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トラウマから依存症になるのか

私たちは、トラウマとまではいかなくても、日々心の傷を負うことがあります。その傷ついた心はどのように回復しているのでしょうか。人との関わりでしょうか、趣味でしょうか、それとも、お酒でしょうか。

私は、タイトルの問いについて次のように考えています。「トラウマを負うと依存症にもなってしまう」というのではなく、「トラウマから自分自身を守るために何かに依存せざるを得ない状況になる」のではないでしょうか。心は自分で自分を守る術を身につけているといわれています。

依存症はトラウマから身を守るための防衛反応ではないかという視点で見ていきたいと思います。

1.トラウマとは、依存症とは

トラウマや依存症についての基本的な事柄については以下のページをご覧いただけたらと思います。

2.トラウマを負うということ

例えば、すごく凄惨な場面を目にしたり、直接あなたが何かしらの被害を負ったりしたとします。その場面がずっと脳裏に焼き付いて離れてくれません。次第に夜、布団に入るとフラッシュバックするようになってしまいました。全く眠れないまま朝を迎える日々が続きます。心身ともに限界を迎えました。

さて、このような状況になったとして、私たちは何にも頼らず、何にも依存せずに自分だけの力でトラウマを乗り切ることができるでしょうか。もし、近くに信頼できる人がいればその人に相談できますが、頼る人がいなければどうなるか分かりません。

3.トラウマから依存症へ

「これを飲めば全部忘れられるよ」と、目の前に“それ”が置かれたとき、手を付けずにいられるでしょうか。

「もう耐えられない」、「もう傷つきたくない」、「早く忘れたい」、とボロボロになっている心は“それ”を求めてしまうかもしれません。あくまで、ここで述べたいことは、トラウマから身を守るためには“それ”に依存すればいいということではなく、“それ”に依存するということは不思議な反応ではないということです。

“それ”がアルコールであったり、タバコであったり、ギャンブルであったり、覚醒剤であったり、恋愛であったり、セックスであったり、買い物であったりするかもしれません。

そうなるとパチンコをやめたいのにやめられない、ギャンブルをやめたいのにやめられない、お酒をやめたいのにやめられない、という状態になってしまいます。

トラウマから依存症になることは、とても自然な流れのことのように感じられたのではないでしょうか。

4.忘れるということ

私たちは、トラウマや依存症と向き合うとき、何が問題であるかというところをしっかり見据えなければなりません。

何かに依存するということ自体が悪いわけではないのです。何にも依存せずに生きるということは不可能に近いことです。しかしながら、依存するものによっては、余計にあなたを傷つけてしまう可能性があるのです。

ここでひとつ、抑えておきたい大切なことは、依存症はトラウマから身を守る術であるかもしれないが、回復する術ではないということです。ただ単に嫌な記憶から逃れるために手にしていたアルコールや薬、ギャンブルなども、悪化すれば、それだけを求めるようになってしまいます。依存症の問題が深くなると、さらに身をほろぼすことにつながるでしょう。

トラウマによって傷ついた心を修復させようとしていたのに、気づけばその傷をより深いものにしてしまっていた、なんてことになりかねません。

5.トラウマと依存症からの回復

落ち込む男性と慰めている女性

恐ろしいもの(トラウマ)を瓶にいれ、蓋をしたとしても、恐ろしいものはずっとそこにあります。何かで忘れようとしてもそこにあるのです。いつ飛び出してくるか怯えながら生活することになります。蓋をして閉じ込めるのではなく、その恐ろしいもの自体が自分を脅かす存在でなくなるようにしたいものです。

トラウマは、「今を生きられない状況にある」といわれています。過去の出来事がずっと付きまとい、今を生きる自分を苦しめているのです。トラウマから回復するということは、「過去に脅かされず今を生きられるようになること」と言い換えられるでしょう。

依存症からの回復のキーワードも、まさに「今を生きる」ということです。依存症から抜け出すにはそれしかないとすらいわれています。さまざまなとらわれから脱し、ただ今を生きることを目指すのです。

しかし、これらの回復の作業はとても険しく、つらいことでもあります。本当に必要なものは何でしょうか。

トラウマから身を守るために依存症になってしまったのにもかかわらず、その依存症だけを治そうとしては、またトラウマと直面せざるを得ない状況に逆戻りになってしまいます。そうならないように、他により健康的な依存先を見つけることが大切であると考えられます。

そして、それは多くの場合、信頼のおける人間関係です。ひとりではなく、一緒に付き添ってくれる人と取り組むことが回復への第一歩になります。しかし、これも難しいことです。そもそも、そのように頼れる人がいないからトラウマを負い、依存症になってしまったとみることもできます。

一人の世界に戻らぬよう、この記事を読みトラウマと依存症に苦しまれている方には、どうにかどこかに繋がってほしいと願っています。病院やクリニック、カウンセリングルーム、あるいは自助グループ、どこかに必ず向き合い寄り添う人がいます。

6.トラウマや依存症についての相談とカウンセリング

今回のテーマは「トラウマと依存症」でした。まとめると、トラウマを負った心は自分を守るために依存症になりうるということ、そして、依存症になると回復どころか余計に自身を傷つけるようになってしまうということです。加えて、いざ依存症から抜け出しトラウマから回復しようと思っても、そこには何かに頼らざるを得ない状況が待っているというジレンマがあるということです。

トラウマと依存症は深く絡み合い、問題をさらに深くしていく可能性があります。そうならなってしまわぬように、あるいは、そうなったとしても、信頼のおける人とのつながりから、問題と向き合うエネルギーを得て、より健康的に生活が送られることを願っています。

そして、一人ではできないときには専門家の手を借りることは恥ずかしいことではありません。当オフィスでもトラウマや依存症のカウンセリングや相談を行っています。ご希望の方は以下の申し込みフォームからご連絡を頂けたらと思います。

7.トラウマについてのトピック