コロナ不安へのカウンセリング

コロナに負けない

1.新型コロナウイルス(COVID-19)とは

新型コロナウイルス(COVID-19)とは2019年末から中国の武漢から発生したウイルスの一つです。中国・武漢から爆発的に感染が広がり、今でも感染者数やそれによる死亡者が増えています。

(1)疫学

医療制度や地域などによって死亡率は相当異なっているようですが、日本では死亡率は2%ほどですが、欧米では10%を超えている場合もあります。感染率については外務省の海外安全ホームページに感染状況が掲載されています。それによると、欧米では1万人あたり30~40人ぐらいが感染しています。ちなみに日本では1万人あたり0.91人であり、意外と感染率が低くなっています。こうしてみると、日本では色々と批判されていますが、感染率も死亡率もかなり低く抑えられているといえるかもしれません。

(2)症状

新型コロナウイルス(COVID-19)の症状としては発熱や咳、味覚障害があります。また重症化すると肺炎を発症します。感染しても30~50%は症状が発生しないようです。また軽症例が多く、重症化するのは一部のようです。

(3)感染経路

感染経路は飛沫感染やエアロゾル感染のようで、空気感染は否定されているようです。またクラスターと呼ばれる集団感染が問題となっており、3密(密集、密接、密閉)で起こりやすいようです。潜伏期間はまだ不明ですが、3~7日と言われています。

(4)予防

新型コロナウイルス(COVID-19)に対する対策や予防としては、マスク着用、咳エチケット、手洗いうがいの徹底、アルコールなどでの除菌と消毒、十分な睡眠と栄養、3密を避ける、不要不急の外出を避ける、などが言われています。さらに日本でも緊急事態宣言が発令され、これによって生活や生命の維持にそこまで関係のない店舗などは休業に、また出社せずにできることはテレワークに、学校などは臨時休校にするということで国民の外出を少なくし、感染を抑え込むような取り組みがなされています。

(5)経済負担

ただ、こうした取り組みは経済活動が停滞することになり、そのため収入が下がり、生活に困る人も出てくるでしょう。そのために国は給付金や各種制度を整えて、サポートするように取り組んでいます。

簡単に新型コロナウイルス(COVID-19)についてまとめましたが、詳しくは厚生労働省のホームページ専門家の意見を参考にされると良いでしょう。

2.新型コロナウイルス(COVID-19)に対する不安

(1)正常な不安

新型コロナウイルス(COVID-19)はそれなりに恐ろしいものであり、自分自身が感染しないかと不安になってしまいます。また、外出自粛のなかで人との交流が制限され、人によっては引きこもりに近い生活になってしまっている場合もあるでしょう。孤独・孤立はいっそう不安や恐怖を助長することもあります。

こうした中で新型コロナウイルス(COVID-19)に対する不安によって苦痛感が強まり、不安を何とかしたいと思う人もいるかもしれません。確かに不安は苦しいものなので無くしたいと思うのは分からなくもありません。

しかし、この新型コロナウイルス(COVID-19)は現実的な問題があるので、ワクチンができるとか、感染が収束するとか、そうした現実的な解決がないかぎり不安はなくならないでしょう。むしろ、不安があるからこそ、情報収集を適切に行い、予防策を講じ、感染予防に取り組もうとします。もし、不安がなければ、こうした取り組みをせず、感染を拡大させてしまう行動をとってしまうことでしょう。ですので、不安があることが健康なことであり、必要なことなのです。不安を無くすことの方が問題があると言えるでしょう。

(2)過度な不安

ただし、不安が過度に高くなり、それによる不具合が生じてしまうと別問題かもしれません。例えば、コロナ不安のために手洗いを何時間も続けるとか、生活に必要なものすら買い物にいけないとか、人のちょっとした行動に過敏になり攻撃したりする、などです。不安を抱えて、適切な予防するというところで留まらず、過度に不適応な行動を取ってしまうとコロナ不安の問題が現実化してしまうでしょう。

(3)不安を煽る人

さらに、やっかいなことがこうした不安定な世情のときに、不安定な世情だからこそかもしれませんが、コロナ不安を煽る人も出てきます。根拠もないのにコロナに効果があると栄養食品や怪しげな器具を宣伝し、売りつける人がいます。スピリチュアル系や宗教の活動が活発化し、資金稼ぎや信者集めに奔走していると小耳に入ってきています。不安が世の中に蔓延すると、たいていこうしたスピリチュアルや宗教が跋扈しはじめるのは今回のコロナ禍だけではなく、震災の直後などにもみられたことです(参考:スピリチュアルのリスクのページ)。

3.過度な不安による問題

(1)不安耐性

不安に耐えることのできる能力と不安の高さの掛け合わせによって、不安を抱えられるか、それとも抱えられないかが決まります。例えば、不安耐性の低い人であれば、ちょっとした不安でも翻弄されてしまいます。不安耐性が高い人であれば、高い不安でも耐えることができるでしょう。

(2)不安症状

不安が過度に強くなった時の症状としては、パニック発作、過呼吸、めまい、動悸、息切れ、発汗、否定的思考、身体感覚異常、不眠、食欲低下、視野狭窄、回避、逃避、強迫症状、解離などがあります。さきほど述べたようにコロナ不安があるのは正常のことですが、あまりにも強くなり、こうした症状が出現し、それによる生活の支障が出てくる場合には対応策が必要になってくるでしょう(参考:不安障害のカウンセリング)。

(3)デマ

また、こうした不安が蔓延していると、デマが起こりやすくなります。マスクを作るために紙が必要になり、そのためトイレットペーパーやティッシュペーパーが無くなるというデマがあり、それによって一時期トイレットペーパーやティッシュペーパーが店頭から消えたことがありました。また、納豆が買い占められるということもありましたが、それは茨城県でまだコロナ感染者がいなかった時、茨城県の人は納豆を食べているからコロナが防げたというデマのためだったと言われています。その他にも大小さまざまなデマがありましたが、これはいずれも冷静に考えるとそんなことはないと分かるのに、不安が蔓延しているので、不安に駆られた行動を取ってしまうことから起こるのでしょう。

(4)暴力行為

時折、電車などで咳をきっかけに喧嘩になったり、暴行事件になったりするニュースをみます。確かに咳エチケットを実行していない人はチラホラ見かけます。そうした時、そこから離れたりして対処するぐらいが通常での対処だと思いますが、ここで激高し、暴力をふるってしまうのはいきすぎでしょう。こうした暴力行為は強いから行うのではなく、不安耐性が低く、不安が攻撃に転換しやすい自我の力の弱い人であると言えるかもしれません。

(5)被害妄想

不安が高じると、人は猜疑的に、被害的になります。こうした時、何もないのに人が攻撃してくる、悪さをしてくる、といった被害感が強くなります。陰謀論が起こったり、それを信じてしまうのも似たようなメカニズムでしょう。そして、こうなってしまったのはアイツのせいだ、と他者を批判したりすることもあるでしょう。コロナ不安の場合、欧米など自国の感染率や死亡率が高いにも関わらず、それらが低い国(日本など)をなぜか批判してきたりします。不安が高まると誰か攻撃対象を見つけたくなるのでしょう。

また、こうした心性は差別や嫌悪、忌避にもつながります。医療従事者の子どもが保育園を拒否されるなどの報道もありましたが、典型例でしょう。自身の中の不安や恐れが外に映し出され、それを攻撃するというメカニズムが働いているようです。これを精神分析では投影同一化と言っています。

(6)DVや虐待

コロナ不安とは直接関係ないかもしれませんが、重要なことなのでここでも取り上げます。外出自粛により、普段はバラバラで生活している家族が長時間家庭の中で一緒の時間と空間を過ごさねばならなくなっています。バラバラだからこそ均衡がとれていた関係が、一緒に過ごすことによって、むしろバランスを崩し、これまで家庭の中で隠蔽されていた問題や課題が出てきてしまうということもあります。また、コロナ禍により収入が低下したことによって、家族の中の不満が誰かに向かいやすくなることもあります。

こうした時、DVや虐待が起こってしまいます。またDVや虐待は家庭の中で隠され、社会の目が届かないところで起きたり、継続したりします。外出自粛の中では外との接点が少なくなり、発見がしにくくなります。こうしたこともDVや虐待が深刻化、長期化しやすい土壌となってしまうでしょう(参考:DV被害者のカウンセリング虐待のカウンセリング)。

(7)スピリチュアルや宗教の蔓延

不安耐性が低かったり、不安が強かったりすると、人は何かに助けや救いを求めたくなります。依存先を探してしまうといっても良いでしょう。こうしたことに乗じてスピリチュアルや宗教が跋扈し、資金と信者を集めます。そして、それにカモられてしまうことになるでしょう。不安によって思考が停止し、分かりやすく救ってくれそうなスピリチュアルや宗教の言葉を真に受け、信じてしまいます。

これによって一時的に安心するかもしれませんが、長期的に見ると不安に耐える力が養われず、依存心が増し、長期的に搾取されてしまいます。そうなると中毒みたいになってしまい、抜けることが非常に困難になってしまいます。

4.不安に対する対処法

不安を症状化したり、行動化したり、変なものにすがったりせずに、適切に抱え、コントロールし、対処できると良いでしょう。そのために、各個人でできることをいくつか提示します。

(1)リラクゼーション

リラクゼーションは心身の緊張や不安をやわらげることができます。リラクゼーションといっても様々なものがありますが、心理学的に効果が裏付けられているものが良いでしょう。呼吸法や筋弛緩法などは伝統的に使われています。また最近ではマインドフルネスなどを活用されることもあるようです。

(2)気晴らし

外出自粛のある中だと家の中ですることに限られてしまいますが、それでも余った時間に自宅でできる趣味などをしっかりとすることは大切です。最近では昔ながらのボードゲームやプラモデルなどが復活していると聞きます。無料配信される映画やアニメ、歌、マンガもあるようです。趣味というのは人から強制されてしても気晴らしにはなりませんが、何が自分自身の心にヒットするのかはやってみないと分からないということもあります。今までしたことのないことも一度やってみると面白いかもしれません。

(3)筋トレ

筋トレで世界の問題の9割が解決するという何かの宣伝を見たことがあります。これは言い過ぎだとは思いますが、それでも筋トレというのは意外と効果のあることだと思います。勉強の成績や営業の成績、人間関係などはどれほど努力しても報われないこともあります。しかし、筋トレはやればやるだけ着実に身に着きます。これは非常に自信になることだろうと思います。また身体を動かすことは健康状態にも良い影響を与えるでしょう。生活習慣病の予防にも最適です。こうしたことは精神的な健康にプラスにこそなれ、マイナスにはならないでしょう。本格的なものではなくても、自宅で腹筋や腕立てぐらいであれば行うことも可能ではないでしょうか。

(4)オンライン飲み会

最近のコロナ禍の中で新しく出現した言葉です。SkypeやZoomのビデオ通話を使い、それぞれの自宅でお酒を飲んだり、食事をしたりしながら会話を楽しむということのようです。外出自粛により孤立・孤独になりがちですが、こうしたヴァーチャルではあったとしても、人とのつながりや関係性が心に豊かさと彩を取り戻すことは充分に考えられますので、試してみるのも良いかもしれません。

(5)禁忌と禁止

一時的には不安への対処となりますが、長期的にみると不健康になってしまうこともいくつかあります。お酒やタバコなどは典型例です。お酒やタバコが増えてしまっている人は多いのではないでしょうか。確かに、こうした精神作用物質は即時的に快楽を得ることができます。それらが部分的で、一時的であれば害はないのですが、長期にわたり、また量も増えていくと身体の健康に重大な損傷をもたらしてしまいます。阪神淡路大震災や東日本大震災などの震災の直後からアルコール依存が社会問題化していることが報じられたりもしました。日本ではまだ少ないですが、海外などではドラッグなどの常用による社会問題も大きいようです。こうしたことに依存するのは不安への対処とは言いません(参考:依存症・嗜癖・アディクション)。

また、不安への対処とは直接的な関係はありませんが、自分だけは感染しないと考え、クラスターが発生しそうなところに無防備に出かけていく人もいます。これを心理学では「正常性バイアス」と言います。こうしたバイアスを持っていると、夜の繁華街やパチンコ屋などに平気で行ったりしてしまいます。また某野党の政治家は新型コロナウイルスが蔓延している現状で、風俗通いをしていたようで、おそらくこれも正常性バイアスから説明できるかもしれません。繁華街やパチンコ、風俗が絶対的に悪いとは思いませんが、クラスターになりそうなところ何の考えなしで行くことがどれほど自身や周りの人、ひいては国民に害するのかを考えてもらいたいと思います。

そして、こうしたことももちろん不安の対処とは言えません。

5.新型コロナウイルス(COVID-19)への不安に対するカウンセリング

前述したとおり、単なる不安であればそれは正常な反応であるので、特に何もする必要はありません。しいていうのであれば、不安のメカニズムや不安の必要性についての心理教育を行ったり、病的な不安に移行しないための予防策を助言したり、話し合ったりすることは可能でしょう。

また、精神疾患や精神障害の方は相対的に不安耐性が低いので、こうした世情に影響されてコロナ不安を口にしたり、それぞれの疾患の症状が悪化・増悪したりすることはあります。そうした時にはコロナ不安と元来の症状・問題を区分けし、何に取り組むのかの優先順位をはっきりとさせながら、カウンセリングをしていくと良いでしょう。目の前のことだけにとらわれることなく、全体的な布置の中で治療戦略を組み立てていく必要があります。

3の(2)で書いたような不安が過度になり、そのための症状が出ているときには、それなりのカウンセリングの技法が必要になります。不安の認知行動療法ではエクスポージャーや曝露反応妨害法などを使用することがあります。しかし、この新型コロナウイルス(COVID-19)では現実曝露をすることは不可能でしょう。例えば、潔癖恐怖が出ている人に、マスクなしで外出する課題や3密のところに出かける課題などはできません。とすると、できることとしては、リスクの現実的な見積もりと妥当な対処のバランスを見つけるような認知的方策に働きかけるような認知療法的なカウンセリングができるかもしれません(参考:認知行動療法)。

また、ストレスマネジメントのように心身の不安と緊張をほぐし、適度な負荷に変えていくようなエクササイズを実践することも現実的かもしれません。一から実践できない方もいるので、そういう時にはカウンセラーと一緒に行うと安心感も増し、取り組みやすくなるでしょう。

さらに、DVや虐待などの家庭の問題が起こっているのであれば、現実的な対応策が必要になってきます。DVなどへの対処は「DV被害者へのカウンセリング」に詳しく述べているので、参照してみてください。

治療戦略の優先順位にもよりますが、自分自身の心の在り方を見直し、自分自身の行動パターンを内省し、こうしたことを素材に自分自身のことを考えていく、精神分析的心理療法のようなアプローチが必要になってくる人もいるでしょう。自分のことや行動パターンを理解できると、より質の高い安心が得られ、対処法が自ずと見つかります(参考:精神分析的心理療法)。

6.オンラインカウンセリングの利用

対面でのカウンセリングの場合、適切な予防をしていないと感染リスクが高まります。一つの部屋の中で長時間にわたり、対話をするので、無防備ではできないでしょう。また、こうした対策を行っていても、電車などの交通手段によっては危険なこともあります。

その場合には、オンラインカウンセリングを利用することも良いでしょう。特に新型コロナウイルスが陽性ではなかったとしても発熱や咳などの症状があると自宅での静養が必要となるので、そうしたときにオンラインでカウンセラーと話すことで安心を得られることもあるでしょう。一人で孤立していると、思考も否定的になってしまいますから。

当オフィスでもオンラインカウンセリングを実施していますので、参照してみてください(参考:オンラインカウンセリングのページ)。

タイトルとURLをコピーしました