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公開:2017-11-16 更新:2018-10-12

アダルトチルドレンのカウンセリング

目次

  1. アダルトチルドレンとは
  2. アダルトチルドレンの歴史
  3. アダルトチルドレンのチェックリスト
  4. アダルトチルドレンの原因
    1. 虐待
    2. 毒親
    3. 機能不全家族
    4. アルコール依存症の親
    5. 体質
    6. 原因論の問題点
  5. アダルトチルドレンのタイプ
    1. ヒーロー(英雄)
    2. スケープゴート(生贄)
    3. ロスト・ワン(いない子)
    4. ケアテイカー(世話役)
    5. ピエロ(道化師)
  6. アダルトチルドレンの問題
    1. 精神障害
    2. 極端な人間関係
    3. 否定的な自己像
    4. 自殺・自傷
    5. 世代間連鎖
    6. 生きづらさ
  7. アダルトチルドレンに対する支援
    1. 薬物療法
    2. 自助グループ
    3. カウンセリング
      1. 現在の問題の改善
      2. 過去のトラウマの整理
      3. 不安定なカウンセリング関係
  8. アダルトチルドレンの回復
    1. 良い自己像を育てる
    2. 適切な人間関係を生きる
    3. 親との決別
    4. やりがいや生きがいを感じられる
  9. おわりに

1.アダルトチルドレンとは

 アダルトチルドレンとは、幼少期の養育環境が虐待や不適切な育児により、非常に過酷であり、そのことによって成人してからもそのトラウマによって否定的な自己像を持ってしまったり、極端な人間関係に陥ってしまったりしている人のことを指します。内的には非常に不安定であり、生きづらさをもち、時には精神障害を患ったりしてしまうこともあります。

2.アダルトチルドレンの歴史

 もともとアダルトチルドレンという用語は1969年に出版されたマーガレット・コークによる”The forgotten children : a study of children with alcoholic parents”(忘れられた子どもたち-アルコール依存症の親に育てられた子どもの研究)という書籍の中で使用されたことから始まります。

 そのため、アダルトチルドレンはAdult Children of Alocoholic通称はACOAと言われていましたが、その後簡略化してACとか言われたりすることもありました。そして、アルコール依存症の親だけではなく、不適切な養育をする親にまで対象は広がっていきました。それが1980年代に登場した機能不全家族という用語につながっています。

 日本では1989年に齊藤學が誠信書房から「私は親のようにならない(原題:Claudia Black ,It will never happen to me)外部リンク」を翻訳出版されたところから歴史ははじまります。これによって爆発的に日本に広まり、アダルトチルドレンに関する書籍が多数出版されました。しかし、アダルトチルドレンが診断名のように流布してしまい、アダルトチルドレンであると誤った自己診断が横行するという問題が発生しました。また、治療や支援に利用できないレッテルやスティグマのようになってしまったところもあります。そのため、アダルトチルドレンではなく、アダルトサバイバーという用語が代わりに用意されたりもしましたが、そこまで広まってはいないようです。その他、専門家でもアダルトチルドレンは誤解を生じやすい用語なので、医学用語であるPTSD不安障害パーソナリティ障害といった診断名を使用することが多かったりもします。

 このホームページでは専門家間の共有認識は踏まえつつ、一般の方に広く知られているということでアダルトチルドレンという用語を使用し、これらのことについて解説したいと思います。

3.アダルトチルドレンのチェックリスト

 アダルトチルドレンかどうかを「診断」するチェックリストはネット上で多く落ちています。しかし、そのほとんどは心理尺度としての妥当性や信頼性が欠けるものが多いようです。おそらくは作成者が恣意的に、当てはまりそうなものを寄せ集めて作っただけだからでしょう。

 統計処理され、科学的論文に掲載されたものとしては、アダルトチルドレン尺度があります。この尺度は「大学生の精神保健に関する研究: 機能不全家族とアダルト・チルドレンPDF外部リンク」と「アダルト・チルドレン特性と対人関係でのストレスの自覚の程度との関係-看護学生と他学科学生との比較PDF外部リンク」に掲載されています。以下に尺度を引用します(笹野、塚原 1998)。

  1. 私は正しいと思われることに疑いを持つ。
  2. 私は最初から最後まで、ひとつのことをやり抜くことができない。
  3. 私は夲音を言えるようなときに嘘をつく。
  4. 私は情け容赦なく自分を批判する。
  5. 私は何でも楽しむことができない。
  6. 私は自分のことを深刻に考えすぎる。
  7. 私は他人と親密な関係を持てない。
  8. 私は自分が変化を支配できないと過剰に反応する。
  9. 私は常に承認と称賛を求めている。
  10. 私は自分と他人は違っていると感じている。
  11. 私は過剰に責任を持ったり過剰に無責任になったりする。
  12. 私は忠誠心に価値がないことに直面しても、過剰に忠誠心を持つ。
  13. 私は衝動的である。行動が選べたり結果も変えられる可能性がある時でも、お決まりの行動をする。その衝動性は、混乱や自己嫌悪や支配の喪失へとつながる。そして混乱を収拾しようと、過剰なエネルギーを使ってしまう。
はい(2点)、どちらでもない(1点)、いいえ(0点)で合計し、12点以上のものはアダルトチルドレンに該当する可能性が高い。

 この尺度もまだ研究途上のものであり、今後の妥当性と信頼性の研究が続いていくもののようなので、確定的なことは言えないようですが、参考程度にはなるかと思います。

4.アダルトチルドレンの原因

 アダルトチルドレンになってしまう原因や要因と言われているものにはいくつかあります。そのほとんどが親や養育環境に原因を帰しています。

(1)虐待

 虐待には、身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、ネグレクトが代表的なものとしてあります。その他に医療ネグレクト、教育ネグレクト、経済ネグレクト、DVの目撃、親の性行為を見せる、なども虐待であると最近では言われています。

 こうした虐待が常習的になると子どもの心身の成長は妨げられ、人との信頼関係を築くことが障害されます。また、子どもは虐待的な環境を生き抜くために様々な方略を使用しますが、そうした方略は虐待を生き抜くには必要であっても、通常の人間関係や社会の中で使用すると非常に不適切になってしまいます。

 例えば、親を怒らせないようにいつもニコニコし、過度に従順に振舞うことがあります。そうした振る舞いを学校や社会、職場、友人関係、恋愛関係の中で行うと反対に人間関係に壁ができて信頼が結べなかったり、時にはいじめや搾取の対象となってしまったりすることもあります。

(2)毒親

 最近、よく見かける言葉です。もちろん医学用語や学術用語ではないので、厳密な定義があるわけではありません。子どもに害となるような言動や振る舞いをする親、という意味合いです。子どもを傷つけたり、否定したり、支配したり、苦しめたりするような親で、心理的虐待と重なる部分が多いと思われます。

(3)機能不全家族

 家族とはそれぞれの成員がそれぞれの成員を尊敬し、尊重し、互いの成長を支え合い、時には励まし、時には協力していくという機能があります。それが様々な事由によって、そうした機能が働かず、上記のことが成立しない、もしくは反対のことを行ってしまう家族を機能不全家族と言います。

(4)アルコール依存症の親

 アダルトチルドレンはもともとアルコール依存症の親に育てられた子どもという意味でした。アルコール依存症になると他者への配慮や関心が薄れ、アルコールを飲むかどうかばかりに注意がいってしまいます。そして、アルコールを飲むために利用できるものがあれば何でも利用しようとします。アルコール依存症の親が子どものお金を盗ったり、子どもにアルコールを買いに行かせたり、アルコールが無くなった時には子どもに暴力をふるったり等のような行為を行ってしまいます。そうした行為にさらされた子どもは健全に育つことは非常に困難でしょう。

(5)体質

 子どもは生まれた時から遺伝的、先天的な特性を持っています。泣きにくい赤ん坊から泣きやすい赤ん坊まで様々でしょう。

 実際的に自閉的な子ども、注意集中がしにくい子ども、扱いにくい子ども、理解能力が低い子ども、過敏な子ども、衝動的な子どもであると親は非常にストレスを抱えやすく、また子どもの問題を抑え込もうとして支配的になったり、叱責が多くなったり、時には手を出してしまったりすることもあります。そうなると、家族は疲弊し、殺伐とし、怒りが蔓延する雰囲気になってしまうでしょう。そして、そうした事柄が翻って子どもにまた悪影響を及ぼしてしまい、さらなる問題を惹起させてしまいます。

 子どもの体質ゆえの問題行動に対する対処が虐待や不適切な養育といった親の行動になり、それらがアダルトチルドレンを生み出してしまうことになることもあります。

 もちろんこれらも子どもが原因である、という単純な話ではありません。

(6)原因論の問題点

 先にも書いたようにアダルトチルドレンの原因と言われるようなことはほとんどが親に属しています。確かに親の虐待や不適切な養育が子どもの心身の成長を妨げ、成人した際の適応や人間関係に影を落としてしまうことはそれなりにあると思います。

 しかし、親に原因を求め、親の責任にし、親を憎むだけでは、本当の意味でのアダルトチルドレンからの回復は難しいでしょう。親を許さねばならない、とは全く思いませんが、憎しみに固着するのではなく、親の現実を理解した上で、親との決別を心理的に成し遂げることのほうが重要になります。

 親が原因であるとすることが最終目的ではなく、回復へと向かう過程の一つにすぎないと言えるでしょう。

5.アダルトチルドレンのタイプ

 アダルトチルドレンと一口に言っても、さまざまな人がいます。アダルトチルドレンの類型、タイプ分けについては色々な提案があり、一律のものはありません。ここでは、類型の代表的なものだけを選択し、解説します。

(1)ヒーロー(英雄)

 勉強やスポーツで良い成績や評価をもらうことを第一としています。しっかり者、頑張り屋さんというように見られることがありますが、そうした努力は自身のためではなく親の期待に応えるために、もしくは家族の雰囲気を悪くしないための防衛的で、後ろ向きな意味合いがあります。

 こうした努力が実っている内は良いですが、それが何らかのきっかけで挫折したり、失敗したりしたときに、心がぽっきりと折れてしまい、破綻してしまいます。

(2)スケープゴート(生贄)

 ヒーローとは全く反対に、問題行動を起こしたり、過剰に低い成績を取ったりして、家族の中で悪者や問題児の立場を引き受けます。家族の憎しみや怒りや不満、鬱憤を一人で引き受け、そのことにより家族のバランスを取ろうとしているのです。家族の中のゴミ箱的な役割とも言えます。

(3)ロスト・ワン(いない子)

 家族の中での存在を消し、いない子どもとして、生まれてこなかった子どもとして家族との関係を断ち、ひっそりと気配を感じさせずに生きていこうとします。時には迷子になっても家族のだれからも気付かれることがなく、旅行にも連れて行ってもらえず、家の中にはいても、いつも一人で孤独にいます。

(4)ケアテイカー(世話役)

 献身的に家族の世話をし、愚痴を聞き、支えることを過剰なまでに行います。それは自己犠牲的であり、自虐的でもあります。家事をしない親に代わって家事をしたり、養育をしない親に代わって弟妹の面倒をみたりします。そして自身のことは何でも後回しにしてしまいます。そうした家族を維持する機能を一身に背負って家族が崩壊しないように、バランスが取れるに努力をします。

(5)ピエロ(道化師)

 家族の暗い雰囲気を回避するために、おどけたり、おちゃらけたり、冗談を言ったり、面白いことを言って笑わせたりして明るい雰囲気を作ろうとします。ひょうきんで明るい性格に一見すると見えますが、過度に雰囲気を読み取り、人の表情を伺い、どうすれば険悪なムードにならないかと常にビクビクしていたりします。

6.アダルトチルドレンの問題

 アダルトチルドレンによって以下のような様々な問題が生じます。

(1)精神障害

 診断としては、不安障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、うつ病、気分障害、双極性障害、境界性パーソナリティ障害、自己愛パーソナリティ障害、解離性障害、適応障害、等といった診断名がつけられたりすることが多いです。つまり、アダルトチルドレンといっても、様々な症状や問題があり、状態像もまちまちであると言えるでしょう。

(2)極端な人間関係

 過度に人間関係から引きこもり、親密な付き合いを避けたりします。しかし、反対に過度に人に依存し、相手のためなら何でもするといった没頭をしてしまうときもあります。また、通常の人間関係を築いていたりしても、心から信用すること信頼することができず、疑心暗鬼を常に持っており、表面的な付き合いに終始することもあります。そうした意味で極端な人間関係に陥ってしまいがちです。

 そうした中でアダルトチルドレンの心の中では、憎しみの気持ちと人と裏腹な親密になりたい気持ちが同時並行に存在し、葛藤していることが多いようです。

 また、こうした人間関係は当たり前ですが、カウンセリングの中のカウンセラーとの関係の中でも反復しがちです。精神分析的には転移とも言いますが、アダルトチルドレンがカウンセリング関係の中に持ち込んでくる転移や反復のために、信頼関係を築くまえにカウンセリングが中断してしまったり、継続していたとしても疑心暗鬼と強い駆け引きが行われるカウンセリングになってしまったりすることが多いようです。

(3)否定的な自己像

 アダルトチルドレンは自身のことを過度に否定的に見ており、自己評価や自尊心は非常に低いことが多いです。そのため、自分自身のことを大切にできなかったり、傷ついても平気なように見えたりすることもあります。時には自分のことを犠牲にして相手に尽くそうとしたりします。他者から、家族から大切に扱われていないとき、人は自分自身を大切に思えなくなってしまうのでしょう。

(4)自殺・自傷

 こうした否定的な自己像や否定的な人間関係が繰り返されると、生きていくことに希望を持てず、将来に期待することもできず、苦しみばかりがあるように思えてしまいます。そうなると、死ぬことの方が苦しみから解放されるように思えてしまいます。そうしたときに衝動的に自殺に至ってしまうことも多いようです。

 また、自傷行為をしてしまうことも多いようです。自傷には様々な意味合いがありますが、自傷によりある種の快感がもたらされるため、苦しみから一時的に逃れることができることもあります。悪い自己を手首に投影して、その手首を切ることもあるようです。自傷による痛みで生きている感覚を取り戻せることもあります。自傷は自分自身を助けるための防衛とも言えるでしょう。

(5)世代間連鎖

 親との関係の中で起こったことが、自身が子どもを持った時、その子どもとの間で同じようなことを繰り返してしまいます。親が子に、子が孫にというようにバトンを渡すように受け継がれていきます。

 親から愛されなかったのに自分の子どもを愛せるのだろうか、という不安と苦しみは相当大きいようで、人によっては子どもを作ることや結婚そのものを忌避してしまうことがあります。そして、この呪われた血筋を途絶えさせたいと思うアダルトチルドレンもいるようです。

(6)生きづらさ

 精神障害、極端な人間関係、否定的な自己像、自殺、自傷、世代間連鎖を見ても、生きていくことに希望や期待を見出すことは困難であり、非常に生きづらさを抱えながら生きているようです。生きているのに死んでいる、死んでいるように生きている、とも言えるかもしれません。

7.アダルトチルドレンに対する支援

 こうした困難の多いアダルトチルドレンに対するケアや支援には様々ありますが、その代表例が薬物療法、自助グループ、カウンセリングです。

(1)薬物療法

 精神障害の項目で取り上げたように、アダルトチルドレンは様々な精神症状を呈します。抑うつ、不安、衝動的行動、解離、軽躁、強迫、対人緊張、パニック、不眠、食欲低下、過食、拒食、等です。こうした症状に対して薬物療法は非常に効果が期待できます。症状の苦痛さだけでも和らげることができると随分とマシになります。

 ただし、アダルトチルドレンの本質である心的な苦痛や生きづらさは薬物療法だけで改善は難しいようです。薬物療法は苦痛を緩和する補助的なものとして理解しておく程度が良いかもしれません。

(2)自助グループ

 同じような困難をもつアダルトチルドレンがお互いに支え合うグループです。グループ療法のようにお互いのことを話したり、講師を招いて勉強会を催したり、一緒にイベントを行ったりする中で、自助作用による影響を受けることができます。

 もちろん、根本に人間不信があるので、すぐに自助グループに親しむことができないかもしれません。しかし、そうしたことであっても、中長期的にグループに所属することで、アダルトチルドレン的な言動をせずにすみますし、人の体験談を聞くことで参考にすることができます。そうしたことが回復の一助になっていきます。

参考:アダルト・チルドレン・アノニマス外部リンク

(3)カウンセリング

 カウンセラーと1対1で話を積み重ねていくことにより、現在の問題の改善や過去のトラウマの整理などを行っていきます。

a.現在の問題の改善

 前者では今現在の職場、学校、家庭、友人関係、恋人関係の中で様々な困難に見舞われていることが多いです。そのほとんどは人間関係の問題に関わっているでしょう。アダルトチルドレンは極論すれば関係性の病と捉えることもできます。一見すると、他者(上司、親、友人、恋人など)が悪いように見えてしまうこともありますし、そうした他者を非難・批判したくなることもあるかもしれません。確かに部分的にそうした時もあります。しかし、他方ではアダルトチルドレンであるクライエントとの相互作用によってそうした事態になっている場合も時としてあります。ですので、他者との関係をどのように捉えなおすのか、そして、どのように振舞っていく方が良いのか、などについて考えていくことが改善の道につながっています。そうしたことをカウンセラーとの対話を通して取り組んでいきます。

b.過去のトラウマの整理

 後者の過去のトラウマの整理についてもカウンセリングでとりあつかっていきます。多くの場合には家族や近親者との関係の中で、無力であった幼少期の時期にどうしようもない事態に巻き込まれ、心と身体が傷ついています。それによって、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の診断には当てはまらなくても、フラッシュバックや麻痺、解離が起こっていることが多々あります。そしてその時のトラウマを反復するかのように、現在の人間関係で破壊的な行動をとってしまうこともあります。自傷的に性行為を繰り返すこともあるでしょうし、自己犠牲的に他者に尽くしてしまうこともあるでしょう。それらも過去の反復と理解することもできます。そうした過去のトラウマについて、回避したり、反復したり、考えないようにしたりすることではなく、しっかりと向き合っていくことも必要となっていきます。その当時のことについてカウンセラーと話し合い、過去の出来事の捉え方が少しずつ変化していくことを目指します。時には、精神分析的心理療法EMDRなどの専門療法を使って、過去のトラウマの整理を行います。

c.不安定なカウンセリング関係

 こうしたように、現在の問題と過去の整理が車の両輪のように進むことによって、アダルトチルドレンが改善していくことが期待できます。しかし、上記に書いたように、関係性の病であるということは、カウンセラーとの関係の中でも問題や病理が発生してしまったりもします。カウンセラーに対して過度に警戒的になってしまったり、過度に従順になってしまったり、不安のためにカウンセリング関係を継続することができなくなったりなどがあります。そもそも信頼関係を結ぶことに非常な困難があるため、カウンセラーとも信頼関係が適度に結ぶことができない事態はしばしば起こります。

 こうしたことにより、カウンセリング関係が非常に不安定になり、カウンセリングのプロセスの途中で中断になってしまったりします。もしくは、そもそもカウンセリングで取り組みましょうという合意に至らずに初回~数回程度で終わってしまうことも稀ではありません。アダルトチルドレンの病理ゆえにカウンセラーとの間でも関係性の病が反復してしまいます。

 しかし、そこを踏ん張って、まずはカウンセリングを継続していくことに苦心できると良いでしょう。最初の段階のカウンセラーとの信頼関係を築くことそのものを目標にすることもできます。そのために、カウンセラーに対する不信感、不安、警戒心、不満といった否定的な思いを敢えてカウンセラーにぶつけていく、話をしていくということは意外と効果があります。そうした否定的な思いを言うことは関係を破壊してしまうのではないかと考えがちですし、実際の人間関係ではそうなることもあります。しかし、カウンセリング関係は日常の関係とは異質であり、そうした否定的な思いを口にすることで、そうなっていることの意味を考え、向き合っていくことが価値あることになるのです。そして、否定的な思いを口にしても、それを咎められず、カウンセラーが真正面から受け止め、向き合ってくれることは新鮮な体験をもたらすでしょう。そうした体験が過去の体験を修正し、真の信頼関係を築いていく基になっていきます。ひらたく言うと、ホンネをぶつけあって仲良くなるということになるかもしれません。

 アダルトチルドレンの支援で、カウンセリングは重要な位置を占めています。それはアダルトチルドレンが脳の疾患などではなく、生き方と関係の課題を抱え、心理的な要因が強く影響しているものだからです。カウンセリングではカウンセラーとクライエントの間で抜き差しならない困難な関係になってしまうこともありますが、そうした困難な関係を生き残ることでカウンセリングのプロセスが進展し、改善に寄与します。そうした意味で困難な関係になることは必要不可欠なことであり、そうなっていることは反対にカウンセリングが良い方向で機能していると理解しなおすこともできます。苦しい時こそ、踏ん張ってカウンセリングに来続けることができたらと思います。

8.アダルトチルドレンの回復

 様々な支援や治療、カウンセリングによってアダルトチルドレンから回復していくと以下のような変化があらわれてきます。以下のこと全てが達成できるということにはならず、部分的な達成であるかもしれません。また、期間は人にもよりますが、数年程度はかかることはざらにあります。幼少期からの長期にわたるトラウマの積み重ねがあるので、治療も長期になってしまうことはいかんともしがたいところではありますが。

(1)良い自己像を育てる

 アダルトチルドレンの方はほとんどの場合、自己評価や自尊心が低く、自分自身と良いものと思えないようです。非常に悪い存在であると体験し、そのため、過度に評価を気にしてしまったり、反対に悪い行動をして他者からの評価を落とすことによって「やっぱりそうだ」ということを再認識しようとしてしまいます。

 治療やカウンセリングをとおして、自分自身にも良いところがあると発見したり、他者から尊重されるという体験をとおして、自分を大切に思えるようになったりします。それはこれまで成長が停滞してしまっていた、もしくは過去に置き去りにされていた良い自己像を再度成長させることと言えるでしょう。そして、自分自身を大切にできるような考えや振る舞いができるようになっていきます。

(2)適切な人間関係を生きる

 アダルトチルドレンの方は支配的な関係や、暴力的な関係、共依存的な関係に陥ってしまうことが多々あります。それは過去のトラウマの反復と言える場合もあります。そうした関係が反復することにより、さらに新たな傷つきやトラウマが上乗せされ、事態はもっと悪化してしまいます。

 こうしたことも、治療やカウンセリングにより、適度な距離をもった関係の在り方に変化していくでしょう。人に適度に頼りつつも自分をもつこともできます。反対に人を余力ある分だけ助けることもできるようになります。それは無理をせず、自然な範囲内ということになります。人間関係は良いものばかりではありません。時にはストレスになってしまうような人間関係もありますが、そうした人間関係に対しては過度に関わらず、少し距離をもった社会性のある関係の取り方もできるようになっていくでしょう。そして、恋人や配偶者に対して強い依存のない愛情生活を送れるようになるでしょう。

(3)親との決別

 アダルトチルドレンの方は、親が既に亡くなっていたり、行方不明になっていたりしていることもあります。もしくは今現在も強い影響力を受けながら生活していることもあるでしょう。

 そうした親を許したり、再度良い関係を築くということが良い場合もありますし、反対に決別し、親とは別の人生を歩む場合もあります。どちらが最善であるとは分かりませんが、経験的に圧倒的に後者の選択をする方が多いように思います。実際的にアルコール依存症の親やDV的な親もいますから、必ずしも和解しなければならないということはありません。いずれにせよ、親との関係に整理をつけ、良い意味で決別し、自立し、自分の人生を大切にしていくような考えや行動になっていけると良いと思います。

(4)やりがいや生きがいを感じられる

 ほとんどのアダルトチルドレンの方は、自分の人生を生きることができず、無力感や絶望感、無意味さを抱えながら生きています。そして、他者のために犠牲になるような選択をしてしまいがちです。そうした中ではやりがいや生きがいを感じることはないでしょう。あっても、部分的でしょう。

 上記で書いた良い自己像が健全に育っていくと、自分のために時間や労力を割けるようになります。その過程で、楽しむという体験も増えていくでしょう。アダルトチルドレンの方は楽しむことができない方が多いようですから。そして、長い人生の目標について考えることができるようになり、その目標に向かって進むことそのものにやりがいや生きがいを感じることができていくようになります。一見苦痛な勉強、労働、訓練なども手応えのある行動と体験されます。先の目標を達成するために、今目の前の課題に取り組めますし、その課題をこなすことそのものが喜びとなっていくでしょう。これこそが自分を大切にするということにもつながっていきます。

9.おわりに

 アダルトチルドレンの歴史、原因、タイプ分け、問題、支援方法、回復過程についてまとめました。アダルトチルドレンは医学的な診断名ではないものの、共通した状態像があり、またガイドラインほどではないものの、そこそこ系統だった支援方法もあります。そうした意味では単一のものとしてまとめることができるかと思います。また、支援方法には様々なものがありますが、その中でもカウンセリングは重要な位置を占めています。アダルトチルドレンの方が少しでもより良い方向に進んでいくための道標となればと思っています。


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