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セルフ・コンパッションとは?そのやり方や実践について

セルフ・コンパッション(Self-compassion)は日本語に直訳すると「自分への思いやり」という意味で、「自分へのやさしさ」、「共通の人間性」、「マインドフルネス」という3つのポジティブな要素から構成される「あるがままの自分」を肯定的に受け入れることができる心理状態を指します。セルフ・コンパッションが高い人は、ストレスや抑うつの程度が低く、幸福度や人生の満足度が高くなることがわかっており、人生を豊かに過ごしていく上で重要な概念です。

この記事ではセルフ・コンパッションについて、それを構成する要素やセルフ・コンパッションを高める方法について解説していきます。

セルフ・コンパッションとは

セルフ・コンパッション(self-compassion)とは、直訳すると「自分への思いやり」という意味であり、「あるがままの自分」を肯定的に受け入れることができる心理状態のことを指します。アメリカの心理学者 クリスティーン・ネフ博士が2000年代前半に自身の瞑想の経験からセルフ・コンパッションの概念を確立し、「自分へのやさしさ」、「マインドフルネス」、「共通の人間性」という3つの大きな要素からセルフ・コンパッションが構成されていると提唱しました。(それぞれの構成要素については後ほど詳しく説明します。)

セルフ・コンパッションが高まると、自分自身だけでなく、様々なことに気づいて受け入れられるようになり、周囲の人や自然、大切なものに対する感謝や幸せを感じることができようになります。セルフ・コンパッションの高い人は、不安や抑うつが低く、幸福感や人生の満足度が高いことが研究結果からも明らかになっています。

セルフ・コンパッションの構成要素

セルフ・コンパッションは「自分へのやさしさ(Self-kindness)」、「共通の人間性(Common humanity)」、「マインドフルネス(Mindfullness)」という3つのポジティブな要素から構成されています。それぞれ対になる「自己批判(Self-judgement)」、「孤独感(Isolation)」、「過剰同一化(over-identification)」というネガティブな3つの要素と合わせて、詳しく解説していきます。

(1)自分へのやさしさ

自分が苦しい状況に置かれ、苦痛を感じているときに自分をいたわったりすることで、自己肯定感を高め、安定した精神状態で過ごせるようにするセルフ・コンパッションの中核となる考え方です。また、自分の性格で好きではないところや欠点について、やさしい目で見るようにすることもこの要素に含まれます。

「自分へのやさしさ」の対極にある概念として、「自己批判(Self-judgement)」があり、これは苦しい状況で自分自身に批判的になったり、自分の欠点について不満に思ったりする考え方です。

具体的には、なにか失敗をしてしまったときに、「失敗をするなんてダメな人間だ」などと自分を責めたり否定すること(「自己批判」)を避けて、「失敗の経験を次に活かそう」、「失敗は自分だけの責任ではない」などと、ポジティブな言葉を自分自身にかけてやさしくいたわることです。

(2)共通の人間性の認識

「共通の人間性」とは、日本語では少しわかりにくい表現かもしれません。英語の「Common Humanity」の直訳で、自分も他者も共通した人間という存在であり、自分だけでなく他者も同じように苦しみを経験しており、欠点のある存在だと認識することです。

人は失敗したり苦しい状況に立たされたときに、「自分だけがつらい思いをする」だとか、「自分の能力が低いせいで失敗してしまった」などと自分自身の問題として抱え込み、周囲からの疎外感や孤立感に苦しむことがあります。これが、「共通の人間性」の対極にある概念である「孤独感(Isolation)」です。このように自分自身について悲観的に考えるのではなく、「完璧な人間などおらず、他の人でも失敗をすることはある」、「他の人も苦しい経験をすることはある」と、自分も他者も共通な人間だと考えることで、苦しみを共有し緩和することができます。

(3)マインドフルネス

「マインドフルネス」とは、ある否定的な考え方が頭に思い浮かんだときにそれにとらわれず、現実に起こっていることに意識を集中し、あるがままを受け入れて感情のバランスを保つ考え方です。

苦しい状況に立たされたときに、その出来事を大げさに考え、否定的な考え方に支配されてしまったり、逆に無視してしまうことは、対極の考え方である「過剰同一化」と呼ばれます。具体的には、失敗にいつまでもこだわりくよくよと考えたり、お酒やギャンブルに逃げて気を紛らわせようとするようなことが当たります。

「マインドフルネス」の考え方では、苦しい出来事を誇張したり、無視したりせずに、「つらいと思った自分自身の感情」や「完璧ではない自分自身」をありのままに受け入れることでストレスを減らしていくことができます。

セルフ・コンパッションの効果

過去の研究により、セルフ・コンパッションを構成する「自分へのやさしさ」、「共通の人間性」、「マインドフルネス」が高い人は、幸福感や人生の満足度が高くなり、不安や抑うつ・ストレスなどが低くなることが示されています。

セルフ・コンパッションの高い人は、苦しい出来事が起こったときに、必要以上に自分を責めず、悩み続けるのではなく、気持ちを切り替えて前に進むことが出来ます。そのため、自分のことを不幸だと捉えにくく、幸せな気持ちでストレスなく日々を過ごすことができるようになります。

セルフ・コンパッションのやり方や実践法

最後に、普段の生活の中でも実践することのできるセルフ・コンパッションを高める方法をいくつか紹介します。

(1)慈悲の瞑想

自分自身や他者の幸せを願う言葉を思い浮かべることで思いやりの気持ちを強める仏教伝来の瞑想法です。最初はまず以下のように自分自身の幸せを願うフレーズを、リラックスした状態で心の中で思い浮かべることから始めましょう。

  • 「私が幸せでありますように」:慈悲の「慈」に当たるフレーズ
  • 「私の悩み苦しみがなくなりますように」:慈悲の「悲」に当たるフレーズ
  • 「私の夢や願い事が叶いますように」
  • 「私が幸せでありますように」(この1文は3回繰り返します)

これに慣れてきたら、対象を、恩人、親しい人、世界中の人、嫌いな人、生きとし生けるもの、と少しずつ広げていきます。
慈悲の瞑想によって自分の中で埋もれている慈しみの気持ちを培い、自分自身や他社に対する心地の良い温かい気持ちを育むことができるようになります。

(2)コンフォートカード

自分自身を批判したり、責めてしまったときに、それをカバーする優しいフレーズや対処法を記入したカード(コンフォートカード)を用意しておき、外出中にも持ち歩くようにしておきます。苦しい状況に出会ったときにコンフォートカードを見て、自分を思いやる言葉をかけたり、行動を取ったりすることで、セルフ・コンパッションを高めていく方法です。

セルフ・コンパッションについてのよくある質問


セルフ・コンパッションとは、自分自身に対して優しさや思いやりを向け、自己批判を減らし、ありのままの自分を受け入れる心のあり方です。私たちは日々の生活の中で、他者には優しさを向けることができても、自分に対しては厳しくなりがちです。セルフ・コンパッションは、そんな自分をいたわり、自己肯定感を高めることを目的としています。これは自分が失敗した時や困難に直面した時に、自分を責めるのではなく、暖かく受け入れ、理解し、やさしく対応することが重要です。セルフ・コンパッションは他者に対する思いやりと同じくらい大切であり、自分に対する優しさを育むことで、心の健康が促進され、より健全な自己認識と心の安定が得られるのです。


セルフ・コンパッションを高めるためには、まず自分の感情に敏感になり、自己批判を意識的に減らすことから始めます。具体的な方法としては、まずリマインドペーパーを作成することが有効です。これは自分が困難な状況にある時に、優しい言葉をかけるメモを見返し、思いやりを持って自分を励ますことを助けます。また、ジャーナリング(日記を書くこと)も有効な方法です。自分の内面を言葉にして書き出すことで、自分の感情や考えを整理し、自己理解を深めることができます。さらに、慈悲の瞑想を行うこともセルフ・コンパッションを高めるためには非常に効果的です。この瞑想では、自分自身に対して「私が幸せでありますように」という言葉を唱えることで、自分の心に優しさと穏やかさを届けます。これらの実践を日常生活に取り入れることで、自己批判の声を和らげ、ポジティブな心の状態を維持することができるでしょう。


自己肯定感とセルフ・コンパッションは似たような概念に見えるかもしれませんが、それぞれ異なる側面を持っています。自己肯定感は、自分自身の価値を認識し、自分ができることや自分の強みに自信を持つことです。つまり、自己肯定感は成功や成果に基づいて自分を評価することが多いです。これに対して、セルフ・コンパッションは、失敗や困難に直面したときに、自分に優しく接することです。自己肯定感は一般的に「自分は成功している」「自分には価値がある」といったポジティブな認識を持つことを目指しますが、セルフ・コンパッションは、失敗したり、うまくいかなかったときでも自分を責めず、理解し、励ますことを重視します。したがって、セルフ・コンパッションは自己肯定感が低い時でも実践できるもので、自己肯定感が高い人でも自己批判的な思考に悩まされることがあります。セルフ・コンパッションは、そうした時に自分に優しくすることで、心の健康を守り、回復力を高めます。


セルフ・コンパッションを高めることで得られる多くのメリットがあります。まず第一に、ストレスの軽減です。自己批判を減らし、自分をいたわることによって、ストレスを感じる場面でも冷静さを保つことができ、心の負担が軽くなります。また、セルフ・コンパッションは、感情の安定にもつながります。自分を受け入れることで、感情の波が穏やかになり、落ち着いて対処できるようになります。さらに、セルフ・コンパッションは自己批判を減らし、自己肯定感を向上させるため、心の健康が全体的に向上します。自分に対して優しさを向けることで、心の中に穏やかな空間を作り出し、幸福感の向上人間関係の改善にもつながります。セルフ・コンパッションを実践することで、自己成長が促進され、他者とのつながりも深まります。これらの効果により、セルフ・コンパッションは心理的な回復力を高め、日常生活における挑戦に対しても積極的かつ効果的に対応できるようになるのです。


セルフ・コンパッションを実践する際に注意すべき点として、自己甘やかし自己批判のバランスを取ることが重要です。セルフ・コンパッションは自分をいたわることで心を安定させ、心の健康を守る手段ですが、自己甘やかしは、安易に自分に対して甘い態度を取ることを意味し、逆に成長を妨げる可能性があります。自分に優しくすることは、自己改善や成長を促進するためであり、自己嫌悪に陥ることを避けることが目的です。また、セルフ・コンパッションは他者に対する思いやりを深めるためにも大切ですが、他者との違いを尊重することを忘れないようにしましょう。他者との比較に陥らず、自己肯定感を育むことが大切です。最後に、セルフ・コンパッションを過信しないことも大切です。過度に自分を守ることに固執せず、時には自分に厳しくすることも必要です。セルフ・コンパッションの実践は、自己改善や成長をサポートするためのツールとして活用すべきであり、適切にバランスを取ることが重要です。


セルフ・コンパッションを高めるための書籍として、最も広く知られているものは、クリスティン・ネフ著『セルフ・コンパッション―あるがままの自分を受け入れる』です。この本は、セルフ・コンパッションの基本的な概念から実践的な方法までをわかりやすく解説しており、初心者から実践者まで広く役立つ内容となっています。特に、ネフ博士は自身の研究に基づいて、セルフ・コンパッションがどのように心の健康を促進するか、また、どのように日常生活に取り入れることができるかについて具体的なアプローチを紹介しています。その他の書籍としては、ブレネー・ブラウンの『勇気を持って、完璧でない自分を愛する』などがあり、自己肯定感やセルフ・コンパッションに関連するテーマを深掘りすることができます。これらの書籍を通じて、セルフ・コンパッションの実践方法を学ぶことができ、日々の生活に活かすことができます。


セルフ・コンパッションは、自己批判が強い人、ストレスや不安を感じやすい人、自己肯定感が低い人に特に効果があります。こうした人々は、自分に対して厳しい評価を下しがちで、困難な状況に直面したときに心が折れやすく、自己肯定感が低くなることが多いです。しかし、セルフ・コンパッションを実践することによって、失敗や困難に対しても自己受容を促し、自己評価をポジティブに保つことができます。また、日常的にストレスを感じている人にも、セルフ・コンパッションは効果的です。優しさを持って自分をいたわることで、ストレスや緊張感を和らげ、感情を穏やかに保つことができるようになります。つまり、セルフ・コンパッションは心の健康をサポートし、心理的な回復力を高め、生活の質を向上させるための重要なツールとなります。


セルフ・コンパッションを高めるためのオンラインリソースとして、最も信頼できるサイトの一つは、クリスティン・ネフ博士の公式ウェブサイトである「Self-Compassion.org」です。このサイトでは、セルフ・コンパッションの基本的な理論から、実践的なエクササイズやガイドラインまで、幅広い情報が提供されています。また、オンラインコースやワークショップも開催されており、セルフ・コンパッションを深めたい人にとって貴重な学びの場となります。さらに、アプリを使ったセルフ・コンパッションの実践も増えており、「Calm」や「Headspace」などのマインドフルネスアプリを利用することで、セルフ・コンパッションを日々の生活に取り入れることができます。これらのリソースは、実践的な方法を学び、セルフ・コンパッションを効果的に高めるための助けとなるでしょう。


セルフ・コンパッションを高めるためのワークショップやセミナーは、日本国内でも多く開催されています。例えば、**東京マインドフルネスセンター**などが提供するセルフ・コンパッションに焦点を当てたプログラムでは、実践的な方法を学ぶことができます。また、セルフ・コンパッションを専門に扱う心理学者や指導者によるセミナーも定期的に開催されており、参加者は実際に体験しながら学ぶことができます。こうしたイベントは、オンラインでも開催されることが多く、地方に住んでいる方でも参加しやすくなっています。セルフ・コンパッションの実践を深めたいと考える人にとって、こうしたワークショップやセミナーは有益な学びの場となり、心の成長を促進する手助けとなるでしょう。


セルフ・コンパッションを高めるためのアプリとして、いくつかの選択肢があります。例えば、**Calm**や**Headspace**といったマインドフルネスや瞑想に特化したアプリでは、セルフ・コンパッションを促進するガイド付き瞑想やリラクゼーションのセッションを提供しています。これらのアプリは、日常のストレスを和らげ、心を落ち着けるために有用です。特に、「Calm」アプリでは、眠る前にリラックスするためのプログラムもあり、深い休息を得るために役立ちます。また、**Insight Timer**というアプリも、無料で多数の瞑想ガイドや音楽を提供しており、自分のペースでセルフ・コンパッションの実践を続けやすくなっています。こうしたアプリを使うことで、セルフ・コンパッションを日常生活に組み込み、いつでもどこでも心のケアを行うことができるでしょう。

セルフ・コンパッションを高めるカウンセリングを受けたい

セルフ・コンパッションは、「自分へのやさしさ」、「共通の人間性」、「マインドフルネス」という3つのポジティブな要素から構成される、自分自身を思いやり、慈しむ考え方で、幸福度や人生の満足度と深く関係しています。セルフ・コンパッションは、慈悲の瞑想やコンフォートカードなどで高めることができるので、ぜひ日常生活の中で取り入れて実践してみましょう。

カウンセリングではセルフ・コンパッションを高めることが可能です。カウンセリングをご希望の方は以下の申し込みフォームからご連絡ください。

文献

この記事は以下の文献を参考にして執筆いたしました。