスが増大する可能性があります。自己評価が過度に高いため、現実的な反省が難しくなり、自己改善の機会を逃すことになります。その結果、生活全般に悪影響を及ぼし、心理的な健康に重大な問題を引き起こす恐れがあります。


ナルシシズムを予防するためには、幼少期からの健全な育成が非常に重要です。子どもに対してバランスの取れた自己評価を促すことが大切で、過度に甘やかしたり、逆に無視したりしないようにしましょう。親や周囲の大人が、子どもに対して適切な感情のフィードバックを行い、他者の感情を理解する力を養うことが予防につながります。また、社会的な価値観も重要で、外見や成功に重きを置くのではなく、協力や共感を大切にする社会環境を作ることが、子どもたちの健全な成長に寄与します。これにより、ナルシシズムが過度に発展することを防ぎ、健全な人間関係を築くための基盤が整います。

ナルシシズムについて相談したい

ナルシシズムはエゴイズムと同義で根底には、「自分さえ良ければ良い」という考えがあります。自分を愛して心が充足した時、「自己への執着」が解かれ、人間性を尊重し様々な抑圧や束縛から解放した考えである「ヒューマニズム」へと進化を遂げます。個々の発想の集まりが集団や国家を作ります。

生まれた時は誰もがもつ生理的発想ではありますが、そのゆきすぎはトラブルになることを自認しながら個々でバランスをとることが肝要です。

ナルシシズムからの脱却と克服にはカウンセリングは非常に有効です。当オフィスでもカウンセリングを行っておりますので、是非ご活用ください。

文献

この記事は以下の文献を参考にして執筆いたしました。