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発達障害の二次障害とは?うつやひきこもりを防ぐには?

発達障害の二次障害とは一般に、発達障害や発達のアンバランスをもつ人に、二次災害的に生じる心身の症状や行動のことをいいます。二次障害の予防には早期からの継続的な支援が重要であり、カウンセリングもその一手を担います。

この記事では、二次障害とはどのようなものか、うつやひきこもりといった症状や行動、背景、そして予防や対応についても解説しました。

1.発達障害の二次障害とは?

太陽を背にする姉妹

発達障害の二次障害とは、どのようなものを指すのでしょうか。ここではまず、何を発達障害の「二次障害」ととらえるかについて触れます。

発達障害を抱える人の抱える困難の表れ方はさまざまです。そこには複合的な要因が絡み、時系列がはっきりしないことも多いです。そのため、どこからどこまでを「一次障害」「二次障害」とするかは専門家の間でも意見が分かれます。

ただ一般には、二次障害は「二次災害」のように捉えられることが多いようです。地震に連鎖して火災や停電が起きたとします。すると、地震を「一次障害」、火災や停電を「二次災害」と呼びます。このように発達障害における二次障害もそれと同様と考えます。

発達障害を持つこと自体が、すべて二次障害に直結するわけではありません。生まれつきの特性や発達のアンバランスに対して不適切なかかわりを受けた場合、あるいは適切な支援を得ていない場合に、もともと無かったものや無くてもすんでいた症状や行動があらわれたとき、それを「二次障害」と呼ぶことが多いのです

2.発達障害の二次障害の症状

赤い服の子ども

発達障害の二次障害は、どのような症状に表れるのでしょうか。

二次障害の表れ方は一様ではありません。本人のもつ素因や生活歴、現在の状況などによって表れ方は異なり、ありとあらゆる症状や行動として表れる可能性があります。

ここでは二次障害の表れ方について、内在化障害/内在化 と外在化障害/外在化 に分けてお伝えします。

(1)内在化障害/内在化

内在化障害/内在化 は、本人の抱える葛藤や怒りが自分自身の内的体験に表れることをいい、主に抑うつ症状、不安症状、恐怖症状、強迫症状などの精神面の反応として表れます。

内在化障害/内在化 の例には、以下のようなものが挙げられます。

  • うつ病、双極性障害
  • 適応障害
  • 不安障害、分離不安障害、選択性緘黙、パニック障害、社交不安障害(対人恐怖)
  • 強迫性障害
  • 摂食障害
  • 不登校
  • ひきこもり
    • 等々

(2)外在化障害/外在化

外在化障害/外在化 は、本人の抱える葛藤や怒りが自分以外の対象に向けた行動として表れることをいい、主に、物や他者への暴力・破壊、非行や反抗、家出や放浪といった行動として表れます。

外在化障害の例には、以下のようなものが挙げられます。

  • 反抗挑戦性障害
  • 素行障害
  • 反社会性パーソナリティ障害
    • 等々

(3)内在化障害と外在化障害の共通点

内在化障害/内在化 と 外在化障害/外在化 はいずれも、内的な葛藤や怒りがその源です。そのため、同じ人でも内在化障害/内在化 と外在化障害/外在化 が並存していたり、混ざり合っていたり、移り変わったりすることもあります。

3.発達障害の二次障害と時期

一人の女の子

発達障害の二次障害の表れ方は、発達段階によっても変わってきます。ここでは、時期ごとにみられやすい症状や行動をお伝えします。

(1)幼児期にみられる発達障害と二次障害

幼児期の二次障害としては、集団行動でうまくできない、じっとしていない、乱暴な言動、爪噛みや抜毛、全身のかゆみ、目をパチパチさせる、登園を嫌がる、睡眠や排尿・排便への影響、などがみられます

いずれも、本人がその場に居ることへの苦しみや困り感、不安や緊張への理解や配慮が得られない場合に表れることがあります。

(2)児童期にみられる発達障害と二次障害

対人関係のつまずきや学習のむずかしさ、集団場面で感覚刺激にさらされることへの苦痛が生じ、それらへの反応として不安症状やパニック、不登校などがみられることがあります

児童期後期になると、できる・できないといった周囲との差を感じるようになり、周囲の評価にも敏感になります。

(3)思春期・青年期にみられる発達障害と二次障害

強い不安や抑うつ、絶望感などの一方で万能感を抱く、といった情緒の不安定さが際立ちます。乱暴な行動や言動、フラッシュバックなどのトラウマ反応、自傷行為、ひきこもり、ゲーム依存・ネット依存、過量服薬などがみられることがあります。

過去の生活体験の中で傷つき、自信を失い、孤立感や人への恐怖感や不信感などで追い詰められた場合は特に、深刻な二次障害に至るおそれがあります。

4.背景要因と発覚まで

4人家族

発達障害の二次障害は、どのようにして起こるのでしょうか。ここでは二次障害が生じる背景要因と、発覚するまでについて触れていきます。

(1)二次障害の背景

二次障害が起こる背景には発達のアンバランスだけではなく、対人関係やどんな生活をしてきたか、現在どんな環境や状況に置かれているかなど、さまざまな要因があります。

中でも、もともとある発達特性に由来する発言や行動で周囲から不適切なかかわりを受けたり、適切な支援が得られない状態が続いたりした場合は、二次障害のリスクが高まります

以下に、いくつか例を挙げてみます。

a.注意欠陥多動性障害

注意欠陥多動性障害(ADHD)を持つ子どもは、授業中に立ち歩く、人の話を遮って発言する、といったことがあります。

衝動のコントロールの困難という特性への理解と配慮が抜け落ちると、適切な支援が得られないばかりか、理不尽な叱責や集団内での孤立につながりかねません。周囲への不信感が募った結果、非行など、行動への影響が出る場合もあります

b.学習障害

学習障害(LD、限局性学習症)をもつ子どもの読み・書き・計算などの苦手さへの適切な環境調整が行われない場合、学業不振など学習への影響が出ます。

そればかりか、単なる怠けや努力不足と評価されて自己評価が下がり、不登校につながる場合もあります。

c.自閉スペクトラム症

自閉スペクトラム症(ASD)を持つ子どもの感覚過敏や独特のこだわりに由来する育てにくさに支援の手が届かないと、養育者からの虐待につながりかねません。また学校でも、独特の言動や行動が「空気が読めない」などと評価され、叱責やいじめを受けることもあります

そうした体験からの傷つきが重なると、パーソナリティ形成にも負の影響が出ます。

このように、発達障害を持つ人はもともと環境からの負の影響を受けやすい上、適切な援助が得られない場合は、二次障害のリスクがさらに高まります。

(2)発覚まで

表に出てきた症状や行動は、はじめから二次障害であるとわかるとは限りません。

精神症状が出たことで病院を受診して、実は発達障害がベースにあることがわかることがあります。また、不登校になってはじめて発達障害があるとわかるということもあるでしょう。このように、むしろ二次障害をきっかけに、背景に発達障害があることが判明することも多くあります

また、症状や行動に表れないために、発見がむずかしい場合もあります。

発達特性によって言語での表現が苦手であったり、人とのかかわりや社会生活を避け続けていたり、困りごとへの本人の自覚が乏しかったりする場合です。こうした場合は、社交不安などの精神症状や身体症状があっても周囲からは見過ごされ、援助につながらない難しさがあります。

二次障害が深刻にならないように防ぐためには、早めに周囲が本人の困りごとに気づき、適切な支援につなぐことが重要です

5.発達障害の二次障害の予防と対応

階段で泣く女性

うつやひきこもりといった発達障害の二次障害を防ぐために、あるいは二次障害になってしまったら、どのような対応が必要でしょうか。

ここでは、発達障害の二次障害の予防と対応として、本人や家族にできることを紹介します。いずれも、早期から継続的な支援を受けることが大事なポイントです。

(1)本人のすべきこと

ここでは、二次障害を防ぐために、あるいは二次障害になってしまったときに、ご本人に望まれる対応をいくつか挙げます。

自分なりに工夫してもどうにもならない、と行きづまりを感じたら、無理せず援助の手を頼ることを考えましょう

a.医療機関を受診する

上に挙げたような心身の症状がみられる場合は、それが二次障害なのかどうかに関わらず、早めに医療機関を受診しましょう。精神症状に対しては必要に応じて、生活リズムの調整や薬物療法などが行われます。

b.ほど良く休む

何時間も集中して作業したり、たくさんの感覚刺激を浴びたりすると、自覚なく消耗していることがあります。疲れが重なると、抑うつ症状などの突然の心身の不調にもつながりやすくなります。

○時間作業したら○分休む、など意識的に休む工夫を心がけましょう

c.自分なりに工夫してストレスに対処する

どんな状況が自分にとって負担なのかわかっている場合は、自分なりの対処を試みると良いでしょう。人混みを避ける、静かな環境で作業する、信頼できる先生と話す、深呼吸する、安全な場所に移動する、など、方法は人それぞれです。

自分に合った良い方法が見つかると、生活しやすくなるかもしれません。

d.信頼できる大人や専門家に相談する

自分ではどうしようもない場合は、行き詰まる前に、信頼できる大人や専門家に相談することをおすすめします。学校での困りごとは信頼できる先生やスクールカウンセラーに相談できますし、地域の支援機関でも発達障害に関わる相談ができます。

また、カウンセリングでも、より生きやすくなる方法を一緒に探ることができます。

(2)家族がすべきこと

ここでは、二次障害を防ぐために、あるいは二次障害になってしまったときに、ご家族に望まれる対応をいくつか挙げます。

二次障害の発生や深刻化の予防には、早期からの継続的な支援が大切です。ご家族が本人のわからないことや苦手なことに気がついたら、まずは支援機関に相談することをおすすめします

a.心や体に症状が出ていたら、医療機関の受診をすすめる

抑うつ症状など、本人に心身の症状がみられる場合は、それが二次障害なのかどうかに関わらず、早めの医療機関への受診をすすめましょう

本人に抵抗がある場合は無理強いせずに、まずは地域の支援機関に相談することをおすすめします。

b.社会適応を急がせない

本人が心身の不調に至ったり、ひきこもりになったりした場合、ご家族が焦りや不安を感じるのは自然なことです。

ただ、社会適応を急がせようとしたり、無理に引っ張り出そうとしたりすることは逆効果となりかねません。本人の苦痛を大きくし、問題をより深刻化させるおそれがあります。

c.安心できる環境をつくる

安心して居られる場所があれば、本人が活動に向かうエネルギーを充電できます。ひきこもりの場合も、まずは家が安心してひきこもれる場所になることが大切です。

本人に活動意欲が湧いてきたら、本人の能動的に活動できるようにサポートできると良いでしょう。

d.支援機関に相談し、家族も支援を受ける

対応に困ったり、行き詰まりを感じたりしたら、支援機関などに相談してみましょう。

支援機関では、必要に応じて保護者へのペアレント・プログラムによる支援も行われます。ペアレント・プログラムは、子どもの個性に合った保護者の適切な関わりを支えるだけでなく、保護者の孤立感や自尊心の低下を防ぐことにも役立ちます

(3)早期からの継続的な支援が大切

二次障害の発現や悪化を防ぐには、発達のアンバランスへの、早期から継続的な支援を積み重ねることが大切です。本人や家族が相談できる相手がいることは当事者たちの孤立を防ぎ、安心感を支えます。

一人ひとりの状況やライフステージに応じた継続的な支援が、発達特性を持ちながらも適応的な生活を送る力を支え、二次障害の予防にもつながっていきます

6.発達障害の二次障害についての相談機関

3人の女性

ここでは、発達障害の二次障害について相談できる場所を紹介します。

(1)二次障害について相談できる場所

発達障害の二次障害に関しては、以下の場所で相談できます。

a.子どもの発達や子育てについての相談

地域の子ども家庭支援センター・児童発達支援センター・児童相談所などで相談できます。必要に応じて、医療機関を紹介してもらうこともできます。

b.学校での困りごと

二次障害で時折遭遇するいじめ・不登校・学習困難などについては、スクールカウンセラー、地域の教育センターなどで相談ができます。

c.発達障害に関する相談

地域の発達障害者支援センター、精神保健福祉センター、障害者就労支援センターなどで、発達障害に関する相談ができます。

相談支援のほか、発達障害を抱える人の適応力向上に向けたソーシャルスキルトレーニング(SST)や、保護者へのペアレントプログラムによる支援が行われます。また、必要に応じて医療機関を紹介してもらうこともできます。

また、カウンセリングでも、本人にとってより生きやすい方法をカウンセラーと一緒に考えることができます。

(2)カウンセリングによる援助

発達障害の二次障害については、カウンセリングによる援助も活用できます。カウンセリングでは、症状や行動を単に「問題」と捉えるのではなく、本人の能力や良い点にも着目して援助を行います

精神症状はSOSを出す力、不登校やひきこもりは自分に合わない環境を拒否する力、とも考えることができます。さらに、二次障害がそれまで起きなかったことからは、周囲の対応の良い面や本人の適応的な側面が見えてくるかもしれません。

そうして本人や周囲のもつ力を支えながら、カウンセラーと本人との共同作業でより生きやすい状態を探っていきます

7.発達障害の二次障害について相談する

男性医師

発達障害の二次障害について、その概念と現れ方と背景、予防、対応について説明しました。発達のアンバランスが本人の様子から疑われる場合には、周囲が気づいて早期からの継続的な支援につなぐことが大切です

二次障害の発生や深刻化を防ぎ、本人が発達のアンバランスを抱えつつ、より生きやすくなるための援助の一手として、当オフィスのカウンセリングも是非ご検討ください。

カウンセリングのお申し込みは下のフォームからご連絡ください。

またそもそもの発達障害の詳しいことが知りたい方は以下のページをご覧ください。

8.参考文献


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