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うつ病の人に家族や友人はどう対応すればいいのか?

家族、友人、恋人などがうつ病、もしくはうつ病の可能性があり、どのように接したらいいのか分からず悩んでしまうことがしばしばあります。

うつ病とはどのような病気なのか、家族がうつ病かもしれない時にはどうしたらよいのか、うつ病の家族にどう接したらいいのか分からない、うつ病の友人や恋人へは連絡しても良いのかどうか分からない、などのお悩みをご家族や友人からよく頂戴することがあります。

そのような、うつ病とは何かのか、うつ病の人への具体的な接し方や支え方について解説します。さらには、解決手段として家族向けのカウンセリングについてもお話しします。

家族や恋人がうつ病かもしれないと思ったら

階段で泣く女性

まずはうつ病について知ることから始めましょう。

うつ病とは、なってしまった本人が悪いわけではなく、誰しもが発症する可能性がある病気です。特に真面目な性格の人がなりやすいと言われており、「ある日、突然布団から起き上がれなくなる」など症状が重症化してから周囲の人が気づき、診療に至るケースが多いです。しかし、早め早めに休養が取れれば、回復もしやすくなります。

周囲の人から見たとき、うつ病には果たしてどのような症状が見られるのかを次で紹介していきます。

よくある相談の例(モデルケース)

30歳代 女性

Aさんの夫は、数年前から仕事のストレスや人間関係の不調和が続き、ある時期から明らかに気力を失い、以前のような生活リズムを維持できなくなっていきました。最初は疲れているのだろうと考えていたAさんも、夫が休日もほとんど横になって過ごし、食欲や睡眠に乱れが生じ、表情も乏しくなる姿に不安を募らせました。やがて仕事を続けることが難しくなり、心療内科を受診した結果、うつ病と診断されました。医師の指導のもと抗うつ薬の服薬治療が始まりましたが、症状の改善は緩やかで、Aさん自身がどう夫を支えたらよいか分からなくなっていきました。

夫の状態に振り回される中で、Aさんは自分自身も強い孤独感と疲弊を感じるようになりました。夫に対して「もっと頑張ってほしい」と苛立つ一方で、「病気なのに責めてしまう自分は冷たいのではないか」と罪悪感に苛まれ、心身のバランスを崩していきました。義務感から日常を支えるものの、心の余裕を失い、誰にも悩みを打ち明けられない閉塞感に苦しみました。そうした状況の中で、夫婦の問題だけでなく、自分自身の支えを求めてカウンセリングを申し込みました。

カウンセリングでは、まずAさんの疲弊や不安を丁寧に受け止めることから始まりました。夫を支える立場にあるがゆえに、自分の気持ちを抑え込みがちであること、支えたい気持ちと苛立ちが交錯して混乱していることを言葉にする過程が続きました。セッションを重ねる中で、Aさんは「夫のうつ病と自分自身の気持ちは別に扱ってよい」という理解を得るようになり、夫を無理に変えようとするのではなく、自分が支えられる範囲を見極める視点を持てるようになりました。また、夫婦間のコミュニケーションについても、感情的にぶつかるのではなく、互いの状況を確認し合う工夫が少しずつ試みられました。

時間をかけて取り組むうちに、Aさんは「支えること」と「自分を守ること」の両立を学んでいきました。夫の症状は波がありましたが、Aさんが自分の生活や気持ちを大切にできるようになったことで、夫に対しても以前より穏やかに向き合えるようになりました。カウンセリングは数年にわたって続けられ、Aさんは夫婦の問題を一人で抱え込むのではなく、必要に応じて支援につなげながら暮らす力を身につけていきました。最終的にAさんは、うつ病の夫を支えることは困難を伴うものの、自分自身も守られながら続けていけるという実感を得られるようになったのです。

日常生活に見られるうつ病のサイン

たたずむ女性

うつ病は目に見える症状が少ないため気づきにくい病気です。また、うつ病を患っている本人自身も自覚しないことも多いです。

以下のような症状がうつ病では一般的によく見られます。

(1)意欲や興味が低下し、楽しみを喪失してしまう

うつ病でよくみられる症状に、意欲の低下、興味関心の低下があります。例えば、このような状態がよくあります。

  • 趣味の外出をしなくなった
  • 好きなテレビがやっているよと声かけしても反応が薄い
  • 会社や学校に欠勤したり、遅刻したりすることが増えた
  • ご飯を以前に比べて食べなくなった、以前に比べ食事に興味を持っていない

Aさんの場合、夫がこれまで好きだった趣味や外出に全く興味を示さなくなり、一日中横になって過ごすことが増えました。楽しみを共有できないことに寂しさを感じると同時に、どう接すればよいのか分からず戸惑いました。

(2)緊張や焦燥感、不安感が出てくる

うつ病の人は緊張や焦燥感、不安感が人と比べ強く出てきます。その精神的な苦しさは周囲には分かりにくい部分ですが以下のような様子が見られます。

  • 肌や服を擦り、異様に落ち着きがない
  • 「生きていても仕方ない」「自分なんか」というような自分を責めた発言が増える
  • 将来に対する強い心配をしてしまう

Aさんは、夫が少しの音や予定の変化にも過敏に反応して落ち着かなくなる様子を目にしました。その度に、夫がさらに悪化してしまうのではと不安に駆られ、自分自身も緊張状態で過ごすことが増えていきました。

(3)気分が落ち込み、暗くなる

いわゆる抑うつ症状にあたります。例えば以下のような状態になってしまいます。

  • 気持ちが沈み、暗い表情や暗い雰囲気になる
  • 日々の生活に充実感を感じることができなくなる

Aさんの場合、夫が「自分は役に立たない」「何をしても無駄だ」と言うたびに、家の中全体が暗い雰囲気に包まれました。Aさんもつい気分を引きずられ、気持ちが沈んでしまうことが度々ありました。

(4)身体の不調が生じる

その他に、不眠や、めまいや吐き気、頭痛、腹痛を訴える場合があります。このため、最初は内科の病気ではないかと疑われることもあります。

これらのうつ病についての詳細は以下のページにまとめています。

Aさんは、夫が不眠や食欲不振を訴えるのを支えるうちに、自分自身も眠りが浅くなり、体調を崩すようになりました。夫の症状に寄り添いながら、Aさんも疲労や胃の不調を抱えることになってしまいました。

家族や恋人はどうしてあげるべき?うつ病患者への対応

慰める

自分の家族や恋人がうつ病を発症した時に、うつ病の人への接し方をどうすれば良いのか分からないという悩みが多く寄せられます。

日常会話での注意点や、うつ病を患っている人に対してやってはいけないこと、あるいはメールやLINEでの留意点などを解説していきます。

(1)うつ病患者の方と接するときのコツ

うつ病の人の苦しさを共感し、受容することが大切です。うつ病の人を受け入れると言っても良いでしょう。

また、決して無理強いをしないことも大事なコツです。うつ病になると意欲が低下するので、何かをしようという思いがなくなってしまいますので。

さらに、うつ病の人は何事にも否定的に考えてしまいがちです。自分のことを卑下し、将来のことを悲観します。これについては「そうではない」と言いたくなりますが、これを言うことそのものがうつ病の人を否定してしまう言葉になってしまいます。ですので、「そうではない」というようなことではなく、その人の良い面や良いことが起きる可能性などをそっと示唆するぐらいが良いでしょう。

その他にうつ病の人は他の人から嫌われているのではないかと悪い方に想像してしまいます。これについても「私はあなたのことを大切に思っている」「私はあなたのことを心配している」「私はあなたに居て欲しいと思っている」といったように肯定的な見方をしていることを伝えてあげると良いでしょう。

こうしたことは1回言っただけで分かってもらえるわけではないので、時折繰り返して伝えてあげると良いでしょう。

Aさんの場合、夫に対して「無理に元気づけるのではなく、ただ隣にいて安心を伝えること」が大切だと学びました。相手の調子を尊重しながら、日常の中で小さな声かけや共感を意識するようになりました。

(2)うつ病の人に言ってはいけない言葉とは

良かれと思ってして言ってしまうのが励ましの言葉です。うつ病の人のサポートにとって「励まさない」ことは重要なポイントのひとつです。

なぜなら、うつ病の人の方は、自責の念が強くなっている傾向にあるからです。さらに、うつ病になるまでに十分頑張ってきているからです。そうであるにも関わらず励ますと、一層苦しませてしまうのです。

例えば、「期待しているからがんばれ」、「気合で乗り切れ」などのむやみな励ましは禁物です。

また、「そんなことではダメだ」、「自分の立場を分かっているのか」など本人を非難する言葉は逆に患者さんを傷つけてしまいます。

まずは、心配な気持ちを伝えて、傾聴することが重要です。

「あなたのことを心配している」、「あなたが思っていることを話してもらって私に聴かせてください」などの前向きな声かけをしてあげましょう。

また、本人が望まないにもかかわらず、受診やカウンセリングを無理強いすることもしない方が良いです。無理強いではなく、受診したりカウンセリングを受けたりすることでメリット(気持ちが楽になる、気分が晴れる、など)があることを時々お伝えする程度で良いです。また、機関のパンフレットなどを見えやすいところにそっと置いておくことも良いかもしれません。興味が出てきた時に、見てくれることもあります。中長期的な視点で待つことが大事です。

Aさんは、夫に「頑張って」「気持ちの持ちようだよ」と言ってしまったことで、かえって夫が追い込まれることを体験しました。その後は、評価や指示ではなく、夫の苦しさをそのまま受け止める言葉を心がけるようになりました。

(3)連絡しない方がいいの?うつ病の友人や恋人に連絡したい時

うつ病で休職・休学していると知り連絡を入れたい、恋人と連絡がつかないがどうしたらいいのか分からないという人もいらっしゃるかもしれません。

まず、連絡はしても大丈夫です。ただし、毎日何度もするというようなことは避けましょう

そして、返事は強要しない、また長文は避けるということも意識すると良いです。

うつ病の患者の方は、集中がしにくい状態にです。ですので、普段なら問題のない長さの文章でも読むのにひどく体力や気力を要することが多いという背景があることを認識しておきましょう。

Aさんの場合、夫が一人になりたがる時期もありましたが、全く連絡を絶つと逆に孤独感を強めることを知りました。そこで「無理に返事はいらないよ」と伝えつつ、短いメッセージで関心を示すことが、関係を保つ支えになりました。

支える側もストレスを感じています、無理はしないで

サポートする

支える側の人々にも精神的な負担は大きなものであり、無意識のうちにストレスを溜めている場合もあります。心身ともに疲れ果てて共倒れとなってしまわないように、ゆっくりと自分たちのペースで進んでいきましょう。

大切な家族や友人にうつ病の可能性があり、接し方が分からず苦しんでいる方や、うつ病のサポートを長年おこない、辛いと感じている方には「家族向けカウンセリング」のご利用をおすすめします。

心理の専門家が、うつ病の人に対する関わり方をアドバイスしたり、あなた自身のお悩みに耳を傾けたりして、充実したサポートを提供することができます。

ご希望の方は以下のページからお申し込みください。

この記事が、家族や友人がうつ病になって、どのように対応すればいいのか悩んでいる人にとって少しでも参考になれば幸いです。