アダルトチルドレンに対するカウンセリングのポイント

アダルトチルドレンは人間関係に課題を抱えていることが多いです。そのためカウンセリングの中でカウンセラーとの関係が葛藤的になってしまうことがあります。
そうしたアダルトチルドレンのカウンセリングの課題と乗り越え方について書きます。
目次
アダルトチルドレンとは
アダルトチルドレンとは、幼少期に機能不全家族で育った影響で、大人になっても生きづらさを抱える人を指します。親の機嫌を常に気にして育ち、自分の感情を抑える癖がつくことで、対人関係で過剰に相手に合わせたり、逆に人を避けたりすることがあります。仕事や恋愛がうまくいかない、自分に自信が持てないといった悩みにつながることも少なくありません。カウンセリングでは過去の体験を整理し、自分の感情を表現する練習や境界線を引く練習を通じて、より健全な人間関係や自己肯定感を取り戻していきます。
よくある相談の例(モデルケース)
30歳代 女性
Aさんは30歳代の女性で、幼少期から家庭内の緊張にさらされて育った。父親は酒量が多く、母親は気分の波が激しく、家では「いい子」でいることが求められた。自分の気持ちを話すより先に家族の機嫌を読む癖がつき、泣きたいときも笑ってやり過ごすことが多かった。家事や弟の世話を任されることも多く、失敗すると叱責を受けるため、常に肩に力が入っていた。大学では成績も人間関係も一見順調だったが、親密な関係になるほど不安が強まり、相手に過剰に合わせて消耗した。社会人になってからは上司の期待に応えようと残業を重ね、心身の疲労から不眠と食欲低下が続き、休日も罪悪感で休めなかった。やがて集中力の低下や動悸、突然涙が止まらない発作も起こるようになった。心療内科を受診し、抑うつ状態と不安症状に対する薬物療法を開始、症状は一部軽減したが、人間関係のパターンは変わらず、再び限界を迎えたためカウンセリングを申し込んだ。
面接ではまず、安全に気持ちを表現する練習から始めた。幼少期の「親を支える役」を担ってきたこと、怒りや悲しみを抑え込むほど関係は保てると信じていたことに気づき、境界線を引くスキルを少しずつ身につけた。グラウンディングや呼吸法で緊張を整えつつ、感情と言葉を結び付けるワークを重ね、頼みごとを断るロールプレイも取り入れた。並行して、過度な自己批判を和らげるために、出来たことを言語化して記録する宿題を続け、職場では「引き受ける前に一呼吸おく」「期限と優先順位を確認する」等の行動実験を重ねた。数年のプロセスの中で、依存と回避を往復する対人パターンは緩み、頼ることと断ることの両方が可能になった。家族と距離を調整するための手紙法も役立ち、対話で伝えづらい思いを安全に表出できた。
現在、Aさんは睡眠が安定し、親密な関係でも自分の感情を手放さずにいられる時間が増えた。家族とは必要な距離を保ちつつ面会し、連絡頻度も自分で決められるようになった。仕事でも役割を過剰に背負い込まない工夫が続けられており、困ったときは早めに相談する習慣が定着している。再発の兆しに気づくセルフチェックを維持しながら、趣味の活動や学び直しに取り組み、過去に縛られない生き方を少しずつ実感している。
アダルトチルドレンは関係性の病
アダルトチルドレンは関係性の病といわれるほど、人間関係に深刻な問題が生じることがあります。そのためにカウンセラーの元に来られることが多いようです。
しかし、上記に書いたように、関係性の病であるということは、カウンセラーとの関係の中でも問題や病理が発生してしまったりもします。
カウンセラーに対して過度に警戒的になってしまったり、過度に従順になってしまったり、不安のためにカウンセリング関係を継続することができなくなったりなどがあります。そもそも信頼関係を結ぶことに非常な困難があるため、カウンセラーとも信頼関係が適度に結ぶことができない事態はしばしば起こります。
こうしたことにより、カウンセリング関係が非常に不安定になり、カウンセリングのプロセスの途中で中断になってしまったりします。もしくは、そもそもカウンセリングで取り組みましょうという合意に至らずに初回~数回程度で終わってしまうことも稀ではありません。アダルトチルドレンの病理ゆえにカウンセラーとの間でも関係性の病が反復してしまいます。
Aさんは、幼少期から親の期待に応えようと必死に振る舞い、自分の感情を抑えて生活してきました。大人になっても人間関係で相手に合わせすぎてしまい、疲れやすく孤独を感じることが多くありました。
こじれた関係について話し合う
しかし、そこを踏ん張って、まずはカウンセリングを継続していくことに苦心できると良いでしょう。最初の段階のカウンセラーとの信頼関係を築くことそのものを目標にすることもできます。そのために、カウンセラーに対する不信感、不安、警戒心、不満といった否定的な思いを敢えてカウンセラーにぶつけていく、話をしていくということは意外と効果があります。
そうした否定的な思いを言うことは関係を破壊してしまうのではないかと考えがちですし、実際の人間関係ではそうなることもあります。
しかし、カウンセリング関係は日常の関係とは異質であり、そうした否定的な思いを口にすることで、そうなっていることの意味を考え、向き合っていくことが価値あることになるのです。そして、否定的な思いを口にしても、それを咎められず、カウンセラーが真正面から受け止め、向き合ってくれることは新鮮な体験をもたらすでしょう。
そうした体験が過去の体験を修正し、真の信頼関係を築いていく基になっていきます。ひらたく言うと、ホンネをぶつけあって仲良くなるということになるかもしれません。
Aさんの場合、カウンセリングの中で幼少期の家族との関係や職場での過剰適応について語り、怒りや悲しみを安全に表現できるようになりました。少しずつ境界線を引く練習を重ね、対等な関係を築けるようになりました。
困難さを乗り越えた先の希望
アダルトチルドレンの支援で、カウンセリングは重要な位置を占めています。それはアダルトチルドレンが脳の疾患などではなく、生き方と関係の課題を抱え、心理的な要因が強く影響しているものだからです。カウンセリングではカウンセラーとクライエントの間で抜き差しならない困難な関係になってしまうこともありますが、そうした困難な関係を生き残ることでカウンセリングのプロセスが進展し、改善に寄与します。
そうした意味で困難な関係になることは必要不可欠なことであり、そうなっていることは反対にカウンセリングが良い方向で機能していると理解しなおすこともできます。苦しい時こそ、踏ん張ってカウンセリングに来続けることができたらと思います。
Aさんは、過去の体験に振り回されることが減り、自分の気持ちを大切にした選択ができるようになりました。現在は趣味や学びを通して充実感を得ており、人とつながる喜びを少しずつ実感しています。
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アダルトチルドレンのカウンセリングに絞って書きました。アダルトチルドレンのカウンセリングは大変ではありますが、取り組む価値のあることだと思います。こじれるからこそ意味のあることに取り組んでいると理解できます。カウンセリングを通して自分自身に向き合いたいという方は以下の申し込みフォームからお申し込みください。