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セルフ・コンパッション

セルフ・コンパッション(self-compassion)とは、自分が失敗したり苦しんだりしているときに、自分自身に対して思いやりや理解を向ける態度を指す心理学的概念です。この概念は主に心理学者クリスティン・ネフ(Kristin Neff)によって体系化され、近年、臨床心理学や心理療法の領域で広く研究されています。

ネフによれば、セルフ・コンパッションは大きく三つの要素から構成されます。第一はセルフ・カインドネスであり、自分の欠点や失敗に直面したときに、自己批判ではなく温かい理解を向ける姿勢を意味します。第二は共通の人間性の認識であり、苦しみや不完全さは自分だけの問題ではなく、人間に共通する経験であると理解する視点です。第三はマインドフルネスであり、自分の苦しみや感情を過度に否定したり誇張したりせず、現在の体験として適切に気づく態度を指します。

セルフ・コンパッションは自己肯定感とは異なる概念とされています。自己肯定感がしばしば他者との比較や成功体験によって変動しやすいのに対し、セルフ・コンパッションは失敗や困難の場面においても自分への態度を安定させる働きを持つと考えられています。そのため、抑うつや不安、自己批判の強さと関連する心理的問題の理解や介入においても注目されています。

臨床心理学の研究では、セルフ・コンパッションが高い人ほど心理的苦痛が少なく、レジリエンスや情緒的安定が高い傾向があることが報告されています。また、近年ではコンパッション・フォーカスト・セラピーなど、思いやりの感情を治療的に活用する心理療法とも関連づけて検討されています。

このようにセルフ・コンパッションは、自己批判に偏りやすい心の働きを調整し、困難な体験に対してより柔軟で受容的な態度を育てる概念として、現代の心理学や心理療法において重要なテーマの一つとなっています。

文献

  • Neff, K. D. (2003). Self-Compassion: An Alternative Conceptualization of a Healthy Attitude Toward Oneself. Self and Identity, 2, 85–101.
  • Neff, K. D. (2011). Self-Compassion. New York: William Morrow.
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