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公認心理師現任者講習会に参加して-中篇-

2018-03-19から2018-03-23まで渋谷において国際心理支援協会の主催で開催された公認心理師現任者講習会に参加しました。ここでは3日目(心理的アセスメントと医学)と4日目(精神医学と産業労働に関する関係行政論)の感想を書いています。

1日目と2日目のことについては下記に書いています。

1.三日目午前:心理的アセスメント

公認心理師現任者講習会の3日目。8時開場ですが、良い席をとりたくてその10分前に来ました。しかし、一番かと思ったら、既に何十人と受付に並んでいました。みんな早起きですね。それでも端の端の比較的圧迫感のない席を取れてホッと一安心でした。

公認心理師現任者講習会3日目の午前は心理的アセスメントの講義でした。細かいところですが、心理「的」アセスメントの的はいるのでしょうか?あまり馴染みはありませんが。それはともかく、インフォームドコンセントとアカウンタビリティが大切なのはポイントのようです。臨床心理士もインフォームドコンセントやアカウンタビリティはもちろん盛り込まれているので、何も目新しくはありませんが、法的に位置付けられているというのが違うところと言えるでしょう。

また、アセスメントとカウンセリングは同時並行で進む、というのはその通りでしょう。例え、カウンセリングの最初の数回は予備面接、査定面接と構造化してても、治療的要素はもちろん入ってきます。

心理的アセスメントも、いつもしている仕事のことなので目新しさはありませんが、復習にはなりました。何を、どう、いつ聞くのかなど。ちなみに心理検査のことは全く出てこず。みんなもう知っているからってことでしょうか。心理検査はアセスメントの一部です。私は大学院修了後、臨床心理士としての駆け出しの頃は延々と心理検査を業務として施行し続けていました。WAIS-R(当時)やロールシャッハテストはおそらく数百事例はとったのではないと思います。その経験は今に生きている感じがします。

公認心理師現任者講習会3日目の昼食は壁の穴でパスタを食べました。魚介のカルボナーラに、アボガドと海老のポテトサラダ、クリームブリュレのセット。2592円とお高め。でも、とても美味かったです。

魚介のカルボナーラアボガドと海老のポテトサラダクリームブリュレ

2.三日目午後:医学に関する知識

公認心理師現任者講習会3日目の午後は医学でした。人体の骨、筋肉、脳、内臓の名前や機能を延々と列挙されるだけの講義で、襲い来る睡魔との激闘の末に連戦連敗でした。

やはり延々と項目を述べ続けるのみで、なかなか集中して頭に入らなかったです。精神医学のことについては知ってることだけなので、それほど問題はなかったのですが。あと、ディスカッションも全く無しでした。積極的にディスカッションをしたいわけではないのですが、眠気覚ましにはなっていたようで。

しかし、精神医学は心理とは違いますが、心理の仕事をする上で精神医学の知識は必須ですね。それも単にテキストで知っているだけでは不十分で、やはり精神科臨床に一定期間以上の経験を積まねば体験的には分からないかと思います。色々な精神疾患の方と出会い、テキストからは感じ取れない印象やニュアンスをたくさん経験しないと、実際の臨床でのアセスメントやセラピーでは到底、活かせないと思います。もしくは教育分析や個人分析、スーパービジョンを受けることで身に付きます。

大学院を出て、精神科医療に全く触れずに、産業分野、教育分野、福祉分野、発達相談などに入ってしまうと、精神疾患のことを全く知らずに臨床をせざるを得ず、これはアセスメントを今後誤るリスクを抱えてしまいます。大学院での外部実習などで精神科に行く人もいますが、到底足りません。ですので、産業、福祉、教育、発達相談の方面に最終的に行くとしても、精神科医療で数年以上は仕事をすると良いと思います。これは決して遠回りではなく、今後の貴重な糧になると思います。

3.四日目午前:精神医学に関する知識

公認心理師現任者講習会4日目の午前は精神医学でした。

向精神薬について細かく講義してくれました。向精神薬も副作用やデメリットを知りつつ、最大に効果が発揮できるように使用することが大事です。向精神薬については一部の宗教や文化人が過度に不安を煽り、反対キャンペーンをしているようですが、適切な知識を持たないといけません。こうした向精神薬反対キャンペーンで不安を煽られた方が無理矢理に断薬をさせられて悪化や増悪、再発してしまい、不利益が生じているケースをたくさん見てきました。

また、チーム医療について推奨されているという話についての講義もありました。共通言語を持ち、コミュニケーションを取り、役割分担するのが大切というのは誰も否定しません。が、やはり理想はそうであるが、というところでしょうか。というのも、チーム医療といっても日本ではそもそも医師の権力が強く、ヒエラルキーで動いていることが多いと思います。そもそも医師に与えられている実権も役割も責任も強いです。ついでに給料も多いですね。指示や指導という概念や名称にもそれは現れています。

チーム医療といいつつ、結局、医師の意思が優先され、医師にノーと言われると何もできません。会議と称しつつ医師の意思が伝えられる場になっているところも多いでしょう。そうした意味では、チーム医療は現在実践されていることではなく、今後の目標に過ぎないのでしょう。

しかし、そうしたヒエラルキーが強く存在する現場であっても、色々とやりようはあります。実績と結果を残せば医師も耳を傾けてくれますし、重宝もしてくれます。また、主体性を保証してくれます。こうした下積みを地道に実践することは大切になってくるだろうし、法律的なことではなく、チーム医療を下から創造していくことが今後の課題かと思います。

公認心理師現任者講習会4日目の昼食は福田屋で天麩羅と蕎麦を食べました。大きな海老二匹が嬉しいところ。蕎麦湯も身体が温まります。ただ喫煙OKなので煙草臭く、これは減点だったかな。

天麩羅と蕎麦

4.四日目午後:産業と労働に関する関係行政論

公認心理師現任者講習会4日目の午後は産業と労働の法律についてでした。労働基準法や労働契約法、安全配慮義務、ストレスチェック、ハラスメント、過重労働などについてが取り上げられました。これまで産業関係で仕事してきたことと、開業でも多く産業と関連しているので、ほとんど知ってることばかりで良かったです。

しかし、労働時間の増加と脳血管性疾患・心臓疾患・精神障害などのリスクを上げる話を聞き、人ごとではなく自分のこととして気にしなければならないな、と思いました。今の開業でのワークバランスは検討しないと。開業してると夕方から夜にかけての時間を希望するクライエントが多いから、夜遅くなるのが仕方ないところもあるから難しいところです。

午後の後半は3つの事例検討のみでした。いずれも産業場面では馴染みのあるような事例ばかりでした。産業特有のこと(安全配慮義務やリワーク・復職支援等)以外は心理は連携屋さんになる役割が求められるようです。事例で抑えるポイントはほぼ予め知っていたので、さほど困難なく。リスクと守秘義務のバランスなど細かいところは補習できました。いずれの事例も精神障害のアセスメント能力は求められそうなので、やはり産業で働くにしろ精神科臨床の経験は必須といえるでしょう。

事例に対するアプローチは個別性の尊重とは言えどもある一定の定石はあります。まずは法制度に規定された方法です。例えば産業の事例では復職時には主治医の診断書が必要とかリハビリ出勤などの導入とかがそれにあたります。次に倫理を参照することです。例えば守秘義務を遵守するとかが該当します。そして、害になることをしないこと、次いで害になっていることを取り除くこと、対象者が自らできることをしてもらうこと、サポート体制を作ること、が必要です。

その後にようやく、心理の技法の適用があるが、まずは疾患や問題別に求められる標準的な手技を適用して関わることです。それも最初はできるだけ簡便で、侵襲性が低く、短期間で終わることを目指すことです。負担の少ないものから順次試していきます。そして、最終的に侵襲性の高いものの適用をしていくことになります。最初から侵襲性の高いもの適用は論外です。

こうした定石をマニュアル的に踏むことで、感動的な素晴らしい支援になることはあまりありませんが、一方でとんでもなく悲惨なプロセスになることもなく、それを防げます。おそらく、公認心理師はこうした没個性的に進めていける程度の技量が求められているのでしょう。

これが最低限の技量を持つ証としての公認心理師になると思われます。ただ、定石を定石どおりにする技量を公認心理師の受験資格を得ているだけでクリアできるのかというのはまた別問題かと思います。週1回ボランティアとかでも受験でき、またそれを所属先の長の独断に委ねられることで担保できるか極めて不明です。

最後の5日目については以下に書いています。


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