人と関わりたくなくなる病気とは
「もう誰とも関わりたくない」や「人と関わっているとどうしようもなく辛い」など、このような感情は、程度の差こそあれ、誰でも一度は経験したことがあるのではないでしょうか。こういった感情に直面しても、日常・社会生活に支障が無ければ問題はありません。
しかし、学校や職場に行くことができない・身近な人とでさえも顔を合わせることが辛くて仕方ない、死んでしまいたいとまでになってしまった時には、何か病気や障害が原因となっているのかも知れません。
ここでは、その原因として考えられる病気や障害の一例について解説したいと思います。
目次
1.考えられる病気・障害
「人と関わりたくない」となった時に考えられる病気・障害または原因として、ここでは次の3つに分けたいと思います。
要因 | 病気や障害の種類 |
---|---|
全般的な意欲の低下に起因したもの | 気分障害(うつ)、統合失調症 |
社会生活・対人関係に起因したもの | 社交不安障害、回避性パーソナリティ障害 |
ストレスや特性に起因したもの | 感情労働、HSP、アダルトチルドレン |
次にそれぞれの特徴や症状を解説します。
2.それぞれの特徴・症状について
(1)全般的な意欲の低下が原因
人と関わりたくないだけでなく、食欲・性欲・睡眠欲の三大欲求の減退や、「無為自閉」と呼ばれるあらゆることにおける興味・関心の低下・喪失が見られます。ただし、服薬の影響で食欲・性欲・睡眠欲に関しては、亢進する場合もあります。
a.気分障害(うつ)
多方面における興味・関心・意欲の低下・喪失が見られます。簡単にいうと「何もしたくなくなる」訳です。症状が悪化すると希死念慮と呼ばれる自殺願望が生じ、自殺企図につながる場合もあります。人と関わりたくない、のレベルを超えて生活全般ひいては命の危険の可能性もあります。
気分障害・うつ病の詳しいことは下記をご参照ください。
b.統合失調症
主に幻覚・妄想等の陽性症状と感覚鈍麻と呼ばれる陰性症状があります。
幻覚・妄想の種類は多岐に渡りますが「誰かに見られている」「誰かが自分の食べ物に毒を入れている」等の妄想が悪化することにより、外に出て人と会うことを避けるようになります。また陰性症状では思考力や判断力の低下・喪失が見られたり、これまで行っていた活動や社交への興味の減退・喪失が起こります。
また、二次障害としてうつを併発する場合もあります。
統合失調症の人への関わり方や接し方については以下をご参照ください。
(2)社会生活・対人関係に特化した原因
日常生活はそれほど支障なく過ごせますが、人前に出る・人と関わる場面で症状が起きます。
a.社交不安障害
以前は「対人恐怖症」「赤面症」等と呼ばれていたものです。
ある特定の状況や人前で何かをする際に緊張や不安が高まり、赤面・発汗・手足や声の震え等の症状が起こります。一度症状が起こった後、また同じ症状が起こるのではないかという「予期不安」が現れることで、症状が起こりそうな場面を避けるようになります。
人と関わる場面で症状が起こることが殆どなので、症状が起こりそうな場面を避ける=人と会う・人と関わるのを避けるとなり、人と関わることがどんどん億劫になっていきます。
社交不安障害についてのさらに詳しいことは下記のページをご覧ください。
b.回避性パーソナリティ障害
日常での出来事に対する反応や対人関係の築き方は人によってさまざまです。その反応の癖や築き方の特徴によって、本人がひどい苦痛を感じていたり生活に支障をきたしているものをパーソナリティ障害といいます。回避性パーソナリティ障害はその内のひとつで、否定・拒否・拒絶されることや屈辱的な場面・恥をかくことを極端に回避する特徴があります。
社会生活をしていれば誰しも人前で失敗したり、自分の意見を否定されることはあるでしょう。ですが、この障害は失敗して恥をかくことや自分の意見や考えを否定されることが何よりも辛いため、そういった場面を回避しようとします。その結果、人前に出ること・人と関わる場面がおのずと減っていきます。
(3)ストレスや特性に起因したもの
上に挙げた2つとは異なり、病気や障害ではありませんが、人と関わりたくなくなる原因の一つとして考えられます。
a.感情労働
自分の感情を用いて、相手にプラスになる働きかけを行う労働をさします。肉体労働は「肉体」を、知的労働は「知識」を提供して報酬を得るように、感情労働は「感情」を提供する訳です。
仕事をしていれば多かれ少なかれ誰しも感情の提供をしていますが、特に医療・福祉従事者など直接他者と関わる対人支援職に求められる労働のあり方です。感情の提供を求められ続けることで疲弊していき、人と関わることが本来の職務であるにも関わらず、その職務であるが故に、「もう人とは関わりたくない」となってしまいます。
b.HSP
HSPとはThe Highly Sensitive Personの略で、非常に感覚が過敏で、それによって過度に疲れてしまいやすい人のことを指します。これはいわゆる病気や障害ではなく、特性の一つです。
HSPはさまざまな刺激を直接的に感じてしまいます。通常であれば気にならなかったり、無視できるぐらいのレベルであっても、HSPの人によっては針を刺されるかのような痛みを伴う感覚となってしまいます。
そして、人との関係はHSPにとっては刺激の一つです。人との関係が刺激となり、苦痛となり、それを避けようとしてしまいます。
こうしたことで人と関わりたくなる時にはHSPの可能性があります。
HSPについての詳しいことは下記をご参照ください。
c.アダルトチルドレン
アダルトチルドレンとは幼少期に養育環境がよくない家庭で育った人をさします。こうした幼少期の経験は人間関係に深刻なダメージを与え、有意義で、楽しい人間関係を作ったり、維持したりすることがとても難しくなります。
人間関係で傷つきやすかったり、些細な言動に怒りを感じてしまったり、自分を抑制して過度に相手に合わせてしまったりしてしまいます。そのため、人間関係でひどく疲れてしまいます。
こうしたことから人と関わりたくないと思ってしまいます。
こうしたアダルトチルドレンについての詳細は下記のページに書いていますので、ご覧ください。
3.人と関わりたくない時には相談することも
「人と関わりたくない」冒頭でも述べましたが、この気持ちは誰しもきっと一度は経験する感情です。「自分だけがおかしいのではないか?」と思い悩む必要はありません。
心が(時には身体も)疲れているサインなので、少しリラックスする時間を作ってみてください。
いずれにしても一人で悩みすぎない・抱え込まないことが大切です。「人と関わりたくない」と矛盾するようですが、人との関わり方の悩みを助けてくれるのもまた、人です。
また、専門のカウンセラーによるカウンセリングやメンタルクリニックを受診してみるのもひとつの方法です。当オフィスでも相談やカウンセリングを行っております。ご希望の方は下記のページからお申し込みください。