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共感疲労がもたらす影響:カウンセラーが解説する対処と対策

皆さんは「共感疲労」という言葉を聞いたことはありますか?『この人を助けてあげたい』という気持ちから、親身に話を聞いたり、その人の手助けになるような行動をとり、自分が疲れてしまった、つらい気持ちになったという経験はありませんか?また、ニュースなどでつらい事件や事故を見た時に自分が経験したわけではないのに、不安な気持ちになった経験はありませんか?

それは、「共感疲労」という心の症状です。

共感疲労とは

共感疲労とは、他人の苦難や困難に対して共感や思いやりを持つことによって、自分が経験したものでは無いにも関わらず、心理的な疲労やストレスが引き起こされる現象です。この状態が進むと無気力状態やうつ病に陥る危険性があります。

共感疲労を提唱した人は、アメリカのチャールズ・フィグレーというベトナム戦争帰還兵のPTSD(心的外傷後ストレス障害)などを研究している心理学者です。当初は、医療従事者や心理カウンセラーなど支援やケアをする職業の人が起こりやすい症状だと言われておりました。現代では、SNSやソーシャルメディアの普及が進み、様々な情報が目や耳に入って来る為、共感疲労の症状は誰しもが患う可能性があると言えます。

共感すること自体は悪いことではありませんが、自身の心にも負担が掛かるということは知っておかなければいけません。このような症状が起こる前にメンタルケアなど適切に対処することが大切です。

共感疲労の原因

共感疲労は、いくつかの原因によって引き起こされます。主な原因をご紹介します。

(1)つらい話や嫌な話を聞きすぎる

友達や家族が愚痴などを話す機会があるかと思います。その時にはじめは親身になって話を聞くことが出来るかもしれませんが、その内容があまりにも悲惨な話であったり、毎日のように続くと不快感が募り共感疲労が起こりやすくなります

(2)ニュースなどで悲惨な事故、事件を知る

日常で戦争や事件など様々なニュースを見る機会が大いにあると思います。その時、当事者の気持ちを想像し、自分の身に置き換え、つらい気持ちになると、共感疲労が起きやすくなります。

(3)家族・友人など身近な人が不幸になる

家族や友人など関係性が近い人の気持ちは推し量りやすく、共感や同情といった感情が沸きやすくなります。そういった自分にとって親しい人が、怪我や病気、離婚といった不幸な状況に置かれると、その人の気持ちに共感し共感疲労になりやすくなります。

(4)カウンセラーとして話を聴くこと

カウンセラーや対人援助職の人がクライエントの大変辛い気持ちや状況を聞きすぎてしまうと、気持ちを入れ込みすぎてしまいます。そうしたことによって、共感疲労が起こってしまいます。

共感疲労の症状

共感疲労の主な症状は以下になります。個人によって異なる場合がありますが一般的には以下のような症状が現れます。

身体症状

  • いつも疲れている。
  • 頭痛がする。
  • 身体がだるい。
  • 食欲が低下する。
  • 腹痛をしやすく、消化不良気味になる。
  • 寝ようとしてもなかなか眠れない。
  • 朝起きることが苦手になる。

精神症状

  • ちょっとしたことでイライラする
  • 気分が落ち込む、悲しい気分になる
  • 注意力が散漫になる。
  • 仕事に行くことが億劫になる。
  • あらゆることに対して無気力になり、趣味や好きなことでもやる気が起きない。
  • 不安な気持ちが消えない。
  • 他人からは必要とされていないと感じるなど、自己評価が低くなる。

共感疲労になりやすい人とは?

(1)感受性が強い人

感受性が強いと共感疲労になりやすいと言えます。感受性が強い人は家族や友人知人などの人間関係や周囲の状況や様子、言動に対して敏感です。他人よりも多くの情報を感じ取る傾向があるため、他人の言動・行動から気持ちを深く理解しすぎて心に負荷が掛かり共感疲労が起こる危険性があります。

(2)気を遣いすぎる人

気を遣いすぎる人は、相手の気持ちを察し、思いやりをもって他人と接することが多いです。「気持ちを理解してあげたい」「相手のために何かしてあげたい」といった気持ちが強く他人のことを必要以上に考え、共感疲労になりやすいと言えます。

(3)使命感が強い人

使命感が強い人は、困っている人を助けたいという気持ちから、頑張りすぎてしまったり、自分の許容量を超えて行動することが多く、共感疲労になりやすいと言えます。

(4)過去にトラウマになるようなことを経験したことがある人

過去にトラウマになるような経験をしたことがある人は、ニュースを見たり、他人からの経験を聞くことで自身の経験と重ね合わせて、深く共感をしてしまい共感疲労になりやすいと言えます。

共感疲労に関連していること

パソコンの前で泣く女性

共感疲労には以下のような心理症状が関わっている場合もあります。

(1)二次的外傷性ストレス

二次的外傷性ストレスとは、災害や事故や戦争などで深刻な出来事に関与した人物のことを見たり聞いたりすることで、直接その状況を経験したわけではない人物が心理的負担を感じることです

現代はスマートフォンや、パソコン、テレビなどデジタルデバイスで様々な事件や事故が報道されています。意図せず悲惨な情報が入って来る可能性がある為、そのようなデジタルデバイスとの付き合い方を考えることも大切と言えます。

(2)二次受傷

二次受傷とは、災害や事故や戦争など悲惨な経験をした人の話を聞いたり現場を目撃したりすることで自らが経験しなくても被害者と同様のPTSD症状(心的外傷後ストレス障害)が生じることを言います。

主に消防士や警察官や医療従事者など人を救う職業の人や、ジャーナリストや災害ボランティアなど現地にいく機会がある人が二次受傷を負う可能性が高いと言われています。

(3)外傷性逆転移

まず転移とは、カウンセラーに対してクライエントから向けられる、好意的・否定的な感情のことです。これとは逆に逆転移とはカウンセラーがクライエントに自分の感情を向けてしまうことです。

外傷性逆転移とは、災害や事故や戦争などで悲惨な経験をした人やPTSD(心的外傷後ストレス障害)になった人をケアする人が、話を聞いたり、ケアをしていくうえで、自分の考えをケアを受ける人に向けてしまうことです。多くの場合はケアをする人がケアを受ける人に同情や共感の感情を受け自身と重ね合わせることを言います。

共感疲労を防ぐための予防

湖畔で寝そべる男性

共感疲労は自然な心の反応であり気を付けていても生じることがあります。まず大切なことは自分の心の状況を知るということ。自分を追い詰め過ぎないということです。普段から自分の心と語り合い負担になりすぎてないか気を付けるということが大切です。

共感疲労を防ぐための予防を紹介します。

(1)自分だけの時間をつくる

共感疲労を起こしやすい人は、他人のことを考えすぎる傾向があります。その為、誰とも関わらず自分の好きなことや趣味に没頭する時間であったり、気持ちをリフレッシュすることが出来る時間を作ることが必要です。

(2)自分の気持ちを人に話す

自分の悩みや不安に思っていることをひとりで抱え込んでいると、さらにその悩みや不安を考えてしまい共感疲労になる危険性があります。

他人に話をすることで、話を聞いてもらったという安心感を得ます。また、悩みや不安を言葉にすること整理することが出来ます。自分では気が付かなかった意見やアドバイスがもらえる可能性があります。

(3)デジタルデトックスをする

デジタルデトックスとは、スマートフォンやパソコンやテレビなどのデジタルデバイスに触れないようにし、情報を遮断することを言います。毎日のように事件や事故が報道されていますし、デジタルデバイスを使用していると望んでいなくてもそういった情報に触れてしまいます。思い切ってスマートフォンやパソコンなどを使わない時間を作ることも共感疲労を予防する方法になります

(4)ポジティブなことを書き出す

共感疲労に陥ると、ネガティブな側面ばかりに目が行ってしまい物事の悪い部分ばかりを考えてしまいます。意識的に自分が感じたポジティブなことや出来事を紙などに書き出してみることは、自分の考えの整理、自覚することが出来、ポジティブな思考を癖づけ、共感疲労を予防することが出来ます。

(5)リラクセーション効果の高い技法を利用する

心に大きな負担が生じると共感疲労になりやすくなります。そう言った状況になる前に、ヨガやアロマテラピー、呼吸法などリラクセーション効果の高い技法を取り入れることもひとつの手と言えます。自分の感情や体の感覚に向き合うことが出来る、マインドフルネスはおすすめです。

共感疲労に陥った時の対策と対処

(1)医療機関を受診する

共感疲労が続くと、うつ病などの心の病気になってしまう可能性があります

共感疲労になると自分で予防や対策を行ったとしてもなかなか改善されず、日常生活に支障が出てくるかもしれません。そういった場合はメンタルクリニック・診療内科といった医療機関に受診することが必要です。場所によっては、初診の予約まで数か月かかる可能性もある為、不調を感じたらすぐに受診をすることをおすすめします。

医療機関に受診することに抵抗がある人はいるかもしれませんが、日常生活に大きな支障が出る前に医療機関に足を運んでください。

(2)カウンセリングを利用する

共感疲労に陥った時は、自分ひとりで悩みや不安を抱え込んでしまう傾向があり、最悪の場合、自死に追い込まれるケースもあります

そういった状態になる前に、「こころの相談窓口」といったような、自治体などで行われている相談センターに電話し、話を聞いてもらう事も必要だと言えます。現代ですと、パソコンやスマートフォンからでも申し込めるオンラインカウンセリングもあり気軽に相談をすることも出来ます。

カウンセリングを受け、苦しいことをカウンセラーに聴いてもらい、受け止めてもらえる体験をすることで共感疲労を克服できるかもしれません。

(3)スーパービジョンや教育分析を利用する

臨床心理士や公認心理師などのカウンセラーが共感疲労に陥ることはしばしばあります。カウンセラーであれば経験豊富なベテランのカウンセラーにスーパービジョンや教育分析を受けることも共感疲労に対して効果があります。クライエントの話に取り込まれてしまい、苦しい心境になっていることをベテランのカウンセラーと話し合うことにより、距離を置いて考えることができるようになれます。

スーパービジョンや教育分析の詳細は以下のページをご覧ください。

共感疲労についてのよくある質問


共感疲労とは、他者の苦しみに深く共感することで、自分の感情やエネルギーが消耗してしまう心理的な状態です。特に、身近な人やクライエントの困難に共感することが多いですが、誰にでも起こり得る現象です。これには感情的な疲労感や無力感が伴い、心身に悪影響を与えることもあります。共感疲労は、他者のトラウマや痛みに敏感に反応することで、心の中でその感情が強く働き、最終的に疲れやストレスとして現れることが特徴です。この状態が長期間続くと、精神的にも身体的にも深刻な影響が出ることがあります。


共感疲労の主な原因は、他者の苦しみに深く関与しすぎることです。特に、他者の感情に共鳴してしまうことで、自分自身の感情が影響を受け、過度のストレスや疲労感を感じることがあります。クライエントの悩みや問題に心を寄せすぎることで、自分の感情が消耗し、仕事や日常生活に支障をきたすことがあります。また、医療や介護の現場に従事する人々は、クライエントや患者の状況に直面しやすく、共感疲労を引き起こしやすい環境にあります。さらに、SNSやニュースで他人の苦しみを目にする機会が増えている現代社会において、共感疲労はより多くの人々に影響を与えるようになっています。


共感疲労の症状には、感情的な疲れや無力感、思考の集中力の低下が含まれます。例えば、他者の問題に過度に共感することで、精神的に疲弊し、日常的な生活や仕事への意欲が失われることがあります。また、クライエントとの接触が多い環境では、感情的にフラットな状態になったり、感情的な麻痺が生じることもあります。睡眠障害や食欲不振といった身体的な症状も見られることがあり、これらは共感疲労が進行している兆候です。その他にも、周囲の人々への怒りやイライラ、精神的な倦怠感、感情のコントロールが効かないことなどが症状として現れる場合もあります。これらの症状は、放置するとさらに悪化し、精神的な障害を引き起こすことがあります。


共感疲労とストレスの違いは、原因と影響の範囲にあります。ストレスは外的な圧力や問題(例えば、仕事のプレッシャーや生活の不安)から生じるものです。ストレスの原因は自分のコントロール下にない外的な事象に関連しており、通常は生活の改善や問題解決によって軽減されます。一方、共感疲労は他者の苦しみに過度に感情的に巻き込まれることから生じます。共感疲労は自分自身の感情が他者の感情に同調することで生じ、そのため感情的な反応が強くなり、自己の感情を管理できなくなることがあります。ストレスは主に外的な状況に起因するのに対して、共感疲労は内的な感情の過負荷によって引き起こされることが多いです。


共感疲労を予防するためには、まず自分自身の感情的な境界線を守ることが重要です。感情的に他者の状況に巻き込まれすぎず、自分の感情を適切に管理することが予防に繋がります。また、自己ケアを大切にし、リラクゼーションや趣味の時間を持つことで、心身の健康を保つことができます。さらに、共感疲労を感じ始めたら、早期に専門家のサポートを受けることが効果的です。専門家とのセッションを通じて感情的な負担を軽減し、健全な距離感を持つことで、共感疲労を予防することができます。定期的に心と体をリフレッシュさせることも予防策として有効です。


共感疲労が進行すると、感情的に無関心になることがあります。最初は感情的に他者に共感していたものが、次第に感情の起伏が少なくなり、周囲の問題に無関心になったり、反応が鈍くなったりすることがあります。また、身体的な症状が現れることもあります。例えば、頭痛、胃の不調、筋肉のこわばり、慢性的な疲れなどが見られます。精神的にも疲労が積み重なることで、最終的にはうつ病や不安障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)のような深刻な精神疾患を引き起こすことがあります。共感疲労が進行する前に、早期に対処することが非常に重要です。


共感疲労と同情疲れは非常に似ている概念ですが、微妙に異なります。共感疲労は他者の感情や痛みに対して深く共感することで生じ、感情的な負担が蓄積することによって引き起こされます。一方、同情疲れは他者の苦しみや痛みに対して同情的に反応することから生じる疲れであり、共感疲労に比べて自己への影響が少ないことが特徴です。共感疲労は自己感情の影響を強く受け、自己管理が難しくなることがありますが、同情疲れは外的な反応にとどまる場合が多いです。


共感疲労は誰にでも起こり得る現象です。特に他者の感情に敏感で、他人の痛みや苦しみに深く共感する人々は、共感疲労にかかりやすい傾向があります。しかし、共感疲労はどんな人でも予防や軽減が可能です。感情的なバウンダリーを設け、自己ケアを行い、感情的な回復力を高めることが大切です。医療や介護の現場に従事している場合は特にリスクが高いですが、それ以外の人々も日常生活で他者の苦しみに過度に影響されることから共感疲労を経験することがあります。


はい、共感疲労と共感性疲労はほぼ同じ意味です。どちらも他者の感情や痛みに対して強い共感を感じ、その結果として心身が疲れ果ててしまう状態を指します。共感性疲労という言葉は、特に心理学や福祉、介護の分野で使われることが多いですが、共感疲労と同義であり、どちらも過度な感情的関与から生じるストレスや疲れを表します。


共感疲労を軽減するための具体的な方法としては、まず感情的な境界線を設けることが非常に重要です。これは、他者の感情や問題に過度に同調しないようにすることを意味します。自分の感情を守るために、クライエントとの適切な距離を保つことが大切です。次に、十分な休息とリラクゼーションの時間を取ることが必要です。日々の忙しさの中で自分のためにリラックスできる時間を設け、心身のリフレッシュを図ることが役立ちます。また、趣味やスポーツを通じてストレスを発散することも効果的です。さらに、共感疲労を感じ始めた場合には、専門家に相談し、適切なサポートを受けることが重要です。心のケアを怠らず、早期に対処することで、共感疲労を軽減し、健康を守ることができます。

共感疲労について相談したい

共感疲労は、情報があふれている現代では誰しもが起こりえる心の問題です。しかし、適切な対策をとることでこの状態を軽減することができます。自己を大切にし、必要なサポートを受けながら、他人との共感的なつながりを持ち続けることができれば、より健康的で持続可能な関係を築くことができるといえます。

共感疲労により様々な問題が生じているのであれば、当オフィスのカウンセリングをご利用ください。希望者は以下の申し込みフォームからお問い合せください。

また臨床心理士や公認心理師などのカウンセラーがカウンセリング業務の中で共感疲労に陥ってしまうこともあります。そうした場合にはスーパービジョンを受けたり、教育分析を受けたりすることも必要になります。

当オフィスではカウンセラーに対するスーパービジョンや教育分析を行っていますので、ご希望の方は以下の申し込みフォームからご連絡ください。

文献

この記事は以下の文献を参考にして執筆いたしました。